「出産したら戻ってくるからね」――。園児たちにそう約束した保育士が、育休からの復職直前、園側に解雇された。東京高裁は4日の控訴審判決で、妊娠や出産による職場での嫌がらせ「マタニティー・ハラスメント」と認め、保育士の解雇は無効と判断した。 神奈川県の30代女性は、2017年4月から産休に入り、同年5月に出産。18年からの復職を希望したが「園長と保育観が一致しない」と解雇されたという。 男女雇用機会均等法9条4項は、「原則として妊娠中や産後1年たたない労働者への解雇は無効」と規定するが、事業主が解雇理由を妊娠や出産でないと証明できた際は例外とする。 後藤博裁判長(石井浩裁判長代読)はこの日の判決で、園長に批判的な言動をしたことが解雇理由とされた点について、「意見は述べたが解雇に相当する問題行動とはいえない」と判断。一審・東京地裁判決に続き、解雇は均等法9条4項に反するとした。 さらに、この規定が目指す趣旨についても言及。「妊娠や出産で身体的・精神的な負荷が想定されることから、安心して出産・育児ができるようにするための規定」とした。 判決後に都内で会見した女性は「同じ思いをする人がいなくなってほしい」と訴えた。今も、この園での復職を望んでいるという。 保育園側は「コメントできない」とした。 厚労省によると、均等法をめぐ… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
心愛さん虐待死「異常なまでに陰惨」 被告側の控訴棄却
異常なまでに陰惨で、女児の尊厳を全て否定するすさまじい虐待だ―― 千葉県の小学4年の栗原心愛(みあ)さん(当時10)が2019年1月、虐待により死亡したとされる事件。東京高裁の近藤宏子裁判長は4日の控訴審判決で、傷害致死などの罪に問われた実父の勇一郎被告(43)による虐待を「悪質性が並外れて際立つ」と指摘し、懲役16年とした一審・千葉地裁判決を支持した。被告側の控訴は棄却された。 被告はこの日、黒いスーツに白いシャツを着て出廷。判決が読み上げられると、刑務官に筆記用具を借りてメモを取り続けた。 地裁は昨年3月、被告が丸2日間にわたり食事や十分な睡眠をとらせずに真冬の浴室に放置し、シャワーで冷水を顔に浴びせ続けたことなどを認めて実刑判決を言い渡した。被告は虐待行為の大半を否認していた。 控訴審判決は、虐待が1年2カ月以上の長期間にわたっていたことを重視。「被告は児童相談所などの救いの手を徹底的に排除し、妻も暴力で支配して、被害児を孤立無援に追い込んだ」と指摘し、量刑不当と主張した弁護側の訴えを退けた。 さらに、妻(34)=傷害幇助… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ふるさとの海を耕す」藻場の復活へ 佐藤さんの情熱
「ホタテが揚がってこねんだども、何が引っかかっでらんだべが。潜ってきてけねぇが」――。 岩手県大船渡市でダイビングショップを営む佐藤寛志(ひろし)さん(46)のもとには、養殖施設の異常を訴える漁師からの連絡が後を絶たない。漁場に潜ると、ロープや網などの漁具、沈没した船、腐食した車など、津波で流出した様々な物が絡まっているという。東日本大震災から間も無く10年がたつ今でも、月に1度はこうした依頼が舞い込む。 岩手県花巻市出身。タイ南部カオラックでダイビング・インストラクターとして働いていた佐藤さんはあの日、アンダマン海のクルーズ船上で東日本大震災の発生を知らされた。三陸沿岸に住む親戚の安否を案じる一方、「自分が戻ったところで何ができるのだろうか」。帰国をためらう複雑な気持ちで港に戻ると、大量の物資と航空券を用意してスタッフが待ち受けていた。 「これを持って、とにかく日本に帰ってほしい」。下着や生理用品、インスタント食品に電池。2004年のスマトラ沖地震と津波を経験し、復興の道のりを知る現地の仲間の思いに背中を押された。身長180センチの屈強な体の前後左右に持てるだけの支援物資をぶら下げ、日本へ帰国した。 震災から4日後、美しかったふるさとの海は、漂流がれきで覆われ、車や家屋、自動販売機など、陸にあったあらゆるものが沈んでいた。「元のきれいな海を取り戻したい」と、胸に刻んだ。全国のダイバー仲間から寄せられた支援物資も車に積み込み、三陸沿岸の知り合いに配り歩く日々が3週間ほど続いた。 4月にはダイバー仲間と海底の清掃やがれき調査を本格化。「何か手伝えることはありませんか?」と、飛び込み営業のように港を回った。レジャーダイビングが盛んでなく、密漁者のイメージも付きまとう土地柄。大船渡市の漁師及川省吾さん(49)は当時を振り返り、「大柄で浅黒い人がニコニコして寄ってくる。だまされるもんかと警戒した」と笑った。海に潜ってがれきにロープをかけ、漁師と一緒に引き揚げる日々。一日一日と地道に関係を築いていくうちに、3年の月日が経っていた。 海中のがれきが片付き、漁業が再開し始めると、港ではウニやアワビの漁獲量減少が話題になっていた。津波は海底の藻類にも打撃を与え、それらを食料とするアワビも減少していた。生え始めた海藻を、大量発生したウニが奪い合うように食べ尽くし、岩肌が真っ白になる「磯焼け」と呼ばれる食害も発生していた。 佐藤さんは沿岸の生態系を再生するため、魚類のすみかとなる藻や海草類を復活させる活動に取り組み始めた。大船渡市の浪板海岸では、マコンブの胞子が入った「スポアバッグ」約100個を岩場に設置し、海草のアマモを砂地に植えた。磯焼け対策を行った海域でウニの身入りが目に見えるように増えると、「そんなことやったって変わらないよ」と高をくくっていた漁師からも一目置かれるようになった。 佐藤さんは現在、NPO法人「三陸ボランティアダイバーズ」の代表としてウニの駆除や藻場の再生に取り組む「ボランティアダイビング」を主宰する傍ら、三陸沿岸の高校で海洋実習の講師も引き受けている。「自分自身もいつまで潜れるか分からない。ふるさとの海を、自分たちで耕す。そんな『海の活動家』を育てたい」。海から三陸の復興を見つめ続けてきた目尻には、深い笑いじわが刻み込まれていた。(加藤諒) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
海荒れ戻れず、3年赤字…ギンザケ養殖、もがいた10年
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市の雄勝湾で、津波の犠牲になった弟夫婦の後を継ぎ、教師からギンザケ養殖漁師に転職した男性がいる。両親を亡くしたおいや自らの子供たちのために、ふるさとに家業を残そうと奮闘している。 山に囲まれた雄勝湾の沖合に浮かぶ養殖いけす。約15メートルの深さまで張られた網の中に入ると、銀色に輝く魚が巨大な群れになり、ゆったりと泳いでいた。阿部優一郎さん(50)が育てているギンザケだ。 震災当時は、福島市の私立高校で英語教師をしていた。養殖業を継いでいた弟の良満さん夫婦が、一人息子の優寿(ゆうと)くんを残して津波で亡くなり、優一郎さんの母親・良子さんは行方不明になった。 誰かが継がなければ廃業という状況で、「ふるさとが廃れていってしまうのをなんとか防ぎたい」という思いから、転職を決意した。中古の船を買い、鉄工所に依頼していけすを作り直し、2011年のうちから養殖を再開した。 生き物を相手にする仕事は休みがない。始めた当初は経験不足で、荒れた海に船を出し、港に戻れなくなったこともあった。最初の3年間は赤字続きだったという。 「弟夫婦はもちろん、津波にのまれた私の母もおいっ子を心配しているはず。親のしていた仕事を伝えてやりたいという気持ちもあって続けてきました」と振り返る。 養殖は徐々に軌道に乗り、今では震災前の倍ほどのギンザケを育てるようになった。3月下旬には、全国に向け出荷が始まる。(諫山卓弥) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「手がかり、少しでも…」行方不明者の捜索、続ける思い
東日本大震災から10年を迎える宮城県女川町で、震災の行方不明者の水中捜索を続けるボランティアダイバーがいる。 1月下旬の女川湾。冷たい風が吹き、白い波が立つ海中に、高橋正祥さん(41)は飛び込んだ。水深30メートルを超える海底に向かい、水温10度を切る、視界の悪い水の中で捜索を続ける。 この日は2回の潜水を行い、カバンを1個拾い上げた。港で開けると、中からは真っ黒な泥水が流れ出した。水道で洗いながら調べたが、持ち主が分かるようなものは入っていなかった。月に1回、仲間たちと同様の捜索を続けている。 ボランティアダイバーには、行方不明者の家族も参加している。七十七銀行女川支店に勤務中に行方不明になった妻の祐子さんを捜す高松康雄さん(64)は、高橋さんの指導で潜水士の資格を取り、海中での捜索をするようになった。「海の深い場所での捜索は緊張しますが、高橋さんがいることで、安心して潜れます」と話す。 高橋さんは仙台市の生まれ。福島の大学を卒業し、ワーキングホリデーで訪れたオーストラリアでダイビングインストラクターの資格を取得した。帰国後に神奈川県のダイビングショップで働いている時に、東日本大震災が発生した。 親戚の家の片付けや、全国から集まったボランティアダイバーの活動に参加するため東北に通ううち、「自分のできる『潜ること』で地元に貢献したい」という思いが芽生え、2012年7月に宮城県石巻市でダイビングショップ「ハイブリッジ」を開店した。震災から日が浅い当初は客も少なく、作業潜水の依頼を受けてしのぐ日々が続いた。 数年経つと海に生き物が戻りはじめ、観光のダイバーたちも訪れるように。15年には、女川町にできた商店街の中に店舗を移し、今では観光ダイビングに作業潜水、海岸ゴミの清掃活動など、多忙な日々を送る。そんな中でもボランティアの捜索活動を欠かさないのは、少しでも行方不明者の手がかりを見つけたいとの思いからだ。 「昨年、今年と新たに海中に沈んでいる車を見つけました。まだまだ捜す場所はたくさんあります。地元のダイバーを育て、活動を続けていきたいと思います」と話した。(諫山卓弥) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
男女重傷の発砲事件、暴力団組長らを逮捕 殺人未遂容疑
川崎市の路上で2019年1月、指定暴力団稲川会関係者の男女2人が銃で撃たれて重傷を負った事件で、神奈川県警は4日までに、指定暴力団住吉会系組長の土屋和雄容疑者(56)=埼玉県入間市=ら5人を殺人未遂と銃刀法違反の容疑で逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。 捜査関係者によると、逮捕されたのは土屋容疑者のほか、指定暴力団絆会傘下組織の組長や住吉会傘下組織の幹部ら。 5人は共謀して19年1月17日夜、川崎市川崎区大島2丁目の路上で、稲川会傘下組織の50代の男性組長ら3人に向けて拳銃を数発撃ち、40代女性と同会関係者の50代男性に重傷を負わせた疑いがある。 3人は車を降りたところを狙われた。県警は、暴力団組織同士の抗争ではなく、個人的なトラブルから組長が狙われたとみて、周辺の防犯カメラ映像などから捜査していた。実際に銃弾を発射したのは1人とみており、逮捕した5人の役割分担を調べている。 現場はJR南武線小田栄駅の北東約1キロの住宅街。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
在宅勤務の夫が「出てけ」と…DV相談、コロナ禍で倍増
警察が昨年1年間に把握した配偶者などパートナーに対する暴力(DV)の被害が8万2643件(前年比0・5%増)で、17年連続で最多を更新した。 DVに関する相談を受けたり、加害者の更生プログラムを実施したりするNPO法人「女性・人権支援センターステップ」(横浜市)には面談の申し込みが相次ぐ。理事長の栗原加代美さんは「コロナ禍の外出自粛で夫婦が接する時間が長くなり、暴力や暴言の頻度が高くなっている」と指摘する。 30代女性のケースでは、アパ… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「女性いじったら…」蔑視、俺にも せやろがいおじさん
お笑い芸人・せやろがいおじさん 沖縄の青い海をバックに、赤Tシャツ・赤いふんどし姿で時事問題を叫ぶ動画で知られるお笑い芸人、せやろがいおじさん(33)。最近では、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相の女性蔑視発言など、様々なジェンダー問題についても発信しています。ただ、自身がジェンダーに関心を持ったのは、過去の自分の動画をめぐる「炎上事件」がきっかけだったそうです。 「誤解を与え、すみません」 謝罪したらさらに炎上 3年前、かつて自分が投稿した動画が、「ミソジニー(女性嫌悪)だ」と指摘を受けました。「せやろがいおじさん」として活動を始めて、少しずつ注目してもらえた時期です。特に批判されたのが、写真を加工して自分を良く見せようとしている女性を揶揄(やゆ)する動画でした。 だけど、まさにその時、僕もよく政治家がするような典型的なダメ謝罪をしてしまって。「僕は女性をさげすむ気持ちなんてありませんでした。しかし、誤解を与え、不快な思いをさせてしまったなら、すみません」みたいな。自らの差別意識を認めず、「誤解」として受け手の責任にさせていたんです。で、さらに炎上した。「謝罪風開き直り、かつ弁明だ」「自分の問題点について、あなたは何もわかっていない」などと批判を受けました。そう言われて「自分の問題点ってなんやねん。批判してくる人たちは、どこが問題だと思ってんの」と、疑問と興味が混ざったような気持ちになりました。 そこで、批判された動画について改めて考えました。 すると、写真を加工して自分を良く見せようとする人は、女性だけではなく、男性にもいる。じゃあ、なんで俺は女性に限定していっただろう。あ、自分の中に「女性をいじったら面白い」という感覚があるぞ。これは、女性を蔑視していると言われても仕方がないじゃないか――。そう気づきました。 こういう体験を話しているうちに、だんだんと女性からお話を聞く機会が増えていって、雪だるま式に僕の中でジェンダーへの関心が大きくなっていきました。 「男性には自分に見えていない特権と加害性がある」 振り返ってみると、お笑い界ってめちゃくちゃ男社会で、女性芸人はまだまだ少ないです。だから、男性が多い空間に慣れ切っていました。だけど、逆にせやろがいおじさんとして、女性が多いイベントにゲストとして呼ばれるようになって、これまでとは違う、少数の立場の緊張感というのを感じました。そのときに、「事務所にいた女性芸人は、ずっとこんな気持ちだったのかな」って思うようになりました。 ほかにも、性暴力被害の当事者団体の方に話を伺う中で、性被害に関することは顕著にそういう面があると思うようになりました。当然、男性の性被害もありますが、数としては男性から女性が圧倒的に多い。例えば、女性は電車に乗った時も「痴漢に遭わへんかな」と思ったり、道を歩くときもすれ違った男性を「怖いな」と思ったりすると聞きました。だけど、僕も含め、多くの男性はそんなことを感じずに生きていける。それも一つの特権だったと気づきました。 「男性の特権って、魚にとっての水みたいなもんだ」と誰かが言っていました。魚はずっと水につかって生きているから、水があることにいちいち気づかない。それと同じように、男性はずっと生まれた時からいろんな特権があることが当たり前になっているから、そのことに無自覚な人は多いと思います。僕もそうでした。だけど、いまの社会で、男性には自分たちに見えていない特権と加害性があるということを自覚していくことが、とても大事だと思います。 ただ、いまの日本のジェンダー問題への取り組みって、ハリボテみたいですよね。社会の中で、女性がどう抑圧されているのか、構造的な理解が進まないまま、どう振る舞うのが正しいのかだけが広まっている。だから、森さんも、結局最後まで自分の発言の問題を理解しないままだったのでしょう。問題を理解しようとして、そこに目を向けてみれば、きっと自分の問題点がおのずと見えてきたはずなのに、「世間がうるさいからとりつくろう」という方が優先されている気がしました。 ジェンダーギャップなくすことは男の生きやすさにも 同じことは、以前自民党が議員… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
DV被害、昨年8万2643件 17年連続で最多更新
警察が昨年1年間に把握した配偶者などパートナーに対する暴力(DV)の被害は8万2643件(前年比0・5%増)で、17年連続で最多を更新した。警察庁が4日発表した。 増加の背景について、同庁はDVへの社会的関心の高まりを受けた積極的な相談・通報とみている。月別に前年と比べたところ、コロナ禍との関係は明らかではないが、家庭内の暴力が潜在化している恐れがあるとして、担当者は「DVの端緒を把握できるように努める」としている。 DV被害者の76・4%は女性。男性の被害も増加傾向で、5年間で2倍近くの1万9478件に上った。年代別では30代が最多で27%を占め、20代23・4%、40代22・9%と続いた。 DV防止法の保護命令違反として摘発したのは76件(前年比5件増)。刑法などで摘発したのは8702件(同388件減)にのぼり、容疑別では暴行(5183件)と傷害(2626件)で約9割を占めた。殺人未遂が110件あり、福岡県で80代の男が70代の妻に暴行を加えて死なせた傷害致死が1件あった。 一方、ストーカー被害の相談は昨年2万189件(前年比723件減)で、8年連続で2万件を超えた。被害者は女性が9割近くを占め、加害者との関係では交際相手・元交際相手や配偶者・元配偶者が約半数だった。 ストーカー規制法違反での摘発は985件で過去最多。刑法などでの摘発は1518件あり、容疑別では住居侵入、脅迫、暴行が多かった。 そのうち、宇都宮市でストーカー行為を受けていると警察に相談していた女性が男に刺される殺人が1件あった。警察が加害者につきまといなどを禁止する命令は過去最多の1543件に上った。(田内康介) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ランサムウェア被害、昨年23件 警察庁「手口巧妙に」
パソコンやサーバーのデータを暗号化するランサムウェア(身代金ウイルス)によるサイバー攻撃に関し、警察への被害相談が昨年4~12月に23件あったことがわかった。警察庁が4日発表した。 ランサムウェアに感染すると、データが暗号化され、復元するための対価を要求してくるのが一般的だった。最近はさらに、対価を支払わなければ盗んだデータを公開すると脅す「二重恐喝」のケースが目立つ。犯行のツールやノウハウが闇サイト上で商品として販売されるなど手口の拡散もみられるという。 被害が目立ってきたため、警察庁は相談件数を初めて集計した。昨年はゲーム大手カプコンが犯罪グループから二重恐喝を受けた事件が表面化。この事件を含め、警視庁や愛知、大阪、福岡など10都府県警に23件の相談があった。このうち二重恐喝の相談は7月以降に9件あったという。 情報セキュリティー大手のトレンドマイクロによると、昨年1年間に国内の法人から、ランサムウェア感染の報告が93件あった。警察への相談よりも多くの法人が攻撃を受けている実態がうかがえる。 一方、コロナ禍に乗じたサイバー犯罪と疑われる事案が昨年1年間で887件確認された。マスクのネット販売を装って代金を詐取したり、「お客様宛ての個人給付金を預かり中。口座に送金する」など不審なメールが届いたりするなどの事案があったという。 また、警察庁がネット上の不審なアクセスを検知・分析するために設置しているセンサーで昨年、平均6506件(1日あたり)のアクセスを確認した。前年の約1・5倍にあたり、大半はサイバー攻撃か攻撃の準備行為とみられる。発信元はロシア、オランダ、米国、中国が多かった。 インターネットバンキングの不正送金も1734件(被害額約11億円)発生していることなどから、警察庁は「サイバー攻撃やサイバー犯罪の手口は巧妙化しており、極めて深刻な情勢」としている。(田内康介) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル