2011年の東日本大震災で、炉心融解を起こした東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)。事故から11年になるのを前に、来春にも始める処理水の海洋放出に向けた準備工事が進む構内に記者が入った。 今月17日、東京電力福島第一原発の構内の一角で、ショベルカーがぬかるんだ地面を掘り返していた。海に放出する直前に処理水を一時的にためる「立て坑」を掘るための基礎工事だ。 東日本大震災で炉心溶融事故を起こした1~3号機では、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を冷やす水に雨水や地下水が混ざり、いまも高濃度の放射性物質を含む汚染水が増え続ける。汚染水は、大半の放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS(アルプス))に通し、構内のタンクに保管されている。ただ、ALPSでは放射性物質のうちトリチウムは除去できない。立て坑は、大量の海水で薄めた処理水中のトリチウムが基準値以下の濃度になったことを確認したうえで、放出用の海底トンネルに送り出す設備だ。 多核種除去設備(ALPS〈アルプス〉)とは 増え続ける汚染水から放射性物質を取り除き、その濃度を下げるため、2013年に導入された。セシウムやストロンチウムなど放射性物質62種類を除去できるが、水の状態で存在するトリチウムは取り除けない。 昨年4月、菅義偉政権(当時)は、処理水を2023年春に海洋放出する方針を決めた。事故直後から有力視されてきた処分法だが、風評被害を懸念する漁業者らを中心に反対が強く、政府と東電は方針決定を先送りしてきた。 「1年弱で海底トンネル、無理だろう」 政府は13年、増え続ける汚… この記事は有料会員記事です。残り1196文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
高いビルほど揺れる長周期地震動 超高層で6メートル幅の横揺れも
南海トラフ巨大地震や首都直下地震では、高層の建物ほど揺れが大きくなる「長周期地震動」の発生が想定されている。どんな被害をもたらすのか。備えは十分だろうか。 千葉県を震源とする強い地震が昨年10月7日夜、首都圏を襲った。東京23区で震度5強を観測したのは東日本大震災以来だった。 高層階と低層階で揺れ大違い 足立区に接する埼玉県草加市にある鉄筋コンクリート15階建てマンション(築24年)の最上階。会社役員浅葉健介さん(50)は食事中に揺れに見舞われた。テーブルにつかまったが、手を離せば横に飛ばされそうだった。揺れは1分以上に感じた。重さ数十キロの給水器が床に落ちてばらばらになり、台所では棚の調味料などが床に散らばった。 「(2011年の)東日本大震災に匹敵する揺れだった。首都直下地震かも」。近くの別のマンション5階に住む母とは1時間後に連絡がついた。母は寝ていて地震にすら気づかず、室内の被害もなかった。近くの戸建てやマンションの低層階に住む同僚らも、自宅の被害は軽微だった。「同じ市内なのに、どうしてこんなに揺れの感じ方が違うのか」。浅葉さんは不思議がる。 この地震では、東京23区や千葉県北西部などで長周期地震動が観測された。気象庁は大きさを4段階で評価しており、草加市をふくむ埼玉県南部では最も低い「階級1」だった。 長周期地震動とは、1往復する時間(周期)が長い横揺れを指す。高層ビルは揺れやすく、高層階の方がより大きく、長く揺れる傾向があるとされる。 大規模火災、10分もの揺れも 過去には被害も出ている。0… この記事は会員記事です。残り986文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
異例続きの共通テスト、全日程終了 コロナ、事件、問題流出疑惑も
三浦淳 西晃奈2022年1月30日 20時36分 大学入学共通テストは30日、追試験の2日目と再試験を終え、本試験を含めたすべての日程が終了した。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大や刺傷事件、問題が流出したとされる事案など、異例続きの試験となった。 追試験2日目は、理科と数学の試験があった。コロナの感染などで本試験(15、16日)を受けられなかった受験生が対象で、本試験とは別の問題を解いた。 今年の共通テストでは、初日の15日、東京大学会場前で受験生ら3人が刺される事件が発生。2日目の16日はトンガ諸島での噴火に伴う津波警報の影響も出た。本試験後には、受験生が世界史の問題をスマートフォンで撮影し、外部に送ったとされる事案も発覚した。 平均点も昨年と比べ、低下する見込みだ。数学Ⅰ・Aや生物など多くの科目で過去最低となる可能性があり、大学入試センターは2月7日に確定結果を発表する予定。国公立大の個別試験(2次試験)は前期が同25日から、後期が3月12日から実施される。(三浦淳) 津波警報で本試験中止 岩手・宮古の会場で再試験 トンガ諸島での噴火に伴う津波警報の影響で、本試験2日目の16日の試験が中止された全国唯一の会場、岩手県立大学宮古短期大学部(宮古市)では、181人が30日の再試験(数学、理科)の対象となった。 「数学Ⅱ・Bが難しかった。日程がずれ込んじゃったけど、国公立の本番までに調整したい」。同県山田町の馬場莞大(かんた)さん(18)は30日の再試験後、そう話した。16日は親に送ってもらい試験会場に着いたが、中止が決まり帰宅した。「夜中(16日未明)から朝まで警報が鳴りっぱなしで、『こんな中でやんの?』と不安しかなかった」 同町の芳賀亮海さん(18)は「全部難しかった」。16日は会場に行くか悩んだといい、「怖かったので日程が移ったのは安心したけど、学校の期末試験と重なって忙しかった。普通の状況で受けたかった」。 16日は避難指示が出たことを受け、公共交通機関が相次いで運休。同短大部は大学入試センターと協議し、午前9時に中止を発表した。試験の中止は同短大部ホームページに掲載したほか、受験生が通う高校に電話を通じて知らせた。約20人がすでに会場に来ていたが、館内放送で中止を知らせ、受験生たちは高校の送迎バスや保護者の車で帰ったという。(西晃奈) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪キタとミナミ、夜は人減るも昼は変わらず 重点措置後、初の週末
政府が関西3府県など18道府県を新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」の適用対象に追加し、初めての日曜日を迎えた30日、街の様子に変化はあったのか。大阪市北区のJR大阪駅周辺を歩いてみた。 友人と2人で買い物に来ていた兵庫県西宮市の大学生の女性(20)は、自粛も検討したという。しかし、「夜は店が開いてないし、早く解散するつもり。昼間に出歩くぐらいは構わないと思う」と話した。 曽根崎お初天神通り商店街周辺の飲食店では、措置期間が終わる予定の2月20日まで「臨時休業」とする貼り紙も目立つ。焼き鳥店の男性従業員(61)によると、措置適用後の1月28、29日の夜の客数は、営業時間の午後5~9時で40人程度。前週の同時刻とほぼ変わらなかった。「遅くまでは飲めなくなったのは確かだが、どこまで効果があるのか」。30日、百貨店に行くと「密」だと感じた。「また飲食店だけ狙い撃ちになっている。ワクチンや薬を行き渡らせて、早く『ウィズコロナ』の社会に」と願う。 「夜に客がぱったりいなくなった」と話すのは、タクシー運転手の松村晃さん(52)。措置適用後は飲み帰りの客を乗せられなくなり、昼中心の勤務に変更した。「年末は客が多かったのに。落差が苦しい」 重点措置適用前の22日、23日の週末と、適用後の29日、30日の人流データを比較した。NTTドコモの携帯電話の位置情報から推計すると、大阪のキタとミナミの繁華街では夜の人出が減る一方、昼間はほぼ変わらなかった。 具体的には、土曜日の午後6時~翌午前0時のJR大阪駅周辺とJR難波駅周辺では、ともに前の週より約1割減った。一方、日曜日の午前10時~午後4時のデータでは、いずれも前の週とほぼ変わらなかった。 同時刻の昼間の神戸市のJR三ノ宮駅周辺は約1割減少。京都市の清水寺周辺はほぼ変わらず、嵐山周辺は約1割増えていた。(堀之内健史) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
スキー場コース外で遭難、1人救出 日没で残る3人の救助中断 福井
2022年1月30日 22時55分 30日午後3時20分ごろ、福井県勝山市のスキー場「スキージャム勝山」から、利用客がコースの外に出て遭難し、救助を求めているとの通報が福井県警勝山署にあった。 県警がヘリコプターで捜索したところ、スキー場から近い、法恩寺山の山頂(1357メートル)付近で、いずれも福井市に住む20代の男女4人を発見した。4人にけがはなかったという。 県警は午後5時半、このうち女性1人を救出したが、日没のためヘリの飛行を続けられず、残る男性2人、女性1人の救助活動を中断した。県警は3人に、毛布と水、食料を渡した。31日午前7時から救助活動を再開するという。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
高いビルほど揺れる長周期地震動 超高層で6メートル幅の横揺れも
南海トラフ巨大地震や首都直下地震では、高層の建物ほど揺れが大きくなる「長周期地震動」の発生が想定されている。どんな被害をもたらすのか。備えは十分だろうか。 千葉県を震源とする強い地震が昨年10月7日夜、首都圏を襲った。東京23区で震度5強を観測したのは東日本大震災以来だった。 高層階と低層階で揺れ大違い 足立区に接する埼玉県草加市にある鉄筋コンクリート15階建てマンション(築24年)の最上階。会社役員浅葉健介さん(50)は食事中に揺れに見舞われた。テーブルにつかまったが、手を離せば横に飛ばされそうだった。揺れは1分以上に感じた。重さ数十キロの給水器が床に落ちてばらばらになり、台所では棚の調味料などが床に散らばった。 「(2011年の)東日本大震災に匹敵する揺れだった。首都直下地震かも」。近くの別のマンション5階に住む母とは1時間後に連絡がついた。母は寝ていて地震にすら気づかず、室内の被害もなかった。近くの戸建てやマンションの低層階に住む同僚らも、自宅の被害は軽微だった。「同じ市内なのに、どうしてこんなに揺れの感じ方が違うのか」。浅葉さんは不思議がる。 この地震では、東京23区や千葉県北西部などで長周期地震動が観測された。気象庁は大きさを4段階で評価しており、草加市をふくむ埼玉県南部では最も低い「階級1」だった。 長周期地震動とは、1往復する時間(周期)が長い横揺れを指す。高層ビルは揺れやすく、高層階の方がより大きく、長く揺れる傾向があるとされる。 大規模火災、10分もの揺れも 過去には被害も出ている。0… この記事は会員記事です。残り986文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
衆院選、届かなかった選挙公報 背景にご近所付き合い、悩む自治体
選挙公報が届かなかった――。昨年10月の衆院選後、福岡県内に住む男性から朝日新聞に電話が寄せられた。すべての有権者世帯への配布が法律で決められているのに、なぜ届かなかったのか。男性が暮らす街を訪ねて背景を探ると、変わりゆく近所付き合いのあり方や、悩む市町村の姿がみえてきた。(神野勇人) 福岡県中央部にあり、かつて炭鉱で栄えた人口約2万2千人の福智町。昨年10月、町内に住む男性(81)の手元に選挙公報は届かなかった。 これまで選挙は欠かさず投票し、国政選挙では選挙公報を見比べて一票を投じてきた。妻はスマートフォンを持つが、男性はインターネットを使わない。やむを得ず新聞とテレビを参考に投票したが、同時に実施された最高裁裁判官の国民審査は「資料がなくて選びようがない」中で、判断を迫られたという。 各候補者の略歴や主張などを載せた選挙公報は、都道府県選挙管理委員会が発行する。公職選挙法によると、国政選挙では発行が義務づけられ、投票日2日前までに各市町村選管が各世帯に届けるよう定める。新聞折り込みなどの配布方法を認め、役場などへ備え置くことで代替する「補完」も定める。 福智町ではこれまで、自治会や町内会の下部組織で地元住民が任意で入る「行政組」の組長に公報の配布を依頼してきた。男性が住む地域で配布した女性(73)に話を聞いた。 女性は「毎月配る町の広報誌… この記事は有料会員記事です。残り1545文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
愛知県内で4426人の感染確認 名古屋市は1930人
2022年1月30日 20時30分 愛知県内では30日、新型コロナウイルスに4426人が感染したと発表された。死者は2人だった。 県によると、保健所管轄ごとの内訳は県所管分が1616人、名古屋市が1930人、一宮市が307人、岡崎市が223人、豊田市が200人、豊橋市が150人。29日時点で自宅療養者は過去最多の2万8531人。入院患者は775人、宿泊療養施設入所は662人となっている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
基幹統計4兆円過大、朝日新聞はこう試算した 書き換えの迷路の中で
国土交通省による基幹統計「建設工事受注動態統計」の不正。本省職員らがデータを無断で書き換えて二重計上したことで、統計はどれだけ過大になっていたのか。朝日新聞が2020年度分に絞って過大額を試算したところ、約4兆円に上っていた疑いがあることがわかった。試算は公表済みのデータを基に専門家らの助言を得ながら慎重に進めた。 単純な引き算だが…… 過大になっている不正な統計から、正しい統計を引けば、差額がわかる。その差額が「過大額」だ。単純な引き算ができればいい。 不正な統計をAと表記して考えていく。公表済みだが、書き換えにより過大になっているものだ。 正しい統計をBと表記して考える。これは公表されていないものだ。 AとBを使って式に表すと簡単に見える。 20年度の統計は2パターンあった A-B=過大額 この計算をすることが目標となる。 20年度の1年間だけに絞って考えることにした。 20年度は、国交省の本省職員が書き換え行為を行っていた時期だ。具体的には、本来、合算すべきでない受注実績を、計2カ月分、合算して集計していた。 前提が違う まず調べたのは、そもそも何が公表されているのか、だ。 Aは公表されている。Bは非公表。そのほかに、Aとは別のパターンの20年度の統計が公表されていた。これをCと表記して考えることにした。 Cとは何か。具体的には、21年度から新たに導入された計算ルールをさかのぼって20年度の統計に適用したものだ。書き換え前の正しいデータを基につくられているから、二重計上による上ぶれは原則として生じていない。 AとCの違いを整理するとこうなる。 A 旧計算ルール(~20年度)で計算した20年度の統計。不正な書き換えによる過去分データの合算あり。 C 新計算ルール(21年度~)をさかのぼって使い計算した20年度の統計。不正な書き換えによる過去分データの合算なし。 計算ルールが新旧で異なるため、AとCを単純に比べることはできない。Aは過去分のデータが不正に合算された過大な統計で、Cは過去分の合算がなく過大になっていない統計だが、単純に「A-C」という計算をしても「過大額」を知ることはできないわけだ。 迷路に迷い込んだ そこで、前提条件をそろえる方法を探ることにした。 まず欠かせないのが、新旧の計算ルールの違いを理解することだ。国交省はホームページにその説明文を掲載していた。 カギは「4月」だった 新計算ルールでは、旧計算ルールに新たに「係数」(母集団の欠測値を埋めて補正するためのもの)をかける、という概要だ。単純にイメージを記すと次のようになる。 旧計算ルールの統計×係数=… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「北関東」ってどこ?概念いつできた?カギは利根川の流れにあるかも
「北関東」とは群馬、栃木、茨城の3県をひとくくりにしたものとして、一般的に使われていると言っていいだろう。「北関東自動車道」「北関東工業地域」といった名称、北関東の名を冠した公的機関もある。朝日新聞でも「お前はまだキタカントウを知らない」「こちら北関東総局」という3県の地方版に掲載しているコーナーがある。 この概念はいつ生まれたのか、住民の生活実態に即しているのか――。 こんな視点から「北関東」を考えるシンポジウム「関東に『北』はあるのか 『北関東』の成立とその虚実をさぐる」が2月、玉村町の群馬県立女子大学である。企画した簗瀬大輔・同大准教授は「自分が住んでいる地域を考えるきっかけにしてもらえれば」と話す。 「中世の関東の対立軸は東西だった」 日本中世史が専門の簗瀬准教授は「中世の関東の対立軸は東西であって、南北ではなかった」と話す。ここから、北関東という概念に疑問を持ち始めた。 方言を例に挙げると、「西関… この記事は会員記事です。残り773文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル