瀬戸口翼2021年12月28日 21時00分 横浜・八景島シーパラダイス(横浜市金沢区)で、アシカの仲間であるオタリアのレオ(オス・18歳)が、来月の書き初めのパフォーマンスの披露に向けて練習に励んでいる。 体長約2メートル、体重約220キロ。特製のT字形の筆をくわえ、来年の干支(えと)「寅(とら)」を豪快な筆さばきで書き上げる。 レオが書き初めを披露するのは来年で14回目。十二支の中でも寅の画数は11画と難関だ。3カ月前からほぼ毎日練習を重ねている。 担当飼育員の西川弥緒さん(28)は「豪快で味のある字を書き上げられるようになった。もっとレベルアップしていくので、成長していく姿を見てほしい」と話す。書き初めは1月1日から31日まで毎日披露される。(瀬戸口翼) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
安倍元首相を再び不起訴「結論ありきの再捜査」 岩井名誉教授
岩井奉信・日本大名誉教授(政治学) 「桜を見る会」前夜に支援者らを招いた夕食会費用を安倍晋三元首相側が補塡(ほてん)していた問題で、公職選挙法違反などの疑いで告発された安倍氏を東京地検特捜部が再び不起訴とした。 公職選挙法は、政治家が選挙区内の人に現金を渡すことはもちろん、地元の祭りや運動会といったイベントに飲食物を差し入れることは「寄付行為」として禁じている。政治家の政治団体による寄付も禁止だ。 問題となった夕食会の費用は… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
オミクロン株クラスターか 大阪・寝屋川の高齢者施設、5人感染確認
大阪府は28日、新たに51人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表した。50人を上回るのは11月11日(64人)以来、約1カ月半ぶり。新たな死者は確認されなかった。 また府によると、これまでに摂津市内の学校で生徒5人の感染が確認された。府は新たなクラスター(感染者集団)が発生したとみている。5人は同じクラスで、一部は変異株「オミクロン株」への感染が確認されており、他の生徒のゲノム解析も進めている。5人以外の同校の全生徒・職員約500人の検査は終了しており、陰性だったという。 このほか、8人の感染が確認されていた寝屋川市の高齢者施設で、3人がオミクロン株だったことが新たにわかった。この施設では26日までに2人が同株だったこともわかっており、オミクロン株感染は計5人になった。府は府内初のオミクロン株によるクラスターとみている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
まゆのなか優しく包んでお別れ 愛しい赤ちゃん、最後まで抱きしめる
死産や流産で亡くした我が子を、ママやパパが思う存分抱っこできますように――。そんな思いが詰まったひつぎを、子どもを亡くした経験を持つ女性とその友人がつくった。背中を押したのは、我が子を天に見送った際に感じた、ある思いだった。 カイコのまゆのようにころんとした丸い形に、パステルカラーの淡い色合い。千葉県船橋市の仏具店「Bee―S」が11月から販売を始めた、死産や流産で亡くなった赤ちゃんのためのひつぎ「まゆのゆりかご」だ。和紙でできていて、手に持つとふわっと軽い。 同店を経営する住吉育代さん(43)は13年前、先天性心疾患だった長女花彩(はいろ)ちゃんを生後8カ月で亡くした。その際、花彩ちゃんに似合うかわいいガラスの仏具を作ったのをきっかけに、2010年に同店を開いた。以来、我が子を亡くした人ら2千人以上から依頼を受け、仏具を作ってきた。 思いを受け止めるなかで気になっていたのが、赤ちゃんのひつぎだった。インターネットで調べても種類が少なく、住吉さんが求めるひつぎには出会えなかった。「何か作れないか」と長年考えたが、なかなか妙案が浮かばずにいた。 今春、ガラス制作を通じて知り合ったデザイナーの大川七恵さん(51)に相談した。大川さんはこれまで仏具やひつぎを手がけたことがなく、最初は「自分がデザインしていいのだろうか」と悩んだという。しかし、住吉さんに現状を聞くうち、「悲しみの中にいる人が少しでも笑顔になれるなら」と制作を決意した。 「少しでも長く抱っこ」願い込めて 思いついたのが、「まゆのよ… この記事は有料会員記事です。残り1174文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
米軍佐世保基地で米軍関係者16人がコロナ感染、うち1人死亡
米海軍佐世保基地(長崎県佐世保市)は28日、米軍関係者16人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。うち1人は原因不明で死亡した後、陽性だったことが判明した。同基地内の1度の発表件数としては過去最多。感染者は基地内の診療所で隔離されているという。(原口晋也) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「いい家族」と「悪い家族」分断のコロナ禍で柚木麻子さんが見た希望
うちで家族と過ごす時間が増えたコロナ禍。家事や子どもの相手、感染対策……。暮らしを維持するためにやることは格段に多くなりました。家族と家に閉じこもりきりの日々に息が詰まる気持ちになることも。一方で、家族がいてくれること、その大切さを改めて実感した人も多いでしょう。「大事だけど、つらい」。家族や暮らしの営みに、この矛盾したような思いを抱えるのはなぜなのか。小説家の柚木麻子さんに聞きました。 柚木麻子 1981年生まれ。「ランチのアッコちゃん」「ナイルパーチの女子会」「BUTTER」など著書多数。近著「らんたん」でシスターフッドを描く。 ――コロナ禍に入り、なるべく外出せずに過ごしていたと聞きました。 「家族との時間は増えました。最初のうちは仕事が全く進まないことに悩み、『ケア』は労働だ、と改めて感じました。『絆』どころではなかった。一方で、子どもの成長をじっくり見られたことは、とても貴重な時間でもありました。『大変だけれど、いい面もある』のだと思っていました」 「ところがつい最近、知らないうちに失っていたものに気付きました。『家族といられるだけで十分』と思うほどになっていたのですが、感染状況が落ち着いた今年秋、コロナ禍でほぼ初めて人に会うようになりました。その時、『ああ、生きてる』、と感じたんです。『私はこういう人間だったんだ』、と。それまでの私は、本当の私ではなかった」 ――「家族だけで十分」ではなかった、ということですか。 ■「家族」だけで人生は完結し… この記事は有料会員記事です。残り2159文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
名門女子校前に高層ビル さらに日テレ旧本社「最大150メートル」
現場へ! 再開発 都心「番町」で② 日本テレビ放送網(現日本テレビホールディングス)は1952年、国内初のテレビ放送免許を取得し、東京都千代田区二番町の旧満鉄総裁邸を本社予定地として購入した。社屋の裏には築山、滝のある日本庭園と四阿(あずまや)が配された。創業者の正力松太郎が接待に好んで使い、野外スタジオにも利用されてきた。 庭園は社員にとっても愛着のあるものだった。「地域の住環境とも調和していた」とOBは言う。 日テレはその庭園をつぶし、さらに敷地を広げたところに2015年1月、高さ60メートルのスタジオ棟を造る計画を明らかにした。驚いたのは、向かいの女子学院だった。女子御三家のひとつに数えられる名門中高校である。「かなり圧迫感がありそうだったんです。それに女子校ですので、向かいの窓からの視線も気になります」と事務長の本田真也(67)は言う。 スタジオ棟の計画地は、区の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
SNSのメッセージはスパイのワナ 国外に誘い出し…対策に警察動く
警察当局が、講演などを通じた企業や研究機関への働きかけを強めている。先端技術の情報が海外に漏れるのを防ぐ狙いがあり、「アウトリーチ活動」と呼ぶ。中国やロシアを念頭に、経済安全保障の強化を図る政府とも足並みをそろえた動きだ。 SNS経由のスパイ接触、英で1万人 12月中旬、一般社団法人の日本機械工業連合会は東京都内でオンライン講演会を開いた。機械メーカーなどの関係者約110人に解説したのは、警察庁の吉田知明・経済安全保障対策官だった。スパイの具体的な手口として大手化学メーカーの社員が狙われた事例を挙げ、こう解説した。 社員の個人SNSに、海外の諜報(ちょうほう)員からヘッドハンティングを装ったメッセージが届いた。「我が社で新規のプロジェクトチームを立ち上げるので、あなたの技術で指導してほしい」と書かれていた。 報酬や情報の提供を約束され… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
秋田、鹿児島…駅前のマンション人気なぜ SUUMO編集長に聞く
【動画】住まいのかたち コロナ禍のもとでの働き方の変化やステイホームの影響は、首都圏を中心に住まいへの価値観にも変化をもたらしました。「広い家で快適に」「もっと人と関わりたい」と住み替えを考える人もいるでしょう。リクルートが運営する不動産情報サイト「SUUMO」の池本洋一編集長に、住まいの最新トレンドについて聞きました。 ――コロナ禍は人々の住まいの価値観にどのような変化をもたらしたのでしょうか。 まず大前提として、東京や大阪などの大都市圏と地方ではコロナ禍で受けた影響の大きさに違いがあります。 大都市圏は在宅ワークやオンライン授業が広がり、生活の変化が大きかった。一方で、地方ではさほど広がっていない。変化量の大きい大都市圏では若干、賃貸から持ち家にシフトしたとみられます。家で過ごす時間が長くなったことで、広さに加え、遮音性、断熱性など住宅品質にこだわる人が増えたからです。また、住宅ローンの金利は10年前の約半分の1%強、変動金利なら約0.4%まで下がっています。一昔前は5千万円の予算だった人が6千万円の家を購入できる状況になったことも購入を後押ししています。 ――一戸建てとマンションではどちらが人気ですか。 コロナ禍で少し一戸建ての人気が上がったと思います。不動産経済研究所の調査では、東京23区の新築分譲マンションの価格はリーマン・ショック後の2009年に5200万円ほどまで下がりましたが、13年ごろから上昇し、20年は7700万円台まで上がっています。 マンションは、鉄筋といった資材、施工依頼先、用地取得でビルやホテルの建設と競合し、高騰しています。一方で一戸建ては木造が中心。土地の競合も少ない。工期を短くしたり、資材を共同購入したりして企業努力も進んだ。価格はコロナ禍の需要増とウッドショックなどでこの1年は上昇しましたが13~20年まではずっと横ばい。「物価の優等生」なんです。一戸建ての人気は続きますが、コロナ禍で本来は「子どもが大きくなったら買おう」と思っていた人の前倒し購入が発生したこともあり、今後は少し落ち着く方向かと思います。 新築マンションでは、東京都心や湾岸エリアのタワーマンションが共働きで世帯年収が高い夫婦に人気があります。これらのマンションは、単身やシニアなど幅広い層からの需要があり、今後も価格は上がり続けるでしょう。 ――賃貸のマーケットはどうでしょうか。 賃貸は新築の供給が少なく、持ち家購入に踏み切った人がいる一方で、コロナ禍で不要不急の引っ越しをしなかった人もいます。そのため、高い入居率になっています。中でも人気なのがUR都市機構の団地です。首都圏の物件は昨年、ここ10年で最高の入居率でした。URの団地は1棟1棟、ゆとりを持って建てられており、高台や地盤の強い土地にあることが多く、水害や地震などの災害に強い。ほどよく緑もあり、都心へのアクセスも悪くない……。そういった点で価値が見直されています。 ――シェアハウスやコレクティブハウスなど「集まって住む」ということを選ぶ人もいます。 シェアハウスは家賃が安いことに加え、家具や家電を買うことなく住める手軽さが人気でした。ただ、スペースを共有するため、コロナ禍では感染リスクがあり、私は需要が落ち込むと思っていたんですよ。ところが、逆に人気になりました。これはどういうことか。 人との接触が減り、「寂しい」ということではないでしょうか。オンラインが主流になり、学校にも会社にも行かなくなった。ずっと一人でいて、気持ちが落ち込む人は少なくなかった。集まって暮らすことで「家族的なもの」を求める人が増えたのだと思います。 ――住居を転々とする「アドレスホッパー」など決まった住まいを持たない暮らしを実践する人もいます。 コロナ禍前からホステルやサービスアパートメント、コリビングなど、暮らしながら仕事ができる施設が整備されてきました。そこへコロナ禍で働き方が変化し、ノートパソコンやタブレット端末を1台持っていれば仕事ができる人が増えた。そうなってくると「家賃がもったいない」「ならば一度試してみよう」と挑戦する人が現れました。 ただ、移動し続けるのは疲れますよ。実家やどこかの拠点に荷物を置いて、可能な範囲でホッピングしながら生活する持続可能な方法に落ち着く人が多い。完全な根無し草で移動を続ける人は少数派です。 ――コロナ禍で変化量が少なかった地方でのここ数年のトレンドは。 北海道の旭川駅や秋田駅、鹿児島中央駅など地方の中核駅の駅前のマンションが人気です。購入するのはシニア層。彼らは郊外に庭付き一戸建てを持っていますが、子どもが巣立って部屋は余り、庭の手入れや雪下ろしなどの手間もあり、住み替え需要が高まっていました。そこへ鉄道会社や自治体による駅前再開発が行われ、商業施設、図書館やイベントホールなどの公共施設が併設・隣接する魅力的なマンションが登場した。 地方の中核駅でのSUUMOの物件ごとの閲覧数は、一戸建てよりマンションの方が多くなっています。「アクティブシニア向け」と銘打ったマンションも続々と販売されています。 ――シニアが住み替えることでどんな効果があるのでしょうか。 「空き家予防」です。シニアが引っ越して空いた家を買い取り、リノベーションして子どもがいる若いファミリーに中古住宅として再販売するという仕組みをつくっている地域があります。生前に次の世代に渡すことで空き家にはならない。残される家族にとっても合理的な選択肢です。いま、「世代人口循環の仕組み」として注目しています。(聞き手・小林直子) 池本洋一さんのプロフィル いけもと・よういち 1995年、リクルート入社。編集、広告営業などを経て2011年からSUUMO編集長。SUUMOリサーチセンター長も兼任し、住まい領域の調査・研究やメディアでのトレンド発信をする。 連載「住まいのかたち」 2021年もステイホームの暮らしが続きました。多くの時間を過ごす「住まい」とは、私たちにとってどういう存在なのか。様々な「家」を舞台に、そこに住む人たちの姿を通して豊かな暮らしのヒントを探ります。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
持ち家への一本道、薄れた先は 平山洋介さんと考える住宅政策の未来
【動画】住まいのかたち コロナ禍は、人々の意識を「住まい」へ向けさせました。感染対策でステイホームやテレワークが求められ、家にいる時間が増えました。感染リスクの高い都市部を離れて郊外に移り住む人や、収入が減って家を失う不安を抱える人もいます。「住まいをめぐる課題の背景に、持ち家促進に傾いた戦後の住宅政策がある」。住宅政策を研究する平山洋介・神戸大教授は、そう語ります。 ――コロナ禍で住宅政策のどんな課題が見えたのでしょうか。 住まいのセーフティーネットとしての住宅政策が、日本にはほとんどないということです。 新型コロナ禍では収入の減った多くの人々の住まいが不安定になりました。これに対して、政府は失業対策だった「住居確保給付金」の条件を緩め、離職していない減収世帯でも利用できるようにしました。2020年度だけで13万件を超える利用があり、実質的な家賃補助となっていますが、いわば「目的外使用」の不安定な措置に過ぎません。 国の家賃補助は、欧州では一般的な住宅政策です。日本も平時から制度化しておくべきでした。 ――なぜ、日本には家賃補助がないのでしょうか。 背景には、持ち家ばかりを重んじ、借家の改善を軽視してきた、戦後日本の住宅政策があります。 戦前、都市部では借家暮らしが一般的でした。しかし、戦争中に多くの家が焼け、終戦直後には約420万戸の住宅が不足しました。さらには戦後のベビーブームと、農村から都市への人口移動で、世界でもまれに見る大きな住宅需要が生まれました。 住宅を増やす必要に迫られた政府は、人々の「持ち家」取得を促しました。国の財政だけではとても住宅需要に対応できず、国民の家計や民間資金を動員して家を増やしたのです。 住宅政策では「家族・中間層・持ち家」が重んじられてきました。経済が成長する時代、人々は借家から持ち家へ、という住まいの「はしご」を登りました。雇用と収入を安定させ、家族をもち、家を建てるのがゴール。持ち家へ向かう中間層が膨らむことで、社会が安定すると考えられました。 政策の柱となったのが、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)の住宅ローンです。公庫が低金利の長期ローンを供給することで、家を買う層がぐっと広がりました。 特にオイルショックで経済が冷え込んだ後、政府は住宅建設で景気を刺激するため、公庫ローンの供給を拡大しました。住まいを「金融化」し、個人の借金を経済対策に用いたと言えます。それでもインフレのなかで給料が上がり続けていた時代、ローンの負担も相対的に軽くなっていく見通しが、人々にはありました。 ――金融化の行き着く先が、バブル経済だったのでしょうか。 そうです。景気刺激のために住宅ローンの規制を緩和し、より多くの人が借りられるようになると、住宅価格が上がる。それがまた、ローンの借り入れ条件緩和に結びつく。このサイクルの果てにバブルが生まれました。 バブル崩壊後、政府は金融公庫を廃止し、ローン供給の主体は民間金融機関に移ります。巨大な住宅金融市場に乗り出した銀行は、他行との競争のなかで、少ない頭金や低金利で借りられるローン商品を次々に開発、販売しました。そうしたローンの「市場化」によって、重い返済負担を抱えながら家を買う人が増えました。住宅ローン減税も、住宅購入を後押ししています。 ――持ち家を重んじる政策は、日本社会にどんな課題を生んだのでしょうか。 住まいのはしごから外れた人々、すなわち「単身者・低所得者・借家人」に対する住宅政策は乏しいままとなりました。 日本には公営住宅が全住宅の3.6%(2018年)しかなく、欧州諸国と比べて著しく低い。1990年代からの地方分権化で、地方が住宅政策のあり方を決める度合いが増えました。しかし自治体は、公営住宅の拡充は低所得者を呼び寄せると考え、その供給に消極的です。 国家に代わって、そうした人々を支えてきたのは家族です。過去30年にわたって、親の家に住み続ける非正規雇用の若い人たちが増え続けました。親の家が、いわば公営住宅の代わりになっている。高齢者とその子ども家族の3世代同居を誘導する政策も続いています。国家ではなく家族に福祉を担わせる「日本型福祉社会」を反映しています。 経済成長が終わった今、非正規労働者や未婚の人が増えています。長引くデフレのなかで、住宅ローンという借金を背負うリスクは大きく、インフレ時代にあった住宅資産の含み益も消えました。住まいのはしごを登れない人々は増えました。 その一方、経済的に豊かな層では、親の持ち家を相続したり、家の購入資金を親から支援してもらったりする子世代も増えています。経済成長期には、一生懸命に働けば誰もが持ち家に手が届く「出自を問わない社会」が生まれると考えられていました。成長後の時代に入った今、資産となる住宅を持つ家族ばかりがさらに豊かになる「再階層化」が進んでいます。 また、住宅価格が上がり続ける「ホットスポット」と、下がり続ける「コールドスポット」の分化が進んでいます。東京都心や湾岸部、大都市中心部では住宅需要が増え、タワーマンションが次々に建てられています。大企業に勤める共働き世帯は立地を重視し、都心の住宅を買おうとする。それがタワーマンション建設を支える一因になっています。一方、郊外や地方では、資産にならない持ち家が増えています。 ――そうした格差が広がるなかで、何が求められているのでしょうか。 新築持ち家以外のための施策を充実させ、もっと幅広い政策手段を用意する必要があります。一つには、少なすぎる公営住宅を増やすこと。家賃補助の制度も実現するべきです。中古住宅市場を拡大し、既存住宅のストックを流動化させることも必要です。空き家を活用した、低所得者向けの賃貸住宅供給も期待されます。 「マイホームに向かって一本道がある」という価値観は、特に若い世代の間で薄れつつあります。たいていの人が結婚し、所得を増やし、家を買い、資産を増やす、という想定はもはや成り立ちません。新築持ち家ばかりを重んじるのではなく、より多くの選択肢を準備し、より多様な人生のあり方に対応する住宅政策が、政府に求められています。(聞き手・玉置太郎) 平山洋介さんのプロフィル ひらやま・ようすけ 神戸大大学院人間発達環境学研究科教授。専門は住宅政策・都市計画。住宅政策に関する著書に「マイホームの彼方(かなた)に」(2020年、筑摩書房)、「『仮住まい』と戦後日本」(同年、青土社)など。 連載「住まいのかたち」 2021年もステイホームの暮らしが続きました。多くの時間を過ごす「住まい」とは、私たちにとってどういう存在なのか。様々な「家」を舞台に、そこに住む人たちの姿を通して豊かな暮らしのヒントを探ります。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル