指定暴力団山口組弘道会でナンバー3の立場の組長が、昨春以降、4回愛知県警に逮捕され、いずれも不起訴処分となった。 資金源とみられている風俗店の営業実態や資金の流れがつかめたとして、手応えを口にする捜査関係者がいる一方で、「捜査の手の内をさらした」と懸念の声も上がる。県警は今後も店舗への行政処分なども含め、資金源を断つ対策を進める方針。 弘道会は名古屋の歓楽街「錦三」地区の風俗店などから収益を上げているとされる。 県警は昨年3月、弘道会傘下組織の松山猛善組長(66)を風営適正化法違反(無許可営業)容疑で2度逮捕し、同4月には県暴力団排除条例違反容疑でも再逮捕。今年6月には錦三のセクシーキャバクラから、収益の一部約26万円を受け取ったとして、組織犯罪処罰法違反容疑で逮捕した。 6月の事件のセクシーキャバクラは客席をカーテンで狭く区切っており、風営法はこの構造での接待を認めていない。 県警は昨年3~4月の事件の… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:702文字/全文:1116文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
手術せず「俺」になりたい 男性への性別変更申し立てへ
阿久沢悦子2021年8月3日 15時00分 「オペなしで、戸籍上も『俺』になりたい」 浜松市の竹かばん職人、鈴木げんさん(46)が7月、浜松市内で記者会見を開き、こう訴えた。鈴木さんはトランスジェンダー当事者。性同一性障害特例法では戸籍の性別変更にあたり、「生殖腺がないこと」などが要件となっている。鈴木さんはこの要件を不要と考え、今秋にも静岡家裁浜松支部に手術を受けずに性別変更を申し立てる。 鈴木さんは女性の体を持って生まれた。「子どもの頃から女性として扱われることに違和感があった」。トランスジェンダーの仲間と出会い、40歳で性同一性障害の診断を受け、治療を始めた。男性ホルモンの注射を受け、乳腺を摘出。外見も社会生活上も「男性」になった。 でも戸籍上は「女性」のまま。このままでは女性パートナーと婚姻届が出せない。投票所など、公的な場で女性として見られることも苦痛だ。「自分のものではない『女』という記号におびえたくない」。身体的、経済的に負担が大きな生殖腺の手術は望まなかった。「内臓に卵巣があっても、俺は俺だ」 会見には鈴木さんを支援する弁護士らも同席した。同様の申し立てをめぐり、2019年1月、最高裁は性別変更を却下した岡山家裁の判断を「合憲」としたが、同席した水谷陽子弁護士は「ここ数年で、社会状況が大きく変わりつつある」。手術要件について、「自己の性自認を尊重される」「意思に反する身体への侵襲を受けない自由」「家族形成に関する自己決定」などの人権を損ない、法の下の平等に反すると主張する。 特例法の施行から17年。家事審判統計ではこの間に、1万555人が性別変更を申し立て、1万301人が認められた。 鈴木さんは「この法で多くの仲間が救われた。でも、今後は厳しい要件を課すのではなく、自分の生きる性別は自分で決められるというシンプルなルールになっていくといい」と語った。公共訴訟支援プラットフォーム「CALL4」内に特設ページを作り、当事者の声を掲載。クラウドファンディングによる寄付を呼びかける。(阿久沢悦子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
8000ページ官報にのけぞる 紙の「鈍器」の中身とは
各地の役所や企業などに7月、計8千ページの文書が届けられた。法律や政令などを国民に知らせる「官報」で、過去最大のページ数だった。積み上げると約30センチの高さになるという。いったい何が載ったのか。 「なんか、125冊8千ページの官報が来るらしい」。7月9日、ツイッターでそんな投稿がされた。「立派な鈍器が送られてくるらしい」「乱丁落丁のチェックするだけで、凄(すご)い時間浪費しそう」「官報射撃」などと反応が続いた。 官報は、法律や政令、省令や規則のほか、政府の競争入札の告知などを載せる「国のお知らせ」だ。 土日祝日などを除いて毎日、紙で発行され、役所や図書館、銀行や企業、病院などが定期購読をしている。インターネットでも公開される。 事前にお知らせ「ご迷惑をお掛けします」 発行する国立印刷局によると、毎日出る「本紙」は32ページと決まっている。 そこに収まらない分は「号外」を発行しており、今回の号外は過去最大のページ数になった。 定期購読者には、数日に分けて届けることを事前に伝えた。「大変ご迷惑をお掛けしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします」などと書き添えた。 謎の単語 「七面鳥」「あひる」 職場に近い図書館で、今回の官報を手にとってみた。一部にあたる3200ページ分がひもでまとめられ、片手ではとても持てない。 本文の冒頭3ページの字面を追うだけで10分ほどかかった後に、長大な表がある。 そこにある単語はたとえば「七面鳥」「あひる」「がちょう」、「ニッケル・水素蓄電池」「リチウム・イオン蓄電池」。その後、英語で書かれた表が延々と続く。 8千ページの正体は「地域的… この記事は有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。 残り:737文字/全文:1444文字 フカボリ 旬の話題の舞台裏から事件の真相まで、気になるニュースの深層に迫ります。世の中に流れる情報の一歩先へ。「もっと知りたい」「ちょっと気になる」に応えます。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
旧優生保護法は違憲 神戸地裁「差別解消を期待」と付言
岩本修弥2021年8月3日 15時01分 憲法違反の旧優生保護法(1948~96年、旧法)の下、聴覚障害や脳性小児まひを理由に不妊手術を強いられたとして、兵庫県に住む5人が国にそれぞれ1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、神戸地裁であった。小池明善裁判長は、国会議員が旧法の条項を改廃しなかったのは違法だとする初めての判断を示した。旧法は憲法13条、14条、24条に違反するとも指摘したが、手術から20年が経過した除斥期間を理由に請求を棄却した。 小池裁判長は「特定の疾病や障害を有することを理由に心身に多大な苦痛を受けた多数の被害者に必要かつ適切な措置がとられ、障害者への偏見や差別を解消するために積極的な施策が講じられることを期待したい」と付言した。 旧法をめぐっては、全国の9地裁・支部で計25人が訴訟を起こした。2019~21年、仙台、東京、大阪、札幌の4地裁が計5件の判決を言い渡し、手術から20年の除斥期間の経過などを理由に原告の請求を退けた。ただ、うち3件は旧法の不妊手術の規定を憲法違反と判断しており、6件目の判決となる神戸地裁の判断が注目されていた。 神戸地裁に訴えたのは、聴覚障害者の小林喜美子さん(88)と夫の宝二(たかじ)さん(89)▽聴覚障害のある80代男性(2020年11月に死去)と妻▽脳性小児まひの鈴木由美さん(65)。 訴状などによると、喜美子さんは結婚した1960年に妊娠。実母に病院に連れて行かれ、不妊手術を強いられたという。80代男性は結婚直前の68年ごろ、鈴木さんも12歳だった同年ごろ、それぞれ不妊手術を受けさせられたという。 原告側は、不妊手術の規定は、子を産み育てる自己決定権を保障する憲法13条などに違反すると主張。国は差別意識を根付かせ、被害回復もしなかったとし、除斥期間の適用は道理に反するなどと訴えた。 一方、国側は、手術から20年の除斥期間がたっており、損害賠償を求める権利は消えたと主張。国家賠償法とは別に救済措置を講じていなかったことも違法とはいえないなどとし、請求を退けるよう求めていた。(岩本修弥) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「政治献金と思った」 鶏卵汚職、吉川元農水相無罪主張
大臣在任中に鶏卵業者から現金計500万円の賄賂を受け取ったとして、収賄罪に問われた元農林水産相・吉川貴盛被告(70)の初公判が3日午後、東京地裁で始まった。吉川元農水相は現金を受け取ったことは認めたうえで「政治献金の趣旨だと受け止めていた」などと述べ、無罪を主張した。 ホテル、大臣室……封筒で渡された現金 一方、現金500万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことについては「最大の不徳のいたすところ。大いに反省している」と用意した書面を読み上げた。 起訴内容によると、吉川元農水相は、大臣だった2018年11月~19年8月、鶏卵大手「アキタフーズ」(広島県福山市)の前代表・秋田善祺(よしき)被告(87)=贈賄罪などで公判中=と都内のホテルや大臣室で計3回会い、総額500万円の賄賂を受け取ったとされる。 秋田前代表は6月に開かれた自身の初公判で、500万円を提供した贈賄罪の起訴内容について「間違いありません」と認めた。 秋田前代表の公判で読み上げた検察側の冒頭陳述によると、秋田前代表は18年11月12日、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の理念に基づき、鶏をケージに入れる日本の手法に否定的な飼育基準案を示した国際機関に反対するよう吉川元農水相に要望。9日後の同月21日に都内のホテルで開いた「大臣就任お祝いの会」で、トイレに立った吉川元農水相に「お祝いです」と言って200万円入りの封筒を上着のポケットにねじ込んだという。 その後、再び要望を受けた吉川元農水相は農水省幹部、養鶏業者、農水族議員による三者協議の開催を指示。三者協議の後に日本政府が国際機関に反対のコメントを提出したことを受け、秋田前代表は謝礼として19年3月26日に大臣室で200万円を渡した。 500万円以外にも1300万円 検察は立件せず さらに同年8月2日にも大臣室で100万円を渡し、「養鶏業者がつなぎ融資で金を借りられるよう公庫をご指導ください」と日本政策金融公庫の融資条件の緩和も依頼したという。秋田前代表の初公判で読み上げられた吉川元農水相の供述調書によると、受け取った500万円の一部は「私的な飲食などに使った」という。 これらの500万円とは別に、吉川元農水相は大臣就任前の15~18年と大臣退任後の19~20年にも11回で計1300万円を秋田前代表から受け取った疑いがあるが、東京地検特捜部は大臣在任期間以外は職務権限がないとして立件しなかった。 吉川元農水相は、疑惑が報じられた20年12月に体調不良を理由に衆院議員を辞職。心臓の手術をし、現在は地元の北海道で療養している。(金子和史) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ドラマ撮影現場で出演者9人がコロナ陽性 ABCテレビ
土井恵里奈2021年8月3日 14時23分 ABCテレビは8月3日、放送前のドラマ出演者9人が新型コロナに感染したと発表した。濃厚接触者は17人という。 同社によると、ドラマは発表前のため、タイトルや出演者名、性別などは公表しない。制作現場は大阪で、7月29日夜に出演者1人が熱中症の症状に似た体調不良を訴えてPCR検査を受け、陽性が判明、翌30日には3人、31日にも2人の陽性が確認された。 撮影は中断 さらにその後3人が陽性となり、感染者はこれまでに9人になった。濃厚接触者17人は、他の出演者やスタッフという。ドラマの撮影は7月29日から中断している。 同社は「撮影中は当社策定のコロナ対策ガイドラインを順守し、メインキャストの方はクランクイン前にPCR検査で陰性を確認しています」とコメント。その他の出演者に対しても「初回収録日に抗原検査を実施し、陰性を確認の上で収録に参加していただいていました」と説明している。(土井恵里奈) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ヤングケアラー「経験」18% 若者向けラジオ番組調査
畑山敦子2021年8月3日 14時30分 中高生を中心とした若者向けラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!(スクール オブ ロック!)」(TOKYO FM)が、「ヤングケアラー」について、音楽アプリのLINE MUSICと共同でアンケートを実施した。ヤングケアラーとは、大人の代わりに家族の世話や家事をする子どもたちのこと。18歳未満の回答者のうち、家族の介護や世話をした経験がある人が約18%(131人=数字は速報値。以下同じ)いた。 国の実態調査と調査方法などは異なるが、一定数の子がかかわっているとみられる結果となった。 3日午後10時からの同番組で「夏休み特別授業 ヤングケアラーの君と」をテーマに、アンケートのくわしい結果や、「自分はヤングケアラーかもしれない」と悩んでいる人の声などを紹介する予定。課題をリスナーと考えていきたいという。 今回のアンケートは7月27~31日に回答を募り、1281人がアプリから回答した。年代は18歳未満が723人、18~21歳は275人、22歳以上は283人だった。 家族の世話をした経験がある人は、回答者全体では約23%(301人)。また、ヤングケアラーという言葉を「知っている」と答えた人は、18歳未満では約42%、18歳以上を含む回答者全体だと約46%だった。 国が昨年12月から2月にかけて初めて全国の中高生に行った実態調査では、「世話している家族がいる」と答えたのは中学2年で5.7%、全日制高校2年で4.1%だった。 番組のアンケートの質問項目などについては、厚生労働省も助言した。厚労省の担当者は「国の調査は日常的に世話などを担い、子ども自身の権利が守られていないと思われる状況をヤングケアラーと定義している。今回アンケートに答えた人のケアの内容には濃淡があるかもしれないが、一定の割合で家族の世話や家事にかかわっている状況がうかがえる」とみる。 「SCHOOL OF LOCK!」は、月曜から金曜にTOKYO FMを含む全国38局で生放送されている。(畑山敦子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
土石流は何度も襲ってきた 住民が語る「未明の兆候」
ちょうどひと月前に静岡県熱海市を襲った大規模な土石流は、谷あいの住宅地に大きな被害をもたらした。起点から河口まで直線距離にして約2キロを、複数回にわたって時速30キロほどで流れ下ったとみられる。あの日、何が起きていたのか。多くの住民や消防関係者への取材、住民が撮影した複数の動画をもとにたどった。(文中のアルファベットは空撮写真に示した位置に対応しています) 倒壊した家屋周辺の捜索が続いていた=2021年7月6日午前9時13分、静岡県熱海市、朝日新聞社ヘリから、迫和義撮影 未明の伊豆山、川は濁っていた 7月3日、土曜日の未明。 熱海市伊豆山で酒販店を営む高橋幸雄さん(66)は、店の脇を流れる逢初(あいぞめ)川が濁り、石が流れ出しているのに気づいた(=A)。雨は2日前から降り続いていた。ただ、複数の住民は「普通の雨だった」と取材に振り返った。 この地域は、伊豆山の中腹からふもとにかけて住宅が集まる一帯。気象庁と静岡県は「土砂災害警戒情報」を発表していた。 午前5時ごろ。傾斜のある道路を茶色の泥水が流れ続けるようになった(=B)。ある住民は「上流で土砂崩れが起きたのかなと思った」と話した。 午前9時ごろになると、逢初川で石がぶつかるようなゴロゴロとした音が聞こえるようになった。 雨脚は次第に強まる。 午前10時ごろ、熱海市が地域の防災無線で避難を呼びかけ、避難所も開設された。 市災害対策本部によると、午前10時から同14分にかけて、住民からの通報が相次いだ。土砂崩れの予兆に関する内容が多かった。 午前10時28分、「向かいの家が跡形もなく流され、土砂で埋まっている」と土石流の被害を伝える通報が市消防本部に寄せられた。 出動していた市消防本部の杉野巧・消防司令(48)と上田洋・消防司令補(41)はその直後、道路まで達していた土砂が動き始めたのに気づいた。 記事後半では、住民らが撮影した複数の動画を元に、当時の詳細な状況をたどります。 「直ちに退避を」… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「おもてなし」の足もとで 在留外国人が見た東京五輪
東京オリンピック(五輪)には、海外から約1万人の選手が参加している。一方、日本で生活する外国人は288万人。工場での弁当づくりや農作業、そして五輪施設の工事など、約38万人の技能実習生らの存在なしでは日常はもはや成り立たない。「おもてなし」の祝祭は、彼らの目にどう映っているのだろう。 岐阜県内の中国人技能実習生の女性(38)は、会社の寮のテレビで開会式を見た。中国選手団は真っ赤なジャケット。参加選手は約420人にのぼり、2022年には北京で冬季五輪も開かれる。でも五輪に興味はない。中国と日本の対決となった卓球の混合ダブルス決勝も見なかった。「家族や親戚に選手でもいない限り、関心がない」 女性は、縫製会社の工場で朝7時から夜10時までデザイナーズブランドの服を縫う。工場の隣の3部屋に実習生7人で共同生活し、食事は昼の1時間と夜の30分の休憩中に自炊ですませる。食費は月1人2千円。米を炊き、半額シールのついた野菜の炒めものでしのぐ。 中国・江蘇省に長女(11)がいる。その世話を姉に任せており、基本給と残業代をあわせた月18万円の収入のうちから16万円以上を母国に送金する。五輪に興味はないが、経済効果で円高になれば、より多くの人民元をかせげる。「家族のため、1円でも多く送金したい」 大会4日目。難民選手団の一人としてシリア難民のアラム・マハムード選手(24)がバドミントン男子シングルスに出場した。試合翌日の会見でマハムード選手は「プレーできたことが喜び。私を助けてくれたすべての人に感謝したい」と述べた。 だが、日本で難民申請をしている中東クルド人の40代男性の視線は厳しかった。「ここは難民を『敵』とみなす国だ。難民選手は大丈夫? つかまらないの?」と皮肉を口にした。 男性はトルコ軍に徴兵された後に同胞と戦うことを拒み、1990年代に来日。トルコに戻れば迫害を受けるとして難民申請しているが認められず、茨城県牛久市の東日本入国管理センターに2回、計4年以上収容された。今は「仮放免」状態で就労できず、いつ収容されるかもわからない。身分が中ぶらりんの状態で、新型コロナウイルスのワクチンが打てるかも心配だ。 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計によると、20年に日本が難民と認定したのは47人。不服申し立てを含めた処理数(1万1867人)に占める認定率は0・39%だ。東京五輪に参加した難民選手のホスト国別で見ると、たとえば英国は9108人(認定率35%)、カナダは1万9596人(同49%)、フランスは1万8868人(同14%)の難民を認めており、ケタが違う。 男性を支援する「クルドを知る会」の松沢秀延さん(73)は「紛争から逃げ、保護を求める人たちに日本は冷たすぎる。五輪のおもてなしの前に、そばにいる外国人を大切にすべきではないか」と訴えた。(前川浩之) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
地域の「つながり」まで流された 熱海・土石流1カ月
会員記事 山口啓太、浪間新太2021年8月3日 11時18分 発生から3日で1カ月となった静岡県熱海市の大規模土石流。日本有数の観光地を襲った災害は、20人以上の命を奪っただけでなく、地域が大切にしてきた「つながり」も壊した。それでも前を向き、コミュニティーの再生のために動き出す人もいる。(山口啓太、浪間新太) 熱海市伊豆山の岸谷(きだに)地区にあるミカン畑。高橋昇さん(80)は、土石流が下った逢初(あいぞめ)川近くの自宅が被害を免れた。ただ、現在も立ち入りが禁止され、避難所から畑に通う。 土石流が起きた伊豆山のうち、特に被害が激しかったのが岸谷地区。住宅が流されるなど多くの家屋に被害が出た。 「たとえ家が残っても被災前の日常はもう戻らないよ」。高橋さんはため息をつく。30年ほど前から半年に1度のペースで地区の住民ら20~40人ほどでゴルフ大会を楽しんできた。20~80歳代と幅広い年代の住民が参加して交流する機会だったが、災害をうけて次回は中止に。「大事なつながりみたいなものはみんな土砂に持ってかれちゃった」 同地区の男性(54)も自宅の被害は逃れたが、知人の多くは家を流された。「顔を合わせてもどう声をかけてよいか分からない」 子どもの頃、地元の同世代や… この記事は会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。 残り:922文字/全文:1432文字 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル