全国でイノシシやシカなど野生動物の生息域が広がり、農作物の被害がやまない。人口減少や高齢化による耕作放棄地の拡大が要因とみられるが、従来いなかった東北や北陸に入り込んでいるのは、気候変動に伴う温暖化が一因との指摘もある。被害の一方で、野生動物を地域おこしに生かす試みもある。 秋田と青森でイノシシ初確認 岩手県遠野市の山あいにある小友町の集落には、田んぼが一面に広がる。12月初め、足元にはあちこちにニホンジカのフンや足跡が残っていた。 収穫直前に田んぼを荒らされた菊池陽佑さん(37)は「年々食害がひどくなっている」とため息をつく。 肥料と農薬を使わない米作りを始めて11年になる。被害を防ごうと、これまでも電気柵、今年はネットを巡らせ、敷地にわなも仕掛けたが、被害はやまない。 最近は近所でイノシシも現れ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「路上横たわり」事故、都内で相次ぐ 飲み会増える年末年始に注意
大山稜、角詠之2021年12月25日 11時30分 路上に横たわっていた人が車にはねられる事故が東京都内で続いている。今年は11月までに20件あり、16人が重軽傷を負い、4人が亡くなった。12月も20日までに2人が死亡。警視庁は歩行者と運転者の双方に注意を呼びかけている。 府中市の国道20号(甲州街道)では12日、会社員の男性(47)がタクシーにひかれ亡くなった。職場の飲み会の帰りだった。15日未明にも葛飾区の路上で契約社員の男性(61)が乗用車にはねられて亡くなった。ともに午前4~5時の発生で、運転者は衝突直前まで人影に気づかなかった。 警視庁によると、こうした事故は昨年33件あり、12人が亡くなった。歩行者が死傷した事故では亡くなる割合が群を抜いて高かった。次は「横断歩道、歩道橋の付近を横断中」の3・3%、「横断歩道を横断中」の1・6%だった。 こうした事故で刑事責任を問われた運転者の弁護経験のある高山俊吉弁護士は「飲酒によって加害者を出さないという意識は、歩行者側も持つ必要がある」と指摘する。 都内では緊急事態宣言が解除された10月1日以降、11月末までに東京消防庁が急性アルコール中毒の疑いで救急搬送した人は2012人。8~9月の計1023人の2倍近かった。同庁は無理な飲酒をしないよう注意を呼びかけている。(大山稜、角詠之) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
最古の貨幣の報告書、刊行してなかった 16年間「刊行済み」と公表
清水謙司2021年12月25日 11時30分 国内最古の貨幣・富本銭(ふほんせん)が出土したことで知られる飛鳥池遺跡(奈良県明日香村)の発掘調査報告書について、奈良市の奈良文化財研究所(奈文研)は24日、実際には刊行されていないのに、「刊行済み」として約16年間にわたって公表してきたと発表した。執筆や編集作業の遅れが原因という。未刊行のまま印刷業者に代金を支払っていた。 独立行政法人国立文化財機構は20日付で、本中眞所長を厳重注意とした。 飛鳥池遺跡は7世紀後半の工房遺跡。奈文研は1991~2001年、断続的に発掘調査を実施。出土した富本銭(7世紀後半)は当時最も古いとされた和同開珎よりも古く、貨幣史を塗り替える発見として注目された。01年には「飛鳥池工房遺跡」として国の史跡に指定された。 奈文研によると、当初は報告書を04年度末に刊行予定だった。出土遺物が膨大だったことなどで内部の編集作業が大幅に遅れた。作業はそれ以降も少しずつ続けられてきた。だが、奈文研のウェブサイトでは刊行物一覧の一つとして紹介されたままで、虚偽表示の状態が続いていたという。 一方で、印刷業者とは04年度に契約を結び、約910万円を支払っていた。 今年4月に就任した本中所長に「未刊行だが経費は支払い済み」などとする情報提供があった。奈文研内部につくった調査委員会が今年7月から原因を調べ、報告書は12月20日付で刊行された。 本中所長は記者会見で「組織として是正措置を取ることがないまま、16年以上の長い時間を費やした。事態を反省するとともに、多くの人に改めて謝罪したい」などと述べた。(清水謙司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
若者や女性の自殺増、国が対策を 高橋まつりさん母が命日に手記
広告大手・電通(現電通グループ)の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労自殺してから、25日で6年となる。母の幸美さんが命日にあわせて手記を公表し、「長時間労働やパワハラで悩んでいる人は、どうかSOSをだしてください。娘のようにぎりぎりまで頑張らないで欲しい」とつづった。 厚生労働省が今年発表した自殺対策白書によると、2020年は若者や働く女性の自殺が大きく増えた。幸美さんは精神障害による労災申請が増えていることとあわせて、「胸を痛めています。国は自殺防止、過労死等の撲滅に取り組んで欲しい」と求めた。 3年ぶりとなる国の「過労死… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「黒い雨」救済案、地元同意で決着へ 「新たな線引き」被害者反発
広島への原爆投下後に降った「黒い雨」をめぐり、雨に遭った人を被爆者と認めるか審査する厚生労働省の指針案について、広島市と広島県が24日、受け入れを表明した。司法判断が否定した「がんなど11類型の病気にかかっていること」が要件に残されたが、早期決着を優先した。 同省は来年4月の運用開始をめざす。だが、黒い雨に遭った人たちからは「新たな線引きだ」と早くも反発の声が出ている。 指針案は長崎への原爆投下時に郊外にいた「被爆体験者」は対象外とした。同省は長崎市、長崎県との協議を年明けも続けるという。 黒い雨について、今年7月の広島高裁判決は「雨に遭った」だけを認定要件とし、病気になっているかを問わず、原告84人全員を被爆者と認めた。当時の菅義偉首相は上告を断念し、原告と「同じような事情」にある人は救済する方針を表明した。これを受け、厚労省と広島、長崎の自治体が協議を重ねてきた。 厚労省が23日に示した案では、「同じような事情」の人の認定について、「雨に遭った」に加え、がんや白内障など「11類型の病気にかかっていること」を求めることにした。白内障のみは過去の手術歴でも認めるとした。 松井一実・広島市長は「(案に)賛成できないが、一刻も早く救うという手続きの重みも考慮した」。湯崎英彦・広島県知事は「まず救済できる方を優先した」と述べた。(福冨旅史、比嘉展玖) 「また仲間はずれか」怒りの声渦巻く 原爆投下後の広島で降った「黒い雨」に遭った人を被爆者と認定する審査指針案に地元自治体が同意した。「特定の病気にかかっていること」という、今年7月の広島高裁判決が否定した要件が設けられることになったほか、長崎の「被爆体験者」も対象外とされた。被害者らからは失望や怒りの声が相次いだ。 松井一実・広島市長と湯崎英彦知事は24日夕、それぞれ記者会見を開き、国の案を受け入れる意向を表明した。松井氏は「(国の案に)賛成できない」としつつ、国が白内障の人は過去の手術歴でも認めるとしたことで「限りなく多くの方が救われる設定になっている」とし、病気の要件が残ったままでも、大多数の被害者は認定されるとの見方を示した。 湯崎氏も「まず救済できる方を優先した」と述べ、対象外になる人については「引き続き救済対象となるよう(国に)働きかけていく」として理解を求めた。 広島からは批判の声が上がった。「黒い雨」訴訟の原告らでつくる団体は24日、黒い雨が降った地域にいた人は「黒い雨に遭った者」とし、病気を要件とせずに被爆者と認めるよう、厚生労働省や市、県に文書で要請した。原告団長の高野正明さん(83)は「判決から5カ月も過ぎて、今さら病気の発症を要件とするのは認めるわけにいかない。厚労省への信頼を失った」。訴訟弁護団の竹森雅泰事務局長は「黒い雨の被害者を分断する恐れもある。県と市には粘り強く国と交渉してほしい」と憤った。 「また自分は仲間外れにされた」。今中康昭さん(77)=広島市安佐南区=は失望感をあらわにした。1歳半の頃、爆心地から約9キロ離れた旧安村(現・安佐南区)で黒い雨を浴びたが、新要件の病気にはかかっていない。高裁判決で「やっと自分も認めてもらえる」と期待したが、「がっかりだ。被爆者と認められず、つらい思いをする人のことを国は考えていない」と語った。 広島の主要な被爆者7団体も24日に会見し、病気要件を外すよう強く求めた。広島県原爆被害者団体協議会の箕牧(みまき)智之(としゆき)理事長(79)は「被爆者としては絶対に反対だ。(県や市は)安易に答えを出さず、被爆者を入れて議論をさせてほしい」と述べた。新指針について「必ず外れる人がいる。同じ黒い雨に遭ったのに気の毒でしょうがない。認めるか認めないかで壁ができ、また新たな裁判が起きるだろう」と懸念した。 もう一つの広島県被団協の佐久間邦彦理事長は「早急に結論を急ぐのではなく、黒い雨に遭った人全員が救済される方針を決めてほしい」と話した。 長崎「被爆体験者」は対象外に 長崎への原爆投下後、郊外に拡散した放射性物質の影響を受けたとされる「被爆体験者」も、厚労省は新指針の対象にしないと明言した。 長崎市調査課の林尚之課長は「長崎として今の指針案では受け入れ難い思いは変わらない。引き続き協議を求めるが、27日の国への回答に向けて詳細検討中だ」と話した。さらに「広島が受け入れれば新たな指針案の運用が始まるのか、長崎の合意も必要なのか。どういうルールか国から知らされていない」と語った。 長崎県の担当課は「27日の回答に向けて現在協議中」とだけ話した。(福冨旅史、三宅梨紗子) ■司法判断軽視、地元自治体も… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
もがいた痕跡に「下手に動かすと危険」 女性救った新聞配達員の機転
安田琢典2021年12月25日 8時06分 玄関先で倒れていた独り暮らしの高齢女性を救助したとして、朝日新聞などを配達する青森県むつ市の高見新聞店が24日、宮下宗一郎市長から礼状を贈られた。同店は日頃から高齢者の安否を気遣っているといい、高見公也代表(62)は「何かあったら連絡するよう従業員に徹底してきた。これからも頑張る」と喜んだ。 助けたのは同店社員の竹林厚志さん(46)。バイクで配達中だった今年10月末の午前4時、同市奥内の一戸建て住宅の玄関前で、うつぶせで倒れていた女性を発見。「大丈夫ですか」と声をかけると、「起きられない」と答えてきた。 周囲の地面には、必死にもがいたような痕跡があった。「下手に動かすと危ないかもしれない」と考えた竹林さんは、近所に住む2人を呼ぶとともに、救急車を手配。こうした機転が奏功し、一命を取り留めた。女性が前日夕から倒れていたことを知った竹林さんは「あの日は冷え込んでおらず、雨も降っていなかった。幸運が重なった」と振り返った。 同市は2014年度から高齢者等見守りネットワーク事業を展開。業務中に高齢者の異変を察知した場合、市に通報するシステムに、同店など113事業者が参加している。礼状を手渡した宮下市長は「日頃から見守ってもらっていることの結果。これからも高齢者の変化に気をつけてほしい」と話した。(安田琢典) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
オミクロン株の濃厚接触者は追試験へ 共通テストなど 文科省が指針
来年1月実施の大学入学共通テストなどでの新型コロナ対応をめぐり、文部科学省は24日、オミクロン株感染者の濃厚接触者となった人は無症状でも本試験を受験させず、追試験を受けてもらうとの方針を明らかにした。それ以外の濃厚接触者は、PCR検査の陰性などの条件を満たせば、本試験を受けられる。 各大学などに示しているコロナ対応のガイドラインを改めた。これまでは無症状の濃厚接触者について、①PCR検査などで陰性②試験当日も無症状③公共交通機関を利用しない④別室で受験――の4条件を満たせば本試験の受験を認めてきた。だが、オミクロン株の濃厚接触者は自宅待機ではなく、宿泊施設での待機となったことから改定した。どの株の感染者の濃厚接触者か試験当日まで分からない場合、4条件を満たせば受験できる。大学入試センターや各大学は改定を踏まえて対応する見通し。(三浦淳) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
公明・遠山元議員ら4人、27日にも在宅起訴へ 違法な融資仲介事件
公明党の国会議員2人の事務所が日本政策金融公庫の融資仲介を無登録で繰り返していたとして、東京地検特捜部は遠山清彦・元衆院議員(52)のほか、太田昌孝・前衆院議員の元政策秘書、あっせん業者2人の計4人を貸金業法違反(無登録営業)の罪で27日にも在宅起訴する方針を固めた。 遠山氏と太田氏の元秘書はそれぞれ数十件を仲介し、いずれも約1千万円の謝礼を受け取った疑いがある。4人とも無登録営業の違法性や謝礼の授受を認めているという。 関係者によると、あっせん業者2人は社長が詐欺罪で起訴された太陽光関連会社「テクノシステム」(横浜市)の元顧問。2020年春に始まったコロナ対策の特別融資などを希望する企業を公庫に取り次ぐよう遠山事務所と太田事務所にそれぞれ依頼し、企業側から手数料を得たという。 数十件で約1千万円の謝礼か 遠山氏は数十件について、企… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「なぜ執行日を教えない」ある死刑囚の問い 平常心と恐怖心に揺れて
「廃止か存続か」の二者択一だった死刑論議。執行を直前まで本人に告知しないのは憲法違反だとの訴えが起き、執行のプロセスなど「刑の実態」に光が当たった。2年ぶりの執行を機に考えたい。 死刑の是非めぐる議論への違和感 ノンフィクション作家・斎藤充功さん 千葉県内でマブチモーター元社長宅に押し入って元社長の妻と娘を殺すなど、強盗殺人で計4人を殺害した小田島鉄男死刑囚と11年間、面会を続けました。「処刑の日まで付き合う」と約束して身元引受人になり、2017年に食道がんで死亡するまで、東京拘置所通いは131回に及びました。 同世代ということもあり、食糧難の中で育った互いの子ども時代の話をするなど、時には口論になりながらも、付き合ってきました。死刑確定後の面会は、親族以外には厳しく制限されるなかで、彼にとって身元引受人である私が、ほぼ唯一の面会相手でした。 11年間、小田島鉄男死刑囚と面会を続けた斎藤充功さんは「『死刑囚の心情は計り知れない』ということを、知ろうとすることは必要」と話します。 記事後半では、刑事学研究者の永田憲史さんが死刑確定者の恐怖や苦痛の観点から、告知は「死刑確定者が選べるようにすべきです」と話します。ドキュメンタリー映画監督の坂上香さんは、米国で死刑囚の「最後の晩餐」メニューが新聞に掲載されたことなどを例に、日米の情報公開の違いについて述べます。 「なんで死刑執行は、事前に… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「あたかも政治警察のように排除」 北海道警ヤジ訴訟の原告主張
2019年の参院選で、札幌市で街頭演説中の安倍晋三元首相にヤジを飛ばした男性(33)と女性(26)が北海道警の警察官に取り押さえられ排除された問題で、2人が憲法が保障する「表現の自由」を侵害されたとして道に慰謝料などを求めた訴訟の口頭弁論が24日、札幌地裁(広瀬孝裁判長)であり、双方の主張が平行線のまま結審した。判決は来年3月25日の予定。 争点は、排除が必要なほど切迫した危険性があったかどうかだ。 この日の弁論で、道警側は「聴衆が原告の2人に危害を加える可能性があった」などと改めて主張。原告側は「危険な事態など存在しなかった」と真っ向から否定した。 JR札幌駅前で「安倍やめろ」とヤジをとばした原告男性が排除された時の状況について、9月の証人尋問で警察官が「『おまえが帰れ』という怒号が聞こえた」と証言したことに対して、原告側は「当時の様子を撮影した動画でも怒号が聞こえず、証言は信用性を欠く」と批判。仮に怒号が上がっていたとしても「危険は抽象的なものにすぎない」と訴えた。近くで「増税反対」と叫んで排除された原告女性についても「危険はなかった」とした。 一方、道警側は、ヤジを飛ばせば周囲の自民党支持者から反発される恐れがあることを男性が認識していたと指摘。実際に男性が近くの人に拳で体を押されたとして「危険な事態だった」と主張。女性についても「絶叫していて興奮状態だった」などとして危険だったと説明した。 排除時やその後の警察官の対応についても主張がぶつかった。 原告側は、警察官が警告せずに男性を排除した点について「男性を囲んで安全を確保する方法もあり、過剰な実力行使だ」と訴えた。女性を排除後に複数の警察官が1時間以上追いかけたことについては「女性の前に立ちふさがって進行を妨げるなど、必要最低限度ではない」と主張した。 対する道警側は、警告の有無について「警告したが、男性が気づかなかった」と反論。女性を追いかけた点についても「女性が南進と北進を繰り返した」ため、安倍元首相に接近し、「危害を加える可能性を払拭(ふっしょく)できなかったから」と説明した。 原告側は、道警が問題の約7カ月後の道議会で初めて「警察官職務執行法4、5条による適法な処分」との見解を示した点について「時間をかけて言い訳を編み出したとしか考えられない」。その上で、一連の排除について「あたかも政治警察のように振る舞い、政治的表現の自由を封じ込めた」と批判した。 これに対し道警側は、排除は警職法に基づく行為で「組織的に政治的意見を排除する方針はなかった」とした。 最後の意見陳述で、男性は「警察が白昼堂々、政治的自由を奪った。厳正な判断を期待します」。女性は「肩書がない人にも政治的な表現の自由はあります。ヤジぐらい言える社会であることを判決で認めてほしい」と述べた。(平岡春人) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル