戸田和敬、米田優人2021年7月14日 19時36分 広島への原爆投下後、放射性物質を含む「黒い雨」を浴びたとして、住民ら84人が被爆者と認めるよう求めた訴訟の控訴審判決が14日、広島高裁であった。西井和徒裁判長は「黒い雨に遭った人は、被爆者にあたる」として、84人全員への被爆者健康手帳の交付を命じた昨年7月の一審・広島地裁判決を支持。国から手帳の交付事務を任されている広島県と広島市の控訴を棄却した。 広島の黒い雨を巡り、高裁が判断するのは初めて。 黒い雨が降った一部の区域では、特例として被爆者と認める仕組みはあるが、原告らはこの区域から外れていた。広島市などは、区域の6倍の範囲で降ったと推定。この範囲で雨を浴びた人は今も約1万3千人いるとみる。一審判決は、黒い雨に遭い、がんなどの疾病にかかれば被爆者にあたるとしたが、高裁判決では疾病の要件がなく、より幅広く被爆者と認められた。新たな申請者が出ることも予想され、国の援護行政のあり方が問われそうだ。 西井裁判長はまず、被爆者援護法の根底には、国が特殊な戦争被害を救済するという国家補償的配慮があり、幅広く救う趣旨に沿って定められたと確認。原爆の放射能による健康被害を否定できなければ被爆者にあたるとし、放射能の影響を受けた「科学的な合理性」が必要だとする被告側の主張を退けた。 また、たとえ黒い雨を浴びていなくても、空気中の放射性物質を吸ったり、汚染された水や野菜を飲食したりする「内部被曝(ひばく)」によって健康被害を受ける可能性があったと指摘。広島に原爆が投下された後、黒い雨に遭った人は被爆者にあたるとした。 そのうえで、黒い雨が降った範囲について、国の援護対象区域から外れていても、黒い雨が降らなかったとするのは相当ではないとし、実際の降雨地域はより広いと認定。住民らは、証言などをふまえ、雨の降り始めからやむまでの間、いずれかの時点で降雨地域にいたと認められると判断し、県と市が住民らの手帳申請を却下したのは違法だと結論づけた。 国は一審判決後、検討会を設け、援護対象区域の拡大を視野に検証を進めている。厚生労働省は「国側の主張が認められなかったと認識している。今後の対応については関係省庁、広島県及び広島市と協議して対応して参りたい」とした。(戸田和敬、米田優人) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「本来被爆者とすべき」 広島高裁「黒い雨」判決要旨
広島への原爆投下後に降った「黒い雨」で、国が援護対象としていた「大雨地域」以外の人も被爆者と認めた14日の広島高裁の判決要旨は次の通り。 【原告全員を被爆者と認めた一審判決について、国などが「十分な科学的知見に基づいていない」などと主張したことについて】 被爆者を定義する被爆者援護法1条のうち3号の「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」は、言い換えれば、「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができない事情の下に置かれていた者」と解される。 この条文は、旧原爆医療法(1957年制定)から引き継いだものだ。この法律は原爆の被害が他の戦争被害と異なるという人道上の見地から、政治的な観点で制定された法律であり、科学的知見のみによって立つものでなかったことは明らかである。 科学的知見が重要であることを否定するものではないが、被爆者に該当するか否かの判断にあたっては、原爆の放射能により、健康被害が生ずることを否定できるか否かという観点から知見を用いるべきである。 該当すると認められるためには、特定の放射線の曝露(ばくろ)態様の下にあったこと、その態様が原爆の放射能による健康被害が生ずることを否定できないものであったことを立証することで足りる。 【「黒い雨」に遭った者は被爆者に該当するか】 「黒い雨」に放射性降下物が含まれていた可能性があったことから、雨に直接打たれた者は無論のこと、たとえ打たれていなくても、空気中に滞留する放射性微粒子を吸引したり、地上に到達した放射性微粒子が入った水を飲んだり、放射性微粒子が付いた野菜を摂取したりすることで、内部被曝(ひばく)による健康被害を受ける可能性があったこと(ただし、被曝線量を推定することは非常に困難である)が認められる。そうすると、広島の原爆投下後に「黒い雨」に遭った者は、被爆者に該当する。 【「黒い雨」の範囲】 国などは、1時間以上雨が降り続いたとされる「大雨地域」内を援護対象とする特例措置が設けられたことをもって、区域外の者は該当しないことが当然の前提となっていたかのような主張もする。しかし論理的には、本来被爆者健康手帳を交付すべき者であったにもかかわらず、あえて交付せず特例措置とした疑いが強いといわざるをえない。 (大雨が降ったとされる)「宇田雨域」の範囲外であるからといって、「黒い雨」が降らなかったとするのは相当ではない。(宇田雨域より広い範囲に雨が降ったと主張している)「増田雨域」と「大瀧雨域」にも、「黒い雨」が降った蓋然(がいぜん)性があるというべきである。 個別に検討すると、原告はいずれも雨が降る間のいずれかの時点で降雨域にいたと認められるから、「黒い雨」に遭ったといえ、被爆者健康手帳の交付を義務づけるのが相当である。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福井・東尋坊で自殺装い殺人 21歳元少年に懲役19年
鈴木洋和2021年7月14日 20時30分 福井県坂井市の東尋坊で2019年、知人男性を自殺に見せかけて殺したとして、殺人や傷害などの罪に問われた元少年(21)に対する裁判員裁判の判決が14日、大津地裁であった。大西直樹裁判長は「(犯行グループで)主導的な役割を果たした」として、求刑通り懲役19年を言い渡した。 判決によると、元少年は19年10月、ほかの少年ら6人と共謀し、滋賀県内で嶋田友輝さん(当時20)=同県東近江市=を木製バットで殴ったり、地面に横たわらせて車で足をひいたりするなどの暴行を加えた。さらに車のトランクに監禁して東尋坊へ連れて行き、高さ約20メートルの崖から海に飛び降りさせて殺害した。 この事件ではこれまでに、他の少年ら6人に実刑判決が言い渡され、うち5人が確定、1人が控訴している。大西裁判長は、元少年がグループ全体の意思決定をしていたと認定。判決の言い渡し後、「執拗(しつよう)に暴行を繰り返され、どれほど苦しかったか。嶋田さんの絶望感や痛みを想像しましたか。過ちはあまりにも重大かつ深刻で取り返しがつかない」と説諭した。(鈴木洋和) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪開会式「きらびやかなものから変化」コンセプト発表
2021年7月14日 20時31分 東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の中村英正運営統括は14日、東京・国立競技場で23日夜に行われる五輪開会式の演出について「きらびやかなものからコンセプトを愚直に伝えるものに変化した」と述べた。 組織委はこの日、パラリンピックを含む開閉会式4式典共通のコンセプトを「Moving Forward(前を向いて生きる力)」と発表。五輪開会式は「United by Emotion(感動でつなぐ力)」、閉会式は「Worlds we share(多様な世界の共有)」がコンセプトになる。 また、演出を統括するエグゼクティブプロデューサーをリオデジャネイロ五輪閉会式の引き継ぎ式などに関わった日置貴之氏、聖火台制作はデザイナーの佐藤オオキ氏が務めると発表した。 開閉会式の演出を巡っては昨年末、狂言師の野村萬斎さん(現アドバイザー)率いる7人のチームが解散。パラリンピックの担当だったクリエーティブディレクターの佐々木宏氏に権限を一本化していた。しかし佐々木氏は今年3月、出演予定だったタレントの容姿を侮辱するようなメッセージを演出チームのLINEに送った責任をとって辞任した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
速度違反見逃しなどで3警官を懲戒処分 北海道警
2021年7月14日 21時00分 警察官が私用で運転する車の速度超過違反を見逃したとして、北海道警は、方面本部の30代の男性巡査部長を犯人隠避と証拠隠滅の疑いで書類送検し、減給100分の10(6カ月)の懲戒処分にしたと、14日発表した。 監察官室によると、巡査部長は、道内の国道で交通違反の取り締まりをしていた昨年8月30日午後8時20分ごろ、30代の男性巡査部長が速度超過したのを見逃し、同9月3日に速度を記録した文書を破棄した疑いがある。巡査部長は「手続きが面倒だった」と話しているという。道警は見逃された巡査部長も戒告の懲戒処分とした。 また、物損事故を起こして逃げたとして、道警は20代の男性巡査長を道交法違反(事故不申告)の疑いで書類送検し、停職6カ月の懲戒処分とした。事故の約2時間後に呼気検査を受け、摘発の基準値未満の酒気を帯びていたという。15日付で依願退職する。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
コロナ禍での教育行政は 北海道と札幌市の新教育長が語る
会員記事 聞き手・芳垣文子2021年7月14日 21時00分 北海道では6月1日付、札幌市では5月25日付で、それぞれ新しい教育長が就任した。倉本博史・道教育長(60)、檜田英樹・札幌市教育長(59)に、新型コロナウイルスの感染対策が続く中での学校教育のあり方やICT(情報通信技術)教育の進め方、教員のなり手不足への対策などについて聞いた。(聞き手・芳垣文子) 倉本・道教育長 教員なり手不足「危機感」 ――コロナ禍の中、教育行政をどう進めますか。 「学習進度の遅れにつながらないよう、ICT(情報通信技術)による実践事例を道教委で集めて伝えていく取り組みを進めている。子どもの心のケアも欠かせない。子どもの不安や悩み、差別や偏見が生じないように、スクールカウンセラーを緊急派遣するなど、相談しやすい雰囲気づくりに努めている。SOSを早くつかむ体制が大事だ」 ――ICT教育の方針や目標は。 「広大な北海道では、生きていくツールにもなり、積極的に進めていく必要がある。学校や地域間に大きな差が出ないよう、うまく進めるコツやヒント、モデルなどを共有していくことが重要だ。新しい学習指導要領でも、情報活用能力が求められる。推進校を指定して先進事例を広めていきたい。家庭によっては通信環境が十分でない場合もある。機器の貸し出しなどで負担にならないよう、十分配慮しサポートしていく」 ――教員のなり手不足にはどう対応しますか。 「相当危機感を持っている。北海道は広域異動が伴うのも大きな課題だ。地域の小規模校やへき地校、長時間勤務への不安もあると考える。ただ、地域の小規模校では、そこでしか得られない魅力もある。道内の教員養成大学と市町村が連携し、教育実習前などに地域の小規模校で短期間実習を体験する『草の根教育実習』に取り組んでいる。北海道の学校で働く魅力を発信し、道内外からの志願者を増やしたい」 ――教師の働き方改革をどう進めますか。 「教師が学校にいる時間を適切に把握する取り組みも進んでいるが、重要なのは教師個人だけではなく、チームを作って学校全体で仕事の効率化などを工夫することだ。部活指導員の導入や、外部との交渉や調整ではスクールロイヤーなど外部の専門家に相談できる体制の整備も視野に入れている」 ――いじめ問題への取り組み… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:1827文字/全文:2773文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広島の「黒い雨」被爆認定、長崎でも喜びの声
米田悠一郎2021年7月14日 21時23分 広島への原爆投下後、放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた住民らを被爆者と認めた14日の広島高裁判決。 長崎地裁でも、国が定める被爆地域の外にいたために被爆者と認められていない人たちが、被爆者健康手帳の交付などを求めて起こした「被爆体験者訴訟」が続いている。原告団長の岩永千代子さん(85)=長崎市=は14日に長崎市で記者会見し、広島高裁判決について「長い真っ暗なトンネルから光が見える判決だ」と笑顔を見せた。 岩永さんは2007年から原告として裁判に関わる。17年に最高裁で敗訴が確定した後に再提訴し、いまも43人の仲間と争っている。岩永さんは「命の問題。広島高裁判決を受けて、広島、長崎で救済するという政治判断をしてほしい」と国に求めた。 原告団の三宅敬英弁護士は広島高裁判決について、たとえ「黒い雨」を浴びていなくても放射性微粒子が入った水を飲むなどして「内部被曝(ひばく)」による健康被害を受ける可能性があったと指摘した点に注目した。長崎の「被爆体験者訴訟」では、米軍が調べた放射線量の記録をもとに、原告が放射線を受け、健康被害につながっていると主張している。三宅弁護士は「長崎でも全員救済の道が開ける」と評価した。 長崎市の田上富久市長は14日夕、「引き続き重大な関心を持って注視していきたい」とコメントを出した。(米田悠一郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
函館合宿のバド・カナダ代表会見 「五輪実現に感謝」
三木一哉2021年7月14日 21時30分 東京五輪の事前合宿のため北海道函館市に滞在しているバドミントンのカナダ代表チームが14日、報道関係者に練習を公開し、ヘッドコーチら2人がリモートで会見した。 ヘッドコーチのマイケル・ジェラード・バトラー氏は「来日前に新型コロナウイルスのワクチンを接種し、感染防止に気を配っている。できないかもしれないと思っていた東京五輪が実現してありがたいし、函館に来られたことにも感謝している」と語った。 ブライアン・ヤーン選手は「気候や環境の違いに慣れ、体力と技術を維持して試合に臨めるようにするのがここでの合宿の目標になる」と述べた。 函館市内では最近も新型コロナのクラスター(感染者集団)が発生しており、代表選手と市民との交流活動は中止になった。バトラー氏は「それでも空港に着いたら、熱心に出迎えてくれる人々がいて驚いた。顔を会わせることはできないが、心からお礼を言いたい」と謝意を示した。 公開練習で選手たちは、試合形式に近い混合ダブルスをしたり、ネット際でシャトルを打ち合ったりしながら、体の動きを確かめていた。代表選手らは19日に東京へ向かう。(三木一哉) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「どう償うか」「決着を」 黒い雨判決、識者はこう見た
会員記事 編集委員・副島英樹2021年7月14日 21時44分 「黒い雨」を浴びた人は被爆者だと認めた14日の広島高裁判決について、研究者や本紙編集委員が読み解きました。 「戦争の被害、どう償うか」 <被爆者援護策に詳しい直野章子・京都大准教授(社会学)の話> 「黒い雨訴訟」の背景には、1980年に出された厚生相(当時)の諮問機関「原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇)」の報告書がある。これによって政府は「被爆地域の指定は、十分な科学的根拠に基づいて行われるべきだ」と歯止めをかけ、被爆者援護の対象を狭めてきた。黒い雨の降った範囲や降り注いだ放射性降下物の量が特定できないにもかかわらず、住民側に健康障害を引き起こすだけの値であるという「科学的証明」を求める理不尽を強いることにもつながっている。政府は被爆者援護法の前身である原爆医療法の立法精神に立ち返り、「原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」はすべて救うという考え方で、援護のあり方を見直すべきだ。何よりも問われるのは、国が遂行した戦争で受けた被害をどう償うかという政治の姿勢だ。戦後76年、援護のない状態におかれた空襲被害者をどう救済するかも含めて議論を広げるきっかけにしてほしい。 「放射線関係の研究、行政すべてかかわる問題」 <広島大原爆放射線医科学研究所で長年研究し、黒い雨の雨域についても調査研究を続ける大瀧慈(めぐ)・広島大名誉教授(応用統計学)の話> 控訴棄却はある意味当然だ… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:999文字/全文:1604文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Un Français en grève de la faim à Tokyo dans l’espoir de revoir ses enfants « enlevés » par sa femme
Le Français Vincent Fichot, dont les deux enfants ont été « enlevés » par leur mère japonaise, a débuté une grève de la faim devant la gare de Sendagaya, à Tokyo, le 10 juillet 2021. PHILIP FONG / AFP La gare de Sendagaya, à deux pays du Stade national de Tokyo qui accueillera […]