芳垣文子2021年8月9日 16時06分 札幌市中心部で東京五輪男女マラソンが行われた7、8の両日、発着点となった大通公園周辺の競技時間帯の人出が、1週間前の同時間帯に比べ8~4%多かったことがわかった。増加率は選手たちがゴールする時間帯に大きくなり、両日とも前週を10%以上上回った。 ソフトバンクの子会社「Agoop(アグープ)」がスマートフォンの全地球測位システム(GPS)などから取得したデータを基に、朝日新聞が集計した。地下鉄大通駅の半径500メートルの1時間当たりの平均人口を比べた。 7日(土曜日)の女子マラソンは午前6時スタート。1時間前の午前5時台から、競技後の同10時台までの6時間分について、前週の7月31日(同)と比較した。 7月31日の1時間当たりの平均人口が4万526・67人だったのに対し、7日は4万3916・83人で3390・16人増加。平均増加率は8・4%だった。 1時間ごとの増加率は、競技開始前の午前5時台(6・1%増)から徐々に上がり、最も大きかった午前8時台には12・7%、次いで9時台は10・9%だった。金メダルのペレス・ジェプチルチル選手(ケニア)のゴールは午前8時27分、8位で入賞した一山麻緒選手は同8時半だった。 男子マラソンは翌8日午前7時スタート。午前6時~同11時台の人出を、前週の8月1日と比較した。1時間当たりの平均人口は、1日の4万4390・67人に対し、8日は4万6217・67人で1827人増え、平均増加率は4・1%だった。金メダルのエリウド・キプチョゲ選手(ケニア)や6位の大迫傑選手がゴールした午前9時台の増加率は10・3%だった。 五輪のマラソンでは、新型コロナウイルスの感染再拡大のため、沿道での観戦自粛が呼びかけられた。だが、コース沿いには大勢の人が集まり、所々で「密」ができた。アグープのデータによると、女子、男子ともに、競技の数時間前から平均人口の上昇が顕著で、観戦や大会関係者による人出が増えたとみられる。(芳垣文子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
きっかけは熊本地震 自宅に銭湯、構造設計建築士の決意
黒岩裕樹さん=2021年6月23日、熊本市中央区神水2丁目、藤本久格撮影 熊本市の市街地に黒岩裕樹さん(40)の自宅を兼ねた銭湯「神水(くわみず)公衆浴場」がある。アーチ型の屋根に開放的な窓。玄関先のベンチで飲み物を手に過ごす人もいて、しゃれたカフェのようだ。2階で家族と暮らす黒岩さんが昨年8月にオープンさせた。「自宅に銭湯を」と思い立ったきっかけは、5年前の熊本地震だった。 銭湯を兼ねた自宅の玄関先に勢ぞろいした黒岩裕樹さん(左)と家族=2021年7月3日、熊本市中央区神水2丁目、本人提供 本業は建物の耐震性などを計算する構造設計1級建築士。仕事が終わると、妻のヒロ子さん(41)や両親と交代で、玄関を兼ねた番台に座る。夕方になると、近所のお年寄りや部活帰りの高校生たちが白いのれんをくぐって、やって来る。「いい湯をありがとうとお客さんから言われると、やっぱり始めて良かったと思う」 熊本市出身。大学卒業後、東… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:653文字/全文:969文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
核のごみに揺れる寿都 気象庁職員が町の歴史を写真集に
昨年来、「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場問題に揺れる北海道寿都町。そんな町にかつてあった測候所に勤務した一人の気象庁職員が、町の歴史を調べ、人々に話を聞いて文章を書き続けてきた。現在、釧路地方気象台に勤務する山本竜也さん(45)。2018年に写真集にまとめ、今回新たに「続寿都歴史写真集 昭和二十一年~」が完成した。漁業や鉄道、町の風景や行事など600枚超の戦後の寿都が収められた2冊目はずっしりと重い。 山本さんが寿都測候所に赴任したのは06年春。休日には海や川での釣り、山登り、スキーなど寿都を満喫していたが、08年秋で同測候所が閉鎖されることになった。 最後の所員の一人となった山本さんは測候所史作りのために町の歴史を調べるうちに、町の発展を支えたニシン漁のほか、寿都鉄道、鉱山などにも興味を持った。当時を知る人たちに話を聞き、ホームページを立ち上げて文章を発表。転勤後も取材を続け、「寿都五十話」、「南後志に生きる」などの本を自費出版してきた。 18年に出した最初の写真集は明治期から終戦ごろまでの写真450枚を掲載。今回の「続―」に収めた写真は戦後の1946年以降で、町民や元町民らから5千枚を集め、610枚を掲載した。漁業、町並み、寿都鉄道、鉱山、農村……などテーマは全14章に及ぶ。スマホで誰でも写真が撮れる今とは違い、まだ貴重だった写真の中の人々はかたい表情が多いが当時の服装や町並み、暮らしぶりが分かる。全ての写真に山本さんが取材、執筆した解説文が付けられている。 また、610枚の中には室蘭出身で、高校教師を務めながら道内で写真を撮り続けた故掛川源一郎氏による寿都の写真50枚も入っている。写真、フィルムを管理する掛川源一郎写真委員会(札幌市)の協力で、寿都を撮影した数十本のフィルムから山本さんが厳選した。その中の寿都小学校運動会のモノクロの1枚が印象的だ。撮影は1969年。見物のために作られた数百のむしろ小屋がぎっしりと並び、手前に運動着姿の子どもたちが写っている。山本さんは「未公開の写真がほとんど。掛川さんの寿都の写真を紹介できたことはよかった」と話す。 「なぜそれほど寿都のことを… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:759文字/全文:1685文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
核廃絶へ、目そらす国 それでも被爆者が首相に会う理由
戦後、被爆者らは自ら、国の援護策拡大を求め、核廃絶を訴える運動を作り上げてきた。当事者による訴えの切実さは、国や国際社会を動かすテコになった。今、高齢化や団体の活動基盤の弱体化が進み、運動は岐路を迎えている。その果たしてきた役割を振り返り、今後の展望を探る。 2017年8月9日、長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長の川野浩一(81)は長崎市内のホテルで、首相の安倍晋三(当時)と向き合った。被爆者5団体でまとめた要望書を手渡すためだ。 例年ならただ手渡すところ、川野はじっと安倍の目を見つめて口を開いた。「あなたはどこの国の総理ですか、私たちをあなたは見捨てるのですか」。安倍の頰が赤らみ目が泳いだように見えた。川野はたたみかけるように訴えた。「今こそわが国が、あなたが、世界の核兵器廃絶の先頭に立つべきです」。安倍はその後、川野と目を合わせることなく会場を後にした。 激しい言葉は、その年に国連で採択された核兵器禁止条約に背を向ける政府への怒りからだ。原爆投下による惨禍を世界で唯一経験したにもかかわらず、米国の「核の傘」の下にあることを理由に採択・批准しようともしない。「日本が核廃絶の先頭に立たんといかんでしょう」。当時を振り返る川野の言葉が、再び熱を帯びた。 平和祈念式典で長崎を訪れた首相や厚生労働相への「被爆者団体からの要望」を、長崎市内に拠点を置く被爆者5団体の代表がそろい、連名で行うようになったのは1991年から。ただ、国から返事が来たことは一度もない。 川野は、国が毎年、要望を受… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:605文字/全文:1134文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
46歳男性が船から川に落ち行方不明 台風で増水の島根
水田道雄2021年8月9日 12時09分 台風9号の接近に伴い、島根県益田市は午前10時30分、高津川が高角水位観測所で「氾濫(はんらん)危険水位」に達したと発表した。 県警によると9日午前6時50分ごろ、同市神田町の高津川三星(みぼし)橋付近で、同市向横田町の団体職員、柳原宏之さん(46)が川に転落し流された、と発表した。警察や消防の約50人が陸から捜索している。 県警益田署によると、柳原さんは、橋のたもとに係留していた自身が所有する川船が転覆したため、元に戻そうと知人と別の船で川に入ったという。倒木などに乗り上げて投げ出され、知人は自力で岸に泳ぎついたが、柳原さんは川に流されたという。(水田道雄) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
92歳被爆者の誓い「命の限り語る」 長崎平和祈念式典
長崎は9日、米軍による原爆投下から76年を迎え、長崎市の平和公園で平和祈念式典があった。長崎市の田上富久市長は平和宣言で、今年1月に発効した核兵器禁止条約を「核兵器のない世界」実現の始まりと位置づけ、6日の松井一実・広島市長と同様、日本政府に署名・批准を求めた。 式典は新型コロナウイルスの感染防止のため、昨年同様に規模を縮小。参列者は例年の1割の500人程度となった。中満泉・国連事務次長らも参列した。 式典では、今年7月31日までに新たに死亡が確認された3202人の名前が記された原爆死没者名簿が奉安され、名簿に記された総数は18万9163人になった。水を求めて亡くなった犠牲者に水や花を捧げ、原爆投下時刻の午前11時2分に黙禱(もくとう)した。 被爆者代表として、過去最高齢の岡信子さん(92)が「平和への誓い」を読み上げ、「私たち被爆者は命ある限り語り継ぎ、核兵器廃絶と平和を訴え続けていく」と述べた。 【平和への誓い全文】父を探しさまよった街、忘れられぬ光景 ふるさと長崎で93回目の夏… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:1162文字/全文:1616文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
小田急防犯カメラに包丁で女性刺す映像 はさみも準備か
2021年8月9日 13時20分 東京都内を走る小田急線の車内で乗客が男に襲われ10人が重軽傷を負った事件で、車載の防犯カメラに事件当時の映像が記録されていたことが捜査関係者の話でわかった。殺人未遂容疑で逮捕された自称派遣会社員の対馬悠介容疑者(36)=川崎市多摩区=が包丁で被害女性の胸を刺したり、切りつけたりする様子が映っていたという。 小田急電鉄の説明では、防犯カメラは車両に4台ずつ設置されている。捜査関係者によると、カメラの映像には、対馬容疑者が座っていた女性の胸を突然包丁で刺し、逃げようとする女性を後ろから何度も切りつける様子が映っていた。その後も車両を移りながら、数分間のうちに乗客を次々と襲い、降車して逃げたとみられるという。 8日の現場検証で警視庁は、現場に残されていたバッグに衣類やはさみがあったことを確認。対馬容疑者は「はさみは包丁の予備だった」と説明しているといい、警視庁は逃走のために衣類を用意した疑いがあるとみて調べている。 対馬容疑者は調べに「多くの人を殺したかった」「人が油断して逃げ場がなく、大量に人を殺せるので電車を選んだ」と話していることが判明している。捜査関係者によると、多くの人でにぎわう東京・渋谷のスクランブル交差点を狙うことも考えたと話し、「幸せそうにする人が大勢いるので爆破しようと思った」とも述べているという。 対馬容疑者の逮捕容疑は、6日午後8時半ごろ、東京都世田谷区の成城学園前―祖師ケ谷大蔵間を走行していた小田急線の快速急行で、20代の女子大学生の胸や背中を包丁(刃渡り約20センチ)で刺して殺害しようとしたというもの。大学生は重傷を負った。警視庁は対馬容疑者宅の家宅捜索を進めており、事件の経緯や生活実態なども明らかにしたい考えだ。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ATM前、何度も鳴る電話 詐欺見抜いた2人に感謝状
【兵庫】ある日、突然出くわした誰かのピンチ。たまたま見かけた人の一言が、解決につながった。(大下美倫) 神戸市長田区の商業施設にある2台のATM。その一方を、70代の女性が操作していた。6月4日のことだ。 高木裕美さん(49)と赤穂有紀子さん(56)は、順番待ちの列にいた。互いに面識はないが、同じお年寄りの女性が気になっていた。 女性はまごついた様子で、かばんの中をごそごそ。手元では携帯電話が何度も鳴り、たまに電話に出ては、会話をしている。 詐欺なのでは――。 疑念を抱いた2人。でも家族との電話かも。確信は持てずにいた。 先に高木さんの順番が回ってきた。隣ではまだ、女性の操作が続く。 「大丈夫?」と聞いてみた。「大丈夫、大丈夫」。女性はそう答えた。 だが次の瞬間、女性が電話相手に発した言葉に、はっとした。 女性が電話で伝えたのは、口座の残高。相手が家族であっても、残高のやりとりをするのはおかしい。 いてもたってもいられなくな… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:480文字/全文:909文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「保健所につながらない」祭典の足元、届いたメッセージ
訪問看護師の藤田愛さん=2021年7月5日午後2時21分、神戸市、堀之内健史撮影 東京オリンピック(五輪)は開会式から17日間の日程を終え、8日の閉会式には世界各地の選手たちが集った。コロナ下の異例の大会は、アスリートが輝きを放つ一方、感染爆発にさらされた。光と影の両面があった祭典は日本に何をもたらし、社会はどこへ向かうのか。 大会中、列島はコロナの「第5波」に襲われた。 五輪開幕後の7月下旬。神戸市の訪問看護師、藤田愛さん(55)の元に、友人が東京で新型コロナに感染したという女性からSNSのメッセージが来た。「友だちは症状を保健所に相談したいのに電話がつながらない」。第4波の経験をSNSで発信していた藤田さんを見つけたという。 この友人はその後回復して大事には至らなかったが、女性には「医療につながることができず不安だった」と言われた。入院が必要な多くの人が自宅待機を強いられ、「医療崩壊」が起きた関西の第4波で、何度も聞いた言葉だ。 藤田さんは自宅療養中のコロナ患者をのべ300回以上訪問した。軽症だとしても医療や行政とつながれず、自宅で過ごす恐怖は計り知れない。首都・東京が当時の神戸の状況に近づきつつあることを実感した。 爆発的に増える感染者数に懸念を抱く自分も五輪を楽しんだ部分はあった。普段は別々の部屋で過ごす子どもたちと一緒に居間で観戦した。4日にあった野球の日本対韓国で終盤に日本が勝ち越した際は、「一瞬だけコロナのことを忘れさせてくれた」と思う。 社会の自粛は限界だと思う。「感染者増の直接の原因は五輪ではないと思うが、感染対策の緊張感と五輪を楽しむことは両立できない」と感じてきた。実際、五輪期間中にも大人数でバーベキューをしたり、酒を飲んで騒いだりする動画をSNSでたくさん目にした。 祭典は終わるが、「自粛のメッセージを発してももう伝わらない。ワクチンだけが頼み」と思う。兵庫県内の自宅療養者も増えている。第4波では入院すべき人が入院できなかった。「第5波では自分が精神的に耐えられないのではという気持ちもある」と言うが、訪問看護を必要としている人がいれば、すぐにでも行く準備を進めている。(堀之内健史) 異形の祭典 市民はどう見た この後、86歳の聖火ランナー、スポーツバーの店主、ホストタウンの宿泊先が登場します。光と影の両面があったオリンピックをどう見たか、何を残したのか、これからの社会について語ります。 ■86歳の聖火ランナー「胸が… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
長崎で平和記念式典始まる 政府に核禁条約の署名要請へ
長崎は9日、米軍による原爆投下から76年を迎えた。長崎市の平和公園では午前10時45分、平和祈念式典が始まった。長崎市の田上富久市長はこの日の平和宣言で、今年1月に発効した核兵器禁止条約を「核兵器のない世界」実現の始まりと位置づけ、6日の松井一実・広島市長と同様、日本政府に署名・批准を求める予定だ。 式典は新型コロナウイルスの感染防止のため、昨年同様に規模を縮小。参列者は例年の1割の500人程度となる。中満泉・国連事務次長や64カ国の代表も参列する予定で、米国など核保有国7カ国が含まれる。 式典では、今年7月31日までに新たに死亡が確認された3202人の名前が記された原爆死没者名簿が奉安される。名簿に記された総数は18万9163人になる。水を求めて亡くなった犠牲者に水や花を捧げ、原爆投下時刻の午前11時2分に黙禱(もくとう)する。被爆者代表として、過去最高齢の岡信子さん(92)が「平和への誓い」を読み上げる。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル