拡大する2018年9月に完成した全天候型練習場(奥)と復旧した天然芝のピッチ=2020年2月7日午前11時40分、福島県楢葉町、江戸川夏樹撮影 震災前はプロサッカー選手が集い、東京電力福島第一原発の事故後は丸6年にわたり事故収束の拠点となったJヴィレッジ(福島県楢葉町・広野町)。日本女子代表元監督で、副社長の上田栄治さん(67)は2年前に全面再開するまでの歩みを振り返りつつ、サッカーの「聖地」が進む新たな道について語った。 うえだ・えいじ 1953年12月、千葉県館山市生まれ。フジタサッカークラブ(現・湘南ベルマーレ)で現役引退後、マカオ代表や日本女子代表監督(2002~04年)、日本サッカー協会の女子委員長などを歴任。13年7月からJヴィレッジ代表取締役副社長。 ――震災当時、どこで何をしていましたか。 「ロシアのモスクワ空港で飛行機の乗り継ぎを待っている時でした。当時、日本サッカー協会(JFA)の女子委員長を務め、ポルトガルで開かれたなでしこジャパンの国際大会に帯同した後、ロシアでのU19の女子国際大会の視察に向かう途中でした。日本時間の3月12日早朝だったと思いますが、空港のテレビに津波の様子が映し出され、日本で何か大変なことが起きたことだけは分かりました。その後、視察先でチームと合流し、震災が起きたことを知りました」 拡大する取材に応じるJヴィレッジ副社長の上田栄治さん=2021年5月19日午後2時36分、福島県楢葉町山田岡、古庄暢撮影 震災前の福島は「緑豊かな過ごしやすい場所」 ――2013年7月にJヴィレッジの副社長に就任しました。 「福島との関わりを持ったきっかけが、実はJヴィレッジでした。開業した1997年にJFAのユース年代育成の取り組みで訪れたのが最初で、その後も監督の立場で試合や合宿先として利用しました。Jヴィレッジの緑豊かで過ごしやすい環境のイメージこそが、私にとって震災前の『福島県』でした」 「2011年になでしこジャパンがワールドカップ(W杯)で優勝したのも一つのきっかけだと思います。あの当時、日本女子代表の選手たちは『被災地に元気を届けよう』と、劣勢でも決してあきらめない試合をしてくれました。後日、被災地を勇気づけられたと聞き、スポーツの果たす役割の大きさを感じました。私も長い間JFAとサッカーに関わった身として、13年春ごろにJFAからJヴィレッジの副社長の打診を受けた際は、営業再開は非常に困難でも、断る理由はないと考えました」 ――原発事故を受け、Jヴィレッジは営業を休止し、事故収束に向けた作業員の拠点となりました。 「副社長の就任当時は、月に… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
深夜の高速、横切る黒い影 保護した2人「ヒーロー」に
「海が見たい」。5月のある夜、会社員の平間優介さん(23)と大学4年の田代陸人さん(22)は、ワゴン車で神奈川県藤沢市の江の島に向かっていた。自動車専用道路「横浜新道」を走行し、車は保土ケ谷トンネル手前のカーブに差し掛かっていた。 突然、100メートルほど前を走る車が急ハンドルで何かをよけた。 「あぶねっ!」 運転していた平間さんも慌てて減速し、周囲を確認した。「えっ、なんかあんの?」「工事の人かな?」。右車線は工事中。だが、作業服につく反射材など、光るものは見えない。 助手席の田代さんも外を見た。すると、車の前を真っ黒い影が横切った。黒い帽子に黒い服、そして黒い靴――全身黒ずくめの高齢男性だった。 トンネル手前の非常駐車帯に車を止め、平間さんは男性のもとに駆け寄った。 「何をしているんですか? どこに行くんですか?」 「東京に行きたいな。……ここは裁判所かな?」 視線はうつろで会話が全くかみ合わない。田代さんも車を降り110番通報した。男性を保護したものの、トラックがものすごいスピードで深夜の道路を駆け抜けていく。「ここにいたら男性だけでなく自分たちも危ない」 異変に気づいた作業員が声を掛け、工事現場内のスペースに車を誘導してくれた。警察が来るまで、平間さんと作業員が、足元のおぼつかない男性の肩を支え続けた。男性にけがはなかった。 再びドライブに戻り、車中でこんな会話をした。 あのまま放置していたら、あの男性は車と衝突して亡くなり、ひいた方の人生も狂ってしまったかもしれない。帰り道に事故のニュースを聞いたら「あの時助けていればよかった」って、もやもやしていたかもね。俺たち、ちょっとだけ「ヒーロー」っすね――。 県警によると、保護されたのは横浜市保土ケ谷区に住む男性(89)で認知症の症状があったという。警察から連絡を受けた男性の息子夫婦は「本当にありがとうございました」と何度もお礼を言っていたという。 2人には県警から感謝状が贈られた。田代さんは高校時代にも道ばたで座り込む高齢女性を助けたことがあった。「困っている人は放っておけない性格。勝手に体が動いた」。平間さんの父は警察官。「『困っている人がいたら助けなさい』と幼い頃から教わっていた。誰もけがせず助けられ、本当に良かった」と話した。(林知聡) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
河口湖で2羽のひなに釣り針、衰弱か 職員も接近できず
河合博司2021年6月17日 9時54分 山梨県富士河口湖町の河口湖畔で9羽のひなを子育て中のコブハクチョウ。16日、新たに2羽のひなが釣り針をのみ込んでいることがわかった。 船津地区の大池公園で、くちばしにルアーの釣り針が刺さったひなと、首に釣り針が刺さったひなが確認された。観察を続ける近くの志村重夫さん(66)は「2羽は衰弱しているように見える」と話している。 通報を受けた町職員3人がひなの釣り針を外そうと約4時間、捕獲を試みたが、16日は失敗した。たも網で捕まえようとすると、雄親が激しく抵抗して職員の接近を許さなかった。環境課主幹の流石良一さんは「可哀想なのでなんとかひなを保護したい」と話している。 釣り針の被害は、8日にも1羽のひなで確認されていた。その後、口から出ていた釣り糸が見えなくなり、見守る人たちは「のみ込んでしまったのか無事に取れたのか」と心配していた。(河合博司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
高齢者の転倒に理解を、リハビリは継続して 学会が声明
日本老年医学会と全国老人保健施設協会は、介護施設内での転倒に関する声明をまとめた。対策をとって予防しても、一定の確率で高齢者の転倒は発生するとし、生活機能を維持するためのリハビリは継続するよう求める。転倒は加齢に伴う老年症候群の一つだと入所者の家族らに伝え、理解を得ておくのが望ましいとする。 高齢者の転倒リスクは、筋力や視力の低下など身体機能の変化や、滑りやすい床や慣れない施設のトイレといった住環境など様々な要因で高まる。転倒によって命に関わる頭のけがや、歩行困難になる足の骨折にもつながる。 声明によると、国内で介護が必要になる原因の3位は「骨折・転倒」。世界7カ国の65歳以上の施設入所者を対象にした研究を分析すると、100人が入所する施設では40人程度が1年間に約5回転倒し、うち約10人が骨折するなどしている。 声明は、転倒で骨折したり外… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:579文字/全文:958文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
クラスター収束から1年 札幌の介護崩壊の教訓とは
新型コロナウイルスに感染した入所者17人が死亡した札幌市の介護老人保健施設「茨戸(ばらと)アカシアハイツ」のクラスター(感染者集団)の収束から間もなく1年。介護崩壊を経験した現場では、教訓を生かして感染対策を徹底し、収束後に感染者は出ていないという。運営法人で危機管理対策本部副本部長として対応に当たった渡辺一史さん(49)=特別養護老人ホーム「福寿園」施設長=に聞いた。 ――感染拡大時はどんな状況だったでしょうか。 施設全体が汚染エリア(レッドゾーン)になっており、体調不良で出勤できない職員が相次ぎました。同居家族への感染を恐れて、自宅に帰らずに車で寝泊まりする職員もいました。 防護服も不足しました。専門家の助言でウイルスが不活性化する期間を待ち、中4日空けてやむなく使い回しました。指揮命令系統が混乱し、情報が入り乱れていました。 ――どのような支援が入りましたか。 市保健所や国立感染症研究所… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:1990文字/全文:2398文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「女性らしい生理」に違和感 男女共に変わりだした認識
生理は当事者の女性だけの問題ではない。研修に採り入れる企業のように、月経や、それに伴う多くの問題を、性別や価値観を超えて共有し、改善を図ろうとする動きも、さまざまな形で広がっている。 「生理中は、自分のさまざまな価値観を我慢することが『当たり前』になっていた」 サッカーなでしこリーグ1部の現役選手で、同性のパートナーがいる下山田志帆さん(26)。月経中も激しく動くアスリートとしての負担だけでなく、生理用品の色やデザインが「かわいらしさ」ばかり重視していることも受け入れがたかった。月経中の新たな選択肢として注目された吸水ショーツも、デザインは「フェミニン」一択。違和感は募るばかりだった。 「ないなら、自分で作ろう」 吸水ショーツをボクサーパンツ型に、賛同の声続々 2019年秋、同級生と会社… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1269文字/全文:1623文字 Think Gender 男女格差が153カ国中121位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
旭川医大学長補佐への報酬、一部返金の意向 学長が説明
会員記事 本田大次郎、井上潜2021年6月17日 7時15分 国立の旭川医科大学(北海道旭川市)が吉田晃敏学長の特別補佐として契約した男性コンサルタントに対し、契約切れ後も吉田氏の指示で報酬を支払っていたとされる問題で、男性が報酬の一部を返金する意向を示していることがわかった。吉田氏は男性に対して総額400万円分の報酬を立て替え払いし、後に大学が吉田氏に同額を補塡(ほてん)していたこともわかった。 16日の同大の教授会で、吉田氏が一連の事実について明らかにした。 男性は2018年9月から昨年6月まで学長特別補佐としてアドバイザー契約を結び、大学が構想していた「国際医療支援センター」などを担当してきた。月額報酬は約100万円だったとされる。ただ、昨年7月以降は契約が切れた状態だった。 関係者の証言などによると、男性は契約切れ後に体調を崩し、入院するなどした。一方、吉田氏は大学事務局に男性への報酬支払いを指示。事務局は勤務実態がないことを理由に拒否したが、吉田氏の再三の要求を受けて数百万円を支払ったとされる。吉田氏はこれまでの朝日新聞の取材に対し、契約切れは大学側のミスで、補佐の業務は続けていたと説明していた。 16日の教授会で吉田氏は… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:391文字/全文:890文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「心霊スポット」侵入容疑 大学生ら12人書類送検など
古畑航希2021年6月16日 18時57分 立ち入り禁止の場所に侵入したとして、福岡県警は16日、福岡県や佐賀県の男女12人を軽犯罪法違反(立ち入り禁止場所等侵入)の疑いで福岡区検に書類送検するなどし、発表した。インターネット上で「心霊スポット」として紹介されていることを知り、「肝試し」の目的で土地に立ち入ったという。 東署によると、書類送検などされたのは福岡県飯塚市、田川市、佐賀県唐津市などに住む18~21歳の大学生や高校生ら12人。6月5日午前2時50分ごろ、福岡市の男性(57)が管理し、立ち入りを禁じた同市東区の土地に、肝試しをする目的で立ち入った疑いがある。巡回中の署員が近くでとまっている車を見つけ、現場にいた12人に職務質問して発覚した。 管理者側によると、この土地には1990年代から使われていない建物がある。東署によると、以前から「心霊スポット」の廃虚とする情報がSNSやインターネットに出ていたという。近隣住民からの騒音や不審者についての110番通報などが昨年から今年6月6日までに43件あったほか、昨年11月にはぼや騒ぎもあった。管理者は今年6月から「立ち入り禁止」との表示を入り口に掲げていた。(古畑航希) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
千葉・市原ぞうの国で急死の2頭、細菌による腸炎死因か
千葉県市原市の動物園「市原ぞうの国」で、5月中旬に飼育していたアジアゾウ6頭が体調を崩し、うち2頭が死んだことについて、園は16日、2頭の死因は細菌による腸炎の可能性が高いと発表した。同日、園内の2頭のお墓にそれぞれ木が植えられた。 2頭は、いずれもメスの30歳の「プーリー」と35歳の「ミニスター」。他の4頭とともに、5月14日から下痢や食欲低下などの症状があり、プーリーは同16日の未明、ミニスターは午後にそれぞれ死亡した。 死後に解剖、死因を調査 同園では、ミニスターを死後に解剖し、約1カ月間、タイ王国のゾウ専門医療施設や国内外の大学と連携して死因を調べていた。 病理検査をしたところ、なんらかの原因で腸内に元々いる細菌が異常に増えていたことがわかった。この細菌は腸内で毒素を作るといい、腸壁から出血する腸炎を起こしていた可能性が高いという。引き続き、腸炎を起こした原因を調べるという。 体調不良だった4頭のうち… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:296文字/全文:713文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
副署長、部下の手を灰皿代わり 宮崎県警パワハラの疑い
平塚学2021年6月16日 22時17分 九州管区警察局に出向中の宮崎県警の50代男性警視が部下にパワーハラスメントをした疑いを持たれ、県警監察課から事情聴取を受けていることが、県警への取材でわかった。県警は内規に基づく「監督上の措置」の処分とする方針。 県警監察課によると、男性警視は県内の警察署の副署長だった2019年2月~20年3月、職場の飲み会の席で複数の部下に対し、たたいたり、手のひらをたばこの灰皿代わりにさせたりするパワハラ行為をした疑いがあるという。 今年に入り、この男性警視が「パワハラをしている」と告発する匿名の投書が県警に届いて発覚した。県警が男性警視や飲み会の出席者に事情を聴くなどした結果、男性警視は行為を認めたという。部下にけががないことなどから刑事処分はしなかったという。 県警は懲戒処分にあたるかどうかを検討し、公表対象ではない訓戒や注意などの処分とする方針。監察課の野間剛士理事官は「パワハラが起きたことは誠に遺憾。警察庁とも協議した上でしかるべき処分をし、今後も適切に指導をしていきたい」と話した。(平塚学) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル