川辺真改2022年8月30日 19時30分 石川県能登町が、国の新型コロナ対応の臨時交付金2500万円を利用して設置した巨大イカのモニュメント「イカキング」について、町は29日、経済効果が6億円になったとの推計を発表した。テレビなどによる宣伝効果は18億円にも上ったという。 設置を巡っては、建設費約2700万円のうち2500万円を臨時交付金で賄ったことに「医療にあてるべきだ」「税金の無駄遣い」などの批判が噴出。国内メディアに加え、英ガーディアンや、米NYタイムズなど海外でも取り上げられた。 同町の観光施設「イカの駅つくモール」でお披露目されたのは昨年4月。全長13メートル、高さ4メートル、重さ約5トンの巨大イカのモニュメントは「名物」となった。町が今年6月~8月に実施した来場者へのアンケートでは、半数近くがイカキングを目当てに来場していた。 町が民間のコンサルタントに委託し、「イカの駅つくモール」や周辺施設での来場客の支出額などから経済効果をはじき出した。 町は、批判の声も含め、メディアで繰り返し報じられたことが、結果的には想定以上の大きな経済効果につながった、と見ている。ふるさと振興課の下谷内哲次さんは「県内外から批判も受けたが、せっかく話題になったので、一過性で終わることなく、次の展開を模索したい」と語った。(川辺真改) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
私財投じた財団、山中伸弥さんら支援 ふるさとにも深い愛情 稲盛氏
亡くなった稲盛和夫・京セラ名誉会長は私財200億円を投じてつくった稲盛財団を通じて、科学や芸術の支援にも力を入れた。「人のため、世のために役立つことをなすことが、人間として最高の行為である」という自身の理念に基づき、1984年、優れた科学者や芸術家をたたえる「京都賞」を創設した。 受賞者には、山中伸弥・京都大教授(2010年受賞)や本庶佑(たすく)・同特別教授(16年受賞)のように、後にノーベル賞に選ばれる人も多く、京都賞は「ノーベル賞の登竜門」とも評される賞に育った。 山中さんはiPS細胞につながる研究をしていた04年、稲盛財団から100万円の研究助成を受けた。以前の取材には「当時はまったく先が見えない時期だった。研究費もうれしかったが、それ以上に選んでもらったことが大きな自信につながった」と振り返っていた。助成金の贈呈式で、稲盛さんは研究者一人ひとりと握手を交わし「頑張ってください」と声をかけてくれたという。 受賞者を選考する委員長を務める榊(さかき)裕之・奈良国立大学機構理事長は京都賞について「ノーベル賞と近い構造を持っている」と説明する。宇宙科学や生物学など幅広い分野を対象としているからだ。「稲盛さんもノーベルも技術で成功し、思いが共通するところもあるのでしょう」と話し、「今後も京都のシンボルであり続けることが京都賞の使命だと思う」と語った。 ふるさと・鹿児島の芋焼酎片手に 鹿児島市出身の稲盛さんは郷… この記事は有料記事です。残り1658文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「あの戦争」…77年たっても定まらない名前 共有できない歴史認識
有料記事 聞き手 編集委員・塩倉裕 編集委員・豊秀一 聞き手・池田伸壹2022年8月31日 5時00分 「先の大戦」「第2次世界大戦」「15年戦争」「大東亜戦争」「太平洋戦争」「アジア太平洋戦争」……。戦後77年たっても戦争の名前が定まらない。どう考えたらよいのだろう。 「大東亜戦争」から負の側面も 波多野澄雄さん(外交史研究者) 「先の大戦」や「あの戦争」と呼ばれている戦争について日本国民が呼称を共有できているのかといえば、できていないと思います。私は歴史教科書の検定に携わった時期もありますが、標準的には「太平洋戦争」という呼称が使われる一方、「大東亜戦争」「アジア太平洋戦争」も併記される状況でした。 あの戦争はそもそも、単純な一つの戦争ではありません。四つの戦争からなる複合戦争だったのです。 まず1937年に始まった日中戦争があります。41年には日米戦争と、東南アジアを主舞台とする日英戦争が始まりました。終戦前後にはソ連との日ソ戦争も起きています。少なくとも四つの大きな戦場があったうえ、異なる戦場間を移動した兵士は少数に限られていた。それが、戦争イメージが一つに収斂(しゅうれん)しにくかった一因だと思います。 呼び名としての「大東亜戦争」を再検証する波多野澄雄さん。後半では、侵略された側の声を集める内海愛子・恵泉女学園大名誉教授、似た事例としての南北戦争を紹介するハーバード大学教授のアンドルー・ゴードンさんが語ります。 41年12月に対米英戦を始… この記事は有料記事です。残り3158文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
猛烈な台風11号、沖縄の南で停滞後北上へ 記録的な暴風のおそれ
宮野拓也2022年8月30日 19時35分 猛烈な台風11号は30日夜、南大東島の東北東約190キロの海上を西へ進んでいる。気象庁は、沖縄地方で低い土地への浸水や土砂災害に注意を呼びかけている。同庁によると、31日午前には大東島地方にかなり接近し、記録的な暴風となるおそれがある。 午後11時現在、台風11号の中心気圧は920ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は55メートル、最大瞬間風速は75メートル。中心から半径95キロ以内では、風速25メートル以上の暴風が吹いている。沖縄地方では、31日午後6時までの24時間雨量は多いところで180ミリと予想される。 大東島地方を通過後は、発達しながら南西に進み、9月2日から3日にかけ沖縄の南でほとんど停滞。その後北上し4日午後には東シナ海へ進む見込み。(宮野拓也) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
中学3年の男子生徒が死亡 校舎から転落か? 広島県府中市
菅野みゆき、新屋絵理2022年8月30日 20時30分 30日午前7時10分ごろ、府中市用土町の市立第一中学校の敷地内で、3年生の男子生徒(14)が血を流して倒れているのを、部活動の朝練習で登校した生徒が見つけ、学校関係者が119番通報した。男子生徒は病院に搬送されたが、頭を強く打ち、約3時間後に死亡が確認された。府中署によると、4階建て校舎の上層階に男子生徒の持ち物が残っていたといい、転落したとみて調べている。 記者会見した市教育委員会によると、男子生徒は、校舎の本館と東棟の間にある渡り廊下付近の地面に倒れていた。渡り廊下は各階にあり、壁が設けられているという。 男子生徒は23日の始業式から29日まで休まず登校していた。学校が6月に行ったいじめに関するアンケートでは生徒に関する記述はなかったといい、市教委が改めて調べる。荻野雅裕教育長は「命を守れず痛恨の極み。遺族の心情に最大限配慮しながら、丁寧に調査を進める」と話した。(菅野みゆき、新屋絵理) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
香川県ゲーム条例は「合憲」 高松地裁判決「eスポーツは趣味嗜好」
上山崎雅泰、堅島敢太郎2022年8月30日 20時30分 子どものゲーム時間の目安などを示した香川県の条例について、高松市出身の大学生(19)と母親が「ゲームをする自由を侵害し、憲法に違反する」と訴え、県に計160万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、高松地裁であった。天野智子裁判長は、条例は原告らに具体的な権利の制約を課すものではなく、憲法に違反しないと判断し、原告側の請求を棄却した。 問題とされたのは、2020年4月に施行された県ネット・ゲーム依存症対策条例。ゲームなどをしすぎると学力や体力の低下を招くとして、18歳未満の子どもの1日のゲーム時間を「平日60分、休日90分」を目安にするよう保護者に努力義務を課した。 判決はまず、ネットやゲームをしすぎると社会生活に問題や支障を引き起こす可能性が相当数、指摘されており、複数の医療機関で対応を余儀なくされているとし「予防すべきだという社会的要請には一定の根拠がある」と認めた。 また、専門家らの意見を踏まえ、保護者に一定の目安を示し、子どもがゲーム依存状態に陥ることがないように配慮を求める条例を制定したことは「立法手段として相当でないとは言えない」と指摘した。 その上で、「ゲームやスマホを自由に利用できる権利やeスポーツを楽しむ幸福追求権などが侵害され、憲法13条に違反する」とした原告側の主張について検討。スマホを自由に利用することや、eスポーツを楽しむことなどは「現時点では、いわば趣味や嗜好(しこう)の問題にとどまるといわざるを得ず、人格的生存に不可欠な利益とまではいえない」などとして退けた。 県側の代理人弁護士は取材に「他県や他の地方自治体で同様のルールを定めても合憲、と判断された意義のある判決だ」と語った。浜田恵造知事は「県の主張が認められた。引き続き、条例の趣旨の理解促進に努め、対策に積極的に取り組んでいく」とのコメントを出した。 訴訟を巡っては、原告側が訴えを取り下げようとしたが、県側が同意せず、今年5月に結審していた。(上山崎雅泰、堅島敢太郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「母親は病気」「対人恐怖症」 5歳餓死、救いの手阻んだ「ママ友」
福岡県篠栗町で2020年4月、「ママ友」同士だった碇(いかり)利恵被告(40)=保護責任者遺棄致死罪で一審懲役5年の判決、控訴中=の生活を支配し、碇被告の三男翔士郎ちゃん(当時5)を十分な食事を与えずに餓死させたなどとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われた、赤堀恵美子被告(49)の裁判員裁判が30日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)であった。 翔士郎ちゃんの幼稚園の職員と、県や篠栗町の職員らが検察側の証人として出廷し、虐待を懸念して碇被告の家庭訪問などをしたが、赤堀被告に阻まれていたと証言した。 幼稚園の主任だった女性は… この記事は有料記事です。残り582文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
在日コリアンに偏見、暴力「到底許されない」 ウトロ放火で懲役4年
在日コリアンが多く暮らすウトロ地区(京都府宇治市)の空き家に放火したなどとして、非現住建造物等放火や建造物損壊などの罪に問われた奈良県桜井市の無職有本匠吾被告(23)に対し、京都地裁は30日、求刑通り懲役4年の実刑判決を言い渡した。増田啓祐裁判長は、特定の出自を持つ人々への偏見や嫌悪感などに基づく身勝手な動機だとした上で「暴力的な手段で世論を喚起することは、民主主義社会で到底許されない」と述べた。 判決によると、有本被告は昨年8月30日、ウトロ地区の空き家にライターで火を付け、隣接する住宅など計7棟を全半焼させたほか、同年7月24日、名古屋市中村区の韓国民団愛知県地方本部と韓国学校の雨どいに火を付け、壁面などを損壊させた。 増田裁判長は、有本被告について「在日韓国朝鮮人に嫌悪感や敵対感情などを抱き、離職などで自暴自棄になっていた」と指摘。うっぷんを晴らすとともに、在日韓国朝鮮人や日本人を不安にさせて世間の注目を集め、排外的な世論を喚起したいと考え、名古屋の民団の事件に及んだとした。 だが、事件が世間の注目を集めなかったとして、ウトロ地区の歴史を伝えるため、今年4月に開館予定だったウトロ平和祈念館を狙ったと説明。名古屋の事件では着火剤を使っていたが、ウトロ地区の事件では発火装置を使うなどしたとし、犯行をエスカレートさせた点も軽視できないとした。 その上で、動機について「在日韓国朝鮮人という特定の出自を持つ人々への偏見や嫌悪感などに基づく独善的かつ身勝手なもの」であり、被害を考えずに暴力的な手段に訴えたと言及。「相当に厳しい非難が向けられなければならず、刑事責任はかなり重い」と量刑の理由を説明した。(徳永猛城) 国内にヘイト行為を直接規制する法律なし 国内にはヘイト行為を直接規制する法律はなく、2016年施行のヘイトスピーチ対策法も国や自治体に差別の解消に向けた取り組みを求める「理念法」にとどまる。被害者からは、海外のように刑罰を科す法整備を求める声も根強い。 司法は既存の法律の枠組みで… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
満天の星が照らす町 空白の11年 戸惑いと落胆、でもつながりたい
東京電力福島第一原発事故で全町民の避難が続く福島県双葉町で30日、帰還困難区域の一部にある「特定復興再生拠点区域」の避難指示が解除された。事故から11年半ぶりに住民が帰還できるようになる。ただ、6月に一部が解除された葛尾村や大熊町の同区域では、住民の帰還は進んでいない。 双葉町には第一原発が立地。町面積の96%が、放射線量が避難基準の2・5倍の帰還困難区域に指定された。今回、避難解除されるのは町面積の約1割。避難指示の解除に向け1月に始まった「準備宿泊」には、29世帯50人が参加しただけだった。 事故直後、町は住民の被曝(ひばく)を避けるため、避難自治体で唯一、県外の埼玉県加須市に約2年間、役場機能を移転。国が避難指示を出した11市町村の中で除染などが最も遅れたほか、県内の除染で生じた汚染土を保管する「中間貯蔵施設」の受け入れを迫られた。(編集委員・大月規義、福地慶太郎、笠井哲也) 福島・双葉 11年半ぶり住民帰還が可能に 東京電力福島第一原発の事故で11年半、誰も故郷に戻れなかった福島県双葉町。原発が立地し、町の大半は放射線量が高い帰還困難区域だったが、その一部で30日に避難指示が解除された。ただ、かつての姿とはほど遠い状況で、帰還はなかなか進みそうにない。一方で、町とのつながりを求め続ける住民たちもいる。 ■何もかも変わったふるさと … この記事は有料記事です。残り2529文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
離婚後の共同親権、法制審が試案取りまとめ延期 自民保守系が反発
離婚後の「共同親権」の導入などを議論してきた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は30日、当初予定していた中間試案の取りまとめを見送った。賛否が激しく対立する中、現行の「単独親権」の維持と両案併記の形でパブリックコメントにかける予定だったが、自民党法務部会から更なる議論を求める声が上がったことなどを踏まえ、延期を判断したとみられる。 法務省によると、この日の法制審部会では、「法制審は法制審として独立して議論するべき場」「本日取りまとめてもいいのではないか」といった意見が出た。一方で、国民から意見を募るパブコメをより良いものにするうえで「議論が熟していない」との結論に至り、取りまとめは見送ったという。 今の民法では、離婚後は親権を父母のどちらか一方に決める必要がある。法制審部会は2021年3月から、法改正して共同親権を導入するかについて、賛成派、慎重・反対派が激論を交わしてきた。 議論は法制審部会の外でも活発化。自民党法務部会のプロジェクトチームは今年6月、「家族の分断を生じさせてはならない」として「共同親権を導入すべきだ」と求める提言をまとめ、法相に提出した。一方、ひとり親の支援団体は会見などで、「DV(家庭内暴力)や虐待から子どもの安心安全を守れなくなる」と共同親権に反対した。 こうした中、法制審部会は7月に整理した中間試案のたたき台で、共同親権の導入と単独親権の維持の両案を併記した。共同親権を導入した場合は、共同か単独のどちらを原則と例外に定めるかや、子どもの身の回りの世話をする「監護者」を父母の一方に決めるかなど、複数案を示した。 そのうえで30日に、たたき台に沿った中間試案を取りまとめ、パブコメで国民の意見を募る予定だった。 しかし、26日の自民党法務… この記事は有料記事です。残り413文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル