「この先どうなるのか。路頭に迷うのではないか」。沖縄県にある食品工場の社員は不安に駆られた。 新型コロナウイルスの第5波が訪れた昨夏、従業員1人の感染が判明。その後、約100人のうち、計15人が陽性とわかった。完成間もない最新鋭の工場は、県内の複数店舗のスーパー向けに、食肉を月100トン以上出荷していた。 徹底した衛生管理で知られ、手指を消毒しないと作業場に続くエアシャワー室にすら入れない。低温かつ湿度を一定に保つため、換気も難しい。それが、裏目に出たのか。「衛生管理こそが私たち食品工場の存在意義。国の基準、取引先が求める以上の管理を徹底してきたのに」。社長は悔しさをにじませる。 操業を続けていいのか。社長は2日間、保健所に電話したがつながらない。取引先から切られる不安もあった。保健所に直接足を運び、最後は自らの判断で操業の継続を決めた。工場内の消毒、休憩場所の閉鎖など、感染対策を徹底した。 「みんな不安だと思う。無理をせず休んでいい」と従業員に伝えると、約20人が休んだ。給与も補償した。出勤したのは普段の半分以下の約30人。役員も現場に出て、在庫を回しながら乗り切った。 沖縄県内の食品工場。従業員は手指消毒に続いてエアシャワーを浴びた後、食品を扱うエリアに入る=2021年12月19日、井手さゆり撮影 昨年12月下旬、工場を訪れると、白衣姿の約70人が豚肉をスライスしたり、唐揚げを袋詰めしたりしていた。室温5度の作業場で、クリスマスや正月向けの食材作りが、静かに進んでいた。「日常」が戻りつつあった。 社長は言う。「我々には供給責任がある。従業員の暮らしを守り、人の命を支えるのが仕事です」 船橋市に工場を持つ食品会社は、昨夏に従業員約300人中50人以上の感染が判明し、操業の一時停止に追い込まれた。「対策は徹底していたつもりだが」と担当者。その後、出入りする関係業者も含めた希望者全員にワクチンの職域接種を実施した。 西日本の大手スーパーでは、8月のお盆の繁忙期、従業員約700人の働く食品工場で毎日のように感染者が出た。「地域の食の生命線。何とか止めないように考えたが、従業員と住民の安全にはかえられない」。一部で製造ラインを止め、食品を一部別業者に外注せざるをえなかった。 感染が起きた場所、最多は「医療・福祉施設」ではなく… コロナ第5波の感染状況を見ると、それまでとは異なる傾向が浮かび上がる。 企業や自治体が21年10月までにウェブサイトで公表した感染者の数や発生場所のリリース情報を、JX通信社から提供を受けて朝日新聞が分析。2人以上の感染が起きた場所を抽出した。第5波では、第1~4波で高かった医療・福祉施設の割合が下がり、食品工場や物流拠点を含む「工場・市場」での発生が最多に。百貨店の食品売り場「デパ地下」でも度々発生した。消費を支え、テレワークの難しい対面の職場で感染が広がったことがうかがえる。 業種別「集団感染」の発生数の推移 暮らしを支える最前線の職場は、人手に頼る部分が大きい。東京都台東区では、不燃ゴミの収集が止まった。収集を担う台東清掃事務所で、職員1人の感染が確認されたのが昨年8月6日。全員のPCR検査で、最終的に職員148人中、19人が陽性となり、29人が自宅待機になった。 曲山裕通所長は頭を抱えた。「真夏に可燃ゴミの収集だけは止められない」。民間業者の代行を検討したが、「土地勘がなく難しい」と断念した。不燃ゴミ担当に可燃ゴミ収集に回ってもらったが、それも限界に。やむなく、不燃ゴミの2週間の収集停止を決めた。 職員たちは、住民からの苦情を覚悟した。ところが、待っていたのは意外な反応。「いつもありがとう」「今日のゴミは重たくてごめんなさい」。ゴミ袋に、感謝の手紙が貼られていたのだ。 住民のパート女性(41)は「当たり前だったものが途切れ、これまで意識していなかった作業員の存在のありがたさを感じるようになった」。契約社員の女性(44)は「この人たちが在宅勤務の私たちの生活を支えてくれているんだ」と思い、「大変ですね。ありがとう」と声をかけるようになった。 職員の長峰顕史(あきふみ)さん(49)は、一緒に作業した同僚の感染がわかり、14日間休んだ。復帰後、行く先々で住人たちに声をかけられた。「大丈夫だった?」 東京都台東区の台東清掃事務所には、住民がゴミ袋に貼った感謝の手紙が数多く掲示されている=2021年12月8日、関田航撮影 ゴミ収集に関わって17年。業界は慢性的な人手不足だ。収集車1台に2~3人が乗り込む「密」な現場で、長袖長ズボン、マスクでの作業は、「夏は言葉にできないくらいしんどい」。破れたゴミ袋から、使い捨てマスクが飛び出すことも日常茶飯事だ。コロナの特別手当などはない。でも「誰かがやらんといけん仕事ですから」。 鈴木宣弘・東大大学院教授(農業経済学)はいう。「誰が社会を支えているのか、コロナ禍で誰の目にも明らかになった。社会や消費のあり方を再考するべきではないか」(斉藤佑介、河崎優子) コロナ禍で浮き彫りになった、社会に必要不可欠な働き手の存在。でも、賃金は低く抑えられていることが少なくありません。目先の人手不足を外国人労働者で補ってきた日本は、これから、どうなるのでしょうか。 人手不足を補ってきた外国人労働者、これからは コロナ禍で浮き彫りになった、社会に必要不可欠な働き手の存在。でも、賃金は低く抑えられていることが少なくない。なぜか。 山本勲・慶応大教授(労働経… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
サンデル教授と未来の「働く」を考える 最高の民主主義に続く道とは
外出自粛が呼びかけられたコロナ禍。日常生活の供給網を支える仕事は、その重要性とは裏腹に、待遇には恵まれず、将来的には人工知能(AI)やロボットに代替される可能性も指摘されています。 近著で、社会の格差を「能力主義(功績主義)」の側面から説いた米ハーバード大のマイケル・サンデル教授は、「労働の大切さと対価の必要性を議論するべきときが来た」と指摘します。 ――新型コロナの流行で、様々な「社会的弱者」が顕在化しました。 コロナ禍で見えたのは、自宅でオンライン会議をし、感染リスクから身を守りながらテレワークができた人たちの一方で、そういう「ぜいたく」ができない労働者もいた、ということです。 ロックダウンの中、自宅の玄関まで食料品を届けてくれた配達員のお陰で、私は混雑したスーパーに行く危険を冒さずに済みました。リスクを引き受けてくれたのです。私たちはそれを忘れてはいけません。 自宅で仕事ができるような労働者は、多くが病気になっても適切な医療を受け、有給の病気休暇を利用できます。「仕事を休んだら家族を養えなくなる」という不安は基本的に無いでしょう。 でも、こうした待遇は誰でも受けられるわけではありません。 「成功者」たちは、「努力し、能力が高いからこそ得られた結果」と信じて疑いません。こうした「行きすぎた能力主義」に、コロナの流行が新たな疑問をもたらしたとサンデル教授。これから目指すべき「最高の民主主義」とは――。 ――「リスクを引き受けてくれた」人たちの待遇は決して良くはありません。 コロナは、私たちの日常生活… この記事は有料会員記事です。残り3953文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ママ、夢かなってる?」 脚本家、漫画家…いや、大事な夢があった
3カ月ほど前、なりたりえさんは公園で次女と遊んでいた。 「おーい、ママー! 夢かなってる?」 滑り台の上から突然、そう問いかけられた。 は? 私の夢? 思い出したのは、かつて所属していた劇団のこと。 大学を卒業してから入り、脚本家を目指していた。 アルバイトで生計を立てながらコントを制作。 7年ほど経ったころ、自分の力の限界を感じて諦めた。 次に思い出したのが、漫画家になる夢。 脚本家を諦めた後、出版社に漫画を持ち込んだり、賞に投稿したりした。 思うような結果を出せず、いったん諦めた。 「どちらもうまくいかず、今は主婦として暮らしているな」 そう思いながら、ちゃんとかなえた夢が一つあることに気づいた。 滑り台の上から手を振る娘がかなえてくれた夢。 幼いころから抱いてきた、「… この記事は有料会員記事です。残り1399文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
理想の「住まいのかたち」古民家再生のカール・ベンクスさんに聞いた
カール・ベンクスさんが再生を手がけた自宅の「双鶴庵」=2021年11月18日午後3時33分、新潟県十日町市、松山紫乃撮影 人口が減り、空き家が増える日本。一方で、利便性を求め都心にはマンションが次々と建てられています。「家」のあり方が変わっていく中で、古民家に価値を見いだし、その再生に取り組むドイツ人男性がいます。 限界集落だった新潟県十日町市竹所で、空き家を次々と美しくよみがえらせてきた、建築家のカール・ベンクスさん(79)。日本の古民家の魅力や、母国ドイツとの違いについて聞きました。 連載「住まいのかたち」 2021年もステイホームの暮らしが続きました。多くの時間を過ごす「住まい」とは、私たちにとってどういう存在なのか。様々な「家」を舞台に、そこに住む人たちの姿を通して豊かな暮らしのヒントを探ります。 ◇ ――来日した経緯を教えてください。 私が生まれる前に亡くなった父が、日本文化の大ファンでした。 父は教会や城の芸術品の保存修復士で、家には瀬戸物や浮世絵などがあり、日本に関する本もたくさんあった。子どもの頃から、日本の木造建築がすばらしいというのは頭に入っていたんです。 最初に日本に来たのは、空手を学ぶためでした。1966年に来日し、アルバイトをしながら東京の大学で空手を勉強しました。その後、在日ドイツ商工会で内装の仕事を手伝いました。そこで日本の職人たちと出会い、彼らの技術の高さを知ったのです。 ドイツ人建築家のカール・ベンクスさん=2021年11月18日午後2時38分、新潟県十日町市、松山紫乃撮影 7年ほど日本で暮らした後、ヨーロッパに戻り、日本の建築技術を広めたいと思って本格的に建築デザインの仕事を始めました。あるとき、ドイツ人のお客さんから飛驒高山(岐阜県)にあるような力強い古民家が欲しいという要望を受け、輸出用に探すため、93年に再び来日しました。 知り合いの大工さんから、新潟県十日町市の集落なら古民家があるかもしれないと教えてもらい、この集落・竹所(たけところ)に連れていってもらうと、そこには朽ち果てそうな古民家がありました。見てみると建物自体はすぐ直せそうだった。加えて、棚田や杉の木があるこの景色が気に入りました。静かだけど寂しくない。そう思い、この古民家を購入して、2年かけてかやぶき屋根の自宅を自ら再生させたのがすべての始まりです。 ――いまはどのような活動をしているのですか。 2010年には十日町市松代(まつだい)の老舗旅館を買い取って再生し、2階に建築デザイン事務所を移しました。いまも古民家の再生に取り組んでいて、これまで全国で60軒ほど手がけてきました。 竹所では、私が来た当時、家は9軒しかありませんでした。それが今は、地元の民家が5軒、移住者が5軒、加えて「お試し移住」施設のシェアハウス1軒と別荘が6軒あります。自宅を含め、9軒は私が再生した古民家です。竹所を「古民家再生の里」にしたくて、いまは10軒目をつくっているところです。 カール・ベンクスさんが再生を手がけた自宅の「双鶴庵」=2021年11月18日午後3時32分、新潟県十日町市、松山紫乃撮影 「リフォームはしない」 ――古民家にはどのような良さがありますか。 古民家の骨組みは、一度バラ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
初売りに1千人の列、2年ぶりの終夜参拝 昨年とは異なるお正月
新型コロナウイルスの感染はやや落ち着いているものの、変異株・オミクロン株の影が迫る――。こんな状況で迎えたお正月は、感染拡大局面だった昨年とは異なり、初売りで福袋の店頭販売を再開する百貨店が目立った。初詣もにぎわいをみせ、参拝客は穏やかな日常が続くことを願った。 百貨店では2日、新春恒例の初売りがあった。 日本橋高島屋(東京都中央区)では、昨年中止した福袋の店頭販売が2年ぶりに復活した。午前10時の開店の5時間ほど前から客が並び始め、開店30分前には約1千人が列をつくった。同店によると、開店時の行列の人数はコロナ禍前の2020年の初売りより4割少ないが、感染が拡大していた21年の4倍に。店は感染防止のため、並んでいる人に除菌シートを配った。 開店すると、客は次々と目当ての売り場へ向かい、特に和洋菓子の福袋売り場には大勢が詰めかけた。20代から毎年初売りに行っているという東京都中央区の会社員女性(57)は「昨年はコロナで初売りに行くのを控えたので、楽しみにしてきた。人が多いのはちょっと気になるけど、1年の初めに活気を感じられて良かった。他の店もはしごする」と声を弾ませていた。 2日から初売りを始めた伊勢丹新宿店(同新宿区)では、感染が昨年より落ち着いていることもあり、昨年は午後6時だった閉店時間を午後7時に延ばした。 一方、感染対策で昨年に続き福袋をオンラインで販売する動きも続く。松屋銀座(同中央区)は、例年店頭で扱ってきた人気の婦人服の福袋を、今年はネット限定の販売に切り替えた。すでに完売したという。(徳島慎也、山下裕志) 「心の中でご斉唱を」 明治神宮(東京都渋谷区)では1日、2年ぶりに大みそかから元日にかけての「終夜参拝」を再開した。 12月31日の午後8時ごろから待っていたという最初のグループは年明けの5分前、本殿の前に進んだ。スピーカーから国歌が2回流れたが、歌う人はいなかった。「マスク着用のまま、心の中でご斉唱を」と案内されていた。 日付が変わった瞬間、年越しを知らせる太鼓の低音が響き、さい銭の「チャリン」という音、参拝客が手を合わせる音が重なった。気温は0度前後と冷え込んでいた。 高校時代の友達と2人で訪れた中島慶斗さん(21)は「周りにいてくれる人の健康」を祈った。コロナ禍で、人との関わりはネット上が大半。感染拡大が落ち着き「メシ行こう」と誘ってくれた友達がありがたかった。「何げない日常が続く1年であってほしい」 夫と子ども2人の4人で訪れた安藤真弓さん(49)は「無事に1年を過ごせたことのお礼にきました」。引っ越しや長女の大学受験、長男の高校進学といった「イベント」が続いた年。「今年も、体調崩すことなく。ね?」と、ベンチコートを着込んだ長男に話しかけた。 コロナ禍前は年間300万人ほどが訪れていたというが、広報担当者は「コロナ禍前の人出には届いていない印象。寒さや、オミクロン株の拡大が影響したのでは」と話した。(横山輝) 人出、過去2年と比べると 各地の元日の人出はどう変わ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福袋の店頭販売、「復活」でにぎわい 名古屋市の百貨店で初売り
土井良典2022年1月2日 17時00分 名古屋市内の百貨店で2日、新春の初売りがあった。新型コロナウイルス感染対策の「密」回避のため、昨年の年始は取りやめた福袋の店頭販売を復活させた店も。感染者数が多く、静かだった昨年と比べて人出が増え、にぎわいを取り戻した。 同市中村区のJR名古屋高島屋は、年始の福袋店頭販売を復活させた。開店時刻の午前9時半前に並んだのは約1600人(同店発表)。コロナ禍前の2020年(約7千人)の2割ほどだが、21年の約700人から倍以上に増え、「福袋効果」がてきめん。開店を20分早めた。一方、店は感染防止のため検温や消毒などを呼びかけた。 用意した福袋は、店頭とオンライン販売を合わせ、昨年並みの約2万2千個。コロナ禍の影響を受けた学生を応援しようと、就活生の買い物を同店の専門員がサポートする福袋や、東京五輪のメダリストを教室や部活に呼ぶことができる福袋など変わり種もあった。また、家具つき注文住宅が建てられる1億円福袋も登場した。 1階の婦人雑貨売り場では最大8割引きという福袋が並んだ。店員の「お値打ちですよ」のかけ声に誘われ、一人で10個近く買う人もいた。 午前4時半から服やジュエリーの福袋目当てで並んだ、愛知県内に住む社会人1年目の越後まりなさん(23)は「初売りに行くのが小さい時から恒例行事だった。午前3時に起きて来た」と言う。就職活動をコロナ禍が直撃。ある企業の入社試験では検温で体温が37・5度以上あったため、その日は試験を受けられないという経験もした。あちこちに出かけたい気持ちもあったが、「行くと罪悪感を感じる」と控えめにしていた。「少しずつ日常が戻って、コロナのことや周囲の目を気にせず、行動できるようになればいいな」と話した。 愛知県内の元日のコロナ感染発表者は21年の193人に対し、今年は14人。感染者数の落ち着きも人出に影響したようだ。同市中区の松坂屋名古屋店では午前4時半から約3千人が行列をつくった。コロナ禍で一人でも楽しめる「独り占め企画」福袋が用意され、プロゴルファーとラウンドできるゴルフの体験型福袋(抽選)などがあった。名古屋三越栄店でも、高級車「マクラーレンGT」が抽選で当たる高価な福袋などが準備され、大勢の客でにぎわった。(土井良典) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
兵庫県の氷ノ山で遭難 男性の遺体見つかる 雪に埋もれた車中に
2022年1月2日 18時45分 兵庫、鳥取県境にある氷ノ山(ひょうのせん)(標高1510メートル)でキャンプに来ていた5人のうち1人と連絡が取れなくなっていた遭難事故で、捜索を続けていた兵庫県警は2日、大阪市城東区の会社員の男性(66)の遺体を発見したと発表した。 宍粟署によると、男性は宍粟市波賀町戸倉の山中で、雪に埋もれた乗用車の運転席に座った状態で見つかった。エンジンはかかっていなかったという。 5人は会社の同僚や知人のグループで、12月25日に車に分乗して訪れていた。26日に下山する予定だったが戻らなかったため、県警などが捜索。4人は自力で下山し、28日、県警ヘリなどに救助された。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
誘われない?日本が乗り遅れたサイバー国際捜査 警察庁が積極参加へ
サイバー攻撃やサイバー犯罪に対応するため、警察庁が国際的な連携への取り組みを強める。今春の設置をめざすサイバー局とサイバー隊を中心に、これまであまり関わってこなかった国際共同捜査への参加も積極的に進めていく考えだ。 サイバー犯罪の捜査では、各国の治安機関による共同オペレーションが一定の成果を上げている。 欧州警察機構(ユーロポール)が主導したコンピューターウイルス「Emotet(エモテット)」壊滅作戦では、ハッカーの活動拠点を捜索するなどして、昨年1月に感染のネットワークの機能停止に追い込んだ。 過去には日本が加わった例もある。 2014年、「Game Over Zeus(ゲーム・オーバー・ゼウス、GOZ)」と呼ばれたウイルスに世界で約100万台の端末が感染しネットバンキングの不正送金に使われた事件では、警察庁も壊滅作戦に加わり、国内の感染端末の駆除を進めた。 国際刑事警察機構(ICPO)の呼びかけで各国が取り組んだもので、捜査関係者によると、日本はこれ以降も数件の国際共同作戦に参加してきたという。 しかし、最近の大規模な共同作戦には乗り遅れている。エモテットは日本でも被害が出ていたが、参加できなかった。関係者は「誘いがなかった」と明かす。 日本で被害が出た事件の多くは、海外にあるサーバーが攻撃に使われた。そのため、他国に契約者情報を照会するなどの捜査共助が必要だ。だが、回答が来なかったり、時間がかかったりすることは少なくない。また、重要インフラ事業者などを狙う攻撃には国家レベルが関与している疑いも指摘されている。 世界中で被害が深刻化している身代金ウイルス(ランサムウェア)については、21年12月に主要7カ国(G7)の高級実務者による会議が開かれ、共同して対応していくことを確認した。 捜査に臨む体制の違いもある。 欧米をはじめとする各国では、国の機関がサイバー犯罪の捜査を担う。これに対し、日本はあくまで都道府県警が捜査し、警察庁は調整や国際共助の手続きなどに関わる立場だ。 警察庁が進めているサイバー局やサイバー隊の設置計画では、国が直接捜査を担うとしており、これによって国際連携も進める狙いがある。 警察庁幹部は「各国がばらばらで捜査するだけでは攻撃者の特定や摘発に至るのは難しい。各国間の信頼関係に基づき、情報を共有して共同で捜査するのが不可欠だ」と話す。「捜査共助がスムーズになれば海外の機関との信頼関係ができ、それにより共同オペレーションへの参加も円滑に進む」と期待する。 警察庁の有識者会議はこのほどまとめた報告書で、サイバー隊が前面に立ち、戦略的に国際捜査を進めることを提言した。22年度には欧州に初めてサイバー専門の連絡担当官を派遣する方針だ。 計画では、サイバー局は情報などを担当するサイバー企画課、捜査を指揮するサイバー捜査課、データ解析を担う情報技術解析課などで構成される。警察庁が直接捜査するサイバー隊は約200人の態勢で関東管区警察局に設置する。サイバー隊は自ら捜索・差し押さえ、容疑者の逮捕などにあたる。(編集委員・吉田伸八) サイバー犯罪の国際共同捜査の例 2014年5月~ 欧州警察機構(ユーロポール… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
駅ビルに車突っ込む、乗車の男女を搬送 巻き込まれた人はなし 大阪
鈴木智之、河野光汰2022年1月2日 19時58分 2日午後4時45分ごろ、大阪市天王寺区悲田院町のJR天王寺駅ビルに「車が突っ込んだ」と、通行人の女性から110番通報があった。 府警天王寺署によると、軽自動車が駅ビル「天王寺ミオプラザ館」前のロータリーから歩道に乗り上げ、同館の壁面に衝突して止まったとみられる。運転していた60代男性と、同乗の50代女性が病院に搬送された。2人とも意識があるという。署が事故原因を調べている。 現場は年始の買い物客らで混み合っていたが、巻き込まれた人はいなかった。 近くの喫煙所にいた大阪市平野区の会社員の男性(50)は、通行人の「キャー」という悲鳴で異変に気づいたという。車は歩道のポールを「ガシャン」となぎ倒したという。「運転手は何が起きたのか分からない様子だった。焼け焦げたにおいがしたので、急いで車から引っ張り出した」 現場を通りかかった東京都世田谷区の40代女性は「一歩間違えたら大惨事。自分が歩いていたらと思うと怖い」と話した。(鈴木智之、河野光汰) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
熱海土石流から半年 夜は真っ暗な被災地、住民「雨音聞くと苦しい」
静岡県熱海市で昨年7月に起きた土石流から3日で半年を迎える。26人が死亡し、今も1人が行方不明になっている。県警と下田海上保安部は3日、土石流が流れ着いた港付近で計80人態勢で不明者を捜索する。 一方、遺族らは土石流の起点付近にあった盛り土が被害を拡大させたとして、土地所有者らを業務上過失致死などの疑いで刑事告訴。県警が家宅捜索に乗り出して捜査を続けている。また、市が盛り土崩落の危険性を認識し、安全対策を命じることを検討しながら見送っていたことも明らかになっており、行政の対応についても検証が続けられている。 地域のつながり、取り戻したい 土石流で27人の死者・行方不明者が出た静岡県熱海市で、住民らが立ち上げたボランティア団体が復興に奔走している。悩みごと相談、イベントの企画……。災害で気付かされたのは地域のつながりの弱さ。住民同士の結びつきを取り戻すことをめざし、活動を続けている。 昨年12月31日夕、被害が大きかった伊豆山(いずさん)地区。高台にある伊豆山神社に続く石段に、LEDのキャンドル500個が点灯された。 家が流されるなどして、市によると、約100世帯が地区外に転出。明かりが減って夜は真っ暗になる地区を少しでも明るくしようと、ボランティア団体「テンカラセン」が企画した。代表の高橋一美さん(45)らが新年を迎えるにあたり「前を向いて歩むことができる1年になってほしい」と準備してきた。 誰がどこに住んでいるのか分からず 団体は昨年10月に発足。地区で弁当店と青果店を営む高橋さんのほか、被災者ら15人ほどで活動する。団体名の「テンカラセン」は「点」としての住民同士が再びつながって「線」になるようにと願いを込めた。 高橋さんは祖父の代から地元… この記事は会員記事です。残り577文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル