阪神・淡路大震災から17日で27年。都市部を襲った大地震は人々の価値観をも揺るがし、小説や映画など様々な創作に影響を与えた。当時はまだ娯楽のイメージが強かった漫画も、例外ではない。災害の恐ろしさ、被災者の心の傷、記憶の継承……。震災が投げかけた様々な課題を、時に生々しく、時に柔らかく描き出す。何を思ってペンを執ったのか。「日本沈没」の漫画版を描いた一色登希彦さんは、「過去の災害から学び直すことが大切だ」と話す。 いしき・ときひこ 東京都出身。競馬を題材にした「ダービージョッキー」や、オートバイ乗りを描いた「モーティヴ」など。27年前は神戸市勤労会館内の図書館で、各地から集まったボランティアと寝泊まりした。 漫画版「日本沈没」を描くなら…示した条件 1973年の小説「日本沈没」の漫画版を手がけました。日本が大災害に相次いで襲われ、最終的に沈没する――。物語の骨格は原作と同じですが、漫画で強く意識したのは95年の阪神大震災でした。 当時は東京で漫画家のアシスタントをしていました。テレビを見ているだけの自分が嫌で、発生から約2週間後、バイクで1週間、ボランティアに行きました。 神戸市では、全国から寄せられた援助物資が被災者にうまく届いていなかった。私が行った中央区役所には段ボールが山積み。メーカーから無償提供された数台の原付きバイクは使われずに眠っていました。 「小回りのきくバイクなら壊れた道を避けて届けられる」。仲間に呼びかけて物資のバイク輸送を始めました。でも当然、全員に平等には配れなかった。一部から「不公平だ」という声があり、輸送は一時ストップ。私は再開を見ることなく神戸を離れました。 それから10年近く経って… この記事は有料会員記事です。残り1312文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
家族と住んだ家で1人、事件の準備 61歳の孤独と困窮 放火1カ月
大阪市北区の雑居ビル4階のクリニックで25人が犠牲になった放火殺人事件は17日、発生から1カ月を迎えた。大阪府警が殺人と現住建造物等放火容疑で捜査している谷本盛雄容疑者(61)は事件後、事情聴取ができないまま死亡し、動機などの全容解明は困難になった。あの日、何が起きたのか。 クリニックから西へ約3・5キロ。大阪市西淀川区の淀川沿いに3階建て住宅が立つ。1987年春、結婚して2年の谷本容疑者が約1200万円のローンを組み、新築で購入した家だ。 府警などによると、谷本容疑者は板金工として働き、看護師の妻と息子2人とともに約20年間、この家で暮らした。 転居後の谷本容疑者が一人暮らしになったのは、2008年9月に離婚してからだ。09年9月ごろに元妻に復縁を申し込んだが断られた。10年には勤める工場に連絡なく姿を消した。 11年4月、元妻宅で長男を出刃包丁で殺そうとし、府警に殺人未遂容疑で逮捕された。包丁計3本や催涙スプレー、ハンマーなどを持ち込んでいた。 確定した大阪地裁判決は、「寂しさを募らせて孤独感などから自殺を考えるように」なり、「死ぬのが怖くてなかなか自殺に踏み切れなかったため、誰かを殺せば死ねるのではないか」と考えたと認定。懲役4年の実刑判決を受けた。 判決は社会復帰後について、「当面は孤独な生活をしなければならない可能性」を指摘しながら、「家族以外との関わりを持つことができれば、更生することは十分可能」とした。だが、出所後の社会とのつながりは浮かばない。 社会とのつながり見えず 大量殺傷事件に関心 更生保護施設を経て、17年2月に父親から相続した大阪市此花区の住宅に移り、3月に現場となったクリニックに通い始めた。「夜眠れない」などと相談していたという。昨年1月に口座残高がゼロになり、5月に電気やガスを止められて家を出ると6月、かつて暮らした西淀川区の住宅に戻ってきた。 その頃からスマートフォンのアプリに犯行計画とみられるメモを残し始める。「人がいるか確認」「ガソリンを買う」。大量殺傷事件に関する論文も保存していった。現場周辺の防犯カメラには、事件前夜に谷本容疑者とみられる男がコインロッカーにガソリン入りとみられるポリタンクを入れる姿が映っていた。 昨年12月17日午前9時47分。西淀川区の谷本容疑者の住宅で「煙が出ている」と119番通報があった。府警は、谷本容疑者が家に火を付け、直後に自転車で出たとみている。ガソリンを入れたとみられるポリタンクを積んでいた。 クリニックまで約1・5キロの商店街の防犯カメラに同9時50分ごろ、谷本容疑者らしき男が映っていた。黒のジャケットにベージュのパンツ姿。マスクを着け、自転車で走る。 府警によると、男はコインロッカーで隠していたポリタンクを取り出し、計二つに。ビル前で自転車を止め、タンクの紙袋を手に中へ入った。同10時15分、クリニックがある4階で、両手に二つの紙袋を持ってエレベーターから下りた。 「逃げさせない」周到な動き 院内のカメラに男 クリニックの出入り口はエレベーターと、階段につながる非常口の2カ所。男は紙袋をエレベーター前で傾け、ガソリンにライターで火をつけた。もう一つの紙袋を非常口付近に投げて避難路を塞いだ。 炎を逃れようと人々は窓のないクリニックの奥へ向かう。突き当たりの外壁には窓枠とはしごがあるが、室内からは開口部が確認できないという。男は出入り口に向かう男性に体当たりし、避難を阻んだ。 同10時18分に「火が出ている」と119番通報が入る。繁華街での火災に、通報は多数あった。救助隊が駆けつけると、出入り口に最も近い場所で谷本容疑者が倒れ、心肺停止で搬送された他の26人全員が、クリニック中央部の閉じられた扉の奥にいた。亡くなった25人と谷本容疑者の死因はいずれも一酸化炭素中毒だった。山田常圭(ときよし)・元東京大特任教授(火災安全工学)のシミュレーションでは、出火から数分で死に至る状況だったという。 事件の記事、コーキング剤、刃物 10年前の事件との関連は 事件後に府警は谷本容疑者宅を家宅捜索し、事件の計画性が浮かんだ。 西淀川区の住宅では、21年3月に起きた徳島市の雑居ビル放火事件の新聞記事や、36人が死亡した京都アニメーション放火殺人事件から2年に関する21年7月の記事を発見、押収した。両事件ともガソリンを使った放火だった。 「放火殺人」「消火栓をぬる」と書かれたメモや、隙間を埋めるコーキング剤も押収。クリニック内の消火栓の扉は開かぬよう工作されていた。防犯カメラ映像から、事件2週間前の最後の受診時に容疑者がコーキングしたと府警はみる。 クリニックの現場検証では、非常口近くで刃物が見つかった。西淀川区の住宅にあったナイフのさやと一致。府警は谷本容疑者が確実に計画を実行できるよう持ち込んだとみている。容疑者のポケットから催涙スプレー2本も見つかった。 半年にわたって計画されたとみられる事件に、複数の府警幹部は10年前の長男殺害未遂事件との関連を指摘する。谷本容疑者が、多くの人を巻き添えにして自らの命を絶とうとした可能性があるとみている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
トラックが突っ込んだかと 阪神大震災15分後、ラジオは何を伝えた
阪神・淡路大震災が起きた直後から、神戸で被害状況を刻々と伝え続けたラジオ局があります。 AM神戸の愛称で親しまれ、地域の細やかな情報発信を担っているラジオ関西(神戸市中央区)です。 大地震があったあの日、当時は須磨区にあったラジオ関西は発災15分後に放送を再開しました。天井から水漏れする中、安否情報や生活情報を伝え続けました。被災地では当時もいまも、ラジオは貴重な情報源です。 1995年1月17日の朝は、どんな放送だったのでしょうか。 当時の音源が残っていると知り、普段はラジオをほとんど聴かないという高校生2人が同局を訪れました。 震災後に創設され、今春で20年になる兵庫県立舞子高校環境防災科(かんぼう)で学んだ若い世代は、震災について何を学び、何を思うのか。その姿を描きます。後半では、ラジオ関西のラジオパーソナリティー谷さんから震災当時の話を聴く様子を音声でお聞きいただけます。 神戸市垂水区にある兵庫県立舞子高校に通う、森亮太さんと信川悠太さん。2人は同校の環境防災科(かんぼう)の3年生です。 かんぼうは地域の防災活動の担い手を育てようと、02年4月に全国で初めて設置された防災専門学科です。阪神・淡路大震災の教訓を生かし、授業の3分の1が防災に関することを学んでいます。被災地での活動にも力を入れています。 同局で2人を迎えたのは、ラジオパーソナリティーの谷五郎さん(68)です。30年以上のベテランで、今も同局で冠番組を持っています。 司会者は火の元の確認を呼びかけ続けた 谷さんはあの朝、午前6時半… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
津波のエリアメール、20回届いた人も 神奈川知事が設定ミスを謝罪
斎藤茂洋2022年1月16日 17時28分 神奈川県は、16日に気象庁が発表した津波注意報をめぐり、携帯電話向けの緊急速報メール(エリアメール)が、未明から早朝にかけて最大で計20回配信されていたと発表した。本来は配信しないメールだった。配信システムの委託業者によるプログラム設定ミスが原因で、すでに改修したとしている。 県くらし安全防災局によると、16日午前0時15分に気象庁が津波注意報を出した直後に、初回のメールが県内の沿岸市町向けに自動配信された。その後も断続的にほぼ同内容のメールが送信され、東京湾に面する横浜、川崎、横須賀の3市では午前7時31分までに20回に及んだ。相模湾側の残る13市町でも計8回、メールが送信されたという。 県によると、津波警報が出た場合には気象庁からの情報でメールが送られる。県は警報が注意報に切り替わった際には、引き続き注意をするよう呼びかける目的で、自動的にメールを配信することにしていた。 ところが設定ミスのため、最初に注意報が出た時点でメールが配信されたうえ、その後も気象庁が各地に向けた情報を更新するたびに、システムが神奈川への情報が出たととらえてメールを配信していたという。 県には同日未明から午後にかけ、「うるさい」「眠れなかった」「こんなに多数を送らないように」「これだけ送られると、慣れちゃって大事な時に反応しなくなる」などといった苦情が多数寄せられたという。 神奈川県の黒岩祐治知事はツイッターで、委託先の設定ミスとしつつも県の責任だと説明。そのうえで「業者に責任を押し付ける気はありません。ですから、私が謝罪しています。私自身も寝不足です」と投稿している。(斎藤茂洋) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「津波だ、逃げろ」トンガの五輪選手に送られた動画、映っていたのは
河崎優子2022年1月16日 17時42分 【動画】トンガ現地で撮影された海底火山噴火の様子をとらえたとされる動画=ピタ・タウファトファ選手投稿 南太平洋のトンガ諸島で15日午後1時すぎ(日本時間)に起きた海底火山の噴火。噴火当時の様子を撮影した動画を、トンガ出身のオリンピアン、ピタ・タウファトファ選手が投稿した。 動画は、青空の広がる海辺の様子が映る。しばらくすると「バーン」という大きな音と衝撃があり、海辺にいた人たちの叫び声が聞こえる。「津波だ、逃げろ」と言いながら慌てて海岸を離れ、画面が激しく揺れて動画が途切れる。 タウファトファ選手は当時合宿のため豪州にいたため無事だった。マネジメントチームによると、動画はネットが使えなくなる前にトンガから送られてきたもので、トンガのハアパイ諸島で撮られたものとみられる。 タウファトファ選手は夏季、冬季の五輪に通算3回出場。昨夏の東京五輪でも旗手として出場し、上半身裸でオイルを塗って行進して注目された名物選手。 16日、「愛するトンガのために援助がしたい」とクラウドファンディング(https://gofund.me/e3916dc5)を立ち上げた。インフラや被害を受けた学校、病院など、優先的に助けが必要なところに募金を使うという。午後4時時点で400万円以上が集まっている。(河崎優子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「忘れない」2000本の灯籠 阪神・淡路大震災きょう27年
6434人が亡くなった阪神・淡路大震災は17日、発生から27年を迎える。新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、神戸市中央区の公園「東遊園地」では16日、昨年に続き「密」を避けるため、半日早く灯籠(とうろう)の点灯が始まった。 地震発生時刻の12時間前にあたる午後5時46分。震災を忘れないという意味を込めて「忘」の文字に並べた約2千本(主催者発表)の灯籠に火がともされ、集まった市民や高校生ら数百人が黙禱(もくとう)した。 西宮市の角屋裕佳子さん(33)は4歳になる双子の娘を連れて初めて会場を訪れた。「子どもに震災のことや命の大切さを伝えたかった。身を守る術(すべ)などを教えていきたい」と話した。 今年は、会場となる東遊園地の再整備工事や新型コロナの影響で、灯籠の本数を昨年の半分程度にするなど規模を縮小した。 「市民による追悼行事を考える会」(事務局・神戸市)によると、兵庫県内で民間団体が予定する追悼行事は43件。前年から18件減った昨年と同水準にとどまる。感染拡大を防ぐため、引き続き開催を見合わせた団体が多いとみている。(鈴木春香) 死者6434人、行方不明者3人 阪神・淡路大震災は、1995年1月17日午前5時46分に発生。戦後初の大都市直下型地震だった。震源は兵庫県の淡路島北部で、マグニチュードは7・3。神戸市をはじめ県内の4市と淡路島で、観測史上初めて震度7を記録した。 人的被害は死者6434人、行方不明者3人、負傷者4万3792人。全半壊した住宅は約25万棟にのぼる。その後も国内で甚大な被害をもたらす災害が続発し、「大災害時代」の始まりとも言われた。 防災・復興対策が見直され、さまざまな仕組みがつくられていく契機となった災害でもあった。 発生から1年間で延べ約138万人のボランティアが活動。95年は「ボランティア元年」と言われた。ボランティア活動を後押しする特定非営利活動促進法(NPO法)のほか、耐震改修促進法ができ、国や自治体は住宅の耐震化を進めてきた。住宅再建に支援金を給付する被災者生活再建支援法もこの震災がきっかけで制定された。 17日は地震発生時刻の午前5時46分に、神戸市中央区の公園「東遊園地」をはじめ、各地で黙禱(もくとう)が行われる。(鈴木春香) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
元勤務先社長「なんでなんや」 丁寧な文字や図、放火容疑者の日報
大阪市北区の雑居ビル4階にあるクリニックで25人が犠牲になった放火殺人事件で、谷本盛雄容疑者(61)=死亡=は2010年まで大阪市内の板金工場で働いていた。工場には谷本容疑者の詳細な業務日報が残る。事件発生から1カ月。同社社長の男性(78)は丁寧な文字に仕事ぶりや人柄を思い出し、「なんでなんや」との思いが消えない。 谷本容疑者がアルバイトとして採用されたのは02年3月。腕前が認められ、数カ月で正社員になった。 社長は日々、作業員に日報の提出を求め、具体的な作業内容と進み具合を確かめていた。同社に残っていた谷本容疑者の日報は09~10年時のものだった。 A4判のノートの表紙に「谷本」の文字。開くと日付ごとに、行った現場や作業内容、工程が図や寸法も入れて丁寧に記してある。きちょうめんにも思える文字。社長は「谷本のはきれい。私が聞き直さなくてもいいように書いてくれた。なかなかこうはいかない」と言う。 「今日から2月だ がんばるぞ!!」。10年2月の月初めにこう記し、同僚を描いたイラストも添えた。7月の冒頭には「6月分の給料、1日分不足していました!」。翌月への上乗せを求めたようだ。 仕事ぶりは良かった。「『こ… この記事は有料会員記事です。残り685文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
噴火の「衝撃波」が影響? 専門家が指摘する潮位変化のメカニズム
海外の海底火山の噴火に伴う潮位変動という初めての事例に、気象庁は通常の津波の時とは異なる判断を迫られた。 トンガ諸島での噴火から約6時間後の15日午後7時すぎ、気象庁は、若干の海面変動が予想されるとしつつも「津波被害の心配はない」と発表した。 この若干の海面変動があると同庁が想定していたのは、父島(東京都小笠原村)では午後10時半ごろだった。しかし、予想より2時間半早い午後8時ごろから各地で潮位の変化が観測され始めた。16日午前0時前にはついに鹿児島県奄美市で1メートルを超え、午前0時15分に警報、注意報の発令に踏み切った。 津波警報は通常、地震の規模や震源の位置、深さをもとに津波高や到達時間を予測して発出する。だが、今回は各地の検潮所の観測値を発令基準とした。異例の難しい判断に、16日未明の記者会見で宮岡一樹・地震情報企画官は「検討に時間を要したが、防災上の観点から対応を呼びかけた。今回の潮位変化は通常の津波とは異なると考えている」と説明した。 津波は噴火の現場を中心に広がるのが通例だが、日本よりトンガ諸島に近い米サイパン島などでの潮位の変化は0・1~0・3メートルと小さかった。 なぜ火山から約8千キロ離れた日本の方が潮位の変化が大きかったのか。 気象庁は今回、潮位変化が観… この記事は有料会員記事です。残り404文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
脚の間にスマホ「わからない問題調べようと…」 共通テストで不正
2日間の大学入学共通テストで、大学入試センターは受験生3人の不正行為を認定、成績を無効とした。 16日のセンターの発表によると、三重県では、国語の試験中に両脚の間にスマートフォンを挟んでいた受験生がいた。「わからない問題があったら調べようと思っていた」と話したという。神奈川県では1人が英語(リスニング)の試験開始前にICプレーヤーを作動させ、解答を始めた。居眠りをして、目が覚めたとき既に試験が始まっていると勘違いしたという。徳島県では、理科の試験中、1人が試験監督に注意されても複数回、他の受験生の答案をのぞき見したという。 一方、兵庫県の園田学園女子大の試験場で1人が再試験の対象となった。この受験生は配慮が必要だとして試験時間を1・3倍とすることが認められていたが、英語(リスニング)の試験で監督者が誤って一般用の音声メモリーを配布したという。(鎌田悠) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
9歳で逝った息子、残ったランドセル 27年たっても自分を許せない
阪神・淡路大震災で亡くなった息子(当時9)のランドセルを、父親は大切にとっている。「自分を許せない」と、がむしゃらに働き続けた27年。「あの後、父さんは恥ずかしくない人生を送ってきたよ」。いつか天国で再会できたなら、そう言ってこのランドセルを返したい。 1995年1月17日。兵庫県西宮市の会社員、竹田守さん(66)はその晩、家族5人で回転ずしへ行くはずだった。次男の誠さんはマグロが大好きで、楽しみにしていた。前夜は「おやすみ!」と大きな声で言って部屋へ入った。それが最後の言葉だった。 午前5時46分。2階で寝ていると、誰かに背中を蹴られたように感じて目を覚ました。木造2階建ての自宅は崩れ落ちた。 外にはい出たが、1階で寝ていた誠さんの姿が見えない。はりの下敷きになっていたようだ。近所の人らとバールやノコギリなどあらゆる道具で瓦をはがし、がれきを取り払った。ガラスで手を切って血まみれになっても気にせずに続けたが、たどり着けない。 午後に大阪の消防隊が来て… この記事は有料会員記事です。残り885文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル