熊本県南部を中心に甚大な被害が出た昨年7月の記録的豪雨では、人吉球磨(くま)地域で500年続く「球磨焼酎」の蔵元も多くが被災した。繰り返される水害への不安から、移転による再起を決めた蔵元もある。人々の支援を受け、「これで終わりにはしたくない」と前を向く。 球磨焼酎酒造組合(同県人吉市)によると、球磨焼酎をつくる人吉市や球磨村などにある計27蔵元のうち、11蔵元が豪雨で被災した。このうち今も製造や販売が再開できていないのは、「渕田酒造場」(同市)だけになった。 1878(明治11)年創業の老舗。米焼酎だけでなく、芋焼酎なども販売していた。昨年の豪雨では球磨川の氾濫(はんらん)で店舗や工場が4メートル近く浸水。工場内のタンクやかめが倒れ、機材や在庫品は泥水につかった。被害額は5億~6億円に上るとみられるという。 被災直後は廃業も頭をよぎった… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
お金ないからナプキン買えない 生理の貧困「我慢する」
首都圏に住む大学生の女性は、ここ数カ月、生理用品を切り詰めている。 「コロナでアルバイトが減って、数万円の収入がなくなった。何を減らそうかといったら、その一つがナプキンだった」 拡大する生理と貧困① デザイン・福宮千秋 生理痛が重く、鎮痛剤も買わざるをえないという。そのぶん、ナプキンは1日に何回も交換しないようにして節約している。 トイレに行けば、経血の汚れは気になる。そのたびに「我慢できる」と自分に言い聞かせて、しのぐ。 初潮から閉経までの平均約35年、月経のある女性が避けては通れない、生理とのつきあい。だが、月に千円程度の生理用品を、経済的理由で満足に使えない「生理の貧困」が、若年層を含む多くの女性の間に確かに広がっている。 「生理用品は、友達にもらったり、知らない人にもらったりしてきた」 「生理が来たら、街で配っているティッシュを1パック使って、それでしのいでいた」 生活が困難な若年女性の支援を続けてきた西日本の女性は、こんな声を多く聞いてきた。今も女性たちへの差し入れには、食品などとともに生理用品も入れている。 「親に買ってもらえず、生理中に学校の保健室でもらっている子もいる。でも、そうした機会がない20代の女性などは、よりしんどい状況ではないか」とこの女性は言う。 経済的理由で女性が生理用品の入手に苦しむ実態が民間の調査で明らかになりました。コロナ禍で困窮が広がる中、生理をめぐる動きをリポートする連載です。 「5人に1人が苦労」 生理用品に関するアンケートに… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
豪雨災害で浸水、でも取り壊し不要「洗える家」の秘密
豪雨などによる浸水で入り込んだ汚水や泥を洗い流し、取り壊さず繰り返し使える――。そんな「洗える家」を一般社団法人「埼玉いえ・まち再生会議」(さいたま市南区)が考案した。きっかけは水害対策だったが、「一世代で壊す」日本の住宅のあり方への異議でもある。(黒田早織) 同会議は、設計事務所や工務店、都市計画の教授、建材業者、弁護士など多様な人材が集まり、建築に関わる様々な相談を受ける組織。「洗える家」づくりは、同会議理事で1級建築士の小山祐司さん(74)が娘の河原三保さん(41)夫婦に家づくりの相談を受けたことから始まった。 国土交通省のハザードマップによると、河原さんの新居の建設地(川口市東領家)は荒川氾濫時に3~5メートルの浸水が想定されている。同会議は浸水しても最小限の被害で復旧できる家を目指すことにした。 浸水被害で大変なのは家に流れ込んだ水や泥の処理。一般的な住宅は、建物の骨組みや素材の内部に入り込んだ水や汚れを除去する方法がなく、外壁も内壁も取り壊して新しくするしかない。総額1千万円近くの費用がかかるといい、大量の廃棄物が出る。経済的にも環境的にも負担だ。 これに対し、「洗える家」は土台や柱、断熱材に水を通さない素材を採用。水がしみこまなければ、表面の洗浄だけで汚れと臭いを除去できる。油性の汚れは水での洗浄では足りない場合もあるため、業務用洗剤で洗浄・消毒をする。日常的に触れる部分である室内の壁だけ取り換えれば、衛生面は問題ないという。 小山さんは「コップに例えると分かりやすい。中に汚水が入っても、水を通さない材質なら汚れは落ちるし、洗剤でごしごし洗える。今までの家はそれができなかった」と解説する。 外壁と内壁の間には数センチの隙間を作った。ここからきれいな水を流し、内外壁の間に入り込んだ水や泥を洗い流すことができる。キッチンや洗面所も取り外し可能で、壁との間に汚れが入り込めば洗って繰り返し使える。 洗浄後は、屋根から取り込んだ太陽熱を、建物内部の送風機を使って床下や壁内に送り込み乾燥させる。家の大部分をそのまま生かせ、廃棄物になるのは室内の壁のみ。修理費用は約250万円で済む試算だ。小山さんは「復旧工事で大量の廃棄物を出すことなく家を再利用できる。SDGsの理念にもかなっています」と話す。 平均寿命が短い日本の家 「今の日本の建築技術では100年住める家ができるのに一世代で使い捨てられる」。小山さんが洗って長く使える家を造った大きな理由の一つは、そうした現状への疑問からだ。国交省が発表した住宅寿命に関する資料でも、平均で米国約55年、英国が約77年なのに対し、日本は約30年だ。 古民家の再利用は以前より増えたが、おしゃれなカフェやアトリエとしての再生ばかり。「普通の人が住む家が長く使えなきゃ意味がない」と小山さんは言う。同会議を立ち上げたのも、家を「造る」だけでなく、家のメンテナンスの仕方を助言し「見守る」ためだ。「洗える家」は耐震基準も最も高い等級3で、正しくメンテナンスすれば「100年住める家」だと小山さんは胸を張る。 「洗える家」は今月末に完成予定。河原さん夫婦も「自分たちの家が社会的課題の解決の一端を担えれば」と話している。28、29日には、市民や工務店など誰でも参加できる一般公開が行われる。問い合わせは同会議(048・789・7381)へ。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
保証人なしでOK コロナ禍で住まい失った人に物件紹介
新型コロナウイルスの影響で厳しい雇用情勢が続くなか、職を追われると同時に家まで失ってしまう人がいる。保証人や緊急連絡先として登録できる身寄りの無い人は「住宅弱者」になりやすいという。 そんななかで、保証人・保証会社不要の物件を紹介する札幌市の不動産賃貸会社には、コロナ禍前の3倍のペースで相談が寄せられている。 札幌市内のマンションに住む男性(44)は昨年4月、派遣で勤務していた食品製造工場で契約を切られた。住んでいた派遣会社の寮は、一軒家のシェアハウス。住み続けづらくなり、一人暮らしをしながら職探しをしたいと思っていたところ、札幌市内の不動産賃貸事業者「めぐみ企画」をウェブサイトで見つけた。 拡大する「めぐみ企画」が借り上げた部屋に住む男性。ベッドや机、テレビなどの家具は同社が用意した=2021年3月22日、札幌市 同社は古い物件を安く借り上げ、保証人・保証会社不要で、家具家電つきですぐに入居できる部屋を用意しているという。男性は住まいを紹介してもらうことにした。 北海道労働局によると、北海道内の1月の新規求人数は前年比で7・2%減少。13カ月連続で前年同月を下回っている。男性が派遣会社に仕事の紹介を頼んでも、ほとんど求人がない。 失業保険で1日1食で食いつないでいたが、それも底をつきつつあり、4月からは生活保護の受給を検討している。「仕事がなかなか見つからず、先が見えない。住めるところがあるのはまだ救われる」と話す。 17日現在、同社が借り上げる497室の92%に、10~80代の458人が入居する。ほとんどの入居者が一人暮らしで、約6割が生活保護を受給している。 多くの場合、賃貸契約時には契約書類の連帯保証人や緊急連絡先の欄に親族の名前の記入が求められる。会社員として働き、十分な収入を得ている人でも、頼れる親族のいない人は審査が通らず、家を借りられないことがあるという。 男性も独身で、存命の家族とは音信不通の状態にあり、社員寮つきの仕事を転々としてきた。同社の金城めぐみ社長(41)は「一人っ子で両親が他界した人やシングルマザーなど、現代社会では誰でも住宅弱者になりうる。賃貸業界の実態が追いついていない」と話す。 拡大する保証人・保証会社不要で賃貸物件を紹介する「めぐみ企画」の金城めぐみ社長=2021年2月8日、札幌市豊平区 同社が紹介する物件の入居者の9割が、こうした住宅弱者だ。同社は1カ月あたり数万円で借り上げる物件の家賃に上乗せして賃料を回収し、収益を得ている。 広告を増やしたこともあり、コ… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
LINE社長、特別委で謝罪 中国からのアクセスは遮断
無料通信アプリ「LINE」の個人情報が利用者への具体的な説明が不十分なまま、中国の関連企業からアクセスできる状態にあった問題で、LINEの親会社のZホールディングス(HD)は23日午後、外部有識者による特別委員会(座長=宍戸常寿・東京大大学院教授)の初会合を東京都内で開いた。 会合の冒頭、LINEの出沢剛社長は「ユーザーの皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけしており、大変申し訳ございません」と謝罪した。 出沢社長は、明らかになった課題として①中国で個人情報にアクセスする業務を実施していた②「トーク」上の画像や動画を国外で保管していた③プライバシーポリシーに国名を明記していなかった、ことを挙げた。 その上で、日本の利用者の個人情報への中国からのアクセスはすでに遮断していることや、中国での業務を終了したことを明らかにした。また「トーク」内の画像や動画、ファイルデータは今年6月までに国内に移転するとした。 ZHDの川辺健太郎社長も謝罪し、「LINEの親会社として、きちんとその履行を監督・管理していく」と強調した。 会合後に取材に応じた宍戸氏は、この日のLINE側の説明について「利用者の安全・安心を確保する上でやらなければならない緊急措置をとった。いわば、止血をした状態」と述べた。次回以降の課題は「本当の病巣はどこにあり、どういう手術をしなければいけないのか」を調べることだという。 委員会では、LINEのデータの取り扱いについて、セキュリティーとガバナンス(企業統治)の観点から検証・評価する。検証結果を踏まえ、プライバシーやセキュリティー、ガバナンスの観点に加えてプラットフォーム事業者として考慮すべき各国の法制度など、今後の対応策を提言するという。(益田暢子、篠健一郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
適切な飛沫対策→感染リスク99%減 五輪開会式で試算
7月に予定されている東京オリンピックの開会式で、観客が新型コロナウイルスに感染するリスクについて、東京大学医科学研究所などの研究グループが試算を論文として発表した。会場側と観客が適切な対策とった場合、何もしなかった場合に比べて感染リスクを99%減らせるという。 試算では会場に6万人が5時間集うと仮定した。無症状の感染者が会話やせき、くしゃみなどでウイルスを含む飛沫(ひまつ)を放出。空気中に漂ったり周囲の物体に付着したりして他の観客が口などから取り込む可能性を考えた。 対策がない場合、場内の感染者1人あたり新たに1・5~1・7人に感染させるという結果が出た。マスクをする、手を洗う、帽子などで髪の毛への飛沫の付着を防ぐといった観客の対策と、客席の間の仕切りや入退場で距離を保つといった会場側の対策を組み合わせた場合、感染確率は99%減り、感染者1人あたりの新規感染者は0・009~0・012人だった。他の大規模イベントでも応用可能だという。 試算ではトイレのドアノブの接… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
宮城への「まん防」適用、政府慎重 首相「まずは時短」
新型コロナウイルスの感染状況が悪化する宮城県に対し、政府内で緊急事態宣言に至らないようにするために設けた「まん延防止等重点措置」の適用に慎重な意見が目立っている。同措置の発動要件があいまいなことなどが背景にある。同県は独自に緊急事態宣言を出して感染防止対策に乗り出している。 菅義偉首相は23日午後、首相官邸で、田村憲久厚生労働相ら関係閣僚と感染状況を分析した。関係者によると、首相は「まずは時短だ」と述べ、同県による飲食店への営業時間の短縮要請を見守る考えを示した。 重点措置は、2月の改正特別措置法施行に伴い新設された。分科会が示す4段階の感染状況のうち、2番目に深刻なステージ3(感染急増段階)を目安にして発動を判断。宣言時と同じく都道府県知事が営業時間の短縮を命令し、正当な理由がない違反者に20万円以下の過料も科せる。 内閣官房の資料によると、21日時点の宮城の感染状況は、新規感染者数や療養者数など複数の指標がステージ4の段階にある。2月23日に飲食店支援「GO TO イート」を一部再開し、その後から感染者が増えたという。 ただ、首相官邸内には同措置に… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
リトグリと高校生、復興祈るハーモニー リモートで共演
東日本大震災からの復興を後押しする「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」(主催・三菱商事、朝日新聞社、福島放送)が23日に開かれ、オンラインで配信された。ボーカルグループ「Little Glee Monster(リトルグリーモンスター)」が出演し、事前に合唱を収録した福島県郡山市の高校5校の計104人とともにハーモニーを響かせた。 音楽祭は福島、宮城、岩手の3県いずれかを会場にして2014年から開かれてきたが、昨年は新型コロナウイルスの影響で中止。今年は高校生の合唱を2月に収録し、本番は無観客の配信イベントとなった。 この日は高校生の合唱を配信した後、東京都中野区の会場からリトグリがライブで「世界はあなたに笑いかけている」など6曲を披露。最後に、収録した高校生の歌声に合わせてリトグリが生で「明日へ」「好きだ。」を歌い、リモートで共演した。 郡山市の福島放送本社で配信を見ていた各校代表の生徒は、リトグリに「福島で行きたいところは?」「一番緊張したステージは?」などとリモートで尋ねた。安積高の先崎真知さん(2年)は「リモートでの合唱だったが、離れていても音楽を一緒に作れると感じ、感動した」と語った。(大塚晶、恵藤公浩) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
黒木瞳さんが聖火ランナー辞退 沿道に観衆、感染を心配
俳優の黒木瞳さんが東京五輪の聖火ランナーを辞退していたことがわかった。福岡県によると、新型コロナウイルスの感染防止をめぐり、沿道に観衆が集まることを黒木さん側が心配したためという。 黒木さんは5月に福岡県内を走る予定だった。県によると、3月に入り、所属事務所から辞退の申し出があったという。県は慰留したが折り合わず、22日に正式に辞退が決まった。 黒木さんは福岡県八女市出身。県実行委員会が推薦し、2019年12月に走者の内定が発表された。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
旭川医大学長、教授代行なのに「教授」? 学内で批判
国立の旭川医科大学の眼科学講座のウェブサイトで、同講座の教授に就任していないはずの吉田晃敏学長が、「教授」として紹介されていたことがわかった(現在は削除)。同講座では昨秋に担当教授が辞職し、教授ポストは空席になっている。大学側は吉田学長が一時教授代行を務めていた、と説明するが、学内からは「代行が教授を名乗るのはおかしい」との声が出ている。 旭川医大の眼科学講座のウェブサイトでは、「あいさつ」のコーナーに、吉田学長が「教授」として登場していた。そこでは、「眼科学教室では、現在考え得る最善の治療法を提供すると共に、新たな可能性を求めて、日々、最先端の研究を続けています」などと述べていた。 眼科学講座の教授ポストは、前任の教授が昨年10月25日付で辞任し、その後空席となっている。にもかかわらず、吉田学長が「教授」を名乗っていたことについて、同大は「学長は眼科の教授ではない。ただ前任教授が退職した後の昨年10月26日から11月4日まで教授と准教授が不在だったため、学長が教授代行を務めた」と回答した。 吉田学長の「あいさつ」は23日午後にウェブサイトから削除され、その後、「医局員紹介」で「吉田学長」として紹介されていた写真も削除された。 吉田学長はもともと眼科が専門で、2018年までは学長と眼科学教授を兼任していた。ただ、同大の教授の一人は「教授が欠員となるなどした時、別の講座の教授が教授代行を務めることはある。それでも、代行している講座の教授を名乗ることはしない。さらに代行が終わった後も教授を名乗っていたことになる。おかしい」と指摘する。 吉田学長を巡っては、滝川市立病院からの高額報酬問題や新型コロナウイルスのクラスター発生時の不適切発言などを巡り、教授らから解任を求める署名が学長選考会議に提出され、同会議で解任の適否が審議されることになっている。(本田大次郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル