【埼玉】熊谷市立熊谷東中学校(伊藤幸男校長)の3年生145人が卒業式に合唱するために「青春(ぼくら)の詩(うた)」を作った。コロナ禍で修学旅行などを体験できなかった学年が思い出作りに取り組んだが、感染予防のため16日の本番での合唱は禁止に。11日、感染予防を図りながら最初で最後の合唱を録音し、これを卒業式で流すことにした。 3年生は昨年5月の京都・奈良への修学旅行が中止になり、大半の部活動で大会が中止になった。このため、音楽の木下八重香教諭(37)が卒業式で合唱する歌を自分たちで作ることを提案。6月から週1コマの音楽の授業を使って4クラスごとに歌詞やメロディーを作り始めた。木下教諭がこれらをつなぎ、プロの音楽家に編曲を依頼し、昨年末に完成した。木下教諭は「当初、生徒は私の提案に驚いていたが、等身大の言葉の歌ができた」と語る。 11日は体育館に3年生全員が集合。市教委の了承を得て、換気に注意を払ってお互いの距離を取るなどし、マスクを着けたまま合唱した。クラス単位では約1カ月間練習を続けてきたが、学年全員ではぶっつけ本番。高橋楓(かえで)さん(15)は「私たちが卒業した後も歌ってもらえるとうれしい。友達と教科書に載るといいねと話している」と満足そうだった。(坂井俊彦) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
路面電車、廃車→里帰り 交流の場で迎える第2の人生
かつて神奈川県小田原市内を走った路面電車を展示し、カフェのある多世代交流施設「箱根口ガレージ 報徳広場」が12日、同市南町2丁目にオープンする。地域住民が絆を強め、観光客も歓迎する場をめざす。 展示されるのは「小田原市内線モハ202号」。小田原~箱根板橋間で運行し、1956年の廃線後は長崎市の長崎電気軌道に譲渡された。一昨年廃車となり、市民団体がクラウドファンディングで資金を集めて小田原に里帰りさせた。コロナ禍のため、当面は車内を一般公開しない。 報徳広場は、報徳二宮神社関連企業の報徳仕法が運営する。日中はカフェや生花店を営業。夜は会員制の「地域食堂」とし、大人も会食できる子ども食堂の形にして住民らが交流する。子どもが社会を学ぶ「こども経済教室」や料理教室も計画している。 報徳二宮神社の草山明久宮司は「子どもは路面電車で楽しみながら地域を勉強できる。郷土愛を育む場にしていきたい」と語る。問い合わせは報徳広場(0465・23・2881)へ。(村野英一) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
約束のマグロ解体ショー 冗談から始まった東北との絆
【三重】「そんなら、僕がマグロの解体ショーでもしましょうか」。最初は冗談のつもりだった。ところが、返ってきたのは「やってけれ。頼みます」。岩手県陸前高田市で交わした約束が、すべての始まりだった。 津市香良洲町の海産問屋「丸政商店」の店主、鯖戸(さばと)伸弘さん(52)は2011年7月以降、津市や東日本大震災の被災地で、復興支援のためのイベントを企画してきた。 中でも特に力を入れてきたのが、東北でのマグロの解体ショー。この10年間で8回開いてきた。きっかけは、ボランティアで訪れた被災地での地元の人との何げないやりとりだった。 12年6月、仲間と陸前高田市へ行き、草刈りをしていた。汗だくになって作業をしていると、郷土汁を振る舞われた。 「兄ちゃん、お仕事は何をしているの」。休憩中、仮設商店街「未来商店街」の役員を務める男性から話しかけられた。そのとき、会話が弾んだことで、あの約束につながる。 そして13年1月、ついに約束を果たす日がやってきた。50キロほどのキハダマグロを名古屋市の市場で仕入れ、そのままレンタルバスで10時間以上かけて陸前高田市へ向かった。 会場は、商店街に用意された仮設テント。ショーが始まると、100人以上がテントを囲むように集まってきた。携帯電話のカメラで写真を撮る人や、「頑張れ」と声をかける人。みんなが食い入るようにショーを見つめる。 マグロに包丁を入れるたびに、「おお」「すごい」と歓声が上がった。解体されたマグロは、商店街に店を構えるすし職人が握り、その場で振る舞われた。 ショーは大盛況で幕を閉じた。何よりも、あのときの約束が達成でき、喜びでいっぱいだった。 昨年はコロナ禍で中止、今年こそ それから年に1度、被災地でマグロの解体ショーをするようになった。岩手県だけではなく、宮城県や福島県にも行った。さらに、津市でチャリティーイベントも開いてきた。 震災をきっかけに、地元でのつながりも深まった。特に、10年間ともにイベントを企画してきた約20人の仲間たちとの絆は深まったと感じている。 苦に思ったことは一度もない。どうしたら喜んでもらえるのか、ずっと被災地支援のイベントのことばかり考えてきた。 だが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で、東北でのマグロの解体ショーや、津市でのイベントが中止に追い込まれた。今年は震災から10年の節目の年。目線を変え、振る舞いではない別の形でのイベントに挑戦するつもりだ。 もちろん、「食」のイベントも、これまで通り続けたいと考えている。おいしいものを食べると、みんな笑顔になるから。(岡田真実) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
卒業式、「いのちの歌」だけはマスク外して 中庭で合唱
山梨県内の多くの中学校で11日、卒業式があった。コロナ禍で長期休校や分散登校を強いられ、部活動や恒例行事は満足にできなかった。異例の1年を送った卒業生が学びやを巣立った。 笛吹市立一宮中の卒業生は93人。田草川淳校長は「今を一生懸命生きることが、過去や未来を光り輝かせるものにします」と言葉を贈った。卒業生は体育館で式を終えるとテニスコートへ。校舎の窓際から見つめる父母らに合唱を披露した。「いのちの歌」の時だけ、全員がマスクを外して高らかに歌った。 生徒会長の国府田マヒナさんは「修学旅行や部活の大会中止は残念だった。でも、最後の合唱で仲間がひとつになれた」。陸上部主将の荻原悠生(はるき)さんは「友だちとの会話が制限され、普通の生活が送れなくて残念だった」と話した。(河合博司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
4億円不正出金問題で刑事告訴 元会長、私的流用は否定
全日本私立幼稚園連合会の基金など約4億円が不正に出金された問題で、同連合会は12日、香川敬前会長と勝倉教雄・前事務局長を業務上横領と私文書偽造などの容疑で11日付で刑事告訴したと発表した。香川氏は内部調査に通帳の偽造を認める一方、私的流用は否定。勝倉氏は「香川氏の指示に従った」と説明したという。 12日に都内で会見した連合会の代理人弁護士によると、告訴容疑は、連合会が全国の都道府県団体から集めた会費のうち、国際交流や災害対策のための基金など計約4億円を2017~20年度に不正に引き出すなどして、横領したというもの。香川氏は昨年11月の内部調査に対し、残高を水増しした偽造通帳を示したといい、連合会は私文書偽造や偽造有印私文書行使未遂などの容疑でも告訴した。 田中雅道会長代行は「公の手ですべてを明らかにしていただくのがベストだと判断した」と述べた。 連合会の関連団体の全日本私立幼稚園PTA連合会でも約4100万円の使途不明金が出ており、PTA連合会も11日付で香川氏と勝倉氏を刑事告訴した。勝倉氏はPTA連合会の事務局長も務めていたが、昨年12月に退職したという。 PTA連合会会長の河村建夫元官房長官も会見に同席し、過去5年間に連合会などから自身が代表を務める政治団体への寄付は確認できなかった、と述べた。(鎌田悠) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
バー経営の「凝り性」元ボクサー 故郷にシードル醸造所
東京・神田でバーを経営する藤井達郎さん(40)が、リンゴを原料にした発泡酒シードルの醸造会社を故郷の群馬県沼田市利根町平川で昨年6月に設立し、醸造所を建てた。藤井さんが代表を務め、7日、地元の幼なじみやバーの常連客と「初仕込み」をした。 藤井さんは元プロボクサー。バーテンダー修業を経て独立し、2015年にバーを開業した。その頃から「地元沼田のリンゴを使い、自分でシードルをつくりたい」と思うようになった。神田のバーは世界中から仕入れたシードルを看板メニューにしている。 「凝り性」だという藤井さんは、コロナ禍以前は毎年のようにスペインやフランスの醸造所や農家を訪ねた。産地を実際に見て、作り手と交流するのが目的だという。2年前からシードルづくりの準備を始め、今年2月に果実酒の製造免許を取得した。 ドイツのワイン研究施設勤務を経て日本で醸造所開設にも携わった経験のある醸造家の男性を招き、二人三脚でシードルづくりに励む。リンゴを機械ですりつぶし、プレス機で搾った果汁を発酵させる。今月仕込んだ初回の約1600リットルは6月上旬に沼田市の飲食店や酒店、神田の自身のバーなどに並ぶ予定だ。新年度は6千リットルを生産する。 原料のリンゴは、群馬生まれの品種「ぐんま名月」や、主力の「ふじ」など。ぐんま名月は蜜が多い人気の品種だが、ふじに比べて保存期間が短く生産量が少ない。産地以外にはほとんど出回っていない希少さに目を付け、ぐんま名月のシードルを看板にし、他の品種をブレンドしたものなどを商品化していく。「まずは香りや甘みなど沼田のリンゴの良さを感じてもらえるシードルを作っていきたい」と藤井さんは言う。 一方で、複雑な味わいの海外産に近いシードルづくりにも挑戦する。渋みや酸味のある欧州原産のシードル用のリンゴ栽培も沼田市内で始めている。 「ウイスキーやワインのように、シードルが当たり前に店や家庭で飲まれるようにしたい」(遠藤雄二) スコットランドの蒸留所をめぐり、出会った 藤井さんがプロボクサーを引退… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
早世から1年 札幌のゴスペルシンガーしのぶブルーレイ
2020年3月に49歳で死去した札幌市のゴスペルシンガー・Natsuki(ナツキ)さんの最後のソロリサイタルを収録したブルーレイディスク(BD)が、没後1年の3月13日に発売される。道内で長年ゴスペルを指導し、多くの歌い手を育てたNatsukiさんだったが、新型コロナウイルスの影響で昨年の葬儀は身内のみで行われた。昨秋予定されたしのぶ会も延期されており、遺族はBDの歌声を通じて故人の思い出を共有したいという。 Natsukiさんは幼い頃から音楽に親しみ、音大卒業後ゴスペルシンガーとしてデビュー。豊かな歌声で聴衆を魅了した。歌唱指導やラジオ番組パーソナリティーなどでも活躍し、15年10月にはカトリック教会の総本山、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂でのミサに日本から聖歌隊を率いて出演し、ローマ教皇と謁見(えっけん)した。昨年3月13日にがんのため亡くなる直前まで演奏活動を続けた。 檜山地方の今金町は19年10月、町内で演奏会をたびたび開いていたNatsukiさんを招いて総合体育館の落成記念イベントを開催。指導を受けた町民らも交えたリズミカルなゴスペルソングは、会場を大いに盛り上げた。その5カ月後に悲報が伝わり、中山秀悦教育長は「とても楽しいひとときだった。病を抱えておられるとは知らず驚いた」という。 オルガン伴奏などで音楽活動を支えた妹の大澤あすかさん(47)は「姉にとって歌うことは生きることだった。慕う生徒さん、ファンは本当に多く、幸せな人生だったと思う」と話す。父・山田晋筰さん(80)は「多くの方の記憶に残れたのであれば、決して短い人生だったとは思わない」と語る。 BDには19年6月のリサイタルで歌われた「ユー・レイズ・ミー・アップ」「アメイジング・グレイス」などの有名ゴスペルソングや、「虹と雪のバラード」「蘇州夜曲」などのヒット曲を収録。購入希望はウェブサイト(https://ssl48.dsbsv.net/natsuki-vocal.jp/)で受け付ける。家族らはBD発売のほか、ゴスペルの名曲「トータル・プレイズ」を教え子らがそれぞれ歌った動画をひとつに合成してネットで配信、手向けとする考えだ。(戸田拓) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
民泊事業者、住宅で遺体を一時預かり 近隣住民から苦情
大阪市住吉区の一戸建てで民泊を行っている事業者が、この住宅で遺体を一時的に預かり、近隣住民からの苦情が市に寄せられていることが12日、分かった。区の聞き取りに対し、事業者は「コロナで民泊が厳しくなり、遺体を月2、3体預かるようになった」と説明しているという。 区によると、この住宅に遺体が運び込まれるようになったのは昨年12月ごろ。近隣住民から今年1月に苦情が寄せられたことで事態を把握したという。区が今月9日に電話で聞き取りをしたところ、事業者は「住宅が売れるまで遺体の預かりは続けたい」と話したという。 区の担当者は朝日新聞の取材に対し、「遺体保管の経緯について事業者から直接確認できていない」とした上で、「葬儀業者に遺体の十分な安置場所がなかったり、安価な安置場所を必要としたりする場合があるため、民泊事業者が有料で遺体を預かっていたのではないか」と話す。 市環境局によると、遺体の一時預かりを規制する法律や条例などはないが、近隣住民とのトラブルなどを防止するため、今後、指導要綱の策定を検討するという。(本多由佳) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「クーデター」を否定 ゴーン氏事件で日産元副社長証言
日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(67)が巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件で、金融商品取引法違反罪の共犯に問われた元代表取締役グレッグ・ケリー被告(64)の公判が11日、東京地裁であった。社内調査を主導した川口均・元副社長が証人出廷し、「仏ルノーと日産の統合を阻止するために(元会長の)不正を捏造(ねつぞう)するようなことはこれっぽっちもないと確信している」と証言した。 日産では、川口氏と今津英敏・元監査役、検察と司法取引したハリ・ナダ専務執行役員がゴーン元会長の不正調査を担った。元会長はルノーとの経営統合を阻むための「クーデター」だと批判している。 公判で弁護側は、統合阻止を目的に、不正の疑惑を検察に持ち込んだのではないかと追及した。川口氏はルノーとの関係をめぐって「ゴーンさんの存在がネガティブになっていたのは事実」としつつ、「不正はあくまで不正」と強調。検察に情報提供した理由は「当時はゴーンさんに全ての権限が集中していて、日産内部で彼を糾弾するのが難しかった」と説明した。 社内調査に加わった経緯につい… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
津波にのまれた親子、傷のない赤ちゃん 検視官は涙した
東日本大震災で1万5千人を超える死者の死因や身元を調べ、遺族に引き渡す役割を担ったのが、全国から派遣された警察官たちだった。静岡県警捜査1課の山下安則・統括検視官(57)もその一人。2011年の3月に福島県相馬市、同年5月に南相馬市へ約1週間ずつ派遣され、津波にのまれた遺体に向き合った。 ◇ 3月の派遣では遺体安置所となった工場で検視にあたった。遺体の写真を撮り、津波で泥まみれになった体を洗い流す。全身の傷を細かく確認し、持ち物や体の特徴、指紋やDNA型、歯形なども記録。医師から災害死と確認してもらい、遺体を棺に納めた。 工場内には遺体と対面した遺族が号泣する声が響きわたる。その中で黙々と作業を続けた。少しの無駄話も、笑顔を見せることも許されない。緊張が続いた。担当する遺体の前では必ず手を合わせ、黙禱(もくとう)をささげた。 ある日、生後数カ月の赤ちゃんの遺体が運ばれてきた。遺体にはほとんど傷がなかった。「皮膚が弱い赤ちゃんがなぜ……」。不思議に思った。数時間後に運ばれてきた若い女性は、赤ちゃんを抱きかかえる姿勢で硬直していた。2人は親子だった。「津波にのまれても最後の最後まで子どもを守ろうとしたのか」。母親の気持ちを思うと涙が止まらなかった。 派遣期間中、南相馬市で津波被害に遭った海岸部にも足を運んだ。平地にぽつん、ぽつんと柱だけが立っていた。「元の姿が想像できなかった」。被災前の様子を航空写真で見てあぜんとした。一帯の建物がまるごと消えていた。「これがこれから静岡でも起きることなのか」 被災地で抱いた危機感は今も残る。警察官や自治体職員、医療関係者の前で講演する機会が多く、南海トラフ地震に備え、事前準備の重要性を訴えてきた。検視に必要な資機材の準備や遺体安置所の確保、人員確保は欠かせない。「災害には想定外がつきまとう。関係機関、県民も一丸になって立ち向かわなければならない」と話す。 これまでの経験から、被災地では遺体の取り扱いや治安確保など警察の役割の重要さも実感してきた。その上で、若い警察官にはこう伝える。「警察が本当に必要とされる場面で自分の命がなければ何もできない。だからこそ、いざというときに逃げる勇気を持ってほしい」(植松敬) ◇ 阪神淡路大震災や東日本大震災では、検視に必要なビニールシートや消毒液といった資機材の不足、想定していた遺体安置所の被災による別の施設の確保など、遺体を扱う上での課題が浮き彫りになった。過去の教訓から全国的に防災計画の見直しが進み、静岡県は2016年4月に「遺体措置計画策定の手引」を改訂した。 手引では、県内の市町に対し、遺体搬送や検視に必要な資機材の調達と保管を求め、事前に地元警察署と協議して遺体安置所となる施設を選ぶことを要望。耐震性があり、想定浸水域外に位置する施設を選ぶことや、万が一被災した場合の代替施設の選定も必要としている。 ただ、遺体安置所の選定は市町によって進み具合が異なる。県危機政策課のまとめ(昨年4月1日時点)によると、県内では3市町で遺体安置所が決まっていない。大規模施設は避難所との重複を避ける必要があり、想定していた施設の耐震性が不十分というケースがあるなど、今後の課題になっている。 一方、県の手引きには警察や医師、消防や葬祭業者と連携した防災訓練の実施についての記載もある。県が毎年実施する総合防災訓練では、遺体の検視や身元の特定、遺族への引きわたしを想定した訓練を行い、最悪の事態に備えた準備を進めている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル