「コロナ禍、日本社会の理不尽を問う」 こう銘打って訴訟費用の支援を呼びかけたクラウドファンディング(CF)に、3200人から計2300万円が集まった。CFを主催したのは、東京都を提訴した飲食チェーン「グローバルダイニング」の弁護団で、都の時短命令は違憲、違法だと主張する。弁護団によると、国内で実施された裁判支援のためのCFでは、最高額の寄付だという。 同社の代理人で弁護団長の倉持麟太郎弁護士(38)は、新型コロナウイルスの感染拡大で相次いだ「自粛」「要請」の背景にある日本の「あいまいさ」についても、訴訟を通じて問いたいと語る。その意図を聞いた。 くらもち・りんたろう 1983年、東京生まれ。慶大法学部卒、中央大法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会)。日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。専門分野はベンチャー支援や働き方など。 ――なぜグローバルダイニングの弁護を引き受けたのですか。 コロナ禍に入り、科学的な議論が行われないまま政策が決まっていくことに違和感を持っていました。提訴は3月22日にしましたが、実はグローバルダイニングの長谷川耕造社長と初めて会ったのは、その10日ほど前でした。 仲介者を通じて長谷川社長に会い、ともに闘いたいということと、訴訟費用はCFを通じて集めることを提案しました。 社長は当初、提訴に消極的でした。提訴を決めたのは、緊急事態宣言下の時短要請に応じていない飲食店に、東京都が営業時間の短縮命令を出した3月18日。訴状は、そこから4日間で書き上げました。 ――長谷川社長の意識が変わったのはなぜですか。 提訴を決めるまで、社長には… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:3154文字/全文:3757文字 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
3億円所得隠し指摘され…笠松競馬、騎手らに税の研修会
2021年5月21日 11時10分 笠松競馬(笠松町)を運営する県地方競馬組合は20日、厩務(きゅうむ)員会館(岐南町)で騎手や調教師、厩務員ら約110人に税の研修会を開いた。不正馬券購入をめぐる一連の不祥事の再発防止策で、騎手らが国税局に総額3億円超の所得隠しを指摘されたことを受け、適正な申告を呼びかけた。 岐阜南税務署員が、不祥事の調査報告書でも指摘された、昨年の税務調査で馬券購入の利益を申告しない事案を説明。中央競馬での騎乗の謝礼を申告しない例もあったという。SNSの情報もチェックしており、税務調査の判断材料にしていると説明。経費の計上などの確認を呼びかけた。 調教師の後藤正義さん(41)は「税金を払うという当たり前のことができていなかった。馬券の不正購入は『まさか』という気持ち。絶対にないようにしたい」。騎手の大原浩司さん(41)は「普段から疑われないような行動をしたい」と話した。 笠松競馬は所得隠しの報道を受け、レースの開催を中止。不正馬券購入などで職員を含む騎手ら51人を処分。うち4人を競馬界から追放した。競馬の開催について、古田肇知事は18日、記者会見で「国の指定手続きが順調に進めば6月に再開の準備に入り、7月の再開を目指したい」と話した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Lions’ Zach Neal holds off Hawks
Zach Neal delivered a vintage performance, allowing one run over six innings to pitch the Seibu Lions to a 7-2 victory over the Fukuoka SoftBank Hawks on Thursday. Neal (1-1) who went 12-1 in his 2019 Japan debut season but 6-8 a year ago, allowed a walk and six hits […]
「気候非常事態宣言」相次ぐ 自治体や企業など90近く
地球温暖化に対する危機感を共有しようと、自治体などが「気候危機」や「気候非常事態」を宣言する例が相次いでいる。世界では1900以上の宣言があり、国内でも昨年11月の衆参両院を始め、90近い自治体や地方議会、団体などが宣言した。今後は宣言にとどまらず、具体的な行動にどうつなげていくかが課題だ。 「危機を認識して直ちに立ち上がるということが、世界の潮流になっている」 昨年11月、自治体や企業、大学、団体などの関係者約190人が発起人となり、「気候非常事態宣言ネットワーク(CEN)」の設立総会が開かれた。発起人委員長の山本良一・東京大名誉教授は「人類はコロナ危機以上に深刻な気候危機に直面している」として具体的な行動を呼びかけた。 国内の自治体で初めて気候非常事態宣言をしたのは、2019年9月の長崎県壱岐市だ。人口約2万6千人の離島で、温暖化が原因とみられる深刻な影響を感じている。この4年で「50年に1度」の集中豪雨に3度見舞われ、主な産業である漁業は海水温の上昇などで漁獲量が10年で半減したという。 島の北側にある勝本町漁協の大久保照享組合長は「海水温が上がってスルメイカの産卵がなくなり、海藻が減って魚も来なくなった。過去の自然のサイクルとは明らかに違う」と危機感を募らせる。 宣言は「50年までに市内で使うエネルギーを地元の再生可能エネルギーに完全に移す」とうたう。実現に向けて再エネ導入率を現在の約12%から30年度までに24%に引き上げる目標を掲げる。再エネと水素蓄電などの実証を進めており、経済性や安全性を確かめる。周辺海域での洋上風力発電による電気を島の外に送る構想もある。 ただ、再エネ100%を実現するには、再エネによる収益を地元に還元するような、エネルギーの地産地消を進める国の制度が必要だ。 都道府県では、長野県が19年12月に最初に宣言した。県内は2カ月前の台風19号で千曲川が氾濫(はんらん)するなど、人や住宅に大きな被害を受けた。宣言には温室効果ガスの「50年実質排出ゼロ」や「自立分散型エネルギーによる災害に強い地域づくり」が盛り込まれた。 長野県は現在、実行計画にあたるゼロカーボン戦略を策定中だ。案には「50年実質ゼロ」に向けた30年目標として、10年比で48%削減、再エネ生産量を2倍、エネルギー消費を4割減、すべての新築をゼロエネルギー建築にするなど意欲的な項目が並ぶ。 CENのまとめによると、これまでに国内の自治体と地方議会で気候危機の宣言をしたのは、北海道、岩手県、東京都、神奈川県、沖縄県、大阪市など約70以上。千葉商科大学や聖心女子大学などの大学、日本建築学会、鎌倉市医師会、生活クラブ生協連合会なども宣言している。 国が30年度に46%(13年度比)、50年度の「実質ゼロ」といった新たな削減目標を掲げたことで、最近になって急ピッチで増えている。 神奈川県藤沢市は今年2月に気候非常事態を宣言した。国の動きに加え、市民が表明を求める陳情を出し、市議会が昨年12月に趣旨了承した。 藤沢市は50年実質ゼロに向けて、短期の30年度や中期の40年度の目標を設けたうえで、達成に向けた具体的な方法を21年度にまとめ、22年度から30年度までの環境基本計画などに盛り込んでいくという。 東大名誉教授の山本さんは「社会の大転換には、気候非常事態宣言というウェーク・アップ・コール(目覚まし)が必要だ。地方自治体の場合、政治的意思を明確にして実行計画を立てることで、温暖化対策の実効性が高まる」と話している。 ◆ 「Covering Climate Now」は2019年4月に始まった、気候変動の報道強化の国際キャンペーンです。地球温暖化の危機に直面した今こそ、メディアも変わらなければという問題意識から、米ネイション誌とコロンビア・ジャーナリズム・レビュー誌が立ち上げました。朝日新聞社もその趣旨に賛同し、参加しています。(川田俊男、編集委員・石井徹) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「食べられないケーキ」誇りに 元パティシエと味覚障害
「食べられないなら意味がない」「人生の無駄」 そんな言葉を何度か浴びせられたことがある。 本物のスイーツと見分けがつかないほど精巧な粘土作品を手がけるLiccaさん。 「アリア 食べられない洋菓子店」という屋号で活動している。 ケーキにクレープ、ビスケット、オランジェットから大学芋まで。 形状だけでなく、色や質感まで再現された作品は、高い評価を得ている。 それもそのはず。10年ほど前までパティシエだったのだから。 「大好きなスイーツを通して人の笑顔に携わりたい」 そんな幼いころからのあこがれをかなえて、ケーキ屋で働いていた。 調理学校などには通わず、アルバイトとして働きながら技術を身につけた。 働き始めて3年ほど経ったころ、味覚障害と診断された。 歩み始めたパティシエの道に、突然、行き止まりの標識が現れた。 何を食べてもほとんど味がせず、おいしさを感じられなくなった。 唯一、果物の酸味だけが強く感じられたが、その刺激が不快だった。 このまま治らなかったらどうしよう、とひたすら不安だった。 数カ月かけて徐々に味覚は戻ってきたものの、果物の酸味が苦手になった。 大好きな仕事をやめて 果物をおいしく食べられないのでは、パティシエを続けることはできない。 大好きだった仕事をやめることにした。 そんな時に出会ったのが「スイーツデコ」だった。 粘土でお菓子を作ったり、コーキング用のシリコーンをホイップクリームに見立ててデコレーションしたり。 これなら味なんて関係なく、お菓子を作ることができる。そう思ってすぐに始めた。 使うのは、軽量粘土や樹脂粘土といった自然乾燥タイプのもの。 フリーハンドで成形し、絵の具や模型用塗料で着色する。 粘土によって特徴が異なるため、10種類以上を使い分けたり、ブレンドしたり。 やってみると、パティシエの仕事とまったく違うようで、突き詰めれば同じだと思えた。 素材を研究して組み合わせ、デザインを考えて技術を磨く。 見た人や受け取った人が笑顔になってくれる。そこは変わらないのだから。 制作にかける時間は、小さくて工程の少ないものであれば乾燥期間を含めて7日ほど。 実物大で複雑なものであれば、2カ月以上かかることもある。 本物のスイーツは、おいしく食べることができる期間が決まっている。 対して、自分が作るものは、みずみずしさや色、質感といった「おいしそうな瞬間」を作品に閉じ込めることができる。 そう思えるようになったから、パティシエに戻りたいとは思わなくなった。 耳を傾けなくてよかった 2018年6月から、ネットショップ上での受注生産を始めた。 受け付け開始から間もなく予定数に達して、売り切れることがしばしばの人気店だ。 作り続けるうちに、自分の中で変わってきたことがある。 以前は「自分が作りたいものだけを、作りたいように作る」だった。 最近は、買ってくれる人やフォロワーに飽きずに楽しんでもらえるように、と意識するようになった。 周りの声に耳を傾けていると、「食べられないなら意味がない」といった批判が聞こえることがある。 大人が粘土遊びに時間を割くことに対して「人生の無駄」と言われたこともある。 そんな言葉に耳を傾けなくて、本当によかったと思っている。 10年近く続けてきたことで、粘土細工の魅力や楽しさをたくさんの人に知ってもらうことができたのだから。 どんなにくだらなさそうなことでも、継続して突き詰めれば力になる。 これからも作り続けて、発信し続けて、そのことを体現していきたい。(若松真平) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「気候変動に絶望」 エコ不安症、どうすれば?
心理学の分野で、気候変動に対して苦痛を感じているという認識が高まっている。米イエール大学の調査によると、米国人の40%以上が気候変動に対して「嫌悪感」や「無力感」を感じているという。また、2020年に米国精神医学会が行った世論調査によると、回答者の半数以上が、気候変動が自分の精神状態に及ぼす影響について、「やや不安」または「非常に不安」と答えた。精神疾患の分類や治療に用いられる診断マニュアルには正式に分類されていないが、学術論文やメディアでは、「エコ不安症」と呼ばれている。 地球が溶け、6回目の大量絶滅の危機に直面し、人間が引き起こしたことに不安を覚えるのは当然のことだ。しかし、個人では、生物圏の破壊を止めることができないと感じてしまいがちだ。 気候変動をコントロールできないのであれば、どうやって自分の絶望に立ち向かえばいいのだろうか? 米ワシントン州のセラピスト、レスリー・ダベンポート氏は「エコ不安症は、脅威に対する自然な反応だ。そしてこれは非常に現実的な脅威だ」と言う。しかし、それが原因で衰弱してしまうこともある。どのような場合にエコ不安が不健康になるのか、明確な標準的定義はない。 明確なガイドラインがないため、多くのセラピストが相談者の不安を病的に捉えたり、不健康な反応として扱ったりしている。また、どのように接したらよいかわからないというセラピストもいる。 16年の調査では、5人に1人近くのセラピストが、相談者の反応が不適切だと回答。気候変動に関する相談者の信念が「妄想」や「誇張」であると答える人もいた。ダベンポート氏は、セラピストが相談者の苦悩をそのようなものとして片付けてしまうと、大きなダメージを与えるという。 セラピストが相談者のエコ不安症を否定するのは、必ずしも気候危機への共感や関心がないからではない、と専門家は言う。多くの場合、セラピスト自身が環境破壊に対する自分の感情に対処できず、ましてや相談者の感情にも対処できないために起こる反応だ。 英バースの気候心理セラピスト、ツリー・ストーントン氏は、気候変動に対するセラピスト自身の感情の整理ができていないと、悲しみや不安を抱えた相談者の感情をさらに悪化させてしまう可能性があると言う。 気候変動は、私たちが今生きている現実だ。そして、これらの影響がメンタルヘルスに直接影響を与えているケースもある。研究者たちは、四つのハリケーンを経験した子どもたち1700人以上を追跡調査した。その結果、子どもたちの半数が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を経験し、10%の子どもたちは、症状が慢性化した。 魔法のように明日すべての炭素汚染を止めたとしても、数十年分は温暖化が続くことになる。つまり、精神的な影響は将来的に悪化する可能性がある。社会は、安定しない地球での生活に伴う悲しみや不安にどう対処するかを含め、さまざまな変化に適応していかなければならない。 気候変動による精神的な影響が手に負えなくなったとき、相談者がどのように対処するかは、セラピストによって異なる。マインドフルネスに基づくアプローチは、気候変動の不安や悲しみに伴う激しい感情に対処するのに役立つ。 例えば、ダベンポート氏は、相談者が平和な環境にいる自分を想像する誘導瞑想(めいそう)を行ったり、気候変動について考えているときに自分の体が経験する特定の感覚に耳を傾けさせたりすることがある。 認知行動療法は、不健康な考え方に対処することに焦点を当て、気候変動についての苦しい考えにまひしている相談者を助けることができる。また、気候変動に詳しいセラピストは、エコ不安症や悲しみに伴う無力感に対処する方法として、市民運動や自然の中で過ごすことを勧める。 ◆ ◆ 地球温暖化の危機に直面した今こそ、メディアも変わらなければ――。そんな問題意識から朝日新聞社も参加している気候変動の報道強化の国際キャンペーン「Covering Climate Now」では今年も、4月22日のアースデーを中心に、多数の記事が発表されました。海外の記事の一部を抄訳でご紹介します。(ギズモード「Earther」) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「出勤者7割減」が遠い道庁 現状はまだ約2割減
緊急事態宣言下で新型コロナ対策のため「出勤者数7割削減」が求められるなか、北海道庁での出勤者数減は目標に遠く及ばない状態になっている。 道の20日の発表によると、札幌市の本庁舎での11~14日の出勤者数は、従来より23・9%減った。同期間は札幌市が「まん延防止等重点措置」の対象となり、道は事業者に「出勤者数7割減」を求めた。本庁の職員数は約4800人。 札幌市外を含む全庁職員(約1万2千人)の同期間の出勤者数は17・6%減だった。時差出勤の実施は本庁で職員の35・7%、全庁では25・5%。 道は緊急事態宣言を受け、道内全庁での「7割削減目標」を掲げる。道人事課は「行政機能を維持することを前提に、テレワークを活用してできる限り7割に近づけたい」とし、今後は週1回、前週分の出勤者数の削減状況をウェブサイトで公表する。(中野龍三) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
リコール署名偽造、高須氏秘書も指印 「やらざるを…」
大村秀章・愛知県知事に対するリコール署名の偽造事件で、県警は20日、佐賀市内での署名の書き写し作業を請け負った広告関連会社(名古屋市)を地方自治法違反(署名偽造)容疑で家宅捜索した。県警は、多くのアルバイトが参加した佐賀での不正の経緯解明を急ぎ、計画や準備段階から関与した人物について立件する方針とみられる。 リコール運動団体事務局長の田中孝博容疑者(59)と妻のなおみ容疑者(58)、次男の雅人容疑者(28)、事務局員の渡辺美智代容疑者(54)は19日に同容疑で逮捕され、20日送検された。 署名偽造に関わった男性によると、孝博容疑者は昨年10月上旬、広告関連会社の社長に書き写し作業を依頼し、下請け会社が、人材紹介会社を通じてアルバイトを募集したという。同月20~31日にかけ、1日あたり数十人規模の人が参加して作業が行われたという。 捜査関係者らによると、なおみ容疑者と雅人容疑者は、署名用紙や書き写し元となる名簿を佐賀に届け、作成された署名簿を愛知まで持ち帰るなどし、会計担当の渡辺容疑者は、署名用紙や名簿の調達など準備作業を担ったという。県警は孝博容疑者が主導したとみている。 一方、愛知県内では、押印のない大量の署名簿に指印を押した人がいることが取材で判明している。20日にはリコール運動団体の会長で美容外科「高須クリニック」院長の高須克弥氏も、自らの秘書の女性が指印を押していたと明らかにした。高須氏は取材に「秘書に確認したところ『(孝博容疑者から)みんな協力してくれているので協力してほしいと言われ、やらざるを得なかった。悪いことをしてしまった』と認めた。私は全く知らなかったこと」と説明した。 同法の署名偽造罪の構成要件(罪が成立する条件)に、指印や押印の偽造は含まれない。県警は今回の捜査で、佐賀での不正に当初から関わった人物について立件を視野に入れる。アルバイトをした人たちは、偽造の故意や悪質性の度合いなどから、立件の可否を慎重に検討するとみられる。(村上潤治、山下寛久) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
バイトが書いた署名の行方 示された領収書、残る疑問
「当選おめでとう。でも、絶交します」 4月26日。名古屋市長選で河村たかし氏が4期目の当選を決めて一夜明け、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長は、朝日新聞の取材にこう語った。 100万筆を目標とし、昨年8月に始まった大村秀章・愛知県知事に対するリコール署名。運動団体の会長に高須氏が就き、河村氏は街頭演説で肩を並べた。 拡大する大村秀章・愛知県知事に対するリコール署名活動をすると表明後、高須克弥氏(左)は河村たかし市長(右)を表敬訪問した。中央は表明の記者会見に同席した百田尚樹氏=2020年6月2日午後、名古屋市役所、小林圭撮影 しかし、署名の偽造が明るみに出たころから、誰がリコールを発案したかをめぐり、2人の言い分は食い違うようになっていた。 「これは何べんも言っとりますよ」。河村氏は「絶交宣言」を受け、高須氏の側からリコールの誘いがあったと改めて主張。仲介したのは、運動団体の事務局長となった元県議の田中孝博容疑者(59)=地方自治法違反(署名偽造)容疑で5月19日に逮捕=と言う。 高須氏は、河村氏が「リコールしようと思うが、手伝ってくれるか」と尋ねてきた、としている。「間違いない。信用できない人とは絶交します」と話す。 どちらが発案したのか。真相ははっきりしない。 ◇ 多数のアルバイトを動員した「書き写し」は佐賀県青年会館で行われた。事情を知らないまま、バイトとして加わった40代男性によると、監督にあたった複数の人物は「急いで書いて」と繰り返したという。 拡大するアルバイトが署名を書き写した佐賀県青年会館=2021年2月24日、佐賀市、宮野拓也撮影 事務局長が示した「領収書」 愛知県まで運ばれた署名簿は、どうなったのか。 逮捕前の朝日新聞の取材に… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪市立木川南小学校・久保校長の「提言」全文
大阪市淀川区の市立木川南小学校(児童数140人)の久保敬校長が、市の教育行政への「提言書」を松井一郎市長(57)に実名で送った。全文は以下の通り(原文ママ)。 ◇ 大阪市長 松井一郎 様 大阪市教育行政への提言 豊かな学校文化を取り戻し、学び合う学校にするために 子どもたちが豊かな未来を幸せに生きていくために、公教育はどうあるべきか真剣に考える時が来ている。 学校は、グローバル経済を支える人材という「商品」を作り出す工場と化している。そこでは、子どもたちは、テストの点によって選別される「競争」に晒(さら)される。そして、教職員は、子どもの成長にかかわる教育の本質に根ざした働きができず、喜びのない何のためかわからないような仕事に追われ、疲弊していく。さらには、やりがいや使命感を奪われ、働くことへの意欲さえ失いつつある。 今、価値の転換を図らなければ、教育の世界に未来はないのではないかとの思いが胸をよぎる。持続可能な学校にするために、本当に大切なことだけを行う必要がある。特別な事業は要らない。学校の規模や状況に応じて均等に予算と人を分配すればよい。特別なことをやめれば、評価のための評価や、効果検証のための報告書やアンケートも必要なくなるはずだ。全国学力・学習状況調査も学力経年調査もその結果を分析した膨大な資料も要らない。それぞれの子どもたちが自ら「学び」に向かうためにどのような支援をすればいいかは、毎日、一緒に学習していればわかる話である。 現在の「運営に関する計画」も、学校協議会も手続き的なことに時間と労力がかかるばかりで、学校教育をよりよくしていくために、大きな効果をもたらすものではない。地域や保護者と共に教育を進めていくもっとよりよい形があるはずだ。目標管理シートによる人事評価制度も、教職員のやる気を喚起し、教育を活性化するものとしては機能していない。 また、コロナ禍により前倒しになったGIGAスクール構想に伴う一人一台端末の配備についても、通信環境の整備等十分に練られることないまま場当たり的な計画で進められており、学校現場では今後の進展に危惧していた。3回目の緊急事態宣言発出に伴って、大阪市長が全小中学校でオンライン授業を行うとしたことを発端に、そのお粗末な状況が露呈したわけだが、その結果、学校現場は混乱を極め、何より保護者や児童生徒に大きな負担がかかっている。結局、子どもの安全・安心も学ぶ権利もどちらも保障されない状況をつくり出していることに、胸をかきむしられる思いである。 つまり、本当に子どもの幸せな成長を願って、子どもの人権を尊重し「最善の利益」を考えた社会ではないことが、コロナ禍になってはっきりと可視化されてきたと言えるのではないだろうか。社会の課題のしわ寄せが、どんどん子どもや学校に襲いかかっている。虐待も不登校もいじめも増えるばかりである。10代の自殺も増えており、コロナ禍の現在、中高生の女子の自殺は急増している。これほどまでに、子どもたちを生き辛(づら)くさせているものは、何であるのか。私たち大人は、そのことに真剣に向き合わなければならない。グローバル化により激変する予測困難な社会を生き抜く力をつけなければならないと言うが、そんな社会自体が間違っているのではないのか。過度な競争を強いて、競争に打ち勝った者だけが「がんばった人間」として評価される、そんな理不尽な社会であっていいのか。誰もが幸せに生きる権利を持っており、社会は自由で公正・公平でなければならないはずだ。 「生き抜く」世の中ではなく、「生き合う」世の中でなくてはならない。そうでなければ、このコロナ禍にも、地球温暖化にも対応することができないにちがいない。世界の人々が連帯して、この地球規模の危機を乗り越えるために必要な力は、学力経年調査の平均点を1点あげることとは無関係である。全市共通目標が、いかに虚(むな)しく、わたしたちの教育への情熱を萎(な)えさせるものか、想像していただきたい。 子どもたちと一緒に学んだり、遊んだりする時間を楽しみたい。子どもたちに直接かかわる仕事がしたいのだ。子どもたちに働きかけた結果は、数値による効果検証などではなく、子どもの反応として、直接肌で感じたいのだ。1点・2点を追い求めるのではなく、子どもたちの5年先、10年先を見据えて、今という時間を共に過ごしたいのだ。テストの点数というエビデンスはそれほど正しいものなのか。 あらゆるものを数値化して評価することで、人と人との信頼や信用をズタズタにし、温かなつながりを奪っただけではないのか。 間違いなく、教職員、学校は疲弊しているし、教育の質は低下している。誰もそんなことを望んではいないはずだ。誰もが一生懸命働き、人の役に立って、幸せな人生を送りたいと願っている。その当たり前の願いを育み、自己実現できるよう支援していくのが学校でなければならない。 「競争」ではなく「協働」の社会でなければ、持続可能な社会にはならない。 コロナ禍の今、本当に子どもたちの安心・安全と学びをどのように保障していくかは、難しい問題である。オンライン学習などICT機器を使った学習も教育の手段としては有効なものであるだろう。しかし、それが子どもの「いのち」(人権)に光が当たっていなければ、結局は子どもたちをさらに追い詰め、苦しめることになるのではないだろうか。今回のオンライン授業に関する現場の混乱は、大人の都合による勝手な判断によるものである。 根本的な教育の在り方、いや政治や社会の在り方を見直し、子どもたちの未来に明るい光を見出したいと切に願うものである。これは、子どもの問題ではなく、まさしく大人の問題であり、政治的権力を持つ立場にある人にはその大きな責任が課せられているのではないだろうか。 令和3(2021)年5月17日 大阪市立木川南小学校 校 長 久保 敬 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル