日本の縫製業は衰退が進んでいる。2020年時点で、国内に流通する衣服の約98%を輸入品が占めていた。コロナ禍が追い打ちをかけるなか、工場発のものづくりで技術を守ろうとする動きが本格化している。 長らくコート専門の縫製工場として稼働してきた三陽商会の子会社「サンヨーソーイング青森ファクトリー」(青森県七戸町)。昨夏、地元のあおもり藍を使った工場オリジナルのステンカラーコート(8万8千円)を、応援購入を求めるクラウンドファンディングサイト「Makuaeke(マクアケ)」で受注販売したところ180着が完売した。 企画を主導したのは、青木豪工場長(40)。「このまま惰性で進めば、廃業する縫製工場がこの先も増える。工場にしかできないことをいかに発信していくかが大事」と危機感を語る。 文化服装学院を出て三陽商会に入り、パタンナーとして本社で働いた。「現場を知らずにパターンを引いていたので、デザインや仕様がうまく工場に伝わらないことがありました」 勉強のつもりで工場勤務を希望し、新潟と青森の工場で10年ほど過ごしてきた。青森ファクトリーが得意とするトレンチコートは、布がすとんと落ち、美しいシルエットを描く。素材の綿ギャバジンは扱いが難しいうえ部材も多く、工程数は200を超える。着る人のことを考え、思い通りにいかなければやり直す職人の仕事を見るうち「工場をなんとしても守っていかなければ」という気持ちに変わった。 「ミシンで縫うときの布へのテンションのかけ方など、工場の技術のすべてが合わさって、うちのコートの『顔』になる。ただパターンどおりに縫い合わせた服と、こだわりをもって縫った服とでは、放つオーラが違います」 三陽商会の商品のほか、パリ… この記事は有料会員記事です。残り961文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ご近所だった羽生選手の思いやり 五輪終え、伝えたい「ありがとう」
北京冬季五輪が20日夜、閉幕する。努力を重ね大舞台に立った選手たちの姿は、多くの人の心に刻まれた。 「スケートをやっている近所の子」が、世界の舞台でも変わらない姿を見せてくれた――。 金沢市の自営業坂田俊明さん(62)は、フィギュア男子に出場した羽生結弦選手(27)を応援した。自閉症で特別支援学級に通っていた長男裕熙(ゆうき)さん(27)の小中学校時代の友達だ。いつも気にかけてくれ、学校のスケート教室では優しく滑り方を教えてくれた。 2011年3月、東日本大震災に見舞われた。当時16歳の羽生選手は仙台市のスケートリンクで練習中に被災し、各地を転々とすることに。坂田さん一家は金沢市へ避難した。同年6月、アイスショーで金沢市を訪れた羽生選手と再会した時、思わず「大丈夫?」と口をついて出た。ふるさとの大変な状況は知っている。「大丈夫なわけないだろう」と罪悪感を抱いた。 すると羽生選手は見越したよ… この記事は有料会員記事です。残り595文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
科学者の責任とは?問い続けた大学講義 38年の歴史に幕
もしも自分の所属する組織が公害や薬害に加担していたら、あなたはどうしますか――。そんな問いかけで学生たちに科学者の責任を訴え続けてきた大阪市立大学の木野茂さん(80)の講義が、38年間の幕を閉じた。問題の当事者から話を聞き、討論や意見発表で考える力を鍛えた学生は総計1万人を超えたという。 「この授業でこれまで知らなかったことを学び、多くのことに気付きました」「他者の言葉を聞くことで様々な見方が得られ、初めて自分自身の考えと向き合えることもありました」 木野さんの今期の講義「ドキュメンタリー・環境と生命」が最終回を迎えた今月2日、学生たちが最後の意見発表で口々に語った。 受講生は34人。水俣病や難民問題などの記録映像を見て、お互いの意見を評価し合ったのが講義の前半。後半では「セクシュアルマイノリティーと教育」「出生前診断は行われるべきか?」など、班ごとにテーマを決めて現状や背景への見解をまとめた研究成果を発表し、学生が自分たちで質疑や討論を仕切った。 「自分の頭で考えること」「権威を無批判に信じないこと」の大切さを一貫して訴えてきた木野さんが試行錯誤し、たどり着いた授業のスタイルだ。 もとは宇宙物理学を専攻して… この記事は有料会員記事です。残り1370文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
商店街の空に光る割り箸 250mイルミネーションが描くメッセージ
東京都杉並区の商店街の夜空を青いイルミネーションが彩っている。約250メートルにわたるLED電球を支えるのは、約1万8千膳の割り箸だ。資源保護やリサイクルに関心を持ってほしいと、商店主らが使用済みや不良品の割り箸を集めた。近くの病院でコロナ禍と闘う医療従事者への感謝も込めている。 JR荻窪駅北口から続く荻窪教会通り商店街。その芸術祭「アートゲート荻窪2021」で昨年11月から点灯し、芸術祭後も今年2月末まで点灯している。 考案したのは、芸術祭を企画した建築家で、商店街のバーも経営する堀川秀夫さん(63)だ。買い物など日常の暮らしの中で心に響く作品をめざし、使い捨てされがちな割り箸に着目した。 割り箸は複数のNPOを通じて無償提供してもらった。飲食店などで使われた箸は洗浄し、国産の間伐材で作られた未使用の不良品も加えた。輪ゴムでつなげて竜の骨格に見立て、商店街の上空をうねらせてLED電球を取り付けた。 日中は割り箸が日光にきらめ… この記事は有料会員記事です。残り199文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
伊勢うどん、「コシがなく」てもいいじゃないか 旅人のおもてなし
キッチンカーで出している「文ちゃんの伊勢うどん」 とにかくコシがない。 太くてやわらかい「伊勢うどん」に出会った時の衝撃が、いまも忘れられない。新聞記者1年目、三重県に赴任した21年前のことだ。近所のスーパーに行くと、ゆで麺とタレのセットがずらりと並んでいたのにも驚いた。 「三重の子どもの多くが、最初に自分で料理するのは伊勢うどんかもしれない」。東京・日本橋のアンテナショップ「三重テラス」で働く、同県志摩市出身の中嶋花奈さんの言葉にも納得がいく。麺をお湯で温め、タレをかけるだけの簡単料理。生活に根付いた郷土の味だという。 首都圏で2018年秋から伊勢うどんに特化したキッチンカーを出している早水久幸さん(57)は、「元祖ファストフード」と表現する。 キッチンカーで伊勢うどんを出している早水久幸さん=2022年1月26日、東京都台東区上野公園の東京国立博物館中庭、前川浩之撮影 イベントなどで「文(ふみ)… この記事は有料会員記事です。残り2087文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
那覇市の繁華街で男性殴り、けがさせた疑い 米海兵隊員を現行犯逮捕
那覇市の繁華街で男性2人を殴り、1人にけがを負わせたとして沖縄県警は20日、米海兵隊員のルイス・ナイヨー・カー容疑者(21)を暴行と傷害容疑で現行犯逮捕し、発表した。所属基地は確認できていない。黙秘しているという。 県警によると、ルイス容疑者は20日午前6時前、那覇市松山1丁目の商業ビル付近の路上などで、沖縄県南城市の土木作業員男性(45)の顔を素手で殴打。止めに入った那覇市の無職男性(45)を押し倒して馬乗りになって顔を複数回殴るなどし、左まぶたや右ひじに傷を負わせた疑いがある。ルイス容疑者は泥酔状態だったという。 沖縄県内では昨年12月中旬… この記事は有料会員記事です。残り223文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
折れたリンゴの木、訪ねてきた小平奈緒選手 地元農家がかけたい言葉
北京冬季五輪が20日夜、閉幕する。努力を重ね大舞台に立った選手たちの姿は、多くの人の心に刻まれた。 「メダルには届きませんでしたが、頑張る姿を見られただけで励まされる思いでした」。女子スピードスケートに出場した小平奈緒選手(35)の地元・長野県でリンゴ農家を営む西澤穂孝さん(40)は話す。 小平選手との出会いは2020年秋。前年の台風19号で千曲川堤防が決壊し、長野市内にある西澤さんの畑や自宅は水につかった。壊れた倉庫の修復も終わっていないころのこと。共通の知人の紹介で、西澤さんのもとを訪ねてくれた。 被災した自宅周辺を案内したり、リンゴ狩りをしてもらったりしている最中、西澤さんは「でも、どうして来ていただけたんですか」と尋ねてみた。 すると小平選手は「よく応援… この記事は有料会員記事です。残り396文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
北日本や北陸など猛吹雪や大雪のおそれ 21日にかけ、高波にも警戒
吉沢英将2022年2月20日 18時21分 北日本と北陸では21日にかけ、雪をともなった非常に強い風が吹き、大しけとなるところがある。すでに暴風雪や大雪となっているところがあり、気象庁が交通の乱れや高波などに警戒を呼びかけている。 同庁によると、20日午後4時までに観測された24時間降雪量の最大値は、北海道中標津町29センチ▽釧路市26センチなど。最大風速では、北海道えりも町で17・3メートル▽奥尻町16・0メートルと強い風が吹いた。 北海道の東にある前線をともなった低気圧は21日、急速に発達しながら北東へ進む見通し。北日本や東日本の上空には強い寒気も流れ込み、21日にかけて強い冬型の気圧配置となる見込みだという。 21日にかけ予想される最大風速は、北海道、東北25メートル。波の高さでは北海道、東北、北陸でいずれも6メートルと見込まれている。 21日午後6時までの24時間に予想される降雪量は、いずれも多いところで、北陸80センチ▽北海道、関東甲信60センチ。22日午後6時までの24時間では、北陸60~80センチ▽北海道、関東甲信30~50センチと見込まれるという。(吉沢英将) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
男性「首を刺された」通報 刺した女?路上で倒れる 名古屋のラブホ
2022年2月20日 21時11分 20日午後4時40分ごろ、名古屋市中区新栄2丁目のラブホテルの一室で、客の20代男性から「女に刃物で首を刺された」と119番通報があった。愛知県警や市消防によると、その後、ホテル隣の路上に女性が倒れているのが見つかった。消防によると、男性は病院に運ばれたが命に別条はなく、女性は心肺停止の状態だという。 女が男性に切り付けた後、建物から飛び降りた可能性があるとみられる。中署は殺人未遂事件として、男性らから事件の経緯について事情を聴いている。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
カーリング銀「こんな日が来るなんて」 沸く地元 将来への不安とは
北京冬季五輪・カーリング女子日本代表のロコ・ソラーレが、日本初となる銀メダルをつかんだ。前回平昌(ピョンチャン)大会の銅から1歩ずつ高みへとのぼるロコを支えてきた地元・北海道北見市常呂(ところ)町の人たちからは「よくやった」と祝福とねぎらいの声が上がり、「次は金」と期待が膨らむ。一方、多くのカーラー(カーリング競技者)が輩出した町では次世代育成への不安も聞かれた。 20日午前10時すぎ、ロコの本拠地・アドヴィックス常呂カーリングホールでは、常呂カーリング倶楽部のカーラーら約50人が試合を見守った。 思うようにいかない試合運び。「きょうのアイスとは仲良くできないのかな」「ちょっと笑顔が足りないなあ」と声がもれる。ロコのメンバーが負けを認め、相手の英国に握手を求めると、「すごいことをやってくれた」と、温かい拍手が起きた。 最前列で見守った鈴木夕湖選手の母・倫子(みちこ)さん(62)は「この舞台に立つまでは、決して簡単な道のりではなかった」と思いやった。「また金メダルを目指すチャレンジができるということですね」 自身も元カーリング選手で日本選手権優勝経験もある吉田知那美・夕梨花選手姉妹の母・富美江さん(62)は涙があふれた。姉妹には今大会前、「日本のカーリング界にとって、誰もやったことがないことをやっているんだから、がんばれ」と励ました。2人からは「そだねー」と返ってきた。 富美江さんによると、コロナ… この記事は有料会員記事です。残り674文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル