拡大する積み上がった生ビールのたるを見つめる佐々木実社長=2021年5月11日午後、東京都新宿区、加藤諒撮影 新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、酒類を提供する飲食店に休業要請する3度目の「緊急事態宣言」が延長された。飲食店はもちろん、大きな打撃を受けているのが、店に酒類を卸す業務用酒販店だ。「なぜお酒だけがずっと標的にされるのか」。現場からは、悲痛な声が漏れる。(山口啓太) 「3中」「4中」 山積みになったビール樽 「生ビールは鮮度が命ですから。これを売りに出すわけにはいかない」 東京都新宿区にある創業104年の業務用酒販店「佐々木酒店」。社長の佐々木実さん(66)はため息をもらした。コンクリート壁に覆われた倉庫には11日も、山積みになった10リットルの生ビールのたる50本が並んでいた。 「これが『3中』、あれは『4中』。これまでこんなことはなかった」。それぞれのたるの側面に印字された文字を見ながらこう言う。「3中」とは、ビールの製造時期が3月中旬であることを指す。通常なら1~2週間ほど前に製造された販売前のビールが倉庫に並ぶが、4月の緊急事態宣言に伴う「酒類提供の飲食店への休業要請」で出荷するはずのたるが大量に残る異例の状態が続く。業界団体を通じてビールメーカー側と返品について交渉中だという。 コロナ禍前、取引先の飲食店は首都圏を中心に3千強あったが、うち400ほどはすでに店を閉じた。 「もう潮時。長年ありがとう」 この1年で、数十年の付き合いがある60~70代の店主たち20人ほどが菓子折りを持って閉業のあいさつに来た。そのたびに、やりきれない思いになる。 拡大するずらりと並んだ日本酒の在庫を見つめる佐々木実社長=2021年5月11日午後、東京都新宿区、加藤諒撮影 1度目の宣言で影響を受けた昨年4~5月には、売り上げは2019年の同時期の2割にまで減った。夏には一度回復はしたが、2度目の宣言が出た今年1~2月には、また4割に落ち込んだ。 「酒は人の喜怒哀楽そのもの」 社長の思い 「社長、大変なことになって… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ワクチン接種で5人に生理食塩水を誤注射 沖縄県浦添市
福井万穂2021年5月16日 13時27分 沖縄県浦添市は16日、新型コロナウイルスワクチンの集団接種で、ワクチンの原液を希釈するための生理食塩水だけを5人に誤って注射したと発表した。健康被害の恐れはないとしている。 市によると、15日に高齢者212人にワクチンを接種。原液が入った瓶に生理食塩水を加え、注射器に移して接種する手順だったが、誤って使用済みの瓶に生理食塩水を入れて使った可能性があるという。この日の接種後、予定人数分を用意していたワクチン入りの注射器が5本余っていたことから、誤りに気づいたという。 誤接種した5人が特定できないため、この日接種した212人を対象に、抗体検査を行うとしている。現時点で体調不良の連絡はないという。(福井万穂) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日本生まれの子 見知らぬ「祖国」へ送還 入管法とは
「在留資格」のない外国人のことを知っていますか。出入国管理法(入管法)に違反しているため、政府は「不法残留者」などと呼んでいますが、彼らはどういう経緯で日本に来て、なぜとどまっているのでしょうか。いま、国会で審議中の入管法改正案はこうした外国人の状況を大きく変える可能性があります。 出稼ぎの親と隠れて生きる「私、いるよ、日本にいたいよ」 6歳のとき、イランから両親や2人の弟と一緒に日本に来ました。バブル景気が崩壊した1991年のことです。出稼ぎに来たことは、子ども心に分かっていました。父と母は電気製品の部品工場で働いていましたが、観光ビザの滞在期間を超えると、家族は皆、在留資格のない「オーバーステイ(超過滞在)」になりました。 小学校には行けず、家の前の公園で弟たちと目立たないように遊んでいたのですが、そのうち子連れのお母さんたちが、お菓子やヤクルトを分けてくれるようになりました。友だちもでき、ひらがなやカタカナも覚えました。日本語が話せるようになったのは、あの公園のおかげです。 ふつうなら4年生になる年齢で、小学校3年生に入学できたのですが、勉強をがんばろうという思いはとても強かったですね。「オーバーステイで良くないことをしているから、他の部分では日本の人に恥ずかしくないような生活をしないといけない」とずっと思っていました。 在留資格ってなんだろう 「外国人は厳しく取り締まるべきだ」と思っていましたが、日本生まれの小学生が見たこともない「祖国」に送還される姿を目の当たりにし、疑問を持ち始めました――。 そう語るのは、元入管職員で退職後に「未来入管フォーラム」を立ち上げた木下洋一さん。記事後半で入管行政の問題点を聞きました。 中学3年の夏、家族で出頭し… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:3153文字/全文:3745文字 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
長崎平和公園「被爆者の店」の業者撤退、後継者を募集中
米田悠一郎2021年5月16日 10時00分 長崎の被爆者団体の一つ、長崎原爆被災者協議会(被災協)が長崎市の平和祈念像近くで営む土産物店「被爆者の店」が昨年9月から閉鎖されている。新型コロナウイルスの影響で売り上げが減り、運営を委託していた業者が撤退したためだ。店の収入は活動の大きな支えで、被災協は担い手を急募している。 被災協は1956年、被爆者援護の充実と核兵器廃絶を目的に結成され、被爆体験の継承や被爆者への相談を担ってきた。 被爆者の店は翌57年10月、障害を負った被爆者の仕事場として平和公園内に開店。手作りの「マリヤ人形」や原爆関連の書籍などを販売してきた。多い時期は年1億円ほどの売り上げがあったが、建物が一時移転した93年ごろから経営難になり、98年には一時閉鎖した。 その後、運営を土産物販売業者に委託して再開し、ここ数年は外国人観光客らでにぎわっていたが、昨年2月ごろからの新型コロナ感染拡大で客足が大幅に減少。来客が全くない日も続き、収益が見込めないとして委託業者が昨年9月に撤退。その後は閉鎖されたままになっている。 店からもたらされる収入は、被災協の活動資金の半分以上を支えている。閉鎖が長引けば活動の基盤も揺らぎかねない状況だ。田中重光会長(80)は朝日新聞の取材に「本当は被災協で運営したいが、被爆者は高齢化している。被爆体験の継承のためにも、どうにか継ぐ人を見つけたい」と話した。(米田悠一郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ワクチン予約「早い者勝ち」から脱するには
皆さんの身近な困りごとや疑問をSNSで募集中。「#N4U」取材班が深掘りします。 新型コロナウイルスのワクチン接種の予約を求める人々が殺到し、各地で混乱が広がっている。多くの自治体が採用する予約システムが、「早い者勝ち」となっているためだ。市場の制度設計を考える「マーケットデザイン」の第一人者である慶応大経済学部の栗野盛光教授(47)は、需要と供給の観点からシステムの変更を提言する。 ラーメン屋や旅行サイトと同じ ――われ先にと電話やネットによるアクセスが集中したり、役所に人々が殺到したり、混乱が続いています。 ワクチンの供給量や態勢がちょっとしかないのに、圧倒的な需要がある。先着順にすれば、スピード競争が生まれ、アクセスが殺到します。また近年、世界各国の公共サービスで報告があるように悪い代行業者が横行します。今回を教訓に対策が求められるでしょう。 ――ではなぜ多くの自治体は先着順を採用したのでしょうか。 先着順は、わかりやすくてなじみがあるからでしょう。旅行サイトもラーメン屋も、基本は「早い者勝ち」です。先着順のシステムは、私たちの生活の隅々まで入り込んでいる。 ただ、今回のワクチンのように公共性の高いもので、圧倒的に需要が供給を上回る特殊なケースの場合、先着順は弊害の方が大きくなってしまう。ワクチンは無料なので、通常の市場で行われる価格調整で、需要と供給のバランスをとることもできない。 ――政府はこの混乱を予想できなかったのでしょうか。 おそらく予約システムを整備… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:1395文字/全文:2007文字 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちら #ニュース4U 「#N4U」取材班が読者の皆さんから身近な疑問や困りごとを募集し、SNSで情報交換しながら深掘り取材します。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
交差点で乗用車が衝突、子どもを含む2人が死亡 宇都宮
津布楽洋一2021年5月16日 10時04分 16日午前0時半ごろ、宇都宮市上籠谷町の国道408号交差点で、軽乗用車と乗用車が衝突した。軽乗用車に乗っていた5人のうち女性と男の子の2人が搬送先の病院で死亡が確認された。子ども2人を含む3人と乗用車の男性1人も病院に運ばれ、治療を受けている。 県警宇都宮東署によると、現場は国道408号と国道121号の信号のある交差点。2台は出合い頭に衝突したらしい。同署が事故原因を調べている。(津布楽洋一) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
沖縄で新たに160人の感染確認 過去2番目の多さ
沖縄県は15日、新たに160人が新型コロナウイルスに感染し、自宅療養中だった那覇市の70代の女性が死亡したと発表した。県内の感染確認は延べ1万3788人、新型コロナに関連する死者は141人となった。 160人の新規感染は、4月17日に次いで過去2番目に多い。療養者数は1447人で、過去最多だった前日の数を上回った。また、自宅療養中に亡くなった事例は県内初という。 在沖米軍からは、4人の新規感染があったと県に報告があった。県のまとめでは、在沖米軍関連の感染者は1338人となった。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
普段は「生き餌」のイサザアミ、水族館展示の主役に起用
【動画】名古屋港水族館で生き餌を主役にした季節展が開催されている=皆木香渚子撮影、名古屋港水族館提供 名古屋港水族館(名古屋市港区)が、名古屋港に生息する生き物を集めた季節展「飼育員が見つけたガーデンふ頭船だまりの生き物」を開催している。この春、同館に近い名古屋港でなぜか大発生した「生き餌」が主役の展示になっている。 3月末、ガーデン埠頭(ふとう)の生き物の調査をしていた同館の中嶋清徳さん(54)は、船だまりが黄色く染まっていることに気付いた。その正体は小型甲殻類のイサザアミの群れだった。「岸壁のすぐ足元で2メートル四方ほどの大群が3、4カ所見られた」。28年間、ガーデン埠頭(ふとう)での水中生物の採取・確認調査に携わってきた中嶋さんにとっても、こんな岸壁近くで大発生を見るのは初めてだった。「目撃できて幸せ」と話す。 イサザアミは体長1~1・5センチで、その姿はエビに似ている。自然界では魚類や大型甲殻類の他、クジラが捕食する餌として海の生態系を支えている。温帯から亜寒帯の内湾や河口に広く分布する。名古屋港の船だまりで採取できることはまれで、今回の大発生の原因も不明という。 群れを見つけた中嶋さんは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「政権に批判的」だと後援不可 前川喜平氏と表現の自由
元文部科学事務次官の前川喜平さんが2019年3月、栃木県大田原市で講演した。「これからの日本、これからの教育」と題し、演壇に立った。 主催の実行委員会は周辺の自治体や教育委員会に名義後援を申請した。だが、すべて不承認となった。「(他の講演会で)現政権に批判的な発言が見受けられた」(大田原市や那須塩原市)、「政治的な発言をされると後援できない」(那須町)などが理由だった。 前川さんは17年、国家戦略特区を使った獣医学部新設問題で「告発」した。「加計学園が官邸の意向で優遇されたことをうかがわせる文科省の文書が存在した」と認めた。「行政がゆがめられた」と政権批判を繰り返した。 拡大する前川喜平さん=2021年4月21日午後3時4分、東京都目黒区 実行委員長の田代真人さんは「時の人だった前川さんの話を聴きたいと、2年前から計画した」。今も後援申請が不承認だったことを疑問に思っている。 「広く参加を呼びかけ議論しようと後援申請した。何事も賛否両論があるのは当然。一方の意見だけしか採用しないんだったら民主的な議論は成り立たない」 前川さんも「政権を応援する人なら後援したのでしょうか」。 そして、名古屋市での国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」への補助金交付問題や、発足直後の菅政権が日本学術会議会員6人の任命を拒否した問題との共通点を挙げ、前川さんは「表現の自由」が侵されたと指摘する。 「権力側が公平・中立性を持ち出すのは、批判を封じ込めたいから。そもそも政治権力に迎合するような表現・言論は制限する必要がありません。権力への批判が認められてこそ、表現や言論の自由があると言えるのですよ」 拡大する2年前のチラシを手に前川喜平さんの講演会を振り返る実行委員長の田代真人さん=2021年4月2日午前11時38分、栃木県那須町 大田原市での開催前後、広島県や山口県などで催された前川さんの講演会でも、地元教委が政治的中立性を理由に後援申請を断っている。前川さんは「政権に逆らっちゃいけないという雰囲気や萎縮効果が日本中に蔓延(まんえん)している」。 「名義後援」の制度自体に問題があり、廃止した方がいいとの意見もある。白鷗大学の清水潤・准教授(憲法)は指摘する。 「特定の表現や集会について、公権力が後援するか、しないかによって是非の判断を示すことは、思想と表現の自由を脅かす。後援制度を維持するのであれば、あらゆる申請に対して、形式的に名義後援をするのが望ましいが、その場合には差別や偏見を含む表現への後援も拒否してはならないことになる」 18年4月、北九州市であった前川さんの講演会。司会をした市議が嫌がらせを受け、脅迫状が送りつけられた。大田原市の会場周辺にも右翼を称する団体が集まり、拡声機で大声を発した。講演会の約1週間前には、田代さんの自宅に匿名男性から電話が入り、「日本から出て行け」と怒鳴りつけられた。 前川さんは思う。 「異論排除の動きが草の根に浸透している。萎縮する人がたくさん出てくると本当に危ない」 ◇ 《憲法21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。》 憲法は社会や暮らしに生かされているでしょうか。改憲より先に「壊憲」が進んでいないでしょうか。身近な現場で考えました。記事の後半では、菅義偉首相の政策理念「自助・共助・公助」を取り上げた大学の講義などを通じ、憲法を考えます。 「自助・共助」強いる国 憲法と国家は誰のために 茨城大人文社会科学部(水戸… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
今年の梅雨入り、いつ?判断が「難しい」 そのわけは…
今年は異例の早さで梅雨入りが進む。気象庁は15日、九州北部と四国、中国が梅雨入りしたとみられると発表。統計を取り始めた1951年以降、四国は最も早く、九州北部と中国は2番目に早いという。ただ、今年はその判断が「難しい」(気象庁の担当者)のだという。なぜか。 各地方で梅雨入りの平年日に近くなると、気象庁は梅雨前線の位置などを見つつ、週間天気予報で曇天が続くかどうかで判断する。 今年は梅雨前線の北上が各地方の平年日よりはるかに早い。さらに5月中旬には週間予報でも曇りや雨のマークが並ぶようになった。梅雨入りと判断する材料が一見そろっているように見えるという。 でも担当者は、これは梅雨入… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル