黒い岩がそそり立つ景勝地・東尋坊。奥に見えるのは遊覧船。様々な事情を持った人が訪れる=2021年10月14日午後0時16分、福井県坂井市、小島弘之撮影 8月中旬の午後6時、人けのない福井県の景勝地・東尋坊。断崖絶壁の岩場に中年男性が腰掛けていた。「何をしているんや」。茂幸雄さん(77)は海側を遮るように座った。「死にに来たんか」。茂さんの問いかけに男性は無言でうなずいたという。 近くの事務所で話を聞いた。男性は関東在住。空港で働いていたが、コロナ禍で失業した。兄弟に借りた金を返せなくなり、思い詰めたという。話を聞き終えた茂さんは男性の兄弟に連絡を取り、警察に保護を依頼した。 「我慢しても、1~2年で再出発できない人が来る」 今年保護した自殺企図者は40人を超え、すでに昨年1年間の33人を上回った。大災害後やコロナ禍に共通するのは「最初は我慢していても、1~2年経つと再出発できない人がやって来る」という現実だという。 警察官を退職後、2004年にNPO法人「心に響く文集・編集局」を設立し、理事長に。週6日、午前11時から日没までメンバーと交代で岩場をパトロールし、これまでに744人を保護した。原因が職場のパワハラなら上司のもとに、家庭の虐待なら親のもとに自ら出向いて直談判し、問題解決に努めてきた。 コロナ禍の昨年7月から電話やメールでの相談も始めた。「コロナ禍の休校明けに友達とうまく接せず、悪口を言われている」「上司によるパワハラで対人恐怖症になった」「精神科病院に入院して投薬を受けていた息子が自殺した」「家族からうつ病の理解が得られず、毎日つらい」。1日1件ほどのペースで、切実な声が寄せられる。 東尋坊の岩場をパトロールする茂幸雄さん=2021年10月14日午後3時29分、福井県坂井市、小島弘之撮影 根底には「どこに行けば守ってくれるのか」という叫びがある。行政による支援は基本的に申請主義だし、医者からは薬が出ても根本療法を受けられない。弁護士ら専門家への相談には金がかかる。自殺企図者はそんな社会構造の「被害者」だ、と言う。 その悩みを素早く、無償で取り除き、再出発を支える仕組みが必要だと思う。だから、衆院選を前に訴えたい。「744人の叫び声に耳を傾けてほしい」。政治家たちが「国民の命と生活を守る」と言うならば、右も左も関係なく、超党派で国民の命を守れ、と。「できるものならもう一度再出発したい。そういう人たちばっかりなんや」(小島弘之) 悩みのある人の相談先 よりそいホットライン(24時間)0120・279・338(※岩手、宮城、福島の3県は、0120・279・226) 24時間子供SOSダイヤル(24時間)0120・0・78310 いのちの電話(毎日午後4時~午後9時、毎月10日は午前8時~翌午前8時)0120・783・556 #いのちSOS(月曜は24時間、それ以外は午前10時~翌午前0時)0120・061・338 こころの健康相談統一ダイヤル(対応時間・曜日は都道府県により異なる)0570・064・556 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
行き先は「期日前投票」 路線バス内で一票 静岡・熱海
行き先表示は「期日前投票」――。31日の衆院選投開票を前に、静岡県熱海市選挙管理委員会は30日、路線バスを使った移動期日前投票所を開いた。坂道の多い熱海市では高齢者の投票機会確保などのため、2019年参院選からバスを使った期日前投票を行っている。 276人の有権者が暮らす同市伊豆山の県営七尾団地に、市内で路線バスを運行する伊豆東海バスの低床バスが停車した。バスの車内には、記載台や投票箱などが設置されていて、午前10時に投票が始まった。立会人は後部座席などに座る。新型コロナの感染防止対策で、住民は一人ずつ車内に入って投票を済ませた。 団地の住民が31日当日の投票所に行くには、約700メートル坂を下る必要がある。高橋陽子さん(74)は「投票所へは、バスに乗らないといけないので、近くで投票できて助かります」と話した。 バスは午後に移動して、計2カ所で投票が行われる。(西畑志朗) 2021衆院選 ニュースや連載、候補者の政策への考え方など選挙情報を多角的にお伝えします。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ダイヤ裸石、12億円架空仕入れか 国税指摘、業者は不服申し立て
村上潤治2021年10月31日 6時00分 宝飾品や美容用品の卸売業者「APOLLON(アポロン)」(岐阜市)が名古屋国税局の税務調査を受け、ダイヤモンドルース(裸石)の仕入れを架空計上したとして、約12億円の所得隠しを指摘されたことがわかった。 追徴税額は重加算税を含め約4億8千万円。同社は課税を不服とし、名古屋国税不服審判所に審査を申し立てた。 関係者によると、同社は名古屋市内の貴金属輸出入会社(解散)からルースを仕入れ、東京のコンピューター会社に卸していた。2018年に国税局が無予告で税務調査に着手すると、登記上の所在地を愛知県大治町から那覇市、名古屋市、岐阜市へと移したという。 国税局は、同社が17年8~10月、計約12億円分のルースを現金で仕入れたと計上した分について、仕入れは架空で、その分の法人所得を少なく見せかけたと判断。18年5月期に約4億8千万円を追徴課税(更正処分)したという。 同社は国税局に「会社の現金勘定の残高がマイナスだったという理由で、現金取引の実態がないと指摘された。取引の実態はあった」と説明。現在、不服審判所で審査中という。 信用調査会社などによると、同社は1991年創業で、06年に法人化した。美容品や宝飾品の卸販売などを手がけている。 所在地変える調査逃れに対策 税務調査を受けた会社が、意図的に会社の所在地を移転するケースがある。原則として納税地の国税局・税務署の職員だけが質問検査権を使うことができることを悪用した調査逃れで、対策が課題となっていた。 東京・銀座などで飲食店ビルを展開し、「銀座の不動産王」と呼ばれた経営者の脱税事件では、グループ企業が所在地や社名を次々と変更。経営者は「経営戦略」と主張したが、国税関係者は当時「所在地や商号が頻繁に変われば、担当税務署も変わり、資金の流れや帰属がつかみにくくなる」と話していた。 国税通則法の改正で、今年7月からは、会社が移転しても元の所在地を管轄する国税局・税務署の職員が法人税や消費税などの調査ができるようになった。(村上潤治) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
語られぬ五輪「ほんまにええんか」 ウガンダ選手団宿泊のホテル社長
31日投開票の衆院選で、今夏の東京五輪・パラリンピックの検証や総括が争点になっていない。コロナ下での開催の是非を巡り世論を二分し、無観客で開催された大会から2カ月。五輪を様々に見つめてきた人たちは、語られぬ五輪をどう考え、投票に臨むのか。 「政治家にとって五輪は終わったことなのか」 社会福祉士の龍田章一さん(36)はいま、そう感じる。選挙戦で各候補の主張を聞くが、五輪については話題にならないからだ。 神戸市でコロナ患者宅をまわった訪問看護ステーションを経営する龍田章一さん。入院できずに自宅で重症化する患者たちを目の当たりにした=2021年7月12日午後5時12分、神戸市西区、堀之内健史撮影 「開催強行、理解に苦しむ」 神戸市西区の訪問看護ステーション「秋桜」を経営する。新型コロナの感染が広がった「第4波」の3~6月、兵庫県内のコロナ患者140人の自宅を訪問した。病床が埋まり、重症化しても入院できず、亡くなった人もいた。「危機的な状況で開催を強行したことは、今でも理解に苦しむ」 自身も車いすを利用し、車いすバスケの競技経験がある。代表チームには知人がおり、男子チームが銀メダルを取る快挙は生配信で見守った。 だが一方で、自宅療養の現場を見てきたからこそ、開催には反対してきた。国内の新規感染者数は五輪期間中に急増。開幕直前の7月22日には1日あたり約5千人だったが、8月中旬には2万人を超えた。感染急拡大の懸念があったなかで大会を中止しなかったことに、疑問が残る。 衆院選で語られぬ五輪。記事の後半では、コロナ感染でホテル療養中に五輪観戦に熱中していった女性や、選手団から複数の陽性者が出た上、逃走者が出る騒動に巻き込まれたウガンダ選手団受け入れホテルの社長が、選挙戦への思いを語ります。 コロナが今後収束するか不透… この記事は会員記事です。残り1225文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 2021衆院選 ニュースや連載、候補者の政策への考え方など選挙情報を多角的にお伝えします。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ワンオペ育児、「コロナで顕在化した」 ニュータウンの「孤育て」
「OHASU FUN フェスタ」では、竹とんぼを作る教室も開かれた=2021年10月17日午前10時16分、堺市南区、井石栄司撮影 大阪府南部の泉北ニュータウン(NT)の一角にある大蓮公園(堺市南区)で今月17日、「OHASU FUN フェスタ」と題したイベントが開かれた。地元の住民らがタープを持ち込み、農産物や飲み物、パン、お菓子などを売る店を開いた。訪れた親子連れはクラフト教室に参加したり、買い物や飲食を楽しんだりした。 コロナ禍のいま コロナ禍を経て、観光や保育、畜産、町工場といった現場がどう変わり、何を望むのか。大阪のいまを取材した。 NTは、堺市と大阪府和泉市にまたがる丘陵地帯を府が開発。1967年から入居が始まった。子育て世帯でにぎわった街も街開きから半世紀以上がたち、全国の多くのニュータウンと同様、建物と住民の高齢化が進む。 泉北高速鉄道の泉ケ丘駅周辺の泉北ニュータウン=2021年10月8日午前、大阪府堺市、朝日放送テレビヘリから、細川卓撮影 堺市が企業を巻き込んだプロジェクトで再生を試みる。民間でも街づくりに参加する若手のグループがコミュニティーを再生させようと、さまざまな取り組みを立ち上げている。 17日にあった「OHASU FUN フェスタ」に関わる、大阪府立大名誉教授(都市計画・緑地学)で、LAまちづくり研究所の増田昇所長(69)は「統計的に若い人の転入が増えている状況にはないが、街づくりを担う人材が豊富になり、いろいろな活動が芽生えてきた。自発的な街づくりに発展していってくれれば」と期待する。そのうえで、政治には「デジタル技術を街づくりに活用するスマートシティー(次世代都市)を政策的に採り入れ、実践して欲しい」と話す。 31日には大蓮公園で35歳以下の若い世代がNTの未来を語り合うイベントが開かれる。イベントに関わる「泉北をつむぐまちとわたしプロジェクト」の辻田拓司さん(27)は「高齢化が進んでいるとも言われるが、若い人たちも加わって街づくりの活動がどんどん盛んになっている」と話す。 ◇ 昨年から続くコロナ禍では、NTに支援の手が届きにくい層がいることも浮き彫りになった。 「元々あったワンオペ」 記事後半では、ワンオペ育児が広がっていたことを示す調査結果や「孤育て」を支援する取り組み、データで紹介する泉北NTの現状などを紹介します。 NTの再生に取り組む団体の… この記事は会員記事です。残り1054文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
小室圭さんNY司法試験に不合格 2月の試験に向け「がんばります」
秋篠宮家の長女小室眞子さん(30)の夫・圭さん(30)が、今年7月に受験した米ニューヨーク州の弁護士試験に不合格だったことが関係者への取材で判明した。同州司法試験委員会が29日にウェブサイトで公表した合格者のリストにも、圭さんの名前はなかった。圭さんは知人に「来年2月の試験に向けてがんばります」と伝えたという。 試験を主催する同委によると、今年は7月27、28日にオンラインで試験が行われ、9227人が受験。全体の合格率は63%だった。試験は年2回あるため、圭さんは次回来年2月の試験で合格を目指すという。 圭さんは2018年夏、同州フォーダム大ロースクールに入学。今年5月に修了し、7月の試験を受験した。フォーダム大のような米法曹協会の認定校の卒業生で、かつ、7月に初めての受験をしたのは5354人。その場合の合格率は87%に上るという。 圭さんは今年、ニューヨーク州弁護士会が学生を対象に催した論文コンテストで昨年の2位に続いて優勝を果たし、司法試験の合格も有力視されていた。すでに同州マンハッタンにある法律事務所で「法律事務員」として勤務することが決まっている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
奈良の鳥インフル疑いは陰性 農研機構の遺伝子検査で判定
2021年10月30日 21時41分 奈良県宇陀(うだ)市の養鶏場で鳥インフルエンザの疑いがある事例が29日に発生していたが、同県は30日、農研機構動物衛生研究部門(茨城県つくば市)の遺伝子検査で陰性と判定されたと発表した。 県によると、29日午後0時半ごろ、この養鶏場から「死亡羽数が増えている」と県に通報があった。県は当初、死んだ13羽に簡易検査をしたと発表したが、のちに死んだ11羽、生存2羽を検査したと訂正。そのうち1羽から鳥インフルエンザの陽性反応があった。しかし、農林水産省が県の簡易検査を不成立と判断し、再検査を実施していた。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
グローバル・ヒバクシャへの支援考える 長崎でワークショップ
米田悠一郎2021年10月30日 21時49分 核兵器の製造や核実験などで被害を受けた世界の人々(グローバル・ヒバクシャ)への支援策を考えようと、カトリック関係者やNGOでつくる「核なき世界基金」は30日、長崎市でワークショップを開いた。来年3月に開催予定の核兵器禁止条約第1回締約国会議で、具体策を提案することをめざしている。 基金は2019年にローマ教皇が来日し、核兵器廃絶を訴える演説をしたのを機に、広島のカトリック関係者が呼びかけて20年7月に設立。運営委員には国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲さんや、カトリック長崎大司教区の高見三明大司教、長崎原爆の被爆者で医師の朝長万左男さん(78)らが名を連ねる。 基金には設立1年で、個人や団体から1千万円余の寄付が集まり、国内で核廃絶や核禁条約の批准国拡大などに取り組む団体の支援に使われている。 1月に発効した核禁条約は、核兵器の使用やこれによる威嚇を禁止しているほか、グローバル・ヒバクシャへの医療ケアや汚染地の環境改善を締約国に義務づけている。ワークショップは市民社会としてこれを体現し、どんな支援策ができるかを具体的に考えようと初めて開いた。 出席した川崎さんは、長崎や広島以外にも太平洋のマーシャル諸島や中央アジアのカザフスタンなど、ヒバクシャは世界中にいると紹介。朝長さんは、こうした人たちを救う新たな国際機関の創設を提言した。 委員らは今後も協議を続けて支援策をまとめ、締約国会議で提案したい考え。記者会見した朝長さんは「長崎で本格的に核被害者支援の議論をするのは初めて。今日がその策を考えるスタートだ」と話した。(米田悠一郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
埼玉勢、松山女子と叡明が金賞 星野は銀賞 全日本合唱コン高校の部
高山顕治、白銀泰、樫村伸哉2021年10月30日 21時55分 第74回全日本合唱コンクール全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)の高校部門が30日、大分市のiichiko総合文化センターであり、関東支部代表としてBグループ(33人以上)に出場した松山女子と叡明はともに金賞、星野は銀賞を受賞した。 コロナ禍による人数制限のため、松山女子は2、3年生101人でステージに立った。自由曲では高橋久美子作詩、信長貴富作曲の「太陽は宇宙を飛び出した」など2曲で美しいハーモニーを響かせた。大会前にみんなで話し合い、この日は初めてマスクを外してステージに。部長の島崎心菜さん(3年)は「笑顔や表情で感謝の気持ちが伝わったかな」と笑顔で話した。 叡明は3回目の出場で、2019年は銀賞。今大会はペンデレツキ作曲の「ケルビムの歌」を自由曲に選び、「合唱を披露させて頂けることへの喜びと感謝、そして祈りの気持ちが伝わるように」と臨んだ。 信仰心を喚起する哀調も帯びた曲を、男声と女声のハーモニーで表現。部長の大竹葵音さん(3年)は「この舞台に立てるだけの努力をしてきた。すごく楽しかった」と話した。 星野は11回目の全国大会出場。自由曲は木坂涼作詩、川浦義広作曲の「どこへ」を選んだ。独自に制作を依頼し、「どこへ行きたいの?」と問いかける楽曲。部長の鶴丸佳音(かのん)さん(3年)は「コロナで大変だったけれど、みんなで話し合う機会が増えて団結力が高まった」。顧問の佐々木憲二教諭は「みんな着実に成長し、こちらを励ましてくれた」と部員たちをたたえた。(高山顕治、白銀泰、樫村伸哉) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「お前みたいなバカは死ね」 看護学院パワハラ52件 北海道が謝罪
阿部浩明2021年10月30日 18時30分 北海道立江差高等看護学院などの教員らによる学生へのパワーハラスメント問題で、道は29日夜、学生や保護者を対象に函館市で説明会を開き、パワハラ行為を認めて謝罪した。今後、加害教員から学生に直接謝罪させるほか、「学生に多大な苦痛を与えた」教師を異動させるという。 道地域医療推進局の岡本収司局長は説明会の冒頭で、「傷つき悩み、苦しみ、心穏やかに過ごせなかった学生やご家族に心からおわび申し上げる」と謝罪。第三者調査委員会(座長・山内良輔弁護士)から提出された調査概要について説明した。 第三者委によると、被害を訴えた学生への聞き取りから、101件を調査対象として精査。うち江差高等看護学院34件と紋別高等看護学院18件の計52件をパワハラと認定した。 中でも江差学院の副学院長は19件と最も多かった。3カ月間にわたって執拗(しつよう)に始末書を書かせたり、「ペンでぶっ刺すぞ」「殴る蹴るの暴行をしたくなる」「お前みたいなバカは死ね」といった暴言を浴びせたりしたことが確認されたという。 聞き取りをした学生24人のうちパワハラを受けたと認定された14人には、本人の意向を確認したうえで、教員から直接謝罪させるという。休学中の4人については、復学や単位認定など救済策を検討する。また、学院運営アドバイザーの設置や、教員の資質向上のための研修などにも取り組むとしている。(阿部浩明) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル