2021年5月3日 21時22分 朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市)で小尻知博記者(当時29)ら記者2人が殺傷された事件から3日で34年になった。支局には市民らが訪れ、入り口の祭壇に設けられた小尻記者の遺影に手を合わせた。 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、2年連続で記帳台は設けず、3階の事件資料室の一般開放もとりやめた。事件発生時刻の午後8時15分には朝日新聞の社員たちが黙禱(もくとう)した。 事件は1987年5月3日夜に起きた。支局に目出し帽をかぶった男が侵入して散弾銃を発砲し、小尻記者が死亡。犬飼兵衛記者(故人)が重傷を負った。 支局を訪れた西宮市職員の谷口博章さん(50)=神戸市灘区=は「報道の自由を守ることは市民を守ることにもつながる。資料室などを通し、事件を伝え続けてほしい」。毎年足を運んでいるという会社員の清水一さん(74)=兵庫県三田市=は「当時事件を知ったとき、こんなことがあっていいのかと怒りを覚えた。ここに来ると、自分自身が憲法や言論を守っていかなければいけないという気持ちになる。忘れたらいかん」と話した。 広島県呉市川尻町にある小尻記者の墓では、石井暖子・朝日新聞広島総局長らが手を合わせた。大阪などに緊急事態宣言が出されたため、大阪本社幹部らの墓参は控え、杉林浩典編集局長が寄せたコメントを石井総局長が代読した。 「自分とは異なる考えを暴力で封じ込める動きは、34年たった現在も世界からなくなっていない。多様な考えを尊重し、自由に語り合える社会を守り、その実現に尽くすことは報道機関の責務だ」と誓った。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日本人に教わった野球 スリランカでのアジア大会夢見て
かつて日本人から野球を教わったスリランカ人が、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会で野球・ソフトボール競技の運営を支えている。コロナ禍で五輪開催に不安はあるが、「人を、国を、成長させてくれる野球の素晴らしさを世界に発信したい」との思いを込め、準備を続ける。 拡大するスジーワ・ウィジャヤナーヤカさん=本人提供 スジーワ・ウィジャヤナーヤカさん(37)=千葉県市川市=は高校生の時、物珍しさから母国で野球を始め、日本人の青年海外協力隊から教わった。審判や観客へのあいさつ。グラウンド整備やゴミ拾い。チームのために自分を犠牲にするバント。「相手を思いやる精神に感銘を受け、とりこになった」 2004年からは協力隊員の後田(うしろだ)剛史郎さん(42)=宮崎市、現宮崎大学職員=と一緒にスリランカ国内を回って学生に野球を広めた。06年には日本の大学に留学し、野球部に入部。卒業後は日本でホテルに就職し、働きながらアマチュア審判としてグラウンドに立った。15年春には春の選抜高校野球で塁審を務めた。 一方、母国では09年まで民… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
残さなければならない思い 山寺の石碑に刻んだ憲法9条
長野県北部、中野市の山寺の境内に憲法9条の条文を刻んだ石碑がある。20年ほど前に建てられた。寺がたどった歴史が、住職だった男性を動かした。 標高1351メートルの高社山(こうしゃさん)のふもとにある谷厳寺(こくごんじ)。境内にある駐車場の隅に高さ約2メートル、幅約90センチの御影石が立ち、「戦争の放棄」という言葉と共に憲法9条の全文、平和を象徴するハトの絵が刻まれている。建てたのは前住職の萩原宣章(のぶあき)さん(77)だ。 戦時中の1944年6月、政府は学童疎開を進め、少なくとも全国13都市の児童40万人が学校単位で疎開。長野県には温泉地などを中心に3万人近い子どもがやってきたとされる。 谷厳寺にも東京都足立区の国民学校から女児約40人が来た。萩原さんが祖父から聞いた話によると、女児らは地元の学校に通いながら、勤労奉仕で家畜のえさになる草集めなどをした。鐘や火鉢、米を供出した寺で子どもたちが口に出来たのは芋。夕方になると、山門の石段に座って親元の東京の方角をじっと眺めていたという。 女児らが東京に戻ったのは終戦直後。それから約50年後、中野市で疎開体験者を招いた催しがあった際、谷厳寺を当時の女児ら10人ほどが訪れた。寝泊まりに使っていた衆寮などを見て回った。境内で風呂釜に入ったことを思い出し、「今じゃ考えられないよ」と話す人もいた。 外で裸になる恥ずかしさも、親に会えないさみしさも、空腹によるひもじさも、子どもが口にできない時代があったのだ――。萩原さんは思った。 97年、「疎開児童の碑」を本堂の横に建てた。「子どもが本音をかくして生きる時代を二度とつくらないため(中略)疎開者名を深く刻み、永劫の平和を希求し、ここに絆の碑を建立する」と刻んだ。彼女らが故郷を眺めた山門や芋の絵とともに。裏には確認がとれた29人の名前を入れた。 女性たちとはしばらく交流が… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:438文字/全文:1236文字 【5/11まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福岡県、時短要請を全県に拡大決定 6日から19日まで
山田佳奈2021年5月3日 18時53分 福岡県は3日、新型コロナウイルス対策本部会議を開き、飲食店などへの午後9時までの営業時間短縮要請を県内全域に広げることを決めた。福岡、久留米両市に出している時短要請は1時間繰り上げる。期間は6日から19日まで。新型コロナの感染拡大が続く中、国に適用を要請した「まん延防止等重点措置」に先んじて対策をさらに強める。 新たな時短要請は、福岡、久留米両市の飲食店などには午後9時までの営業を午後8時までに繰り上げ、酒類の注文も午後7時までとする。その他の市町村には営業を午後9時まで、酒類の注文を午後8時までとするよう求める。期間は、重点措置の適用が決まれば、それに合わせて見直す方針。 時短要請に応じた場合の協力金も福岡、久留米両市は売上高に応じて1日あたり3万~10万円に増額する。その他の市町村は、同様に2万5千~7万5千円を支払う。スナックなどでのカラオケの利用の自粛も求める。 映画館や博物館、商業施設(生活必需品を除く)など床面積1千平方メートル以上の大規模施設などには、福岡、久留米両市は午後8時まで、その他の市町村は午後9時までの時短営業を求める。 県は1日、重点措置の適用を国に要請したが、翌2日に過去2番目に多い417人の感染者を確認するなど感染は高止まりしている。服部誠太郎知事は3日の会合後の記者会見で、「(重点措置が)適用されるまでには一定の期間を要すると思われる。県としては、感染状況からまん延防止等重点措置という強い措置が必要だと判断した以上、早期に対策を打ち、感染拡大を食い止める必要があると考え、県独自で同等の措置を先んじて行うことに踏み切った」と話した。(山田佳奈) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
昨年のコミック市場、過去最大に あの作品も追い風
昨年のコミック市場、過去最大規模になったの? Q 昨年、コミックがすごく売れたって? A 出版科学研究所の発表によると、2020年のコミックの推定販売(はんばい)金額は前年より2割以上増えて6126億円。それまでの最高額は1995年の5864億円だったから、25年ぶりの更新(こうしん)で、コミック市場は過去最大規模になった。 特に、電子コミックは前年より3割以上増えて3420億円。減り続けていた紙のコミックの市場も、19年ぶりに増加に転じたんだ。 Q 新型コロナの感染拡大が関係あるの? A 家で過ごす時間が増えて、多くの人がコミックを読むようになった。「巣ごもり需要(じゅよう)」が最大の理由だと考えられている。電子コミックストアは、CMをたくさん流して利用者を増やしたんだ。 Q 昨年は「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」が大ヒットしたね。 A 昨年12月に刊行された最終巻の23巻は、店頭では品切れが相次いだ。紙と電子コミックをあわせたシリーズ累計発行部数は1億5千万部にも達したんだ。 「鬼滅」は、コミック市場全体を盛り上げた。紙のコミック単行本は「鬼滅」を除いても前年を上回ったんだ。「鬼滅」を求める人が書店に足を運んだことも影響したとみられている。 Q 同じ紙でも、コミック誌はどうだったの? A 紙の雑誌の売り上げは… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:236文字/全文:813文字 【5/11まで】デジタルコース(月額3,800円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
北海道「まん延防止」要請へ 知事「最高のカード切る」
新型コロナウイルスの感染が急拡大している北海道の鈴木直道知事と札幌市の秋元克広市長が3日午後に緊急会談し、コロナ対応の特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」を札幌市に適用するよう国に要請することで一致した。5日にも要請する。 会談後に記者団の取材に応じた鈴木知事は、「今切れる最高のカードが『まん延防止等重点措置』だと思っているので、しっかり要請をしていく」と述べた。 一方、「重点措置を要請しても直ちに追加にはならない。適用を待たずに強い措置を講じていかなければならない」とし、札幌市で一段の対策を行う方針も表明。現在市内の飲食店に求めている午後9時までの営業時間短縮要請について、「午後8時まで」と一段の時短を求める。企業には出勤者の7割削減を要請する。これらの要請は準備ができ次第、速やかに実施する。 道内では2日の新規感染者数が過去最多となる326人に達した。特に最大都市・札幌市では変異ウイルスの感染拡大が著しく、同市での2日の新規感染者数は初めて200人を超え、過去最多の246人となった。 札幌市では病床使用率が実質的に9割を超え、医療提供体制が危機的状況となっている。かねて重点措置の適用の必要性に言及していた秋元市長は、3日の会談で鈴木知事に対し、改めて政府への適用要請を求めた。会談後、鈴木知事は報道陣に「感染抑制の力以上に新規感染者の伸びが上回っている。これを下方に転じさせることが重要だ」と述べた。 道と札幌市は感染急増を受け、4月24日から「ゴールデンウィーク特別対策」(5月11日まで)を実施。同市で外出と往来自粛、飲食店の時短、学校の部活原則休止、市内の公的施設の休館などの対応を取っているが、感染拡大に歯止めがかかっていない。 また、北海道内では3日、新型コロナウイルスの感染者が新たに114人確認された。過去最多だった2日の326人を大きく下回った。ただ4月20日以降、2週間にわたって100人を超す高水準が続いている。新たな死者は4人。 最大都市・札幌では88人の感染が確認され、4人が死亡した。前日の過去最多の246人を大きく下回った。 札幌以外の保健所設置市(旭川、函館、小樽)の公表分は旭川市3人、函館市1人、小樽市1人。道庁公表分は21人。 札幌市では2件のクラスター(感染者集団)が発生。コンサルタント会社(名称非公表)で従業員計7人が感染したほか、医療機関で計24人(患者17人、職員7人)が感染した。この医療機関(同)では外来診療と新規の入退院を中止している。(中野龍三) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「井戸に毒」投稿者に2度問うた 虐殺の現場訪ねた記者
目の前の電線が、左右に大きく揺れていた。 2月13日午後11時すぎ、東京都内の住宅街。下水道工事の現場で作業していた男性(34)は休憩中、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震に気付いた。缶コーヒーを片手に、右手のスマホでツイッターを開き、指を滑らせた。 「BLMが井戸に毒を投げ込んでる!!!!!」 システムエンジニアの20代男性は、横浜市の友人宅でゲーム中に揺れを感じた。スマホを見るとこのツイートがあった。黒人差別反対を示すBLM(ブラック・ライブズ・マター)から変え、自分も投稿した。 「バイデンが福島の井戸に毒を投げ込んでるのを友達が見ました!」 最初のツイートから2分後だった。 「井戸に毒」という投稿は、翌日までに少なくとも約3万件になった。 国の中央防災会議によると、1923年の関東大震災では「朝鮮人が井戸に毒を入れた」とのデマが流れた。関東で自警団や軍隊などが暴走し、多くの朝鮮人らが虐殺された。 100年の時を超えて再び氾濫(はんらん)する「井戸に毒」の言葉。投稿者たちに会った。 「パロディーで、何かネタにしてやろう」 東京23区内のファミレスに現れたのは、パーカにジーンズ姿の男性だった。34歳。下水道工事の仕事終わりだという。ウーロン茶を飲みながら話し始めた。 「『井戸に毒』のパロディーで、何かネタにしてやろうと思ったんです」 記者は「BLMが井戸に毒」のツイートを見て、直接メッセージを送り、面会を依頼していた。 男性は、東日本大震災後にも「井戸に毒」というツイートが拡散したことを知っていた。まねをしようと思い立った。 男性は「BLMは反トランプ。トランプ元米大統領支持者はこんなデタラメでも信じるのか、というからかいだった」と言った。 小学4年のときテレビゲームにはまって不登校になった。中学では一度も教室に入らなかった。歴史や戦争など興味がある分野を、ネットや本で調べた。関東大震災と朝鮮人虐殺のことも知ったという。 普段とは桁違いの返信 工事現場の作業で生計を立てる。6畳2間の築38年のマンションで、妻と猫と暮らす。ゲームをしながらツイートする。投稿が100件近くになる日も。何か起きた時は、深く考えずに素早く投稿する。「反応があるとうれしい」と言う。 「井戸に毒」の投稿には普段とは桁違いの50件近い返信があった。差別だと指摘する批判的な内容がほとんどだった。「皮肉を理解できない人が多い」 34歳の男性に続き「バイデンが福島の井戸に毒」と投稿したのは、京都大学出身のシステムエンジニアの20代男性だった。ボタンダウンシャツの男性と、京都市内の喫茶店で会った。 中学生の時にツイッターを始めた。今は自宅でゲームや映画の合間に投稿する。1日で10時間続くこともあった。ツイッターを「体の一部」と言う。 あの投稿をした後、ネット上で知り合った友人たちから責められた。見知らぬ人物から脅迫めいたメッセージも届いた。怖くなり、アカウントに閲覧制限をかけた。 ツイッター社、投稿は「規約違反」 関東大震災後のデマと虐殺を知っていますか。そう問うと、男性は「当時の日本人は愚かだった」と言った。「今この言葉を使うことと、虐殺の歴史は別の話。情報の真偽を判断する責任は受け手にある」 福島県沖地震直後の「井戸に毒」などの投稿約20件を、元都庁職員の女性(46)はツイッター社に通報した。「デマはだめだと主張しなければ、それらにくみしていることになる」 ジャーナリストの津田大介さん(47)も同じ頃、約30件のデマを取り上げてネット上で通報を呼びかけた。「デマや差別は事実上野放しになっている。ネット空間と現実社会が密接している今、放置し続けると現実の犯罪につながる恐れがある」 朝日新聞の分析では、福島県沖地震から4月下旬までの「井戸に毒」を含む投稿は、批判する趣旨でリツイートされたものも含め6万6千件にのぼった。それ以外に投稿後に削除されたものがある。 ツイッター社には差別や憎悪表現を禁ずる規約がある。利用者からの通報を元に違反の有無を判断し、投稿の削除などを求めるという。担当者は「井戸に毒」の投稿は規約に反しているとし、「把握分は何らかの対処をしたが、こうした表現は次から次へと出てくるのが実情だ」と明かした。 「村人が総出で殺してしまった」 大阪府に住む在日コリアン3世、文公輝(ムンゴンフィ)さん(52)はツイートを見て「心臓に突き刺さるような恐ろしさ」を感じたという。 「私たちは常に、社会が混乱すれば殺されるかもしれないという恐怖を抱えている。『井戸に毒』はトラウマだ」 拡大する庭の井戸(後方)からくんだ水を生活に使っている高橋隆亮さん。祖父が結成した自警団は「夜警」に出かける前、この井戸の前で日本刀を研いだという=2021年4月23日、さいたま市見沼区、相場郁朗撮影 さいたま市に住む同じ在日コリアン3世の金村詩恩さん(29)も、地震発生直後に投稿を見た。デマは東日本大震災をはじめ、災害のたびに繰り返される。ショックを受け、ツイッター社に通報した。 ◇ 記者は3月下旬、さいたま市の郊外を訪れた。旧片柳村の染谷地区(現・さいたま市見沼区染谷)。金村さんは、祖母の家がある染谷に地震翌日に来ていた。 「朝鮮人姜大興(カンデフン)墓」 田畑が広がる中に、1人の朝鮮人の墓がある。 墓の近くに井戸はあった。地区では今も井戸水が生活に使われている。口に含むと柔らかい味がした。 拡大する当時の内閣総理大臣、山本権兵衛名の文書。朝鮮人を見かけたら警察や軍隊に報告するように求めた。「不逞鮮人」「鮮人」といった蔑称が使われている=3月25日、さいたま市 近くに住む高橋隆亮(たかすけ)さん(77)に会った。えんじ色の古びた手帳を見せてくれた。 「各人棍棒(こんぼう) 日本刀 槍(やり) 短銃 鳥打銃等ヲ持参シ集マル……」 祖父で、関東大震災当時に染谷区長だった吉三郎さんの字だ。デマが流れ、指示がなくても自警団が武装する様子が記されていた。 旧大宮市史によると、1923年9月4日午前2~3時ごろ、姜大興さんは自警団に日本刀や槍で襲われ、その後死亡した。24歳だったという。 「村人が総出で殺してしまった」。隆亮さんは父の武男さんから事件のことを聞いた。 関東大震災の翌日、埼玉県は「朝鮮人が暴動を起こしている」という趣旨の通知を各役所に出した。「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが流れた。 吉三郎さんは村の若い男性らを集めて自警団を作った。「朝鮮人の襲撃」への備えだった。 拡大する片柳村染谷区長だった高橋吉三郎さんが残した日記。姜大興さんの遺体を見て、「傷 大ナルガ三 四カ所 大小二十何カ所モアリシ」とつづった=3月25日、さいたま市、安井健悟撮影 震災2日後、自警団は初の「夜警」に出た。鉢合わせしたのが姜さんだった。 武男さんは当時、旧制中学の4年生だった。家のサツマイモ畑に逃げ込んだ姜さんが、つるに足を取られて転ぶのを見た。そこに、若者たちは襲いかかった。 吉三郎さんの手帳には、傷は20カ所以上に及んだとあった。 […]
ブリたれカツバーガー、函館でお披露目 ブリ消費拡大へ
北海道の函館など道南で漁獲が増えているブリの活用を進めようと、昨年度から日本財団の支援でキャンペーンをしてきた任意団体「はこだて海の教室実行委員会」が今年度、子どもにも好評だった「たれカツ」に重点を置いて消費拡大運動を続ける。このほど、函館市の函館蔦屋書店でたれカツをパンにはさんだ「函館ブリたれカツバーガー」のお披露目と販売があった。 道の渡島総合振興局によると、渡島地方では10年ほど前から天然ブリの漁獲量が増え始め、2020年にはスルメイカよりも多い1万1128トンの水揚げがあった。19年の北海道での漁獲量は1万808トンで全国4位。漁獲急増の原因は不明だが、地球温暖化などによる海水温の上昇も一因といわれている。 函館の水産業を支えてきたサケやスルメイカの低迷が続く今、好調なブリには期待がかかるが、総務省家計調査(18~20年平均)では、札幌市のブリ消費量は年937グラムで全国平均の1630グラムの57%にとどまる。渡島振興局水産課の石毛友里絵主事は「ブリの消費が伸びないのは、もともと北海道にブリを食べる習慣がなく、調理法が確立していないため。イカやサケに代わる名物にするのは難しいが、函館の水産業、飲食業、食品産業を支える柱の1本に育てていけたら」と話す。 海の教室実行委は昨年度、ブ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福岡県、時短要請を全県に拡大へ 6日から19日まで
山田佳奈2021年5月3日 13時13分 新型コロナウイルスの感染拡大が続く福岡県は、飲食店などへの午後9時までの営業時間の短縮要請を県内全域に広げる方針を決めた。福岡、久留米両市に出ている時短要請は午後8時までに繰り上げる。3日午後の県対策本部会議で決定する。 県はすでに「まん延防止等重点措置」の適用を国に要請しているが、新型コロナの新規感染者が高止まりする中、県独自の対策を強める必要があると判断した。関係者によると、県全域に広げる時短要請の期間は6日から19日まで。今後、重点措置の適用が決まれば、その期間に合わせて見直す。 新たな時短要請は、福岡、久留米両市内の飲食店などには午後9時までの営業を午後8時までに1時間繰り上げ、酒類の注文も午後7時までとする。その他の市町村に対しては営業を午後9時まで、酒類の注文を午後8時までとするよう求める。 時短要請に応じた場合の協力金も、福岡、久留米両市は売上高に応じて1日あたり3万円~10万円に増額する。その他の地域には、1日あたり2万5千円~7万5千円を支払う。スナックなどでのカラオケの利用の自粛も求める見込みだ。 県内では新型コロナの感染拡大が収まらず、4月28日に過去最多の439人の感染者を確認。その後も、3日連続で300人台に上った。国に重点措置の適用を要請した翌日の5月2日も、417人の新規感染者を確認した。こうした状況を踏まえ、国が重点措置の適用を判断する前に県独自の対策を強めることで感染拡大に歯止めをかけたい考えだ。(山田佳奈) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ラムネは地域の宝 4代目に手を挙げ、公務員を辞めた
北村哲朗2021年5月3日 13時46分 【広島】尾道市中心部から渡船で3分。向島にある飲料メーカー「後藤鉱泉所」は観光ガイドブックでもおなじみの店だ。瓶に入った昔ながらのラムネやサイダーを目当てに、しまなみ海道を走るサイクリストらがよく立ち寄る。 創業は1930(昭和5)年。後藤のゴにもかけた⑤がトレードマークの老舗を4月から引き継いだ。 この春まで公務員だった。商売の経験はないが、「だからこそ逆にチャレンジできたのかも」。医療事務の仕事を辞めて向島へ移り住んだ妹の藍さん(42)と店頭に立つ。 19年間勤めた竹原市役所では歴史を生かしたまちづくりなどを担当。地域に愛された店が高齢化や後継者不足で一つまた一つと消えていくのを間近に見てきた。公務員の仕事にやりがいはあったが、もどかしさも感じていた。40歳を過ぎて、個人の力で何かできないかという思いがふくらみ、事業承継のマッチングサイトをのぞいていて行き当たった。3代目の後藤忠昭さん(79)が夫婦で営んできた店を受け継いでくれる人を探しているところだった。 観光客に人気の店でも後継者がいないのか。もったいない。地域の宝を守りたいと手を挙げた。 「昔なつかしい ラムネ あります」――。手書きの看板が目を引く。瓶は繰り返し使うため、お客さんにはその場で飲んでもらう。どれにしようか? 年代物の冷蔵庫からラムネが取り出され、栓が抜かれると、瓶の中でビー玉が音を立てて踊った。目を輝かせるお客さんと会話が弾む。 「四代目」と名刺に刷ったのは伝統の味を守り続けるという覚悟の表れだ。店に立ってまだ1カ月だが、「ラムネやサイダーを売っているだけじゃない。楽しい思い出の場も提供しているんだと気づいた」。店の空気感も守っていくつもりだ。(北村哲朗) ◇ 大崎上島町生まれ。大学卒業後、居酒屋チェーン社員などをへて、25歳で竹原市役所に入庁。19年勤め、この春退職した。後藤鉱泉所(0848・44・1768)の営業は午前8時半~午後5時半。不定休。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル