国方萌乃2021年8月14日 9時30分 踏切内で転倒し、動けなくなっていた女性を近くにいた教師らが力を合わせて助けた。遮断機が下りた後だったが、助けた一人は「怖いと思う余裕もないほど必死だった」と振り返る。 7月6日昼、和歌山県立和歌山北高校教諭の貴志結衣さん(34)と松下彰吾さん(36)は、同僚が運転する車で昼食を買いに出かけていた。 和歌山市市小路の南海紀ノ川駅近くの踏切(幅約30メートル)にさしかかった時、助手席の貴志さんが異変に気づいた。自転車に乗っていた高齢の女性が踏切内で転んだ。地面に倒れ、起き上がる様子がない。「カンカンカン」と警報音が鳴り、遮断機が下り始める。転倒に気づいた別の女性が遮断機をくぐって駆け寄って助けようとするが、女性1人の力ではどうにもならないようだった。 「助けなきゃ」。後部座席にいた松下さんが車を降り、踏切の緊急停止ボタンを押すと、遮断機をくぐって高齢女性の元へ走った。額から血を流し、ぐったりしている。松下さんは高齢女性の両脇に手を入れ、女性と力を合わせて踏切の外に引きずり出した。踏切のそばで様子を見守っていた貴志さんが遮断機を持ち上げ、松下さんらを迎え入れた。 踏切を出た後、松下さんがすぐに119番通報。「痛い」と訴える高齢女性に貴志さんが「大丈夫」とやさしく声をかけた。 和歌山北署は8月12日、「大きな事故につながるところを身をていして助けてくれた」と、2人に感謝状を贈った。署によると、救助された女性は近くに住む70代。どうして転倒したかはよくわからないという。「こけた後、カンカン鳴り始めてとにかくびっくりした。助けてくれた方々に本当に感謝しています。体調の問題で感謝状贈呈の場には行けなかったが、直接お礼を言いたかった」と話しているという。 貴志さんは「当たり前のことをしただけ。生徒にも、困っている人がいたら手を差し伸べてほしいと伝えたい」、松下さんは「体感で1分ほどだった。電車が来ていたらと今思い返すと怖いが、当時は必死だった」と話した。 署は今後、最初に高齢女性に駆け寄った大石愛菜さん(33)にも感謝状を贈る予定だ。(国方萌乃) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
玉音放送に取り乱した母 娘は青酸カリをこっそり捨てた
76年前の1945年6月、沖縄の地下に掘られた洞穴で、一人の軍人が自ら命を絶ちました。海軍司令官の大田実さん。残された子や孫は、故人への思いを抱えながらそれぞれの道で「平和」を目指しました。今回は三女が登場します。 2016年に公開されヒットした映画「この世界の片隅に」は、広島県呉市が舞台だ。その原作や新たなシーンを加えた「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」には、主人公のすずが花見に行く場面がある。 モデルとなった公園の近くにかつて女学校があった。沖縄の海軍司令官だった大田実氏の5人の娘が通ったまなびやだ。 沖縄県民斯ク戦ヘリ 遺された戦後 大田中将一家 それぞれの道 実氏の三女の板垣愛子さん(93)は1941年4月、緑豊かなポプラに胸を躍らせて入学した。だが、その年の12月に太平洋戦争が始まると、学校生活にも戦争の影が忍び寄った。 軍港だった呉には、日本有数の工場「呉海軍工廠(こうしょう)」があり、板垣さんもそこに動員されるようになった。配属された設計部門では「回天」の図面を担当。爆弾を積んだまま敵艦にぶつかる特攻兵器で「人間魚雷」とも言われる。 工場には若い士官が操縦テストのために来ることもあった。「乗ったら、生きて帰れる望みはない」。そんな思いを抱えながらも、彼らの姿をただ見つめるしかなかった。 自死した大田中将の三女、板垣愛子さんの戦後は、自宅にあった青酸カリを捨てることから始まりました。玉音放送に泣き崩れた母、そして貧困。悲しみに目を背けず、戦後も平和を祈り、伝え続けました。 キノコ雲 そして、次々運ばれてきた遺体 海軍の拠点の呉は幾度も空襲… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広島に再び大雨特別警報 気象庁、最大級の警戒呼びかけ
雨雲の動き(14日午前10時現在、気象庁のホームページから) [PR] 気象庁は14日午後0時41分、広島県に大雨特別警報を発表した。同日早朝までに長崎と佐賀、福岡の九州3県にも発表されており、対象は4県に広がった。「命の危険が迫っているため、直ちに身の安全を確保しなければならない状況」だとして最大級の警戒を呼びかけている。新たに対象となった広島市では13日も一時、大雨特別警報が発表されていた。 九州の対象は14日午前11時15分時点で、福岡県久留米市、小郡市、朝倉市、大牟田市、八女市、大川市、みやま市、大木町、長崎市、長崎県西海市、佐世保市、東彼杵町、川棚町、波佐見町、佐賀市、佐賀県多久市、小城市、鳥栖市、神埼市、吉野ケ里町、武雄市、大町町、江北町、白石町、鹿島市、嬉野市、有田町。 対象地域では「経験したことのないような大雨」となっており、何らかの災害がすでに発生している可能性がきわめて高いという。避難所へ行くことにこだわらず、川や崖から少しでも離れた頑丈な建物の上の階などへの避難が必要となる。外へ出ることも危険な場合は、崖から離れた2階以上の部屋に移動するなど、少しでも命が助かる可能性の高い行動が求められる。(山岸玲) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
終戦間際に500人犠牲の京橋駅空襲 担い手新たに慰霊
会員記事 笹川翔平、比嘉太一2021年8月14日 13時07分 76年前の8月14日、大阪市都島区と城東区にまたがる国鉄京橋駅(現JR京橋駅)周辺は米軍による大規模な空襲を受け、終戦を目前にして多くの人が命を落とした。終戦の10年後から続く慰霊祭は昨年、新たな担い手へとバトンが引き継がれた。当時を知る人は、体力が許す限り経験を伝えることを誓う。 京橋駅の慰霊碑前では14日朝から多くの人が犠牲者を追悼した。近くに住む平木アヤ子さん(70)は娘と3人の孫と訪れ、「近所で多くの人が犠牲になったことを孫に知ってほしかった」と話した。千羽鶴を持参した孫の高橋幸杜(ゆきと)くん(11)は「二度と戦争がないことを祈った」と話した。 空襲は、「東洋一の兵器工場」と呼ばれた「大阪砲兵工廠(こうしょう)」が標的となった。ちょうど今の大阪城公園にあった。近くの京橋駅にも1トン爆弾が落とされ、乗客らが避難していた場所を直撃。犠牲者は500~600人とも言われる。 体験どう伝える「慰霊祭さえ開けばいいというわけではない」 慰霊祭を昨年から取り仕切るのが、僧侶の松井英光(えいこう)さん(58)。第1回から慰霊祭に携わってきた大阪市内の寺の住職が体調を崩して代わりを任された。 空襲被害者や遺族の高齢化が進み、参列できない人も増えている。国鉄職員の父を亡くし、毎年慰霊祭のポスターを書いていたという80代の男性からも、今年は「体力的につらい」と参列見送りの連絡を受けた。 昨年、初めての慰霊祭を終え… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:438文字/全文:1055文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「考え深い」か「感慨深い」か 漢字に見る大学生の思考
会員記事 聞き手・中島鉄郎2021年8月15日 6時00分 パソコンやスマホの浸透で、漢字を手で書く機会はかなり減っているのに、漫画やゲームでは難読漢字がよく使われ、漢字検定やクイズも人気があります。縁遠くなるように見えて、漢字はむしろ身近になっているのでしょうか。日本語としての漢字研究の専門家で、常用漢字の策定・改定作業にも携わる早稲田大学の笹原宏之教授に聞きました。 ――若い学生を教えられていて、漢字は昔より身近なものになっている、と実感されますか。 「そう思います。コロナ禍のキーワードが、『三密』『黙食』というようにカタカナではなく、簡単な漢字を組み合わせて新しい意味を持たせているのが象徴的かもしれません。若い世代では、難しい『欅』を使った『欅坂』(櫻坂)とか、ラップで人気のヒプマイ(ヒプノシスマイク)のキャラ『白膠木(ぬるで)』とか『伊弉冉(いざなみ)』といった名前は、『書けます』という学生が結構います。『鬼滅の刃』『呪術廻戦』もそうですが、漫画やアニメ、ゲームが第二の教科書のように、漢字を身近にしているんですね」 ――では、漢字は「もう手で書かなくてもいい」ものになっているのでしょうか。 「この1年半ほど、大学ではオンライン授業が主でした。私は自分の質問への回答を学生に手書きしてもらい、それを写真に撮影し、送ってもらうというやりとりを続けていました。漢字を手で書かないことが常態化しているいま、どういった変化が起きているかが具体的によくわかりました」 「例えば、コロナ禍の『禍』を『渦』と書く学生たちがいます。『禍』はあまり使わなかったので、ペスト禍、戦禍といった使い方が身についていない。コロナ『うず』と読む学生もいた。つまり『禍』という画面上の完成品の文字の形を見て、何となくつくりの目立つ部分だけが記憶に残っている。これは『パターン認識』による覚え方です。意味を考え、一点一画を手の筋肉を動かして書いて覚えたのと違い、画面上の完成品の文字ばかり見ているので、『渦』と書いてしまう。スマホ時代に一気に強まったのがパターン認識です」 ――「蔓延(まんえん)」の「蔓」はどうですか。交ぜ書きの「まん防」で話題になりました。 交ぜ書きから略字、「感慨深い」・・・そして「西周」をどう読むかであなたの背景がわかる・・・笹原先生の話は多岐にわたります。最後にアンケートへの回答募集もしています。 「『漫画』は書けても、『蔓… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:3306文字/全文:4225文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
連行される父が語った言葉 内村鑑三の弟子、貫いた反戦
山形県小国町に住む今野和子さん(87)は、父親の鈴木弼美(すけよし)(1899~1990)が逮捕された日のことが忘れられない。 1944年6月12日、同町(旧津川村)。早朝、自宅の玄関前にトラックが止まると、男たち数人が家に押し入ってきた。父親が連行され、治安維持法違反の容疑で逮捕された。鮮明に記憶に残っているのは、連行される際、靴を履きながら語った父の言葉だ。 「幸いなるかな、義のために責められたる者……」。新約聖書「マタイによる福音書」(文語訳)の一節だった。 鈴木は東京帝大物理学科在学中、無教会派キリスト教伝道者の内村鑑三の門下に入った。僻地(へきち)での伝道を夢見る内村の呼びかけに応じて、33年に小国町に移住し、翌34年に基督教独立学校を設立した。 「戦争反対」など外で口にできなかった時代に、鈴木は「この戦争は間違った戦争だ」「日本は勝てない」と周囲に繰り返し公言し、監視対象となっていた。逮捕について、内務省警保局保安課の「特高月報」(44年6月分)は「其(そ)の思想信仰に容疑の点ありしを以て予て内偵中のところ(中略)反戦其の他反時局的言辞を弄(ろう)しつつあること分明となりたるを以(もっ)て」と記している。 鈴木の逮捕後、残された家族は周囲の厳しい目にさらされた。 今野さんは近所の子どもたち… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:1130文字/全文:1696文字 知る戦争 平和への思いを若い世代へ託そうと、発信を続ける人がいます。原爆や戦争をテーマにした記事を集めた特集ページです。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
握力が弱くてもボトルのふた開けやすく 施設などが開発
朝日新聞の声欄に6月と7月、老化や病気で握力が弱くなった人たちから、ペットボトルなどのふたを開けやすくしてほしいとメーカーに改善を求める投稿が相次いだ。「少しはお役に立てるかもしれません」と、連絡をくれたのは愛知県大府市の障害者福祉施設。それほど力をいれなくても飲料用のペットボトルや缶のふたを開けられる商品を開発していた。 大府市の社会福祉法人「仁至会(じんしかい)」が運営する「サンサン大府」の施設長、塚本鋭裕(としひろ)さん(65)が、商品を見せてくれた。 青色半透明で、長さ約12センチ。虫眼鏡のような形で、握り部分の厚さは約0・5センチ。直径が約3センチの穴はペットボトルの、約1・5センチの穴はゼリー飲料の、先にある笛のような穴は飲料缶の、ふたを開けるときに使う。軽量で握りやすく、1個150円(税込み)。 サンサン大府は、市内のプラ… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:599文字/全文:976文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪府、過去最多1828人感染 1千人超は4日連続
大阪府が14日に発表した新型コロナウイルスの感染者は1828人だった。12日の1654人を上回り、1日の感染者数としては過去最多を更新した。1日あたりの新規感染者数が1千人を超えるのは4日連続。府内の感染者はのべ13万749人となった。 入院中の重症患者は前日より3人増えて138人となり、府が確保する重症病床(587床)の使用率は23・5%となった。 入院中の軽症・中等症患者は前日から68人増の1706人で、府が確保する軽症・中等症病床(2534床)の使用率は67・3%。(添田樹紀) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
15日始発から運転取りやめ JR琵琶湖線や湖西線など
2021年8月15日 0時14分 JR西日本は14日、今後も大雨が予想されるとして、JR京都線京都―高槻、琵琶湖線長浜―京都、湖西線京都―近江塩津、奈良線京都―木津、嵯峨野線京都―園部、草津線草津―柘植などの区間で、15日の始発から少なくとも昼ごろまで運転を取りやめると発表した。 また、関西と山陰を結ぶ特急「スーパーはくと」を終日運休とし、関西と北陸を結ぶ「サンダーバード」も始発から夕方にかけて運休させる。名古屋・米原と北陸を結ぶ「しらさぎ」は午前を中心に運休する。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ペットも一緒にどうぞ 大雨で専用避難所、ウサギの姿も
高原敦2021年8月14日 19時03分 大雨が降った福岡県久留米市は12日から、ペット同伴専用の避難所を設けた。14日午後4時現在で市民22人と犬10匹、猫6匹、ウサギ2匹が身を寄せている。ペットと飼い主が過ごすことができる避難所は全国的にも珍しいという。 避難所は、市郊外にある公共レクリエーション施設の2階部分で、普段はバドミントンや卓球に使われている計約400平方メートルの2室。犬専用の部屋とそれ以外のペットの部屋に分けられた。世帯ごとにテントタイプのパーティションが割り当てられ、中でペットと過ごせる。 チワワ2匹と母親と一緒に避難した山下未希さん(35)は、2018年と20年にも豪雨被害に遭った。その際は犬を友人宅に預けたり、車で共に過ごしたりしたが、犬たちはストレスがたまったのか「ガタガタと震えていた」という。 今回はくつろいだ様子だといい、「自宅と同じように家族と一緒にいられる安心感があるのでは」。パーティションの中にいるため、ほかの飼い主のペットとけんかすることもない。 市はこのペット専用避難所のほか、14日午後6時現在で指定避難所を45カ所開設。基本的にペット用のスペースも設けているが、ほとんどが軒下や屋根付き駐輪場といった屋外だ。 ペット避難所の利用にあたって市はフンの始末袋やペットフードの持参を求めており、担当者は「今のところトラブルなどは起きていない」と説明している。(高原敦) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル