新型コロナウイルスのオミクロン株の市中感染が確認された福岡県で26日、感染に不安を感じる無症状の県民を対象にした無料のPCR検査と抗原定性検査が始まった。オミクロン株の市中感染確認は大阪、京都、東京に続いて4都府県目。福岡県は今後、薬局などでも無料で検査できるようにする。 感染者を早く発見して拡大を封じ込めることと、県民の不安を解消することがねらい。県内では「ワクチン・検査パッケージ」として、健康上の理由などでワクチンを接種できない人や12歳未満の子どもを対象にした無料検査が24日から始まっていた。だが25日にオミクロン株の市中感染者が1人確認されたため、国と協議。ワクチンを接種した県民も無料で検査を受けられるようにした。 26日に無料検査が始まった… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
数年前から通院、構造を把握か 容疑者は脳に損傷 大阪のビル放火
大阪市北区の雑居ビルで17日に発生し、25人が死亡した放火殺人事件で、容疑者の男が現場となったクリニックに2、3年前から通院していたことが捜査関係者への取材でわかった。クリニック関係者らの証言から判明した。男は患者として通う中で院内の構造を把握していたとみられる。 男は住所、職業不詳の谷本盛雄容疑者(61)。大阪府警によると、事件後のビル内に容疑者名義の診察券が残されていた。 谷本容疑者は、事件の1カ月ほど前からビルの約3・5キロ西にある大阪市西淀川区の住宅に滞在。府警は事件後に住宅を家宅捜索し、クリニックから処方された薬の袋を押収した。関係者の証言も含め、府警は谷本容疑者が2、3年前から通っていたとみているが、電子カルテの復元などを通じてさらに確認する。 院内の防犯カメラ映像の分析で、府警は、谷本容疑者が2カ所あるクリニックの出入り口の両方に火を放ち、多くの人を巻き込んだとみている。院内の消火栓扉は動きにくいよう工作されており、府警は谷本容疑者が患者として通う中で構造を把握し、計画的に事件を起こしたとみている。 谷本容疑者は事件の約3週間… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
奈良県で初のオミクロン感染 米国から帰国「市中感染考えにくい」
奈良県は26日、県内の20代の女性が新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」に感染したと発表した。県内のオミクロン株の感染者は初めて。市中感染の可能性は低いという。 県によると、女性は19日に米国から羽田空港に帰国。同じ便にオミクロン株の感染者が乗っていて濃厚接触者とされたが、検疫検査は陰性だった。 14日間の待機期間中は県内の宿泊療養施設に入り、22日に発熱して入院した。県保健研究センターのゲノム解析で25日、オミクロン株と確認された。女性は現在も入院中だが、熱は下がっているという。 女性は一人暮らしで、空港から自宅まで公共交通機関を使っていなかった。県の担当者は「基本的には市中感染とは考えにくい」と話している。(清水謙司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
長期避難解除 でも集落は解散へ 九州北部豪雨で被災の福岡・朝倉市
2017年の九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市で6地区91世帯に出ていた長期避難世帯の認定が、今月1日までにすべて解除された。国が巨額を投じた復旧工事は進むが、それに伴って家を奪われた人も多く、地区に戻る住民は少ない。災害が決定打となり、集落ごとに定められた地区をやむなく「解散」する動きも出ている。 ダンプカーが土ぼこりをあげる細い道を約3キロ、沢沿いに上ると、人家の跡がいくつかあった。長期避難が1日に解除された乙石(おといし)地区。だれもいない山里に、砂防ダムを造るパワーショベルの音が響く。「帰りたくても、家を建てる場所がない」。避難先から様子を見にきた区会長の佐藤達美さん(71)がつぶやいた。 17年7月5~6日、朝倉市や福岡県東峰村、大分県日田市などを線状降水帯による猛烈な雨が襲った。河川の氾濫(はんらん)や土砂崩れが多発し、朝倉市だけで33人が亡くなり、2人が行方不明となった。 朝倉市で特に被害が集中したのは、大分県境に近い山間部。別荘も含めた12世帯のうち9世帯が全壊した乙石地区は18年、ほかの5地区と合わせ、被災者生活再建支援法に基づき、二次被害を避けるための対策工事が終わるまで住めない「長期避難世帯」に認定された。 対象となった6地区ではこの4年間、復興工事が進んだ。一方で、下流域を次の災害から守る砂防ダムの新設が、元々の暮らしの場を奪った。 乙石地区では、中心部に6基の砂防ダムを造るため、残っていた家も撤去された。代わりの宅地はダム完成後に造成される予定だが、家が再建できるのはさらに数年先。住民には高齢者も多く、ほとんどが地区に戻ることをあきらめ、公営住宅などにすみかを定めた。 佐藤さん自身も、息子が市外に2世帯住宅を建て、妻も「帰りたくない」と漏らす。「自分ひとり帰ったとしても、集落として成り立たない」 5日に開いた集落会議では、ダム完成後に市が整備予定のメモリアル広場(仮称)ができたら、地区を解散する方針を決めた。「さみしいけど、けじめをつけないと。それが地域への恩返しだと思う」 昨春、長期避難を解除された… この記事は会員記事です。残り968文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日本海側を中心に、大雪や暴風雪に警戒を 空の便も欠航相次ぐ
2021年12月26日 15時07分 強い冬型の気圧配置が続く影響で、気象庁は日本海側を中心に大雪や暴風雪への警戒を呼びかけている。大雪は28日まで続く見込みで、太平洋側の平地でも大雪となる恐れがあるという。 26日午後2時時点で、この24時間で最も降雪量が多かったのは新潟県妙高市で82センチ、鳥取県大山町で72センチ、群馬県みなかみ町で69センチ。 27日午前6時までの24時間に予想される降雪量はいずれも多いところで、北陸90センチ▽近畿、中国80センチ▽東北70センチ▽関東甲信60センチ▽北海道、東海40センチ▽四国、九州北部20センチ▽九州南部10センチ。 日本航空は26日、北海道や日本海側で発着する35便を欠航。全日空も77便の欠航を決めている。また、NEXCO中日本は、北陸自動車道(金沢森本IC―小杉IC)を同日午後6時から通行止めにする予定で、降雪が予想される区間の高速道路の使用を控えるよう注意を促す。 ◇ 東京管区気象台は26日午前0時10分ごろ、港区虎ノ門の気象庁で初雪を観測したと発表した。昨季より17日早く、平年と比べても8日早いという。 観測班の担当者は「顔にぽんと当たり、白い固形物を目視したため、降雪とした」と話す。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
衆院選で買収の疑い、自民・古川康氏の選挙事務員らを逮捕 佐賀
大村久2021年12月26日 15時23分 10月31日投開票の衆院選で、特定の候補者の選挙運動をする見返りに報酬を支払うなどしたとして、佐賀県警は26日、佐賀市嘉瀬町の小林祐子容疑者(63)と同市兵庫南2丁目の映像制作会社経営、保利一誠容疑者(38)を公職選挙法違反(買収)の疑いで逮捕し、発表した。県警は2人の認否を明らかにしていない。 関係者によると、小林容疑者は10月の衆院選で佐賀2区に自民党公認で立候補し、比例九州ブロックで復活当選した元佐賀県知事、古川康氏(63)の選挙事務所の事務員。 県警によると、小林容疑者は11月25日、SNSなどに投票を呼びかける内容の投稿をした選挙運動の報酬として、保利容疑者に計43万5千円を支払い、保利容疑者は受け取った疑いがある。保利氏の報酬が5万6千円、数人の選挙運動員に対する報酬の資金が37万9千円だったという。 保利容疑者は今月7日、SNSなどを利用した選挙運動の見返りに複数の選挙運動員に金銭を支払う約束をしたとして、公選法違反容疑(買収の約束)で逮捕されていた。(大村久) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
開高健が愛した越前ガニ なじみの旅館の特製丼、今も健在
1番ガニがサンバーイ! 2番ガニはゴハーーイ! 福井県越前町の越前漁港。カニ漁が始まって1カ月が経過した12月7日の朝に訪れると、そこは競りの活気に満ちていた。 地べたにびっしりと並ぶカニ。辺りに響く競り人のかけ声。仲買人たちは次々と競り落とし、発泡スチロールに入れて素早く運び出していく。 「今年は高いぞ」 競りの手伝いをしていた元漁師の男性。高揚感たっぷりにこう話した。 タラバガニ、毛ガニ、ワタリガニ……。中でも「ズワイガニは甘みもうまみも抜群」(男性)。とりわけ、福井ブランドの「越前がに」は、三国港(坂井市)に水揚げされた雄ガニが皇室へ毎年「献上がに」として送られるなど、地元の誇りでもある。 競り場の近くで船を片付けていたのは、漁師の家に生まれて4代目の山下弘嗣さん(34)。「カニのシーズンで年収の8割くらい稼ぐ」と胸を張った。 県内では1997年以降、産地を証明する黄色のタグをつけ始め、ブランド化が進んだ。2015年からは重さ1・3キロ以上など、条件をクリアした雄ガニを最高級の「極(きわみ)」として売り出している。11月にあった町内の朝市には、県外ナンバーの車が押し寄せ、飛ぶように売れていた。 町内の越前海岸沿いには、祖父母が同県坂井市出身の作家・開高健(1930~89)がカニを食べに通った旅館「こばせ」がある。5代目の長谷裕司(ひろし)さん(60)によると、食通の開高が、旅雑誌の編集部に紹介されて最初に訪れたのは1965年だったという。 雄も雌もよく食べた開高が残した色紙が旅館のロビーにある。 作家・開高健が愛したのは、いったいどんな特製丼だったのでしょうか。記事の後半で紹介します。 「この家ではいい雲古の出るものを食べさせてくれます」 ちゃめっ気あふれる開高が「やってごらんなさい」と作らせたのが、2合の飯にセイコガニ(雌)8パイ分の身を乗っけた丼だ。 今は「開高丼」として、ハーフサイズまで3種類が客に提供されている。しゃりしゃりした外子(受精卵)と濃厚な内子(卵巣)、うまみの強いみそなどが絡み合って、まさに日本海の宝石箱に思える。「名前をいただいた分、プレッシャーも感じる」と長谷さんが言う。 開高と同じ大きさの丼を食べなければ取材を尽くしたことにならない――。そう考えて長谷さんにオリジナルサイズのもの(税込み1万5400円)を相談してみたが、急な依頼のため、小さな丼も含めてかなわなかった。 一方で、カニは庶民の手が届きにくくなっている。 県水産課によると、「水ガニ」と呼ばれる脱皮直後の雄ガニも含めた平均では、キロ単価で2004年に3604円だったのが、20年は6289円と倍近くに。今年も11月末までに6088円。年末に価格は高騰するため、昨年とそう変わらなくなるだろう。 流通の仕方も独特だ。越前町漁協の南直樹さん(57)によると、多くの仲買人は注文を受けたうえで仕入れるから、一般の市場に並ぶカニは少ないという。 カニ旅館に料亭、すし店。競りでの売買の時点で卸し先も、入る口までもが決まっていることが多く、特に「今年は1キロで2万7千円から3万円程度」(南さん)という雄ガニは庶民の口になかなか入らないのが現実だ。 県内のある旅館ではセリ値の高騰を理由に、今シーズンは途中で越前ガニのランチをやめた。スタッフの女性によると、宿泊客はさすがに受けているが「もうけは全然ない」と明かす。漁師の山下さんも「漁師にとってはありがたいんだけど、お客さんに直接売るところでは本当に大変」と心配する。 そうした問題も認識しつつ、取材の仕上げにどこかで食べなければ。福井市中心部のお食事処「飛驒」でセイコガニ(この日は2500円)を出してもらった。 越前漁港に揚がった一匹。身は食べやすくきれいに並んでいる。ふと、疑問が浮かんできた。福井の酒と合わせると、どんな感じだろう? 美浜町の銘酒、早瀬浦を出してもらった。 セイコをちょびっと、お酒を一口、セイコをちょびっと、お酒を一口……。永遠に続けていたかった。 漁期はセイコガニが12月いっぱいで、残りわずか。雄のズワイガニは3月20日まで。(小田健司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「頂上でなくても、美しい景色が見える」 聖光学院校長が考える受験
入試シーズンが始まります。コロナ下で頑張る受験生たちへ、校長からのメッセージをお届けします。 受験とはつらく厳しいものですが、卒業生たちに聞くと「振り返れば楽しかった」との答えが返ってくることがあります。「仲間と同じ目的に向かって共に頑張ること」ととらえれば、それも分かります。本校では受験期の高3生に自習室を朝8時から夜9時まで日曜祝日含めて開放しています。食堂で提供する夕食は1日に80食以上です。自炊も可能で、味噌汁を作る生徒もいます。皆さんにも共に歩む仲間がいるはずです。 受験は人生の一里塚ではありますが、そこがゴールではありません。全力を尽くすことは大切ですが、受験だけが人生の勝負でもありません。目標と実際に自分が到達したところとの距離感をどう考えるか。その距離を受け入れることが人生を素敵に生きるコツなのかもと、最近思うのです。 山登りで言えば、頂上でなくても、それぞれの場所で美しい景色が見える。必ずしも第1志望に受からなくても、社長にならなくても、その人が輝けるステージというのが大事です。受かったところがその人にとっての第1志望。そこから次のステップに踏み出していく。実際の人生はその繰り返しです。 保護者も、子どもの頑張りを幅を持たせて受け止めてあげてください。子どもとの一定の距離感も重要です。近すぎると、良い面も見えなくなりがち。特に中学受験では後から「家族史のいい一コマだった」と思えるよう、親子で適度な距離を保って歩んでほしい。 このコロナ禍で分かったのは… この記事は会員記事です。残り998文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ここぼく」脚本の渡辺あや 「ドラマの企画が通らない」現場のなぜ
朝ドラ「カーネーション」など、作品が高い評価を受けてきた脚本家の渡辺あやさん(51)。2021年は、文化庁芸術祭賞の大賞に選ばれたNHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」(主演・松坂桃李)で、不都合な真実が隠蔽(いんぺい)される社会をブラックコメディーで描き、反響を呼びました。さらに「自分たちの作りたいものを作る」として、若者たちと企画・制作した自主映画「逆光」(須藤蓮(れん)監督・主演)が公開中です。島根に暮らす渡辺さんを訪ね、挑戦的な活動を続けるわけを聞きました。 古民家をリノベーションした仕事場の周りは木々で覆われている=池田良撮影 ――今春放送され、11月に再放送された「今ここにある危機とぼくの好感度について」(略称「ここぼく」)では、大学の理事会を舞台に、データの改ざんなど不祥事が起こる社会を大胆かつ痛烈な皮肉で描きました。 ここ何年か、社会で対話や議論がなくなり、政治で横暴な決定がされていることへの強い違和感がありました。国全体が変だという意識のもと、自分のなかでやれることをやりたいという気持ちが高まっていました。 同時に、視聴率などの経済効率ばかりが優先される、映画・ドラマ制作への危機感も強まっていました。この業界から創作の喜びが失われてしまっていると思います。創作の現場で、作り手が本気で胸を躍らせ、楽しんで作ってはいない。真剣に良い作品を作ろうとする人ほど、立場を追われたり、苦しんだりしている姿もよく見ます。 でもそんな危機感に共感してくれる人たちもいて、一緒に作品を作りました。楽しみながら丁寧に作ってきた作品を、自分たちなりの旗だと思っています。 最初に掲げた旗は、2018年に放送されたNHK京都局制作のドラマ「ワンダーウォール」でした。 わたなべ・あや 1970年大阪市生まれ。2003年、「ジョゼと虎と魚たち」で脚本家デビュー。初のドラマ「火の魚」(09年)で文化庁芸術祭大賞、「その街のこども」(10年)が放送文化基金賞本賞。初の連続ドラマ「カーネーション」(11~12年)が朝ドラとして初のギャラクシー賞大賞。企画・脚本を担当した「逆光」は東京・渋谷ユーロスペースで公開中。22年1月7日からアップリンク吉祥寺で公開し、のち全国公開予定。22年は冤罪(えんざい)をテーマに初めて民放で連続ドラマも予定。 「ワンダーウォール」で問うたこと ――「ワンダーウォール」では、学生寮をめぐる大学当局と学生たちの対立を描き、大学の自治とは何かを問いました。現実の京大吉田寮の存廃問題に重なります。 現実に、大学寮の存廃をめぐって長年学生と大学の間で続けられてきた対話が、突然打ち切られ、以来大学側は取材も受けつけないという状況がありました。世界中が分断され、あちこちに壁がつくられている現状と重なって見えました。本来、大学は国家の権力から一番遠いところにあってほしいのに、無残に影響を受け、変わっていっているように思います。運営費交付金をもらうために国が喜ぶような研究をしなければならなくなっている。 さらに危機感を抱いたのは、学生たちがそうした現状に異議を唱えづらい空気になっていることです。社会の不寛容性も深刻だと、大人の一人として感じました。おかげさまでドラマは反響が大きく、20年に劇場版が公開されました。 「ここぼく」は同じ状況を、大人側から描いてみたいと思って作ったドラマです。 ――大学の理事会の不祥事、データの改ざんなど、「ここぼく」が現実社会の危機的状況と大胆にリンクしているのに驚きました。 実は最終話を書いている途中にコロナ禍が深刻化し、いったん執筆を中断しました。そもそもは研究施設から謎のウイルスが流出したという設定だったのです。皆で悩みに悩み、蚊の流出による病気発生という設定に変更して完成させました。あまりに現実と内容がリンクしてしまって、このドラマをどう着地させるべきかにずいぶん考え込みました。 ――「ワンダーウォール」は… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
両性愛告白の職員に「言わない方がいい」と上司 「不適切だった」
兵庫県尼崎市の幹部が、バイセクシュアル(両性愛者)の男性職員に対し「市民に(性的指向を)言わない方がいい」と指導していたことが分かった。男性はその後、依願退職した。同市は性の多様性を尊重する取り組みに積極的なことで知られるが、職員の研修をさらに進めるという。 市によると、2019年11月、この幹部に市民団体から「職員に性的指向を明かされて困惑した」と相談があった。翌月、幹部ら上司3人は男性と面談。市や男性によると、幹部は団体側の意見を踏まえ「社会全体が成熟しているわけではないから、言葉を選ぶべきだ」などと指導。幹部は「私だったら白血病だったり借金があったりしても、相手にどう思われるか分からない私的なことは市民に言わない」とも言った。 男性は3カ月後、退職した。「言葉を選ぶ教育ができていなかったとまで言われ、一方の意見をうのみにして問題視する市にがっかりした」と話す。 男性によると、性的指向を話したのは、業務で団体の人と面会した際、「彼女は? 結婚は?」と繰り返し聞かれたためで、「男性のパートナーがいる」と答えたという。幹部からの指導について「病気や借金と同列に論じられて納得できなかった」と話す。男性が性的指向を知らせていない別の上司を面談に同席させたことも問題視する。 当事者や支援者らでつくるLGBT法連合会事務局長の神谷悠一さんは「一方の意見をうのみにし、一方的に指導していることがまず問題だ。結婚について繰り返し聞かれたことへの返答に、改善が求められるのもおかしい。これは二次被害的で、本人は存在を否定された気持ちになったのではないか」と言う。 職場で性的指向や性自認についてカミングアウトするのを止めたり強制したりすることについて、厚生労働省は「不適切」と示している。神谷さんは「市は(幹部に相談した)市民に性の多様性について説明し、調整すべきだった」と指摘する。 尼崎市は、性的少数者のカップルを婚姻に相当する関係と公認する「パートナーシップ宣誓制度」を20年1月に導入するなど、性的少数者への理解を広げる取り組みを進めている。 幹部の発言があったのは、市が管理職に性的マイノリティーに関する研修を必修で始める前だった。 市幹部は取材に「いま思えば不適切な言い方だった。反省している」と述べた。面談に同席した上司も「これは人権問題だと、いまになって分かった。性の多様性への理解を職員にも市民にも周知していきたい」と話した。 市は発言があった経緯や問題点について詳しく調査するという。 また、市幹部に相談した市民団体のメンバーは取材に「差別や個人攻撃をするつもりはないと断った上で話した。なぜこんなことになったのか分からないし、残念だ」と話した。(中塚久美子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル