有料会員記事 聞き手=稲垣直人 聞き手=編集委員・塩倉裕2021年7月22日 5時00分 コロナ禍の東京五輪開催をめぐり、「外圧」という言葉が久々に注目された。推進派も反対派も、外からの声が事態を変えてくれることを願った。2021年のいま、外圧の正体とは何か。 「なぜ今」「誰によって」 背景の吟味を 猿田佐世さん(シンクタンク「新外交イニシアティブ」〈ND〉代表) 東京五輪・パラリンピックの開催について、菅義偉首相は6月のG7サミット(主要7カ国首脳会議)で「全首脳から力強い支持を頂いた」と言いました。注意しなければならないのは、このような海外の「お墨付き」は、日本の政治家や官僚たちが自分たちの政策・方針を推し進めるための常套(じょうとう)手段だということです。 今回も官僚が根回ししたのでしょう。日本が「安心安全に開催する」と強調すれば、目くじらを立てて反対する外国の首脳はいない。それを「全首脳の支持」と言うのは一種の外圧利用です。こうした「日本政府製」の外圧の例は挙げればキリがありません。 なお、外圧の圧倒的多数は「米国発」です。日本が時間とお金をかけて米国に働きかけ、「米国の意向」として発信されます。 外圧について考えていきます。この後、「受けてきたのは日本だけではない」と語る評論家・中野剛志さんや、「日本って、人権やジェンダーといった面で世界からの声に鈍感でしょ?」と指摘する文芸評論家・斎藤美奈子さんが登場します。 日本政府は、米国の有力なシ… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:3268文字/全文:3753文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「復興五輪は破綻している」 被災地と絶たれたつながり
ソフトボールの日本―豪州戦は無観客で行われた=2021年7月21日午前、福島県営あづま球場、朝日新聞社ヘリから、迫和義撮影 観客のいないスタンド。「復興五輪」というフレーズに思い描いたのは、こんな光景だっただろうか。東日本大震災の被災地、宮城・福島で21日、東京五輪の開幕に先立つ競技が始まった。震災から10年。被災者たちの思いが交錯した。 満開迎えるも無観客 何度も「残念」 福島県営あづま球場(福島市)では、ソフトボールの日本―豪州戦があった。藤田倭(やまと)選手は「福島の地でソフトボールが出来るのがうれしい」と試合後に話した。 三回裏、内藤実穂選手が2点本塁打を放つと、日本側ベンチから拍手や歓声がわきあがった。その音がよく球場に響く。取り囲む約1万4千席の観客席は無人。組織委員会は盛り上げの一助にと、ベンチ裏に設置したスピーカーから「ざわざわ」と人混みのようなノイズ音をわざと流し続けた。 球場の観客スペースに設置されたスピーカー=2021年7月21日午後4時33分、福島市の福島県営あづま球場 球場の近くに住む阿部保昭さん(77)は「復興に向かう姿を多くの人に見てほしかった」と無念さをにじませた。 地域起こし団体の会長として… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1178文字/全文:1589文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「先生、見て!」 保育士2年目、園児から教わったこと
大学を卒業して保育士になった、さいおなおさん。 幼いころから自分より小さい子の世話をするのが好きで、よく一緒に遊んでいた。 そのころからなんとなく「保育園の先生になりたいな」という気持ちがあって、保育科のある4年制大学へ進み、夢をかなえた。 保育士2年目で2歳児クラスを担任。日々、目まぐるしく変わる子どもたちを見るのが楽しかった。 何をしても予想外のことを返してくれるから、対応するのは大変だったが、喜びの方が上回っていた。 思い知らされた出来事 そうは言っても、世間のイメージ通り、保育士の仕事は激務だ。 子どもたちと接する時間以外にも、事務仕事がたくさんあった。 一人一人に向き合い続けると仕事が終わらないので、自然と「いなす」ことを覚え、時間を確保するように。 そんなある日、「保育士失格だな」と思い知らされた出来事があった。 園児の女の子を、迎えに来た母親に引き渡す時のこと。 「ママ!」と抱きつく娘に… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1446文字/全文:1865文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪会場で掲げた感謝 ちょんまげ隊長と東北の10年
東京五輪の競技が始まった21日。サッカー女子の試合が行われた宮城スタジアム(宮城県利府町)のスタンドに、横断幕が広げられた。「Thank you for your support JAPAN is moving forward with HOPE」。支援をありがとう、日本は希望とともに進みます――。 掲げたのは、千葉県柏市の靴屋、角田寛和さん(58)。「ちょんまげ隊長ツン」と名乗り、その名の通りの格好で2008年の北京五輪から、五輪とサッカーW杯の現地観戦を続けてきた。 宮城とのつながりは、2011年にさかのぼる。 3月11日。 SNSで流れてくる被災地の現状に、いてもたってもいられなくなった。履く靴がないという声を聞き、約600足を車に詰めて、宮城県の塩釜市や名取市、岩沼市を巡った。 避難所になっている学校の校庭に、ぼんやりと座っている小学生たちがいた。「道化になれたら」という思いでかぶっていたちょんまげに、子どもたちが集まった。なかの一人が、ちょんまげを奪ったまま、なかなか返してくれない。帰ってほしくないのかと思い、涙が出た。「返してよ。大丈夫、また来週来るから」と気づいたら口にしていた。 約束が次の約束につながり、それから3~4カ月間は毎週末、その後は月に1回のペースで東北に通いつめた。避難所の要望を聞きながら扇風機や洗濯機などを届け、訪問は10年間で150回を超えた。 11年の年末のことだ。 宮城・牡鹿半島の子どもたちを地元のJリーグチーム「ベガルタ仙台」の試合に連れて行くバスツアーを企画した。 参加したのは親子約30人。行きは興味がなさそうにしていた子どもも、帰りの車内ではすっかり笑顔になっていた。津波で妻と息子を亡くした男性が去り際に「すごく楽しかった」と言ってくれた。スポーツには人を元気にする力があると強く感じた。 海外のスポーツチームなどから被災地に寄せられた支援やメッセージに感謝の思いを示そうと、翌12年に日本で開かれたサッカー女子U20W杯の会場で、横断幕を掲げた。英語やスペイン語、ポルトガル語、ハングル、中国語……。取り組みは海外にも発信されたという。「スポーツを通じてエールを送り合える。これが国際交流かと感じた」 スポーツを通じた国際交流に思い入れがあるのは、もう一つ理由がある。 初めて五輪を生で見た08年… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪高検の曽木検事長が会見「適正な捜査・公判を指導」
森岡みづほ2021年7月21日 20時30分 大阪高検検事長に16日に就任した曽木徹也氏(61)が21日会見した。大規模な殺傷事件や経済事件、虐待事件などを挙げ「複雑な事案も多数発生している。捜査・公判を適正に行えるよう指導したい」と語った。 曽木氏は東京都出身で早稲田大学法学部を卒業後、1986年に任官。東京地検検事正、高松高検検事長などを歴任した。 郵便不正事件をめぐる証拠改ざん事件が発覚した翌年の2011年、大阪地検特捜部長に就任して以来の大阪勤務となる。曽木氏は「部下たちは反省しつつ、信頼を回復すべく仕事をしてくれた」と当時を振り返り、「大阪は人もざっくばらんで気取りがない。再び大阪で勤務でき、うれしく思っている」と語った。(森岡みづほ) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
五輪ソフト川畑、母校も応援 窓開け声出しは1人だけ
東京五輪の開幕に先駆け、福島県で21日午前にあったソフトボールの日本―豪州戦に、内野手として出場した川畑瞳選手(デンソー)の母校・神村学園(鹿児島県いちき串木野市)では、生徒ら400人がテレビ観戦し、声を出さずに応援した。 この日は終業式で全校生徒が登校。観戦は新型コロナ対策のため3年生とソフトボール部員に限定し、いすの間隔をあけて消毒を徹底。窓も開けて行われた。 高等部の山田浩一校長は「全校生徒が一緒になって感動を味わってもらいたかったけど、やむを得ず最後の年の3年生だけにした。心の中でしっかり応援してほしい」と話した。 大声を防ぐため、ソフトボール部の主将久保初希さん(17)が1人だけ声を出すことに。マスク越しにマイクで「がんばれ、がんばれ、カ・ワ・バ・タ!」と声援を送り、生徒たちは手拍子で合わせた。 試合は8―1のコールド勝ち。久保さんは「先輩がオリンピック代表になったのは私たちの誇り。これからの活躍が楽しみです」と期待を寄せた。 この日は川畑選手の父で同校… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:160文字/全文:604文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
保冷剤入りベストで挑む酷暑五輪 氷風呂にはコロナ対策
猛暑の日本列島で21日、オリンピック(五輪)の競技が始まった。大会期間中はほぼ真夏日となる予報。専門家は熱中症への注意を呼びかけ、選手らは体温調整や水分補給で体調管理を進める。台風シーズンも近づき、大会関係者は有事に備える。 開幕に先立つ21日午前、福島県営あづま球場(福島市)でソフトボールが始まった。炎天下で豪州と対戦した女子日本代表の選手たちは、ベンチ前でクーラーボックスからペットボトル飲料を取り出し、水分補給を繰り返した。 19日の現地入りから連日の猛暑日となり、主将の山田恵里選手は「なるべく日陰にいたり、氷で頭を冷やしたりしている。ベンチの後ろは空調が利いていたので、一時的に避難できたらいい」と話した。 ただ試合中にそれができるのも、ベンチに戻った際だけ。定位置の中堅を守っているときは「何もできないので、太陽の光を浴びるしかない」。 エースの上野由岐子選手は、保冷剤入りのアイスベストを身につけているという。「なるべく体をどんどん冷やして、パフォーマンスが下がらないように気をつけたい」 男子サッカーでも水分補給に重点を置く。大量の発汗で体重が落ちると、競技力に影響するからだ。 男子代表の松本良一フィジカルコーチによると、普段の体重から2~3%減ると、速く走るスプリントや認知能力が落ちるという科学データがあるという。「水分を取ることによって、体重を落とさない。体重を落とさないことによって、選手のパフォーマンスを落とさないということにつながっていく」と話す。 そのため、運動前に水分を蓄える摂取や、運動後に減った体重を素早く元に戻すための摂取など、選手個々の体重に合わせ、飲むタイミングや量も細かく指示している。DFの橋岡大樹選手は事前合宿中、「練習が終わってから寝るまでに、最低でも500ミリリットルのペットボトル3本以上は飲んでいる」と話した。 男子代表は欧州でプレーする選手たちが半数近くいる。日本より気候が穏やかなため、水分を取る量が比較的少ないという。欧州組には、より意識的に水分を取るよう促している。 日本の酷暑、世界から不安視 日本の酷暑は、世界からも不安視されていた。英国の非営利団体「英国持続可能なスポーツ協会」が今年5月に出した報告書では、日本で2019年夏にあった五輪のテスト大会中、ボート選手が暑さで手当てを受けたり、トライアスロンのランの距離が短縮されたりした事例を紹介。「夜間のレースでも、救急搬送される選手が出る可能性がある」と警告した。 大会組織委員会が最も頭を悩ませていた問題の一つも暑さ対策だった。新型コロナウイルスの感染拡大で6都道県の無観客が決まった際、「一つの難題への不安が減った」と漏らす幹部がいたほどだった。 1万人以上の選手のほか、競技関係者やボランティアに対しては、新型コロナ対策との両立という新たな課題にも直面している。複数の大会関係者によると、選手村などに置くアイスバス(氷風呂)は体を冷やす効果的な手段だが、感染予防の観点から氷の頻繁な入れ替えが必要になった。選手村の製氷機ではまかなえず、五輪とパラリンピックの期間中、計400トン程度の氷を追加発注するという。 競技会場にはミストシャワーやアイスベストなどを配備。ボランティアにはアイスクリームなどを配る。組織委の中村英正・運営統括は「マスクは着け、水はこまめにとる。どこに水があるかの情報を選手やスタッフに共有するのが大切だ」と語る。(井上翔太、勝見壮史、香取啓介) 気象庁「平年より高くなる可能性」 7月中旬以降、各地で気温3… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
郵便局長、2億4千万円着服し自殺か 競艇につぎ込む?
2021年7月21日 21時20分 日本郵便は21日、愛媛県愛南町の深浦郵便局で、局長だった30代男性が計2億4千万円を着服していたと発表した。流用したお金は競艇につぎ込んでいたという。前局長は6月23日、同社が抜き打ち調査に入った際、途中で外出したまま連絡が途絶え、別の場所で死亡しているのが見つかった。関係者によると、自殺とみられる。 日本郵便四国支社(松山市)によると、前局長は6月7~23日、システムを不正操作し、架空の預け入れ処理をして自己名義の口座残高を計2億2千万円水増しして着服。5月26日~6月3日には、郵便局が保管する払戻金や小銭などの現金計2千万円を横領していたという。 前局長は2014年4月から深浦郵便局長。局長以外に職員が2人いたが、前局長は規定に反し、預け入れ処理を1人で担当していたという。利用者の貯金に被害は確認されていない。 安達章支社長は「お客さまや関係者に多大なご迷惑をかけ、大変申し訳ない。局長の立場でこうした行為に手を染めた重大事案で、再発防止に向けてコンプライアンスの徹底をはかり、信頼回復に取り組みたい」と陳謝した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
高校時代に単位先取りの大学生、早期卒業も 文科省方針
桑原紀彦2021年7月21日 23時43分 高校時代に大学の授業を履修して単位を得て、その大学に入学した学生について、文部科学省は、4年間在籍しなくても前倒しで卒業できるように制度改正する方針を固めた。 文科省によると、2018年度時点で、高校生を対象に通常授業の履修機会を提供している大学は全体の約28%(211校)。各大学が単位を付与する「科目等履修生」として学ぶ高校生は約1500人いた。 現行制度では、高校時代に得た大学の単位は、その大学に入れば単位としてカウントされるものの、卒業に必要な残りの単位を取得するのに最低でも4年かけなければならない。 文科省は今年度中に省令を改正して、来年度からは卒業に必要な単位を早期に取得できるようにし、各大学が学則を変更すれば、4年間在籍せずとも前倒しで卒業できるようにする方針だ。学則変更について文科省は「個々の大学の判断になる」としている。 政府の教育再生実行会議は今年6月に決定した第12次提言で、高校生が大学の授業を履修し、その大学に入学した場合に修業年限を柔軟化する制度改正を求めていた。(桑原紀彦) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
世界ランク1位の射撃選手も…コロナ陽性、五輪棄権続く
東京オリンピック(五輪)に出場する選手で、新型コロナウイルスの感染で棄権するケースが21日、相次いで明らかになった。新型コロナによる棄権が判明するのはこの日が初めて。 英国オリンピック委員会は射撃女子クレー・スキートで2016年リオデジャネイロ五輪6位、現世界ランキング1位のアンバー・ヒル選手が陽性のため棄権すると発表した。「途方に暮れている。心境を表現する言葉が何も見つからない」などと声明を出した。 チリのオリンピック委員会は、テコンドーの女子選手が新型コロナウイルスの検査で陽性になり、大会を棄権すると説明した。発表によると、棄権するのは女子57キロ級に出場する予定だったフェルナンダ・アギーレ選手。ウズベキスタンから来日し、空港で受けたPCR検査などで陽性が判明し、選手村には向かわずに隔離されたという。無症状だが、25日の試合は棄権するという。 オランダのオリンピック・パ… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:181文字/全文:577文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル