小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火でできた大量の軽石が、高知沖の海上を漂流している。沖縄や鹿児島の港湾に押し寄せ、その後、太平洋側の黒潮の流れに乗って北上しているとみられる。高知県内でも、漁船の操業を早めたり、漁場を変えたりと影響が出始めている。 室戸岬沖約200キロを漂流する軽石=2021年10月31日午後0時20分、第5管区海上保安本部提供 「このまま漁を続けたら危険だと思って、すぐに和歌山の港へ移動した」 久礼漁協(中土佐町)に所属するマグロはえ縄漁船「隆勝丸(りゅうしょうまる)」は、高知沖約320キロの海域で、漂流する軽石に遭遇した。 黒原隆盛船長によると、10月28日、一帯が暗くなり始めた午後6時ごろ海面が白く光るのが見えた。 「油が漏れたかと思ったが、においがしない。よく見ると軽石だった」 翌朝、魚をさばくための水が出にくくなった。さらに船室の蛇口から米粒大の軽石が出てきた。 漁船は海水を吸い込み、エンジンの冷却水としても利用する。軽石が吸水口に詰まると、エンジンがオーバーヒートして操業できなくなる可能性がある。 軽石を吸い込むと、船底に取り付けられている「濾過(ろか)装置」が詰まり、エンジン故障につながるという=2021年11月8日、高知県中土佐町久礼、羽賀和紀撮影 危険を感じた黒原さんは、予定より早く和歌山県の那智勝浦へ寄港した。「軽石があったのはビンチョウマグロの好漁場。残念だが、しばらくは危ないので近づけない」 久礼漁協の崎山義澄組合長は、秋の旬を迎え、太平洋を南下する戻りガツオ漁への影響も心配する。今年は春先からの豊漁でカツオの価格が暴落。新型コロナウイルスの感染拡大による飲食店の営業自粛も重なり漁師には苦難の年だった。「コロナが落ち着いて飲食店への需要が増える時期。戻りガツオのシーズンに新たな懸念が増えた」と嘆く。 室戸岬から望む太平洋。軽石の漂流が確認されている=高知県室戸市 県内の漁協からは、軽石に関する大きな被害の情報は入っていない。沖合で軽石の漂流が見つかった室戸でも、キンメダイやサンゴの漁場とは離れており、漁船に影響は出ていないという。県漁協室戸統括支所の谷岡大輔・同支所長代理は「軽石に注意して操業し、被害を受けた場合は速やかに報告してほしい」と呼びかけている。 軽石が海の生き物に与える影響はわかっていない。むろと廃校水族館(室戸市)によると、餌と形や大きさが似ているため養殖魚が誤飲する可能性が考えられ、ウミガメの誤飲もあり得るという。 第5管区海上保安本部(神戸市)によると、足摺岬の南約146キロ沖と、室戸岬の南約207キロ沖の2カ所で軽石が漂流しているのを巡回中の航空機が10月末に確認した。 室戸岬沖約200キロを漂流する軽石=2021年10月31日午後2時13分、高知県室戸岬沖、第5管区海上保安本部提供 室戸岬沖では、南北約110キロ、東西約70キロにわたって筋状に広がり、黒潮の流れに沿う形で東へ流れているという。海洋研究開発機構(本部・神奈川県横須賀市)の予想では今後しばらく、高知沖を漂うとみられている。 県は、水産庁が出した注意喚起の通知を海岸沿いの市町村に伝え、軽石への注意を呼びかけている。海上の漁業用施設への漂着を防ぐ効果が期待できるとして、各土木事務所や漁協などに確保しているオイルフェンスの数を確認したり、庁内で情報共有をしたりといった準備を進めている。11月9日時点で県内沿岸への漂着や漁業被害は確認されていないという。(羽賀和紀、清野貴幸、富田悦央) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
公明議員秘書、国税に再三要望 知人会社の税務調査巡り「顔立てて」
公明党選対委員長の高木陽介衆院議員(61)=比例東京=の公設秘書が昨年12月から今年2月にかけて、知人が顧問を務める会社の税務調査をめぐり、会社側の要望を電話で10回以上、国税庁に伝えていたことが関係者への取材でわかった。秘書は、国税側と会社側との面会の場を設けたほか、同庁職員を議員会館に呼んで会社側の不満を伝えていた。 秘書は朝日新聞の取材に、会社側の要望を繰り返し国税庁に伝えた事実を認めたうえで、「納税者の意見を伝えただけで、圧力をかけたわけではない」と説明。一方、個別の税務調査への介入ではないかとの指摘については「真摯(しんし)に受け止めたい」と答えた。 東京国税局の税務調査を受けたのは、「若返りサプリメント」を販売する会社「健康医学研究所」(東京都新宿区)。 関係者によると、同社は、仕入れ時に支払った消費税が売上時に受け取った消費税を上回った場合に差額が還付される制度を使い、還付を申請していた。だが昨年8月に税務調査が始まり、申し立てていた消費税約1億円の還付手続きがストップ。同社の顧問は還付されないことなどへの不満を知人の秘書に相談した。 秘書は昨年12月下旬以降、調査中を理由に止まっていた消費税の還付を求める同社の要望を、国税庁に電話で繰り返し伝え、社長らと面会するよう求めた。国税側は同月24日に東京上野税務署(台東区)で社長らと面会。だが社長らが対応に不満を持ったため、秘書は同庁に「うちの顔を立てて下さい」と伝えた。その後、同28日には東京国税局(中央区)で再度の面会が行われた。 その後も続いた税務調査の中で、国税側は今年1月27日、社長らに調査結果の見通しを説明し、課税処分する可能性を示した。 秘書は会社側からこの説明内容への不満を聞き、翌28日、国税庁の課長補佐2人を議員会館に呼び、還付が行われていないといった同社の不満を直接伝えた。同社側に不正の根拠を明確に示すことを求めたうえで、「気をつけてもらいたい」と述べたという。 税務調査の結果、東京国税局は今年4月、同社がサプリ原料の仕入れ額を過大に計上し、2019年10月までの1年間で約11億円の所得隠しをし、消費税の還付額も過大に申し立てたと認定。重加算税を含む法人税と消費税計約7億円を追徴課税(更正処分)した。同社はこれを不服とし、7月に国税不服審判所に審査を請求した。 同社は朝日新聞の取材に応じていない。同社の税理士は「消費税還付がされず、資金繰りが厳しくなった窮状を訴えるため、代議士事務所に国税庁への働きかけを求め、動いてもらった、と社長から聞いている」と話した。 国税庁は「個別の税務調査にはコメントしない。一般論として議員や議員秘書からの問い合わせに関わらず、国税庁としては、個々の事実関係に基づき、法令等に照らし適切に対応している」としている。(中野浩至、浦野直樹) <昨年> 8月 東京国税局が健康医学研究所への税務調査を開始 12月下旬 高木陽介衆院議員の公設秘書が国税庁に同社の要望を伝える 24日 東京上野税務署で同社と国税側が面会 28日 東京国税局で再度の面会 <今年> 1月27日 国税側が税務調査の中で同社に課税処分の可能性を示す 28日 秘書が国税庁の課長補佐2人を議員会館に呼び、同社の不満を直接伝える 4月 東京国税局が約11億円の所得隠しなどを認定、同社に約7億円の追徴課税 7月 同社が課税処分を不服として国税不服審判所に審査請求 (関係者への取材による) 高木議員「金銭的な授受も不当な働きかけもない」 高木陽介衆院議員は12日までに朝日新聞の取材に複数回文書で回答し、「秘書は、困っている方の市民相談に応じて、国税当局には公正かつ適正な対応を求めると共に、当事者に丁寧な説明をしてもらいたいと伝えました。もとより金銭的な授受もなければ、不当な働きかけや圧力をかけた事実もありません。『健康医学研究所』関係者とは、私は面識もありません」とした。 ◇ 高木氏の事務所は12日夕、朝日新聞の取材に対し、公設秘書について「既に退職しております」と回答した。 国税OB「こうした行為が許されれば、公平性が損なわれる」 国税OBの朝長英樹税理士の話 今回の公設秘書による一連の行為は、個別の税務調査に介入して特定の納税者が有利になるように口利きをしたと思われても仕方がない。こうした行為が許されれば、税制の公平性が損なわれることになる。 「利害関係ではない」 秘書との一問一答 公明党の高木陽介衆院議員の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
困窮学生への10万円給付、対象は修学支援制度の利用者ら 政府方針
桑原紀彦2021年11月13日 6時00分 政府は、コロナ禍で困窮する大学生らに支給する10万円の緊急給付金について、昨年度に始まった低所得者向けの修学支援制度の利用者らを対象にする方針を固めた。対象者は20万人超になるとみられる。 政府は対象について、修学支援制度の利用者のほか▽経済的理由で修学継続が困難▽コロナ禍で収入が大幅減▽家庭から自立してアルバイト収入で学費を賄っているなどの要件を満たし、大学などが推薦する人も加える方針。修学支援制度は、住民税非課税世帯や、収入がそれに準ずる世帯向けに授業料を減免し、返済不要の給付型奨学金を支給する仕組み。昨年度は約27万2千人が利用した。(桑原紀彦) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
捜査情報漏らした巡査部長を停職処分 元組員からの金銭も 兵庫県警
2021年11月12日 19時30分 薬物事件の捜査協力者らに捜査情報を漏らしたなどとして、兵庫県警は12日、芦屋署刑事課の男性巡査部長(54)を停職3カ月の懲戒処分とし、発表した。巡査部長は「情報を得る上で良好な関係を保つためだった」と認め、同日付で依願退職した。 県警によると、巡査部長は昨年1月~今年7月、警察署内の端末にアクセスして20回にわたり捜査情報を不正に照会。捜査協力者9人に計31回、電話やLINEで捜査の進捗(しんちょく)情報などを漏らしたという。 このうち70代女性に知人の犯罪歴を教え、40代女性にも知人の再逮捕情報を漏らしたとして、県警は10月、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで書類送検したという。 また巡査部長は2013~19年、元暴力団員から退院祝いとして商品券5万円を受け取ったり、40万円の借金をしたりするなどの不適切な交際も確認された。 今年6月、協力者の一人だった女性が他府県警に逮捕され、スマホに巡査部長とのやりとりが残っていたことから発覚した。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
災害時の安否不明者氏名、48時間以内に公表へ 静岡県
会員記事 植松敬、黒田壮吉2021年11月12日 19時32分 大規模災害時の安否不明者の氏名について、静岡県は12日、原則48時間以内を目標に公表すると発表した。発災72時間で生存率が著しく下がることを踏まえ、早めに公表して円滑な救助活動につなげる狙いがある。県によると、ほかに22道県(9月末現在)が災害時の氏名公表の方針を決めているが、公表の目標時間を定めた例はないという。 静岡県熱海市で7月に起きた土石流では、県は発災58時間後に連絡のとれない64人分の氏名を公表。安否が確認できる情報が寄せられ、連絡の取れない人が翌日までに40人以上減り、救助対象者の絞り込みにつながった。48時間以内とする理由について、川勝平太知事は12日の記者会見で「まだ生存可能性が十分にあるなか、不明者の氏名を特定できれば、その方の住所を集中的に捜索できる」と述べた。 公表するのは、住民基本台帳… この記事は会員記事です。残り217文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
女性への暴力なくすシンボルに 北大・古河講堂をパープルカラーに
芳垣文子2021年11月12日 20時00分 北海道大学(札幌市北区)構内の古河講堂が12日夜、パープルカラーの光でライトアップされた。国の「女性に対する暴力をなくす運動」への賛同を示す活動の一環で、運動のシンボル「パープルリボン」にちなんだもの。 午後5時過ぎに点灯式が行われ、山口淳二副学長が趣旨を説明、活動に携わる大学院生白井那奈さん(26)がデートDVの説明を行った。パープルの光が当たって建物が宵闇の中に浮かび上がると、参加者から拍手が起きた。 講堂は古河財閥の寄贈で1909年に建てられ、国の登録有形文化財にも指定された歴史的建造物。 ライトアップは13日も午後5時から同8時半まで実施され、市民も見学できる。JR札幌駅北口徒歩約10分。 運動にあわせ、全国のタワーやランドマークなどをライトアップする活動が行われており、12日はさっぽろテレビ塔もパープルカラーに彩られた。(芳垣文子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
娘に抗不安剤投与した容疑で送検された母、不起訴に 大阪地検
2021年11月12日 21時40分 入院中の次女(当時1)に抗不安薬を服用させたとして、大阪府警が暴行容疑で10月に逮捕した高石市のアルバイトの母親(33)について、大阪地検は12日、不起訴処分(起訴猶予)にし、発表した。地検は「捜査の結果、諸状況を考慮した」としている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
女性への暴力をなくそう 全国でパープル・ライトアップ
国の「女性に対する暴力をなくす運動」の一環で12日、全国各地の施設を紫色にライトアップするイベントがあった。今年のテーマは「性暴力を、なくそう」。紫は尊厳や正義を示す国際女性デーのシンボルカラーでもあり、被害を受けている女性への「ひとりで悩まないで」という願いが込められているという。 東京都港区の迎賓館赤坂離宮では、前庭に面した建物の外壁が紫にライトアップされた。また、墨田区の東京スカイツリーや江戸川区のふれあい橋もライトアップされ、紫の光が川面に映り込んだ。 内閣府男女共同参画局によると、2009年に東京タワー1カ所から始まったパープル・ライトアップは年々場所が増え、今年初めて全国47都道府県で実施された。場所は、計324カ所になったという。 迎賓館のライトアップは13日も実施され、時間は午後4時半~6時半。各施設によって開催日程が異なる。一覧は同局のホームページ(https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/no_violence_act/index.html)から確認することができる。(内田光) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
警察車列襲撃事件に関与か 容疑の男を緊急逮捕 大阪府警
2021年11月12日 22時10分 【動画】押収された乗用車内にあった荷物を奪い逃走する容疑者=大阪府警提供 大阪市阿倍野区で10月、大阪府警が押収し、警察車両と列を組んで移動させていた車から荷物が奪われた事件で、府警は12日、住居、職業不詳の犬塚誠容疑者(42)を強盗容疑で緊急逮捕し、発表した。認否は明らかにしていない。 捜査1課によると、犬塚容疑者は複数の人物と共謀し、10月21日午後10時半ごろ、東成署が車上荒らし事件の捜査で押収し、レッカー車で移動させていた乗用車に車3台で接近し、レッカー車の前に割り込むなどした後、乗用車内にあった荷物を奪った疑いがある。 3台のうち1台から降りた男が乗用車のドアを開けて荷物を奪い、乗ってきた車は現場に置き去りにして逃げた。府警はこの1台に乗っていたとみられる住居、職業不詳の崔浩司(さいこうじ)(48)▽大森由嗣(よしつぐ)(49)の両容疑者を強盗容疑で指名手配していた。 捜査1課によると、現場近くで事件で使われたとみられる別の車が見つかり、犬塚容疑者が関与した疑いが浮上した。12日に捜査員が大阪市内にいた犬塚容疑者を見つけたという。 情報提供は東成署(06・6974・1234)の捜査本部へ。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
旧日本海軍の大砲か 北海道積丹沖で引き揚げ 呉海軍工廠の刻印
榧場勇太2021年11月12日 20時30分 北海道・積丹沖で11日、操業中のカニカゴ漁船が海中から大砲のようなものを引き揚げた。江差海上保安署によると、付いていた銘板にはかつて広島県呉市にあり、戦艦大和を建造したことでも知られる呉海軍工廠(こうしょう)で明治39年(1906年)に製造されたとみられる刻印があるという。 海保によると、大砲を引き揚げたのはカニカゴ漁船の「第七十八宝樹丸」(152トン、10人が乗船)。同船は11日午前6時半ごろ、積丹町神威岬沖約30キロで、海中約1300メートルに沈めたカニカゴを引き揚げた。その際、カゴに大砲のようなものが入っていたという。同船は12日朝、江差港に入港し、海保に「大砲らしきものを引き揚げた」と通報した。 海保が調べたところ、長さは2メートル強で、銘板には「呉海軍工廠 四十口径 三吋砲 明治三十九年」などと書かれていた。海保は旧日本海軍の大砲と推定している。今後海上自衛隊に引き渡し、詳しい調査を行う予定。(榧場勇太) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル