夫の死を契機に書道を始め、子どもたちを教え続けて半世紀になる。「書くことが好きになって欲しい」。子どもがやる気になるのをじっくり待ちつつ、可能性を引き出していく時間が生きがいだ。 岡山県奈義町の住宅が点在する田園地域。平日の午後、木造家屋の書道教室に、学校帰りの小中学生らが続々と吸い込まれていく。 習い始めの号令は無い。おしゃべりしていた子どもたちが落ち着いて机に向かった頃合いを見計らい、上原婦じ江さん(96)はその日に練習をする文字を伝える。 「進」の文字を練習する女の子に、そっと声をかけた。「点はしっかり止めて」「しんにょうはもっと伸ばして」 書き終わると「ええのが書けたなぁ。うまくなった」と優しいまなざしを向けた。 戒名の中の文字に目が止まり 神戸市で生まれ、戦時中の1… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「兵士」になった実習生 身分偽り増えた給料、彼女のため車も買った
ベトナム語に「ボドイ」という言葉がある。「兵士」の意味だ。 日本の実習先や留学先から逃げ出し、工場や農家などで働くベトナム人が仲間どうしで呼び合う隠語でもある。 2018年8月、低賃金の実習先から転職先を探して逃げ出した男性(25)は、その由来をこう説明する。 ベトナム戦争でベトナム兵は死を恐れず、しぶとく戦い抜き大国アメリカに勝利した。その「英雄」たちの姿と、経済大国・日本で正規の働き口がなくとも、借金を返すため、家族のため、そして自らの生き残りのために「戦う」自分たちの姿を重ね合わせる――。 「おれも、ボドイって言えるんじゃないですか。まあ、日本にいるボドイはそこまで誇りではないけど」と男性は、通訳を介してそう言い、少し恥ずかしそうに笑った。 低賃金や労働環境の悪さから、失踪するベトナム人技能実習生が大勢います。彼らは、自らを「ボドイ」(ベトナム語で兵士の意味)と呼び、独自のコミュニティーを作っています。そんなボドイの一人の素顔に迫ります。 給料明細には全く別人の名前 失踪してボドイとなった男性は、関東地方の郊外にある大手自動車部品メーカーの工場で働き始めた。 座席に革を張る仕事で、九州… この記事は有料会員記事です。残り1491文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
広がる学生服のリユース シングルマザー始めた事業が全国90店超に
【香川】学校生活に欠かせない制服を、つながりのなかった人からの「お下がり」で――。高松市出身の馬場加奈子さんは11年前、全国初の学生服リユース店「さくらや」を開業した。いま、パートナー店舗は全国に広がっている。 ――制服リユース事業を始めたきっかけは何ですか。 単純に自分が困っていたから、というのがきっかけです。シングルマザーとして3人の子どもを育てるなかで、制服の出費が痛かった。お下がりのつてを探してもなかなか見つからず、同じような悩みを抱える母親が多いことを知りました。生命保険会社に勤めていましたが、育児と仕事の両立も大変。自分で自由に働く時間を決められてお金を稼げるのは、起業しかないと考えました。 ――いまではパートナー店が全国90店舗以上に広がっています。 ここまでになるとは想像もしていませんでした。初年度は130万円ほどしか売り上げが出ず、1年限りでやめようかとも思いました。テレビ番組に取り上げられたことがきっかけで問い合わせが一気に増え、需要があることを改めて感じました。 「私の地域でも」と出店を希望する人にも多く出会い、全国に仕入れと販売の拠点を広げることにしました。希望者には研修の費用を出してもらって、本店からノウハウを提供します。「学生向けに制服を販売する」という以外にルールはありません。育児や仕事をしながらでも続けられるよう、営業日や開店時間はそれぞれの自由です。副業として運営してくれている人もいます。 ――事業の難しい点は何ですか。 11年前と比べて、共働き世… この記事は有料会員記事です。残り1028文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
自宅療養3日目、娘「外で遊びたい」 我が家救った折りたためる遊具
新型コロナウイルスの感染拡大で幼稚園や保育園の休園、小学校の学級閉鎖が相次いだ。屋内で子どもをどう遊ばせるか、頭を悩ませている家庭も多い。テレビを見たり、ゲームで遊んだりする時間が増えるなか、人気の遊具もある。 おもちゃ販売大手の「日本トイザらス」によると、コロナ禍のいま、トランポリンやジャングルジム、すべり台などが売れている。ネットを張ってセットすれば、自宅のテーブルが卓球台に早変わりする卓球セットも好評という。 広報担当者は「公園遊びをお家でできること、体を動かして運動不足解消になることが人気の理由」と話す。都内の店舗では、部屋が狭くても遊べる折りたたみ式の商品の売れ行きがいいという。 我が家も「屋内鉄棒」を購入した。1月末、長女(5)がコロナに感染したのがきっかけだ。 自宅療養を始めて3日目、娘… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
最近地震多くない? 地下のプレートに何が… 過去の特徴と比べると
最近、地震が多い――。関東に住む人はそんなことを思っているかもしれない。確かに、3月末から今月に入り、東京都や千葉県で震度4や3を観測する地震が相次ぐ。地下で何が起きているのか。 4日午後10時29分、東京23区のほか茨城、埼玉、千葉、神奈川の4県で最大震度3を記録する地震が起きた。その2分後には東京23区、横浜市で最大震度2の揺れ。震源はいずれも千葉県北西部だ。 同じような場所では3月31日にも起きている。午後8時52分、千葉県沖の東京湾を震源とする地震が発生。千葉市花見川区で最大震度4を観測した。 これらはいずれも震源の深さが60~73キロと近い。 さかのぼると、昨年10月7日、東京都足立区や埼玉県川口市などで最大震度5強を観測した地震も、震源の位置が最近の地震とよく似ている。このときは日暮里・舎人(とねり)ライナーが脱輪する被害も出た。 昨秋のこの地震と、最近の地… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
はき古すと虹色に…幻のジーンズ 工場水没からの復活劇
はき古すうちに濃紺が虹色に変わっていく不思議なジーンズ。4年前に工場が水害に見舞われ、100本のみを残してこの世から消えかけた幻の品が、この春に復活を遂げた。岡山県の山あいの小さな縫製会社が生み出した独自の製品、そして再生産を実現させたものとは――。 「レインボー」と銘打ったデニムをつくっているのは岡山県津山市の「内田縫製」。国産ジーンズブランドの下請けをしながら、6年前からはオリジナルブランドを手がけるようになった。 ブルージーンズの生地は、白い糸を染料のインディゴで藍色に染めた縦糸と、染めていない横糸で織る。縦糸は糸の中心まで染まりきっていない。はいているうちに表面が擦れて白っぽくなっていく。 一方のレインボー。 新品は一見、ふつうのジーンズと変わらないが、製法に秘密が隠されている。 レインボーの縦糸は白い糸を… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
田んぼは「負債」、耕さないと負担だけ 放棄地を防ぐにはどうすれば
田んぼが「負債」と呼ばれている。もうけが薄く、耕さないと負担だけになる。子や孫に受け継げるのか。 さいたま市東部を流れる元荒川沿いの田園風景は、10年ほど前から数軒の農家を中心に守られてきた。耕作放棄地が出ないよう、川沿いの約80ヘクタールのうち約30ヘクタールの田んぼをお年寄りなどから借り、耕している。 兼業農家の三城貴広さん(50)は田植えの時期が近づくと、30カ所に点在する農地を出勤前に見回るのが日課になる。午前4時台に水を入れ、朝食を食べてから出勤前に水を止めに寄る田んぼもある。地盤がやわらかい場所は、時速10キロほどの小型トラクターに乗り換えて見回る。移動距離は毎日約17キロにも及ぶ。 専業農家の金子利光さん(46)も毎朝5時からの巡回を欠かさない。仲間が管理する田んぼのあぜに穴が開いていれば、「来る時間がなかったのかな」とそっと直す。 評判は口コミで広がる。 仲間の小島信昭さん(56)が権利者100人から借りている田んぼは計18ヘクタール。10年前から増え続けている。後継ぎがいないお年寄りから「貸すから耕してほしい」と頼まれることが多い。10年前の3倍に増えた農地の多くは点在し、効率的ではない。「1人では20ヘクタールが限界かな」 この地域は江戸時代中ごろの新田開発から米作りが盛んだが、いま瀬戸際にある。 ■赤字ぎりぎり、それでも… この記事は有料会員記事です。残り551文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
全身タトゥーの「道場破り」と対決 空手の達人がつくる沖縄そばの味
おでかけ関西 ちょっとウラ話 鋭い眼光。分厚い拳のたこ。 「フシュー」 独特の呼吸法から突き、蹴りを繰り出す。72歳とは思えない素早い動き。毎日2時間のウォーキングを欠かさず、足腰を鍛えている。 「体を維持しておかんと、危険なのがちょこちょこ来るからね。『道場破り』とかな」 沖縄料理屋「ぴないさーら」を訪ねると、店主の喜屋武(きゃん)邦夫さん(72)が道着姿で迎えてくれた。 1階が食堂、3階が空手道場になっている。喜屋武さんは厨房(ちゅうぼう)を出て道場に立つと、身長160センチながら大きく見える。剛柔流8段、琉球空手の達人だ。 腕自慢が他流試合を挑んでくる「道場破り」。猛者たちと、何度も対峙(たいじ)してきたという。 例えば、10年前――。 稽古に励んでいると突然、若い男が乗り込んできた。 男は上着を脱ぐと、全身に入れ墨があった。ただ者ではない身のこなし。格闘技を相当やり込んでいるように見えた。 鋭い正拳突きを繰り出してきた。 喜屋武さんは、その瞬間を見… この記事は有料会員記事です。残り1606文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大人が導く「だるまさんが転んだ」 コロナで減る外遊び、どうすれば
長引くコロナ禍の影響で子どもたちの運動不足が懸念されるなか、「外遊び」に注目が集まっている。公園で新しい取り組みを始めた自治体が出てきたほか、子どもたちがより自由に遊べる環境作りも広がりつつある。 「じゃあ、行くよー!」 2月下旬の平日午後。東京都江戸川区の本一色児童遊園に、元気な子どもたちの声が響いた。普段の公園と違うのは、そこにビブスを着た大人が一緒に遊んでいること。子どもたちに遊びを教える「プレーリーダー」として区の委託を受けたスポーツトレーナーの斎藤俊祐さん(32)だ。 この日は、午後3時半ごろから斎藤さんが公園にいた子どもたちに声をかけ、一緒に大縄跳びを始めた。最初は小学校低学年の児童6人ほどだったが、次第に参加する児童が増加。だるまさんが転んだを始めた頃には、高学年の子を含め、10人以上が参加した。 輪に加わった小学3年の女子… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
咲いてイスタンブール 関門海峡望む斜面に7色チューリップ 山口
山口県下関市の火の山公園内にある「トルコチューリップ園」で、色とりどりのチューリップが見頃を迎え、関門海峡を望む山の斜面を鮮やかに彩っている。 下関市とトルコ・イスタンブール市は、海峡が縁で1972年に姉妹都市を締結。下関市は、2007年に35周年を記念してイスタンブール市から寄贈された球根を植え付け、翌年チューリップ園を整備した。 市公園緑地課によると、7品… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル