角拓哉2021年10月16日 11時30分 20年前に北海道室蘭市で行方不明になった当時高校1年の千田麻未さんの「現在の顔」を推定した画像を、道警が公開した。千田さんは、友人に会ったのを最後に足取りがつかめておらず、道警が情報提供を呼びかけている。 室蘭署によると、室蘭栄高校1年だった千田さんは2001年3月6日午後1時半ごろ、同市東町2丁目の室蘭サティ(現・イオン室蘭店)の北側で友人に会った。その後、バスで同市知利別町のアルバイト先に向かったとみられるが、足取りは不明のままだ。 当時の千田さんは身長153センチで、やせ形。右ほおに小さなほくろ、左右の耳にピアスの穴があった。服装はベージュ色のブレザーや紺色のジーパン、ベージュ色のチェック柄マフラーを身につけていたという。 公開された画像は、当時16歳だった千田さんが37歳になった顔立ちを推定したもので、作製には警察庁の科学警察研究所(千葉県)のシステムを使った。道警は千田さんの当時の写真と見比べたポスターも作った。室蘭署の松川博彦刑事・生活安全官は「目にしたことなど何でも結構なので情報をよせてほしい」と呼びかけている。情報提供は署の事件対策室(0143・43・4220)へ。(角拓哉) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「貧困層が液状化のように」都心の公園、20分で消えた弁当400食
生活困窮者の支援団体「TENOHASI」の炊き出しには長い列ができた=9月25日、東京都豊島区の東池袋中央公園、五郎丸健一撮影 週末の買い物を楽しむ家族や友だち連れ、コスプレイベントに集まった若者らが行き交う東京・池袋のサンシャインシティ。そのわきにある東池袋中央公園は、ここだけが別世界のようだった。 9月下旬の昼下がり、人々が「ソーシャルディスタンス」で2メートルほど間を空けて列に並びだした。高齢の男性が多いが、中年の男女も目につき、中にはスマホをいじりながら待つ若者の姿も。日が落ちるころには、広い公園を埋める長蛇の列となった。 彼らの目当ては、無料でもらえる弁当だ。生活に困る人を支援するNPO法人「TENOHASI」が、炊き出しや生活相談を月2回おこなっている。ここに集まる人たちは、どんな事情を抱えているのか。 妻と一緒に列に並ぶ男性(54)は、ホテルの従業員。コロナ禍の影響で仕事がなくなった。会社は休業手当を出さず、収入が減った。妻は飲食店におしぼりを納入する会社でパートで働いていたが、その仕事も失った。今年2月ごろ、炊き出しのことをテレビで知り、訪れるようになった。 最近はホテルの仕事が徐々に戻ってきたものの、勤務は週3日で、生活は苦しいという。「並ぶのは正直、恥ずかしさもあるけど、こういう場があるのは本当にありがたい」 若い人にも話を聞いた。 並ぶのは3回目という男性(32)は、派遣会社に登録し、ネット通販大手の倉庫で商品の棚出しの仕事をしていた。ところが、今年夏、雇い止めに遭った。ハローワークにも通ったが、コロナ禍以来の就職難で厳しい現実に直面した。興味を持った病院の清掃の仕事は、3人の求人に40人の応募があり、あきらめた。 友人の家に居候し、冷凍食品の配送など日雇いの仕事で食いつなぐ日々だ。今の月収は7万円ほど。「収入を計算できる仕事を早く見つけて、炊き出しに頼らなくてもいい生活に早く戻りたい。今はとにかく粘るしかないですよ」 生活困窮者の支援団体「TENOHASI」の炊き出し。並んだ人たちは次々と弁当を受け取った=9月25日、東京都豊島区の東池袋中央公園、五郎丸健一撮影 ほかの人たちも、事情はさまざまだった。生活保護を受けているが、障害の加算分を減らされ、生活がいっそう苦しくなった人、専業主婦だったが、家で「いろいろあって」路頭に迷った女性……。よい仕事が見つからないという声も多く聞いた。 午後6時、弁当の配布が始まると、並んだ人たちは次々と受け取り、どこかへと消えていく。用意された400食は20分ほどでなくなった。 この日、炊き出しや生活相談に集まったのは416人。コロナ危機が本格化した昨年春以降は200人台が多かったが、今年に入って急増し、最近は300人台が続いていた。今回400人を超えたのは、リーマン・ショック後の2009年以来。最近は20~30代が増え、コロナ以前はほぼ皆無だった女性も来るのが特徴だという。 貧困の現場を長年見てきたTENOHASIの清野(せいの)賢司・事務局長(60)の表情には、危機感がにじむ。 「コロナでぐらぐら揺れて、液状化現象のように貧困層が表面に出てきた。非正規雇用で、もともと弱い立場にいた人が失業保険や行政の給付金でもしのぎきれなくなり、真っ逆さまに落ちている。困窮する人に手を差し伸べるというメッセージを、今こそ国が発してほしい」 本当に困る人を支えるため限られたお金をどう使うか。必要な財源をいつからだれに負担してもらうか。衆院選での選択は、これからの社会のありようを大きく左右します。 2児のシングルマザー「がんばってきたのに、この扱いか」 おびただしい数の人々の暮ら… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
母子殺害事件、容疑者の車を現場周辺で確認 ドラレコ解析などで判明
2021年10月18日 5時30分 大分県宇佐市の民家で母子が殺害された事件で、事件当日に容疑者の黒い乗用車が現場周辺で確認されていたことが、捜査関係者への取材でわかった。県警は、強盗殺人などの容疑で逮捕された会社員佐藤翔一容疑者(36)=大分市緑が丘1丁目=が、現場の民家との行き来に車を使ったとみて調べている。 発表によると、佐藤容疑者は2020年2月2日夜、宇佐市安心院(あじむ)町荘の民家に侵入し、農業山名高子さん(当時79)と長男の郵便配達員博之さん(同51)の首などを刃物のようなもので刺すなどして殺害、現金約5万円を奪った疑いがある。県警は認否を明らかにしていない。 捜査関係者によると、事件当日に現場周辺を走る不審な黒い乗用車の目撃情報が寄せられていた。県警は一帯を通行した車からドライブレコーダーの映像の提出を受けて解析するなどして、佐藤容疑者が当時乗っていた車であることを割り出したという。 佐藤容疑者は以前宇佐市内に住んでいたことがあったが、県警は佐藤容疑者と被害者の間に面識はなく、金品を盗む目的で民家に侵入したとみて調べている。 県警は17日、佐藤容疑者を強盗殺人と住居侵入の容疑で大分地検に送検した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
自粛の空気まとう皇室、英王室とは対照的 デーブさんがみる歴史の影
眞子さまと小室圭さんの結婚をめぐっては、テレビや週刊誌などが大量に報道し、ネットでも議論が沸騰した。なぜここまで過熱したのか。海外の王室事情にも詳しい、放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんは「万国共通の風刺の構造」というキーワードで説明する。そのうえで、日本の皇室の「自粛の空気」についても語った。 ◇ 日本社会はこれまで、皇室や皇族について、遠慮無く論じる「ネタ」として扱うことをどこか避けていたけれど、今回はまさに「お祭り騒ぎ」。週刊誌もネットユーザーも言いたい放題でしたよね。 小室さんと母の佳代さんには「金銭トラブル」という話題があり、お二人に向かった批判は「暴走婚」などと眞子さまに向かい、さらに「この結婚をなぜ許すのか」と秋篠宮さまら皇室側にも向かいました。 眞子さまが複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されたと発表されてからはテレビはトーンダウンしたようにみえますが、それまでは週刊誌もテレビのワイドショーもこのネタを消費することに力を入れているようにみえました。 なんでこんなに盛り上がったのか。権威があるはずの人にスキャンダルが出てくるというギャップは風刺のネタとして盛り上がる。小室さんは一般人だけど、将来の天皇の義兄になる人。そんな人が実は……というのは万国共通の風刺の構造に合致している。 タイみたいに、王室をちゃかすと不敬罪になっちゃう国もありますが、王室がある国では類似のことをやっています。 たとえば、イギリスのメーガン妃に関する報道。イギリス国民には王室を好きな人が多いが、王室を風刺の対象にしたり、チャールズ皇太子の恋愛を国民が面白おかしく話題にしたりしてきました。王室を尊重しながらも、ゴシップを楽しませてもらい、バランスが取れている。 眞子さまと小室圭さんが今月26日、結婚します。結婚をめぐる動きの中で見えてきたものとは何か。デーブ・スペクターさんは日本の皇室は「自粛の空気をまとっている」と指摘し、その背景となる事情についても語ってくれました。 「ご静養」の呼び方からみえる日本の皇室の事情 民主制との法的整合性の問題… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
エジソン没後90年、京都の神社で献花 発明王と古都結ぶ意外な接点
小西良昭2021年10月16日 14時30分 米国の発明王トーマス・エジソン(1847~1931)の記念碑が、京都府八幡市の神社、石清水(いわしみず)八幡宮にある。没後90年になる命日の18日を前に、宮司や電力関係者、米国領事らが15日、碑前に献花した。 エジソンは米オハイオ州マイラン生まれ。小学校を3カ月で退学した逸話が残る。蓄音機の発明で有名になり、のぞき込むと動画が見られるキネトスコープは映画の元になる発明だ。84歳で亡くなるまで、1千以上の特許を取った。来日の記録はないが、研究所に日本人助手もいた。 その功績をたたえる碑がある石清水八幡宮。1964年にエジソンの娘が訪れ、「これほど立派な記念碑は米国でも見たことがない」と感激したという。では、なぜ京都に、しかも山の上の神社にエジソン碑があるのか。 八幡宮によると、白熱電球を実用化したエジソンは、研究所で日本土産の扇子の骨(竹)をフィラメントに使うと電球の寿命が延びたため、世界中で竹を探した。採用されたのは、当時の京都府知事が紹介した八幡宮がある男山周辺の真竹だった。それで1千時間の点灯に成功し、世界中でヒットした。 その縁で1934年に記念碑が建ち、命日前後と誕生日(2月11日)に遺徳をしのぶ式典をしている。 この日は、「エジソン彰徳会」の高橋宏明理事長(日本電気協会会長)や、米国の在大阪・神戸総領館の領事らが参列した。 戦時中は「敵国の碑」として問題視され、撤去を求められたが「科学に国境はないと、当時の宮司たちが守ってきた。エジソンの灯と碑を次の世代に守り伝えたい」と、田中恆清(つねきよ)宮司は話した。(小西良昭) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
被害者の帰宅を待ち伏せか、馬乗りで刺したとの目撃も 女性刺殺事件
2021年10月17日 17時44分 兵庫県尼崎市で15日に女性が刺されて死亡した事件で、16日夜に殺人容疑で逮捕された元夫と似た男が、女性の帰宅より前に現場のマンション敷地へ入る姿が防犯カメラ映像に映っていたことが捜査関係者への取材でわかった。県警は待ち伏せをしていた可能性があるとみている。 捜査1課によると、殺人容疑で逮捕されたのは会社員の森本恭平容疑者(33)=同県西宮市甲子園八番町。逮捕容疑は15日午後8時20分ごろ、尼崎市昭和通4丁目のマンションの屋外駐輪場で、住人の医療系事務員森本彩加さん(28)を刃物で背中などを刺し、殺害したというもの。恭平容疑者は「殺すつもりで刺しました」と容疑を認めているという。 司法解剖の結果、彩加さんの死因は失血死だった。10カ所以上の刺し傷や切り傷があったという。 捜査関係者によると、恭平容疑者が馬乗りになって刺していた、との目撃証言もあるという。恭平容疑者宅からは、いずれも血の付いた包丁と黒っぽい服が見つかったことも分かった。 現場付近の防犯カメラ映像には事件直前の時間帯に、恭平容疑者とみられる男がマンション敷地内に入り、少し後に彩加さんが帰宅する様子が映っていた。県警はこの直後に襲われたとみている。2人はこの1年以内に離婚したという。県警は事件の背景や動機を詳しく調べる。 現場では事件後、黒っぽい服を着た男がバイクで西へ逃走する姿が確認されていた。県警は恭平容疑者宅前で押収したバイクについて、鑑定を進める。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
未返金1600万円、「副業ビジネス」事件のわな 借金に苦しむ人も
幹部ら5人が詐欺容疑で逮捕された「西山ファーム」(岡山県赤磐市、破産手続き中)は、ほとんど元手がなくても参加できる、クレジットカードを使った「副業ビジネス」を展開していた。愛知県警によると、手軽に投資できるため、被害者には40代以下の比較的若い世代が多かったという。カードの引き落とし日前に利益を上乗せした分を返金する、とうたっていたが、入金は途切れ、投資した人は多額の借金だけが残った。 8枚のカードを使って「副業」をした愛知県の会社員の男性(49)は、預けた保証金を含めた1600万円が未返金のままだ。 2017年8月、「香港に果物を売って、リターンを受ける」と知人から聞いたのが始まりだ。副業ビジネスを担っていた元副社長の男(40)が、岡山県知事らと香港を訪問した様子を伝える新聞記事も見せられた。 同月下旬、花本将光容疑者(32)と名古屋駅近くのホテルの喫茶店で会った。「受け答えはキビキビして、人の上に立って的確に物事を進められるような人だった」。日本産の果物は海外で高く売れると説明があり、「農家さんを助けられるし、それなりの利益が出るのでおいしい話だと思った」と振り返る。 同社のLINE上の問い合わせ窓口に登録し、カードの限度額や引き落とし日などを伝えた。2カ月後、指示に従って化粧品を100万円分購入。翌月、利益を上乗せした額が振り込まれた。次第にカードを増やし、計8枚に。月の決済額は多いときで計500万円にもなった。「保証金」を預けると高配当が得られると言われ、800万円を振り込んだ。 約1年後の18年夏ごろ、支払いが遅れるようになった。 男性は「あの時点でやめておけばよかった。自転車操業になっていたのではないか」と悔やむ。 だが西山側は同じ頃、リボ払いに切り替えた額を保証金として扱うとする「リボキャンペーン」を行っていた。男性もさらに200万円分を登録してしまった。 そして19年2月、支払いは途絶えた。 逮捕された5人について男性は「紹介者たちは『私は知りません』と謝りもしない。素直に認めて、謝ってほしい」と話す。 話を振ってきた次の転売「ビジネス」 愛知県に住む別の40代男性… この記事は会員記事です。残り359文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 【10/25まで】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「私らかて懸命」緊急事態を生きたミナミの街 政治への期待はあるか
大阪の繁華街ミナミ。開店前の店内にたたずむ藤本暢子さん=2021年9月29日、大阪市中央区、細川卓撮影 新型コロナウイルス感染拡大の「第6波」への懸念がくすぶり続ける中、19日に公示される衆議院議員選挙。昨年末、コロナ禍で「夜の街」とひとくくりに非難された人たちのそれぞれの思いを聞きに、大阪を代表する繁華街・ミナミを訪ねて回った。あれからもうすぐ1年。ミナミで生きる人たちは政治に何を期待し、どんな思いで投開票日を迎えるのか。 クラブママ ミナミの中心部にあるクラブ「藤本」。ママの藤本暢子(ようこ)さんは昨年末、ミナミが「感染拡大の震源地」とされたことに「まるでばい菌扱い」とうんざりしていた。 昨年末、ミナミの街角に立つ藤本暢子さん=2020年11月26日、大阪市中央区、細川卓撮影 4度目の緊急事態宣言下の今年8月、要請を無視して店の深夜営業を再開した。休業しても、協力金では家賃や光熱費を賄いきれない。他に経営するラウンジを含め、100人近い従業員の生活を守るための決断だった。 「私らかて、懸命に生きていることをわかってほしい」。藤本さんは、ビニールシートやアクリル板で席ごとに仕切り、各テーブルには消毒液を備えた開店前の店内で嘆いた。 藤本さんは1年前から、早期に街全体をロックダウンして感染を封じ込めた方がいい、と主張していた。しかし、あたかも特定の業界の主張ばかりを取り入れ、飲食店を標的にしたまま繰り返されるような要請が、徐々に政治への期待を失わせた。 「誰に何を訴えたらええのか。選挙で何か変わるんでしょうか。あきらめモードですね」 タクシー運転手 昨年、師走のミナミを走りながら「ずっと下降線」とぼやいていたタクシー運転手の島田和彦さん。午後9時過ぎ、島田さんのタクシーが、ゆっくりと宗右衛門町通りを進む。午後9時までの時短要請は継続中だが、人通りは以前に比べ多い。運転席で島田さんが代弁する。 昨年末、ミナミの道ばたで客の乗車を待つ島田和彦さん=2020年12月4日、大阪市中央区、細川卓撮影 「みんな赤信号で止まるのは、いずれ青になるとわかっているからでしょ」 繰り返される休業、時短要請、酒類提供の自粛……。いつ青に変わるともわからないコロナ禍で、多くの店がもう限界とばかりに「信号無視」をするようになったという。 島田さん自身、この1年必死に生き抜いてきた。売り上げはコロナ前の半分に落ち込む中、4月には80歳を超える両親がコロナにかかった。感染を覚悟しながら、1カ月仕事を休んで看護した。幸い両親は回復し、島田さんも感染はしなかったが、自立支援金で何とか食いつないだという。 ミナミの街でタクシーを走らせる島田和彦さん=2021年9月29日、大阪市中央区、細川卓撮影 「緊縮財政と言いながら、お友達を優遇したり、五輪で中抜きしたり、一部だけにお金が渡っとる」と運転席からぼやきが漏れる。ふと窓の外を見ると、閉店した飲食店の内装がはがされ、むき出しになったコンクリートが見えた。 ドラァグクイーン 昨年、ミナミの「BAR L… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
自転車の点検はしないが、保険には…加入急増、背景に事故の高額賠償
コロナ禍でニーズが高まる自転車について、大半の人が点検や整備をする習慣がないとの調査結果が公表された。自転車が絡む事故は近年増えており、万が一に備える保険への加入は急伸。ただ、全国の自治体では加入率に地域差があるのが実情だ。(柴田秀並、酒本友紀子、伊藤嘉孝) 東京都世田谷区の女性(42)は、点検不足の自転車で痛い目にあったことがある。 休日、駅に向かっている時だった。立ちこぎをしようと踏み込んだ瞬間。チェーンが外れ、かかとを地面に打ちつけた。足首の靱帯(じんたい)を損傷し、しばらく靴を履けず、治るのに半年かかった。自転車は10年間使っていたが、手入れといえば、きしむときに油をさしていた程度で、店で点検したことはなかった。「怖くて未点検の自転車には乗れない」と今は思う。 自転車が絡む事故は近年増えている。警察庁のデータによると、2020年の単独事故は前年より1割多い2958件。整備不良が関係する事故も相次ぐ。 それでも点検、整備への世間の意識は低い。au損害保険が今年6、7月に自転車利用者1千人に聞き、8月に公表したアンケートによると、乗車前点検について「ほとんどしない」「全くしない」と回答したのが合わせて86・9%。故障や不具合が原因の事故に遭ったり、遭いそうになったりした人も19・5%いた。店での点検は「していない」が60・9%だった。 点検意識の低さと裏腹に、自転車のニーズはコロナ禍で高まっている。 同社が昨夏、自転車通勤をする500人に尋ねた調査では、感染流行後に始めた人が23%で、ほとんどが「公共交通機関での通勤を避けるため」。流行後に会社から推奨された人も3割に上った。 業界は活況で、自転車店「サイクルベースあさひ」を全国展開するあさひ(大阪市)は、21年2月期決算の純利益が過去最高で、前年同期比84・4%増。「密」を避けるための公共交通機関からの「乗り換え」や、「巣ごもりによる運動不足の解消ニーズ」(担当者)が後押ししたという。シェア自転車を東京都心などで展開するドコモ・バイクシェアの会員数は6月時点で、前年比4割増の約110万人となった。 保険加入が急伸、でも地域差も こうした中、急伸するのが「自転車保険」だ。大手の損保ジャパンでは21年の販売が8月末時点で、流行前(19年)の同時期の約2倍に。背景には、近年1億円などの高額賠償事故が相次ぎ、リスクへの理解が広がったことに加え、加入を促す国や自治体の取り組みがあるようだ。 高額賠償事故を機に、15年に兵庫県が加入義務化の条例を設け、全国に波及。19年に国土交通省が条例のひな型をつくったことも後押しし、今年4月時点、義務づけ条例が22都府県、努力義務の条例が10道県で制定されている。 au損保の今年1月の調査では、加入率が最も高い京都府(73・1%)には条例があり、最低の島根県(35・1%)にはなかった。事故のリスクは地域に関わらずあり、自転車側が無保険で賠償能力も乏しければ、被害者が守られない。そうならぬよう同省は、地域差を是正すべく未制定の自治体への働きかけや、販売店への協力要請を強める方針で、ある省関係者は「むき出しの格好で乗り、スピードも出るのに、保険や点検の意識がこれまで低かったのがそもそもおかしかった」と話す。 ほかの保険もチェックを 自転車の保険とは具体的には… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
11月23日は何の日? 「わかりにくい記念日」に込めた思い
井石栄司2021年10月17日 19時30分 「11月23日は何の日?」と聞かれれば、「勤労感謝の日」と答えるのがふつう。今年から新たに、「表彰で感謝を伝える日」というのが加わった。考案した企業も「わかりにくい記念日」というが、制定のねらいはどこにあるのか。 記念日に認定したのは、企業、団体、個人などによって制定された記念日の認定と登録をする一般社団法人「日本記念日協会」。トロフィーやメダルなどを企画、制作、販売する「アキツ工業」(堺市美原区)が申請し、10月15日に日本記念日協会から認定された。 同社の小川真紀社長によると、コロナ禍でスポーツ大会などが中止となり表彰の場も激減した。社内で「表彰文化」を改めて考えてもらうきっかけをつくるにはどうするのがいいのかを話し合った。その結果、記念日をつくって広め、感謝と称賛の思いを表彰という行動で身近な人に伝える日にできたらと考えたという。 記念日は11月23日。同じく感謝の思いを伝える日である「勤労感謝の日」にあわせた。考案したのはいいが、社内からは「表彰の記念日って言われてもわかりにくい」との声も上がった。 記念日を設けたのは、照れくさくてふだんは言えない感謝の気持ちも記念日があれば伝えられると考えたからだ。だから、働く人やスポーツで頑張った人だけを表彰する日ではなく、もっと幅広く感謝を伝え合う日にしたかった。 母の日もカーネーションを渡すだけで感謝の思いが伝わる。同じように、一人一人が自分にとって大切な人を表彰することで、「私にとってあなたが一番よ」と気軽に言い合える文化をつくりたかった。 「製造業は伝え下手。記念日を設ける本当の思いをSNSで発信しよう」(小川社長)。ユーチューブの「アキツチャンネル」などで発信していくという。 小川社長は「感謝の気持ちは思っているだけでは伝わらない。記念日があれば、表彰という行動に移すことができる。簡単なメッセージを書いたものでいいので、それぞれの家庭で表彰式をしてもらえれば」と話す。(井石栄司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル