森直由2021年11月13日 13時25分 引退した神姫バス(兵庫県姫路市)の路線バスを、どこでも本格的なサウナが楽しめる移動型の「サウナバス」に生まれ変わらせる取り組みが、姫路市内の工場で進んでいる。年内に完成させ、来年2月のサービス開始を目指している。 発案したのは、2015年に神姫バスに入社した松原安理佐さん(28)。古くなったバスはグループ会社に売却し地方路線などで使うことが多かったが、人口減少やコロナ禍で乗客の減少に歯止めがかからないなか、新たな収入源を生み出せないかと考えた。外国でサウナ付きの車があることを知り、昨年夏にサウナバスを思いついたという。 今年5月には、同社から出向起業をする形で、新たなバス事業の企画会社「リバース」を1人で立ち上げた。02年から今年3月まで路線バスとして使われて引退したバス1台を、神姫バスのグループ会社「神姫商工」(姫路市)の工場に移し、10月から、同社などの従業員5人ほどでバスの改造を始めた。 バスの名前は略して「サバス」。前面や側面の行き先には「蒸37」「サウナ」などと表示する。バスの広さは幅約2メートル、長さ約10メートル。後方の「サウナ室」(約10平方メートル)と、前方の「休憩室兼事務室」(同)の2部屋に分ける。 サウナ室には最大9人が入ることができ、本格的な薪ストーブを置く。つり革を残し、座席の配置も工夫して、路線バスの雰囲気を生かす。室内の「降車ボタン」を押すと、高温に熱された石に水がかかり、蒸気を発生させる「通称・蒸気降りますボタン」といった演出も検討している。 休憩室兼事務室でも、つり革や座席を再利用。席に座ってサウナに入る前後に休んだり、荷物を置いたりできる。 安全に考慮して、走行中にサウナの利用はできないため、道路を走行中に乗れるのは運転手のみ。サウナ客は駐車したバスに「乗車」する。想定しているサービスの形は、宿泊・温浴施設や企業向けのバスの貸し出しだ。例えば、夏の海水浴場や冬のスキー場、アウトドア施設などにバスを移動させ、駐車したバスの中で、水着を着てサウナを楽しめる仕組みを考えている。 松原さんは「バスの新しい活用方法の可能性を、全国へPRしたい。ほかにも『託児所バス』や『シャワーバス』『店舗型バス』なども展開して、地域活性化や災害支援など、社会課題の解決にも貢献できたら」と話している。(森直由) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
千原ジュニアさん、ひきこもり支援に協力 「焦らず扉を開けて」
ひきこもりの人や家族を支援しようと、高知県が相談窓口を記載したリーフレットやポスター、動画を新たに作った。ひきこもり経験があるお笑い芸人の千原ジュニアさん(47)が協力した。 京都府出身の千原さんは、中学生の時にひきこもりになった。学校に行く気にならず、自室に鍵をかけてテレビを見たり絵を描いたりして過ごした。親に悪いと思いながらどうしていいか分からなかったという。4歳上の兄・せいじさんからお笑いの世界に誘われたのを契機に、その状況を脱した。体験を元にした自伝的小説「14歳」が2007年に刊行された。 千原さんへの協力要請は発信力を高める狙い。県内各市町村の相談窓口や千原さんのメッセージを掲載したリーフレットを3万部、ポスターを5千枚作製した。「自分のペースで少しずつ歩いていけばいい」と千原さんが語りかけるメッセージ動画も県のホームページで公開されている。(清野貴幸) 千原ジュニアさんは10月中旬、リーフレットなどの完成披露で県に招かれ、浜田省司知事と懇談した。その際のやりとりや報道陣への受け答えを元に、ひきこもり体験や今の思いなどをまとめた。 ■ 中学2年ぐらいからひきこもりになりました。中高一貫の進学校でなじめず、ほぼ学校に行かなくなりました。当時は不登校や登校拒否と呼ばれていて。両親にはつらい思いをさせましたけど、全国の登校拒否の子を預かる学校のパンフレットが居間に積んであると、「そういうことちゃうねん」と思ってました。 ひきこもりの人にはこうすればいいという答えがなく、十人十色で違います。当時、テレビで教育者みたいな人があれこれコメントしてましたが、僕には何一つ当てはまらなかった。だから僕も、経験を踏まえて「周りの人はこうしてほしい」などと軽はずみなことは言えないです。 当時の自分は誰かに分かってほしいなんて思っていなかった。理解しようとする親のこともしんどかった。そんな時にせいじから偶然電話が来て。相方がいなくて、家に弟がおるなと思い出しただけで、僕を救おうとかさらさら思ってなかったと思います。でも僕は家を出るきっかけさえあれば何でも良かった。 それぞれのタイミングがあり、焦る必要はないけど、ひきこもっている人たちは「出て行きたい」「このままではあかんねや」と思い続けてほしい。1冊の本、1本の映画、1枚の絵、何がきっかけになるか分からんです。 自分が動くことで、1人でも「扉を開ける」というきっかけになればと思い、高知県のオファーを引き受けました。ひきこもられている側の親たちが相談できる環境があるというのは、すばらしいです。 高知県は昨年6、7月、ひき… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
南極・北極公開講演会ウィーク、18日から神戸大とオンラインで開催
2021年11月13日 14時00分 「南極・北極公開講演会ウィーク~文系が探求する世界」と題した講演と発表が18日から、神戸大(神戸市)とオンラインで同時開催される。 南極・北極の研究は自然科学系のほかにも、歴史や文化人類学、心理、教育、政治、法学など様々な分野でも進められている。これらの研究者が世界中から集う「南極研究科学委員会・人文社会科学常設委員会学術研究大会」(18~19日)と「第14回極域法国際シンポジウム」(21~23日)がアジアで初開催されるのを記念し、一部が一般公開される。主催は神戸大大学院国際協力研究科極域協力研究センター(PCRC)で、朝日新聞社が後援する。 18日は「南極観測事業は文系研究にも貢献できる!」をテーマに、南極観測隊に参加した心理学者の村越真さん(静岡大)や法学者、教員、朝日新聞社会部の中山由美記者が議論し、19日はドイツの南極歴史学者が講演する。 日本の南極観測の歴史的映像も見られる。1次隊の訓練や1959年1月に昭和基地で再会した樺太犬タロ・ジロなど、朝日新聞が撮影した映像も18、19、21、23日上映される。 詳細や参加登録はサイト(https://2021polarlawsymposium.org/japan_lectures/)へ。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
免許返納を決めた「失敗学の大家」 迫る妻、娘からのキツイ一言
「失敗学」の提唱者で、東京電力福島第一原発など数々の事故の調査や検証に携わった東京大学名誉教授(機械工学)の畑村洋太郎さん(80)は2年前の4月、自動車の運転をやめました。来年の更新時に免許も返納します。運転に自信があった畑村さんが心変わりした一言とは? 大きな社会問題になっている高齢者の免許返納をどう考えたらよいのか? 畑村さんに話を聞きました。 ◇ ――自動車の運転をやめると、よく決断されましたね。 あれは2019年4月19日、そう、東京・池袋で87歳の男性が運転する自動車が暴走し、横断歩道を横断中の母娘2人が亡くなった日です。その夜、家内と娘が私を取り囲みました。 妻が言います。 「あなた、そろそろ車の運転をやめたらどうでしょうか」 最初は穏やかな会話だったのですが、私が渋っていると、だんだんと真剣さが増し、説得口調になっていきました。 妻はたたみかけてきます。 「あなたが取り組んできた失敗学は、現状認識が一番大事なのですよね」 「的確な現状認識に基づき、失敗を未然に防止するのが失敗学の基本ですよね」 「あなたが関わった日本航空123便の事故も福島第一原発事故も、いくつも未然に防ぐチャンスがあったのに、それが見逃されたんですよね」 そして最後に、娘がこう付け加えました。 妻と娘に迫られ、車の運転から「降参」した畑村さんは、「失敗」の事例を検証してきたのに、自分のことは決断できなかったと話します。後半では、畑村さんが感じた自身の「老い」や、免許返納の問題に必要な視点について語ります。 「もし、事故を起こしたら… この記事は有料会員記事です。残り2984文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
奥多摩の白丸湖で紅葉とエメラルドグリーン 湖面の共演
迫和義2021年11月13日 14時30分 【動画】奥多摩の白丸湖で紅葉とエメラルドグリーンの湖面の共演=依知川和大撮影 東京・奥多摩の白丸湖畔の木々が、秋の深まりとともに彩りを変えている。イタヤカエデやケヤキ、モミジ……。赤や黄色の濃淡が水面を囲む。 白丸湖は、多摩川をせき止めた発電用のダム湖だ。湖面はエメラルドグリーン。カヌーやスタンドアップパドルボード(サップ)を楽しむ人たちが「ここ東京?」「水がとってもきれい」と驚くという。(迫和義) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
妻殺害され22年、手元に置き続けた遺骨「もう少し、頑張らないと」
22年間、手元に置いてきた遺骨を墓に納めた。高羽悟さん(65)は1999年、名古屋市西区の自宅で妻の奈美子さん(当時32)を殺害された。当時2歳で現場に居合わせた長男が独り立ちし、気持ちに区切りをつけたが、事件解決への思いに区切りはない。 今月7日、名古屋市内で納骨式があった。長男の航平さん(24)も駆けつけた。 息子の成長を近くで見守ってもらおうと、遺骨は実家の仏壇に置いていた。航平さんは昨春、大学を卒業して東京都内の広告関連会社に就職。2年前には、奈美子さんと仲が良かった高羽さんの父親の納骨をしていた。 「高羽家の墓に入っても、これで寂しくないだろう」と心を決めた。 事件の1カ月前、家族でディズニーランドに行った。奈美子さんの母親と同居するために分譲マンションも契約した。「人生で今が一番幸せな時かもしれない」。奈美子さんの言葉が今も胸に残る。 事件後、家族の思い出を刻むはずだったマイホームを解約。一緒に行こうと話していた近くの大型商業施設は今春閉店した。 手がかりが残っているかもしれないという望みから、現場となったアパートを借り続け、払った家賃は2千万円を超えた。 仏壇に手を合わせると、「一人になったんだな」と寂しさが募る。 ただ、広島県福山市で20年前に主婦が自宅で殺害された事件では、先月、容疑者が逮捕された。 もう少し、がんばらないと――。そう思い直している。 ◇ 高羽さんは命日の13日、事件現場近くの商業施設で情報提供を呼びかけるチラシが入ったマスクを配った。 この事件では、解決につながる有力情報の提供者に「捜査特別報奨金」(最大300万円)が支払われる。10月末までにのべ622件の情報が寄せられた。 愛知県警の捜査員も遺族と思いは同じだ。事件当時、捜査1課にいた捜査員は「小さいお子さんがいて、気がかりだった。優秀な捜査員が集まる班が投入されたんだが……」。別の捜査員も「犯人の血痕も足跡もあり、すぐにつかまると思っていた。早く解決してほしい」と思いを口にする。情報提供は西署(052・531・0110)へ。(藤牧幸一) 〈名古屋市西区の主婦殺害事件〉 1999年11月13日午後2時半ごろ、高羽奈美子さんが自宅で首を刃物で刺され、亡くなっているのが見つかった。玄関に残された血痕のDNA型鑑定などから、犯人は血液型B型の女で、靴のサイズは24センチと判明。現場近くでは、手から血を流した中年の女が目撃されている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
下品から上品に変わった女言葉 「女は女らしいはずだ」の幻想は続く
「だわ」や「のよ」の頻出する翻訳小説や映画の吹き替えには「そんな風に話す人本当にいる?」と違和感を抱きます。一方で、男女の話し方は全く一緒というわけでもありません。社会を映し出す「言葉遣い」と性差について考えました。 言語学者・中村桃子さん 「女言葉」の位置づけ、変わる日もある? いま、私たちが「女言葉」と認識している「だわ」「のよ」といった言葉づかいの起源は、明治時代の女学生の話し言葉です。ただ、当時は正しい日本語とは扱われず「良妻賢母には似合わない」「下品で乱れた言葉」だと、さんざん非難されていたのです。 女言葉が正統な日本語に位置づけられたのは、朝鮮半島や台湾などの植民地でとられた同化政策の中でのことです。「女と男で異なる言葉遣いをする」のが日本語のすばらしさであるとされ、多様な言葉づかいの一部だけを「女言葉として語る」ことで、概念が生み出されました。 戦後は日本のプライドを取り戻すため、女言葉はさらに称賛されるようになります。その中で、「女学生のはやり言葉」だったはずが、起源を捏造(ねつぞう)され、「山の手の中流以上の良家のお嬢さまの言葉」だったと喧伝(けんでん)されるようになります。日本女性は丁寧で控えめで、上品だという「女らしさ」と結びつけられ、「女ならば女言葉を使うはずだ」という意識も生まれました。 戦後、大量に輸入されるようになった海外の映画や小説の翻訳に女言葉がさかんに使われ、定着していった背景には、こうした歴史があります。翻訳家の中には女言葉を多用することに批判的な意識を持つ人もいる一方で、「女言葉を使わないことに違和感がある」という理由で、使っている人も多いです。 記事後半では、中村さんが「オネエ言葉」の前向きな意味についても語ります。米言語学者のマーク・リバーマンさんは、英語圏にも女性の言葉遣いへの偏見があるとして、データをもとに通説の誤りを指摘。「ダ・ヴィンチ・コード」翻訳者の越前敏弥さんは、女言葉の「~わ」「~のよ」を使うのは「必要悪」だと語ります。 ドラマの吹き替え作品を手が… この記事は有料会員記事です。残り3701文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Think Gender 男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[記事一覧へ] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
森を抜けて岩場を登って……玄界灘の絶景に会える 福岡・志摩芥屋
会員記事 文・鳥居達也、写真・藤脇正真2021年11月13日 17時00分 芥屋の大門展望所へと続く遊歩道。一歩足を踏み入れると、幻想的な世界が広がる=2021年10月15日午後、福岡県糸島市志摩芥屋、藤脇正真撮影 遊歩道の両脇の樹木がトンネルをつくり、「トトロの森」を思わせる幻想的な世界が広がる。体感しに行こう。福岡県糸島市へ。 玄界灘にドラゴンの頭のように突き出た北部九州の糸島半島。その北西端に位置する志摩芥屋(けや、福岡県糸島市)が最近、観光客の人気を集めているという。秋晴れの現地を訪ねた。 まず海に向かって大口を開ける奇岩「芥屋の大門(おおと)」近くの公園へ。玄界灘が望める小さな展望台にかけて登り口から180メートルほど続く遊歩道がある。うっそうとした雰囲気がたちこめる通称「トトロの森」。徒歩約5分で到着する展望台からの眺望もなかなかだが、これはまだ「序の口」だ。 奥行き90メートル、間口10メートルの芥屋の大門は国の天然記念物。旧志摩町の町史などによると、鎖国政策を進めた徳川幕府によって1645(正保2)年、異国船の来航を監視する芥屋遠(とお)見(み)番所が置かれた。付近一帯は1960(昭和35)年、東映映画「海賊八幡船(ばはんせん)」のロケ地になり、村上水軍の本拠地入港のシーンが撮影されたという。 記事後半では、地元で人気のグルメスポット紹介や会員登録すると応募できるプレゼントもあります。 ここから「志摩サンセットロ… この記事は会員記事です。残り869文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
小学生の妹弟残して母は出て行った 学校行かず、支援学級へ送り迎え
「お母さんが出ていって、今、家で妹と弟と3人なんだ」 昨年6月、東京都内で経済的に厳しい家庭の子を支援する団体が開く居場所に来ていた中学2年(当時)の男子生徒(15)が、打ち明けた。 母は持病の精神疾患の症状が悪化し、「入院するから」と言い、2、3日前に家を出た。生徒と小学生の妹と弟は自宅に残された。 支援団体の50代の女性は言葉を失ったが、「大変だったね。とりあえず様子を見に行かせて」と言った。 きょうだいの送り迎えで自分は遅刻、先生にも言えず その日のうちにスタッフが家を訪ねると、部屋中にごみがたまり、生徒と妹と弟は部屋の隅で過ごしていた。 生徒はひとり親家庭で、母が… この記事は有料会員記事です。残り1488文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
電車内で足を投げ出し怒声、威嚇… おびえる乗客、そのとき職員は
東京都内を走る京王線の電車内で、乗客17人が重軽傷を負った事件から約1週間後となる今月上旬の夕方、東京都心と横浜を結ぶ東急東横線の各駅停車の車内で、男性客が他の乗客に怒鳴り散らしていた。 男性はシートに座ったまま両足を前に投げ出し、両脇には大きなポリ袋を2、3個置いていた。近くに座った人、ドア付近に立つ人を次々と威嚇していく。帰宅の時間帯にさしかかり、6、7人が座れるシートの大半は埋まっていたが、男性がいたシートだけほとんど誰もいなくなった。 多くの乗客が視線をそらしたり、うつむいて携帯電話を見たりしてやり過ごした。同じ車両から下車する子どもが小声で母親に「なんで怒るのかな」。おびえた様子だった。 「停車します」日吉駅でアナウンス、そして…… 記者が偶然、居合わせた。10月31日夜に東京都調布市内を走る京王線の車内で、男が刃物を使うなどして17人が重軽傷を負った事件が頭によぎった。 記者が乗ってから数分後、電… この記事は会員記事です。残り1929文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル