東京五輪の聖火をギリシャから日本に運んだ特別便は、日本の空路を支えるライバル2社が共同で運航した。その便名には粋な演出があった。 2020年3月20日午前、聖火をのせたボーイング787型機が、強風の中で翼を揺らしながら、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に着陸した。 機体には、大手航空会社のブランドをイメージさせるような、目立った塗装はない。真っ白な機体の側面に大きくあしらわれたのは、金色の大地を駆ける聖火ランナーと炎のモチーフだった。 前方には、普段はライバル関係にある日本航空(JAL)と全日空(ANA)の赤と青のロゴが、五輪のエンブレムを挟んで並んだ。 到着後、ライバル2社の客室乗務員たちが一緒に写った記念写真も公開された。航空ファンたちはSNSに、高揚感を書き込んだ。 「赤と青が並んだ! 仲良く聖火を持ってきて」 「素敵なコラボ」 「感慨」 ギリシャのアテネから宮城へ聖火を運んだこの便は、大会名を冠し「2020便」とされた。空港の電光掲示板の掲示は「GO2020」だった。 この2日前。羽田からアテネ… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:553文字/全文:1022文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
届いた五輪聖火 ブルーインパルス隊長が思い出すあの夜
2020年3月20日、宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地。東京五輪の聖火はこの日、民間の特別輸送機で日本に到着した。強い風が吹く中、自衛隊のブルーインパルス(ブルー)が5色のスモークで五輪のシンボルを描き、出迎えた。特別機とブルー。面識がないはずの2人のパイロットはこの後、「小さな奇跡」に驚くことになる。 このとき、ブルーの飛行を率いたのは当時の隊長、福田哲雄さん(44)だった。飛行から3日後、送信元不明のメールが届いた。 「あの夜の偶然の出会いがただの偶然ではなかったように思えました」 7カ月前の19年8月。福田さんは同僚と2人で北海道千歳市の炉端焼きの店にいた。昼に千歳基地で開かれた航空祭の反省会だった。囲炉裏の一辺に並んで座ってブルーの今後の活動などについて意見交換していると、東北で大きな地震が起きたことを伝えるニュース速報が流れた。すぐに所属先の松島基地に電話して隊員とその家族の無事を確認し、ほっと息をついたときだった。 「宮城からですか」 隣の席にいた中年男性が声を… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:697文字/全文:1147文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
JA職員、生産者の口座から239万円着服 懲戒解雇に
鵜沼照都2021年6月13日 9時39分 JA庄内みどり(山形県酒田市)の酒田みなみ支店営農課の男性職員(24)が、管理する生産者組織の口座から239万円を着服していたことがわかり、同JAが10日に記者会見を開き、9日付で懲戒解雇したと発表した。 発表によると、職員は2020年3月9日~今年5月28日、5組織6口座から架空取引で現金を引き出し、受領書や領収書を偽造していた。今月1日に課長が点検したところ、受領書に組合員の押印がない不備が見つかり、事情を聴いたところ着服を認めた。消費者金融からの165万円の借金返済やパチンコなどに使ったと話したという。本人と家族がすでに全額返済しており、警察への被害届などは出さないという。 JA庄内みどりでは18年にも職員が828万円を着服し、懲戒解雇されている。(鵜沼照都) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大雨浸水、畳は浮き冷蔵庫は…部屋からの脱出阻む恐怖
【動画】浮き上がる畳、倒れる冷蔵庫・・・実験で見えた浸水の恐ろしさ=佐々木英輔撮影 大雨で家の中に水が流れ込むと、何が起こるのか。浸水が始まってからでも、上の階に逃げられるのか。そんな実験に、東京理科大の学生が挑んだ。見えてきた教訓とは。 「部屋」の家具が次々浮上 野田キャンパス(千葉県野田市)の実験棟にあるコンクリート製の水槽。4畳半ほどのスペースにベッドやたんす、机といす、冷蔵庫を並べ、ドアも取りつけて部屋に見立ててある。ドアの外側に水を流すと、内側にじわじわと浸入して畳がぬれだした。 この「部屋」は、2018年の西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の住宅を参考につくってある。過去の水害では、2階に逃げることができずに、1階で亡くなった人も少なくなかった。その教訓を対策に生かそうと、二瓶泰雄教授(河川工学)の研究室が取り組む実験に、記者が立ち会った。 「畳、浮いています」。実験開始から2分あまりで声が上がった。水位はまだ、水をかぶった程度だが、内部にすき間が多い畳は浮きやすいのだという。 水位が上がるにつれ、次々に変化が起きた。「ベッドが浮上」「机、浮上」「引き出し開きました」。学生が声を上げ、時刻とともに記録していく。木製のベッドは、下の畳と一体で持ち上がった。数十センチほどの水位になると、いすや机も浮いてきた。 冷蔵庫は後ろ側に傾き、底のほうから手前にせり出してドアをふさいだ。90センチに達すると、たんすが倒れた。逃げ遅れると家具や浮遊物に囲まれてしまうことがよくわかる。 「浸水すると家具が散乱し、避難に時間がかかる。高齢者ではより大変になる」と二瓶さんは言う。「せめて2階で寝るようにするだけでも、救える命はある」 地震対策で使う突っ張り棒などの転倒防止器具には、浸水による家具の転倒を防ぐ効果も期待できるという。 この日の実験には、もう一つの目的があった。この状況から高齢者が抜け出すのがいかに難しいか。学生10人が、浸水した「部屋」で検証した。 ■高齢者の体を疑似体験… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「相手の同意得られない…」苦悩する妊婦、中絶の実態は
自分が産んだ赤ちゃんを遺棄したとして、名古屋地裁岡崎支部が愛知県西尾市の元看護学生(21)に有罪判決を言い渡した。元看護学生は裁判で、相手男性から中絶の同意書にサインが得られず、手術できなかったと証言した。しかし、今回は中絶に同意が必要だったのか? 背景を探った。 昨年6月2日、市職員が公園の植え込みに置かれていたポリ袋を見つけた。中にはへその緒がついた男児の遺体が入っていた。 4日後、元看護学生が逮捕された。 公園のトイレで男児を出産後、適切な保護をせずに死なせ、遺棄したとして、保護責任者遺棄致死と死体遺棄の罪で起訴され、今年5月に懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡された。 公判での供述などによると、元看護学生は事件当日、通学途中に下腹部からの出血を感じ、公園のトイレに入った。 トイレに入った後の意識があいまいで気づいた時には出産し、男児は死亡していたと証言。登校していないと連絡を受けた母親がトイレにいるのを見つけて病院に連れて行った。 判決「父親の不誠実な対応が発端」 元看護学生は、母親がトイレを離れた隙に、隠していた遺体を植え込みのそばに置いたという。 妊娠が分かってすぐ、男児の父親にあたる小学校の同級生にSNSで連絡。2人で中絶すると決めた。同級生は、医師から求められた中絶の同意書にサインするとも約束した。 しかし、同級生は友人から「(中絶費を)ゆすられているんじゃないか」などと言われ、連絡を絶った。元看護学生は同意書にサインがもらえず、予約した手術を2回キャンセル。別の複数の病院に同意書なしで手術ができないか問い合わせた。 だが、被告人質問で元看護学生は「双方の同意が必要」と言われたと明かし、中絶できる期間を過ぎてしまったという。 判決は「犯行に至る経緯には、被害者(男児)の父親の不十分かつ不誠実な対応が発端にある」と指摘した。(山本知佳) 同意なしの中絶、例外は三つ 母体保護法は中絶できるケースについて、妊娠の継続や分娩(ぶんべん)が身体的、経済的に困難な場合や、強制性交による妊娠などに限っている。 そのうえで、医師が本人と配… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
小中学生の五輪観戦、辞退次々 電車移動と密回避に不安
東京五輪・パラリンピックで子どもたちに割り当てられている「学校連携観戦チケット」をめぐり、さいたま市がすべての辞退を決めるなど、キャンセルする動きが埼玉県内で相次いでいる。新型コロナウイルスの感染への心配を払拭(ふっしょく)できないためだ。 さいたま市は当初、市内の埼玉スタジアムとさいたまスーパーアリーナが会場となる五輪のサッカーとバスケットボールで、中学2、3年生ら向けの約2万1千人分と引率教員約2千人分を希望していた。だが、「不確定なことが多い」(市教育委員会)として、すべてを見合わせる。 越谷市も埼玉スタジアムへのシャトルバスがある北越谷駅周辺の小学校3校と中学1校で306枚のチケットを希望していたが、すべて見送る。市教委の担当課長は「子どもの安全を第一に考えた」と話す。 「観戦チケット」は大会の延期前に各学校からの希望を受け、県内全体で大会組織委員会から五輪8万5500枚、パラリンピック7100枚のチケットが割り当てられた。新型コロナの感染拡大を受け、組織委が県を通じてキャンセルを受け付けることになった。 各校の判断に委ねた川口市によると、市内の36校から辞退の意向があった。割り当てられた8829枚のうちキャンセルは4488枚に。川越市では割り当てられた5558枚のうち改めての希望は約2400枚にとどまった。市内32校のうち8校が希望していた草加市では、754枚の割り当てのうち628枚をキャンセルした。 組織委が会場への移動を「公共交通機関が原則」としていることも、相次ぐ辞退の要因になっている。小学校のある校長は「専用のバス移動なら対策できるが、電車だと『密』を回避しきれない恐れがあり、断念せざるを得ない」と漏らす。(上田雅文、加藤真太郎、岡本進) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ベトナム大手5社の実習生、受け入れ停止へ 失踪多数で
技能実習制度を監督するため国が設けた認可法人・外国人技能実習機構(OTIT)が、ベトナムの大手送り出し機関5社からの実習生の新規受け入れを停止する方針を、ベトナム政府に文書で伝えたことがわかった。5社が日本に送り出した実習生の中から、多数の失踪者が出たことが理由とされている。 朝日新聞が入手した文書によると、OTITは1日付で、技能実習生を所管するベトナムの労働・傷病兵・社会問題省の海外労働管理局(DOLAB)に通知。近くこの方針を公表した後、2カ月後をめどに実行すると説明している。 ベトナムの送り出し機関は政府の認可に基づいて日本に実習生を送り出す人材派遣会社。6月現在で約460社ある。 文書によると、OTITはDOLABから、送り出し機関の派遣者数(2018年)のデータ提供を受けた。日本の受け入れ企業から提出される各実習生の実習計画に記載された送り出し機関の名前と突き合わせて、失踪者が多発している送り出し機関を特定。その上で、18年と19年の合計の失踪者数の割合が平均の約3倍を超えた5社を対象に決めた。 ベトナム人の失踪者、14年の6倍に 17年に施行された技能実習… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:676文字/全文:1174文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
要請ばかりの世相に皮肉 「妖精タクシー」運行中
武田肇2021年6月13日 6時00分 ピンク髪のかつらに仮装用めがね。そんな「きもかわいい」運転手がハンドルを握る「妖精タクシー」が緊急事態宣言下の大阪の街を走っている。コロナ禍で売り上げが減ったタクシー会社「未来都(みらいと)」(大阪府守口市)が6月から話題作りに運行を始めた。 車内に特別な装飾は施しておらず、一見ふつうのタクシー。ただ、乗車すると運転手から同社の宣伝文句をSNSに投稿するように「要請」される。強制でないため従わなくても良いが、応じると「協力品」がもらえる。 でも、なぜ「妖精」なのか。アイデアを出した同社顧問は「ここだけの話、我慢と『要請』ばかりの世相への皮肉を明るく表現してみました」。 584台のタクシーを保有する同社は「夜の街」の人出が激減したことなどから売り上げが3割減。広告を出すのも厳しく、経費をかけずにネットで「バズる」ことをめざした苦肉の策という。 「笑いに寛容な大阪以外でやると、悪ふざけが過ぎると言われるかもしれませんが」(同社顧問) 密を避けるため運行計画は非公表で、緊急事態宣言が解除されれば終了。同社はコロナ禍の前から、運転手が白装束姿のお化けに扮した「霊感タクシー」などユニークなタクシーを走らせ、話題を集めてきた。(武田肇) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
息子の30年、聞きたかった コロナに消えたある母の夢
「お袋、一緒に住もう」。一人息子にそう提案されて、引っ越しの準備を進めていた女性。しかし、その直前、息子は亡くなってしまいます。それでも女性は、息子と探した新居に移り住みました。 突然の申し出 横浜市内の駅近くにある15階建てのマンション。3LDKで、広さは60平方メートル超。巴(ともえ)美紀子さん(71)は昨年5月、長年住んでいた広島から移り住んだ。 巴さんは今年2月、朝日新聞生活面の「ひととき」に手書きの投稿を寄せ、3月2日に「息子が買った新居」というタイトルで掲載されました。記事の最後に再掲しています。 「お袋、一緒に住もう」。都内で一人暮らしをしていた息子の明日香さん(当時48)から、そう提案されたのは、前年の2019年秋のこと。高校入学以来、離ればなれに生活していた明日香さんが、生まれ故郷の横浜で一緒に暮らそうという。突然の申し出に驚いたが、いずれは若い頃に住んだ土地に戻りたいと思っていた。 テレビ番組などを制作する会社で働き、多忙な明日香さんに代わり、新居探しはほとんど美紀子さんが担った。仕事に行きやすいように駅から近い場所。ベランダからは富士山、そして夜にはライトアップされた横浜ベイブリッジが見える。理想的な物件が見つかり、即決した。2人で購入費を出し合い、昨年5月には新生活をスタートさせる段取りだった。 無断欠勤、そして救急隊からの電話 しかし、昨年4月、明日香さんが勤務する会社の上司から美紀子さんに連絡があった。「無断欠勤しているんですけど、心当たりはないですか」。息子の性格上、勝手に休むことはあり得ない。会社の人も同じ思いで、明日香さんが住んでいた家を訪ねた。しんどそうだったが、二言三言やりとりができたという。 翌日、電話をかけてきたのは… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1830文字/全文:2499文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
停電、セコム出動せず稚魚10万匹が全滅 賠償求め提訴
原口晋也2021年6月12日 8時32分 長崎県漁業公社が、警備大手セコム(本社・東京)に対し、災害時の同社警備員の不手際によって養殖の稚魚が死滅したとして、764万円の損害賠償を求める訴えを長崎地裁佐世保支部に起こしたことがわかった。 提訴は5月21日付。訴状によると、2020年9月2日夜、佐世保市の矢岳事業所で台風による停電が起きた。セコムの警備員は自宅にいた所長に電話で「停電で異常警報が出ているのでリセットする」と伝えた。 所長は、警備員が事業所に駆けつけたと思っていたが、実際は出動していなかった。その後の連絡もなかったため、停電も復旧したと誤信した。だが停電は続き、4時間しかもたない非常用電源の燃料も補充できなかった。3日朝に出勤すると、ヒラメなど養殖の稚魚10万5千匹が酸欠で死滅していたという。 公社側は「警備員が現場に駆けつけて停電が続いていることを所長に伝えていれば、所長は非常用電源の燃料補充などの対応ができた」と主張。ヒラメの死滅分の損害を求めている。これに対し、セコムは「係争中なのでコメントは差し控えたい」としている。(原口晋也) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル