会員記事 磯部征紀 佐々木康之2021年12月22日 16時00分 鹿児島県奄美大島沖で2001年12月、北朝鮮の工作船が、海上保安庁の巡視船と銃撃戦の末に沈没した。工作船の実態が明らかになり、不審船対処の強化にもつながったこの事件から22日で20年。当時、対応にあたった前海上保安庁長官の岩並秀一さん(63)に「あの日」を振り返ってもらった。 「奄美沖で不審船が航行中」。同年12月22日未明、岩並さんは携帯電話に一報を受け、タクシーで東京・霞が関の同庁に向かった。当時は、海上犯罪の取り締まりなどを担当する警備救難部で総合調整を行う管理課の課長補佐だった。 「今度は逃すわけにはいかない」。1999年に石川県能登半島沖で起きた不審船事件が頭をよぎった。海保にはこの時、不審船を捕らえられなかった苦い経験があった。 関係部署の職員がスクリーンやモニターが並ぶ会議室に次々と集まり、ほどなく数十人に。バタバタとした様子はなくみんな落ち着いていた。現場を管轄する第10管区海上保安本部(鹿児島市)などから「航空機が不審船を確認」といった情報が電話で入ってくるたびに職員の声が飛び交った。まだ、国籍を特定する情報はなかった。 一睡もせずに迎えた昼すぎ、海保の巡視船1隻が現場に到着し、停船命令を出した。国際法上、日本の排他的経済水域(EEZ)内で停船命令を出さなければ、その外側での追跡権は認められない。 不審船はこれを無視して逃走… この記事は会員記事です。残り1831文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
あの日のワクワク届けるよ 今年のイブも、苦しい家庭の子どもたちへ
クリスマスイブの日、ボランティア扮するサンタクロースが車や電車などを乗り継いで、絵本や児童書を届けてくれる。貧困や被災などに苦しむ子どもたちのために。 NPO法人「チャリティーサンタ」(東京)代表理事の清輔夏輝さん(37)が、「ブックサンタ」の活動を始めて5年になる。活動に賛同した人が本を買って寄付する提携書店は、当初の8倍、42都道府県461店舗に広がった。 「誰かの役に立ててうれしい」と寄付した人から寄せられる声が、活動の原動力だ。 清輔さんの活動から、思わぬ連鎖が生まれています。記事の後半で紹介します。 福岡県飯塚市出身。小学1年… この記事は会員記事です。残り851文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
郵便局長705人、顧客情報流用など申告 自民候補の得票増に悪用か
藤田知也2021年12月22日 16時02分 多くの郵便局長が顧客情報や経費で買ったカレンダーを政治流用した疑いが出ている問題で、日本郵便は22日、全国で計705人の局長が情報流用などを申告したと発表した。全国郵便局長会が参院選で擁立する自民党公認候補の得票につなげようと、郵便局の顧客情報の悪用が横行していた疑いが強まった。 全国の局長を対象にした13~16日のアンケートの回答を集計した。当初は1246人の局長が流用などを申告したが、500人超が撤回した。2018年度以降、顧客情報を無断で郵便局長会の支援者名簿に記したことがあるとの回答は74人▽顧客情報を使って政治活動の戸別訪問をしたと答えたのは257人▽営業での訪問時に政治活動の支援依頼をしたとの回答が130人▽局内で顧客に政治活動の声かけや支援依頼をしたとの回答が363人、など。カレンダーを政治活動に使ったと答えた局長は119人だった。 顧客を標的にした政治活動の指示は、朝日新聞が入手した複数の地方郵便局長会の資料などに記されていた。接客や営業に合わせて支援者を物色するよう求める内容で、日本郵便もそうした指示を確認。専門家から「情報漏洩(ろうえい)や目的外利用が疑われる」との指摘が出ていたが、局長会幹部らは「顧客情報の流用はない」と否定していた。 今回のアンケートは局長自身の流用などの申告を求めるだけで、情報流用などを促した幹部らの指示については尋ねていない。朝日新聞の取材では、顧客情報を政治活動に利用していても正直に申告しなかった局長がいる。また、情報流用を申告した局長にコンプライアンス担当社員が連絡し、回答期限前に申告を撤回させた例が多く、調査の公正さを疑う声が出ている。 全国郵便局長会は約1・9万人の旧特定郵便局長らでつくる任意団体。参院選では組織内候補を擁立し、元会長が再選した一昨年は比例当選トップの60万票を獲得。来年の参院選には前副会長を候補者として立てる方針だ。(藤田知也) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「南極Youtube Live !」昭和基地から越冬隊員が生中継
「こんにちは! こちら南極の昭和基地です!」 白銀の世界から生中継が始まった。出演は61次越冬隊員。2020年6月10日、南極観測隊初の「南極ユーチューブ・ライブ」を、国立極地研究所と朝日新聞社の共催で開催した。 学校と結ぶ「南極教室」などが次々中止となった後のこと。国内では新型コロナウイルス感染リスクからイベントができなくなっていた。出発前に子どもが通う学校や地域の方と企画していた越冬隊員も多い。双方楽しみにしていたのに残念、代わりにと考えて、実現したのがライブ配信だ。 南極記者サロン「過酷下も快適、建物技術を宇宙へも」配信中 地球上最も過酷な環境で暮らす南極の越冬隊員たち。その建物には極寒やすさまじい風雪にも耐える工夫や秘密がいっぱい。宇宙基地にもつながる最新研究も進んでいます。越冬経験者が語り合います。参加無料。申し込みは募集ページ(https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11006446 別ウインドウで開きます)またはQRコードから。 スタートは屋外からの中継… この記事は会員記事です。残り1083文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「従業員がコロナに」誤ったうわさの先に中傷 仕事奪われ引っ越しも
天気予報を確認するように、新型コロナウイルスの感染者数の増減を気にして生活するようになってから、まもなく2年になる。連日数千人の感染が確認されることもあった都会に比べ、秋田は感染者数こそ少なかったものの、感染にまつわる真偽不明のうわさを今年もよく聞いた。うわさをする側がどこまでその悪意を自覚しているかは分からないが、うわさされた側の被害は深刻だ。 4月に取材した大仙市の自動車販売店では、「店の従業員がコロナになった」との誤ったうわさが独り歩きし、経営者の男性やその家族が苦しんでいた。 実際に感染者が出たのは、男性の店ではなく、男性の妹の勤め先だった。だが、うわさを信じた客が車の整備の予約をキャンセル。出入りの自動車メーカーの担当者は、この店に通っていることを理由に別の販売店への来店を断られた。うわさは妹の男女関係に対する誤った臆測に内容を変え、男性や家族は事実無根の中傷を受けた。 「田舎って怖いね」。一連の被害を聞いた関東地方に住む友人はそう言ったという。男性は「この広まり方は異常。だから、『田舎は何もないからうわさ話で盛り上がる』って馬鹿にされるんだと思う」と話した。 さまざまな意見を紹介する県庁のサイト「県民の声」には8月、感染をきっかけに誹謗(ひぼう)中傷されて仕事を辞めざるを得なくなり、県外に引っ越したという人からの投稿が寄せられた。現在は県外の政令指定都市に住んでいるというこの投稿者は「(移住先では)アパートの隣の人が感染したのか、スーパーのレジの人が感染したのか、わかるはずがないのが現実。恐ろしいことに、秋田はそれがわかってしまう」とつづり、「自分たちのうわさ話が、ウイルスと戦っている人を追い込み、回復後の社会生活さえ奪ってしまう可能性があることを自覚して頂きたい」と訴えていた。 始めは世間話のつもりでも… 躍起になって感染者を詮索(… この記事は会員記事です。残り497文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
小規模発電のはずが…無断伐採や道路損傷相次ぐ「どう見ても大規模」
愛知県南知多町の内海地区で名古屋市の業者が10月下旬に始めた太陽光発電設備の設置工事が、広範囲の山林伐採につながり、町長を始め町民が業者への不信感を募らせている。造成工事での樹木の無断伐採や町道の損傷などが多数確認され、河川への土砂流入などによる水害への懸念も拭えていない。業者は町の求めに応じ、今月18日に初めて説明会を開いたが、来年1月21日までの通電を目標に事業を急ぐ構えだ。 名古屋市北区に本店を置く「ディーエスエス」(DSS)の木下誠剛(まさよし)社長ら2人が18日夜、内海防災センターで町民ら約200人を前に計画を公表した。 町には太陽光発電について環境や景観の保全、災害防止などを図るガイドラインがあるが、家庭用を念頭に、発電出力10キロワット未満は届け出を不要としていた。D社は9・9キロワットの小規模発電所を多数設置する計画だったため、町も全体像を把握できず、説明会は、石黒和彦町長ら町幹部や担当職員、町議も出席する異例の事態となった。 木下社長らによると、「西鈴ケ谷・口鈴ケ谷」「奥遠廻間(おくとうばさま)」など5地区の土地計約8万平方メートルを買い、小規模発電所91カ所などを設置し、複数の貯水池を造る。所有者は、D社と、個人事業主としての山崎貴充常務ら社員3人の計4者に分ける。太陽光パネル下で営農をするが、生み出した電力の8~9割は売電すると説明した。 山下社長らは、複数の無断伐採や町道17カ所の損傷、購入していない土地への土砂侵入などを認めて謝罪したが、故意ではなく「誤伐採」「従業員への指示の誤り」と説明した。 「再生エネではなく破壊」 町民から批判やまず 町民からは「どう見ても小規模ではなく大規模開発。規制逃れだ」「再生エネルギーではなく破壊だ」「こんな事業で一体、誰が幸せになるのか」などと批判がやまず、大規模開発と同等の環境影響評価の実施など、計画の見直しを求める声が相次いだ。 会場には、契約代金が支払われていないのに樹木を伐採されたと指摘する地権者もいて、木下社長らが地権者名を尋ねて振り込みを約束する一幕もあった。 町は、D社が奥遠廻間地区で届け出た約0・78ヘクタールを超え、約1・8ヘクタールを伐採したことも確認した。石黒町長は取材に「町が踏みにじられた。対応が後手に回っていて町民に申し訳ない」と話した。町は今後、町民の意見や疑問を吸い上げ、D社から得た回答を町のウェブサイトで公開する。ガイドラインのあり方も見直す。 木下社長は「町民を不安にさせ、大変申し訳ない。指摘についてはできる範囲でやる」とする一方、「計画の見直しはできない。認められた(経済産業省のFIT認定)事業を粛々とやっていく」と話した。(嶋田圭一郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
日大・田中前理事長、逮捕23日目で保釈 保釈金6千万円を現金納付
2021年12月21日 19時22分 日本大学前理事長の田中英寿被告(75)が所得税法違反(脱税)の罪で起訴された事件で、東京地裁は21日、田中前理事長の保釈を認める決定を出した。前理事長は6千万円の保釈保証金を現金納付し、11月の逮捕から23日目となる同日夜に保釈された。 田中前理事長は午後7時10分ごろにスーツ姿で東京拘置所から出て、車に乗り込んだ。 田中前理事長は20日に起訴され、弁護人が同日に保釈を請求していた。前理事長は起訴内容を認めており、地裁は証拠隠滅や逃亡を疑う相当な理由はないと判断したとみられる。東京地検は保釈決定を受け入れて準抗告しなかった。 田中前理事長は2018年と20年に取引業者らから受け取ったリベート収入など計1億1820万円を税務申告せず、計約5200万円の所得税を免れたとされる。関係者によると、11月29日に逮捕された当初は現金の受領自体を否定していたが、最終的に全ての現金受領と過少申告を認めた。拘置所での生活について弁護人に体調不良を訴えることもあったという。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「都市部のごみ」に泣いた豊島 島の再生佳境
瀬戸内の穏やかな海に位置する人口約760人の小島・豊島(てしま)(香川県土庄(とのしょう)町)。一帯は瀬戸内海国立公園に指定されている。のどかな島が全国的に脚光を浴びたのが国内最大級の産業廃棄物の不法投棄事件だった。 1970年代後半から産廃処理業者が、許可対象外のシュレッダーダストや廃油、汚泥などの産廃を島内へ搬入。野焼きなどを繰り返し、島には異臭が漂うようになった。住民は度々、異変を県に訴えたが聞き入れられなかった。 その後、業者は90年に廃棄物処理法違反容疑で兵庫県警の強制捜査を受けた。住民は国の公害調停を申請し、2000年に県と住民との間で調停が成立。そこから始まった島の再生へ向けた処理事業は、20年余り続いている。 これまでに約91万トンの産廃が島外へ運び出され、汚染された地下水の水質の浄化作業が進む。22年1月からは、処分地の地下水の海洋流出を防ぐための長さ約340メートルの遮水壁(深さ最大18メートル)を取り外す工事も始まる予定だ。 処理に関わる費用を国が支援する産廃特措法の期限が22年度末に迫るため県は事業を急ぐ。県によると事業は総額約820億円にのぼるという。だが処分地の一部では基準値を超える有害物質が検出されるホットスポットがあり、完全な浄化には至っていない。 県はホットスポットなどのモニタリング調査で、水質の環境基準を達成した時点で、処分地を住民へ引き渡し、事業を終結させたい考えだ。しかし住民側は、処分地全域でのモニタリング調査を求めており、産廃で荒れ果てた一帯の植生など、島の将来像も危惧している。 長年、住民団体の活動に取り組む安岐正三さん(70)は事件の影響で、代々続く処分地沖合でのハマチ養殖をやめた。安岐さんは「産廃問題を訴えれば訴えるほど島のイメージが悪化し、魚を売りづらくなった。板挟みだった」と振り返る。 漁業をやめることを伝えた父親は「島のために徹底的に闘え」と言ってくれた。しかし父親は、その数カ月後に亡くなった。安岐さんは「最後までしっかり検証し、元のきれいな島に戻さないといけない。次の世代のためにも、私たちの代で片付けたい」と話す。 一方で事件を豊島だけの問題として終わらせたくない思いもある。安岐さんは、こう訴える。 「都市部による大量生産、消費、浪費のツケが豊島にもたらされた。環境や経済の側面からも皆が学ぶことはある」(池田良) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ケースワーカーが精神障害がある男性に「知能が足んない」 市が陳謝
高田誠2021年12月22日 7時06分 東京都八王子市の30代のケースワーカーの男性職員が、精神障害がある男性(41)から相談を受けた際、「自殺未遂したからって容赦しねえぞ」「知能が足んない」などと発言していたことがわかった。男性は20日、市に対応改善などを求める意見書を提出。市は陳謝した。 男性の代理人弁護士らによると、男性は11月、受給する生活保護の法解釈などをめぐって市役所窓口で職員と話した後、パニック発作を起こし、庁舎内で自殺を図った。12月1日、男性は改めて市に電話し、職員とのやりとりを録音した。 職員は「何、うそついてるんだよ。いい加減にしろよ、お前よう」「自殺未遂したからってな、容赦しねえぞ」と繰りかえした。「自分に頭が足んないって分かってるんだったら、おとなしくしてなよ」「知能が足んないってことだよ」とも述べた。凶悪犯罪者と男性を結びつけるような発言もあった。 職員は生活保護受給をめぐる収入認定についても、「自殺未遂しようと何しようが変わんない」として、誤った解釈を押し通した。 男性は「間違った説明をされた上、人格を否定され、あおられ、精神的苦痛を感じた」と話す。市側は「申し訳ない発言だった。あらためて職員に対して研修を行いたい」と述べた。(高田誠) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広島県知事の後援会、法の上限を超える寄付受領か 有力支援者から
大久保貴裕、宮城奈々2021年12月22日 5時00分 広島県の湯崎英彦知事の後援会が2013、14年、有力支援者から政治団体を介するなどし、実質的に政治資金規正法の上限を超える300万円の寄付をそれぞれ受けていたことがわかった。湯崎氏の事務所は朝日新聞の取材に「違法性の認識はなかった。疑念を与えてしまい申し訳ない」と釈明した。 同法に基づき、政党と政治資金団体以外の政治団体は、個人から年150万円を超える寄付を受けることはできない。 政治資金収支報告書によると、湯崎氏側に寄付をしていたのは有力支援者の男性。政治団体「ゆざき英彦後援会」は13、14年にこの男性から150万円の寄付を受けたほか、別の政治団体から150万円ずつ寄付を受けた。 男性は両年ともこの団体に150万円を寄付しており、団体の両年の収入はほぼこの寄付だけだった。(大久保貴裕、宮城奈々) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル