人が笑うと、返事をしながら笑い返してくれる――。そんな会話ロボットを、京都大の研究グループが開発した。ロボットは人が動かす道具ではなく、自ら動いて人に寄り添う存在になるかもしれない。 同大大学院の情報学研究科には、女性の姿をしたアンドロイド(人型ロボット)「ERICA(エリカ)」がいる。9月下旬、研究を担う井上昂治助教がエリカと向かい合い、「以前から行きたいと思っていたお店にずっと並んでいたら、実はオープンが次の日でした。ははは」と話しかけると、エリカは「そうなんですね、ふふふ」と愛想笑いで返事をした。 うなずきながら相づちをうつ様子は、機械にしては自然に映るが、返事はどこかそっけない。なぜなら、エリカは人が話す内容を理解して返事をしているのではなく、あくまで相手の笑い声に反応して笑っているだけだからだ。 それでも、台本のせりふのように笑う従来のロボットとは異なり、相手に合わせて笑うロボットの開発は世界でも類を見ない試みだった。 笑うエリカは英BBCなど海外のメディアで次々に取り上げられ、河原達也教授は「機械をツールとして捉える海外の人には、ロボットが笑うというのは最先端だったのだろう」と反響に驚いた。 ◇ エリカは、人間の操作を受けず、「自律的に人と対話ができるロボット」をめざして、アンドロイド研究の第一人者である大阪大の石黒浩教授と、音声認識が専門の京大の河原教授らが2015年に開発した。 ①老若男女問わず対話相手として受け入れやすいのは成人女性、②人は人間よりロボットとの対話の方を好むことがある、といった先行研究を踏まえ、CGで合成した女性の姿でデザインされている。 エリカの「愛想笑い」をめぐってはSNSなどで批判も出ました。こうした問題とどう向き合うべきかも記事の後半では取り上げています。 エリカに搭載された対話用の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
82歳の母親を殴って殺害した疑い、無職の53歳男を逮捕 大阪府警
2022年12月30日 11時24分 母親を殴って殺害したとして、大阪府警は30日、吹田市岸部北3丁目の無職高島慎太郎容疑者(53)を殺人容疑で逮捕し、発表した。高島容疑者は「母親の顔面を殴った」と供述しているが、殺意は否認しているという。 吹田署によると、高島容疑者は同日午前0時ごろ、自宅で母親の光子さん(82)の顔面を数回殴打して殺害した疑いがある。高島容疑者は酒を飲んでおり、何らかの原因でけんかになったとみられるという。 同署と市東消防署によると、高島容疑者は同日午前0時10分ごろ、「母親が死んでいる」と自ら119番通報。救急隊が駆けつけたが立ち入りを拒まれたため、直後に到着した警察官とともに室内を確認したところ、光子さんが仰向けで倒れていたという。光子さんは心肺停止の状態で、搬送先の病院で間もなく死亡が確認された。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「電柱か何かにぶつかったと」 4人死傷のひき逃げ、容疑者を送検
2022年12月30日 11時39分 堺市中区の市道で町内会の夜間パトロール中の男性4人が車にはねられ死傷したひき逃げ事件で、大阪府警は30日、車を運転していた同区小阪西町の建設作業員、猪木康之容疑者(49)を自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで大阪地検に送検した。猪木容疑者は「電柱か何かにぶつかったと思った。人をはねたという認識はなかった」と容疑を一部否認しているという。 中堺署によると、猪木容疑者は27日午後11時55分ごろ、同区小阪の市道で乗用車を運転中、道路脇を歩いていた大阪市職員の山中正規さん(46)と内装業の村上伸治さん(47)を後ろからはねて死亡させ、別の男性2人にも軽傷を負わせて逃げた疑いがある。 当時、計8人で年末のパトロール中だった。同署によると、8人のうち前方の4人は縦1列、後方の4人は縦2列に並び、死亡した2人は後方に、けがした2人は前方の先頭を歩いていたとみられるという。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
サザンがいて、サザンで知り合った仲間がいた 息子を失った涙の先に
金曜の夜、仕事が済んだあとにファン仲間6人で最終便のフライトで羽田へ。東京や埼玉のファンと待ち合わせてライブ会場の浜松市の浜名湖までレンタカーを飛ばした。 サザンオールスターズも出演した野外フェスを楽しんだあとは神奈川県茅ケ崎市、鎌倉市、そして東京でサザンゆかりのラーメン店やパン屋、海岸を巡った。夜は飲み会。 札幌市の女性(55)の最高の思い出は、2006年にファン仲間と出かけた「ライブツアー」だ。 予定をぎちぎちに詰め込んだ3泊4日。どこでもサザンの話で盛り上がった。 仲間とは、ファン同士の交流サイトで知り合った。まだ小さかった長女と長男も一緒にキャンプや動物園に繰り出し、家族ぐるみで絆を深めた。人なつこい長男はいつも輪の真ん中にいて、みんなから可愛がられた。 楽しかった日々は13年3月、警察からの連絡で一変した。 吹奏楽に打ち込んでいた息子が突然… 長男が地下鉄に飛び込んで亡… この記事は有料記事です。残り1482文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ワンオペ育児で生じた夫婦の溝 トヨタ式カイゼンで見えた互いの時間
毎晩帰宅するたび、ぐちゃぐちゃに散らかったリビングが目に入り、思わずため息が漏れた。 約2年前、大阪府の女性(31)は掃除に手がつかないほど心が疲れ切っていた。 小学校の教員をしていた。 午前7時、保育園が開園すると同時に長男(5)を預けて出勤。45分後、今度は自分が登校してくる児童を迎え入れる。 クラス担任の仕事に一日中追われた後、子どものお迎えに行き、午後7時前に帰宅するころにはへとへとだった。 料理は、週末にまとめて作り置きした物を出した。「栄養とか見栄えは二の次でした」 システムエンジニアの夫(40)は夜勤があり、深夜や明け方に帰宅することが多い。不規則な勤務の疲れのあまり、帰ってすぐに寝てしまうことも珍しくない。 料理や掃除といった家事の分担は頼れないとあきらめ、ワンオペで家事育児と仕事をこなし続けた。 自分自身に、分担について話し合う時間と気持ちの余裕もなかった。 勤務があわないため、夫婦で一緒にいられる時間は1週間でわずかしかない。 でも、顔を合わせれば、「なんでやってくれへんの。こっちのしんどさを分かってよ」と、日頃のうっぷんをぶつけてしまう。 顔をあわせないときも、家事で不満に感じていることを長文にしたためてLINEで送った。 それが「既読スルー」される。 一方、夫にも不満はあった。 夜勤シフトで疲れ果てて帰ってくると、キッチンに洗い物が残っている時がよくあった。眠いのをこらえて食器を洗い、「終わらせておいてよ……」と感じていた。 女性は長女(2)の出産にあわせて教員を辞めた。ただ、生計を考えると共働きする必要があるため、特別支援学校の講師として働き始めた。 夫婦は家事をめぐってすれ違い、このままでは家庭が回らなくなることは目に見えていた。 悩んでいた女性が頼ったのは、「時間の片付け」という考え方でした。どういう方法なのでしょう。記事後半で紹介します。 1分で埋まる100人の予約枠 女性の願いは一つだった… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
歩道に高齢ドライバーの車が進入 窓の外からハンドル握り事故防ぐ
車で歩道に進入した80代男性の運転を止め、事故を防いだとして、福島県警南相馬署は21日、南相馬市の元タクシー運転手、高野栄さん(72)に感謝状を贈った。当時思い浮かべたのは、東京と福島市で起きた2件の高齢ドライバーによる事故だった。 12日午前10時ごろ、南相馬市原町区旭町2丁目を歩いていた高野さんは、歩道を走行しようとする乗用車を見つけた。前方に車止めがあり、バックランプが何度か点滅。高野さんはすぐに、歩道に間違えて入ったことに気が付いた。 車にはもみじマーク(高齢運転者標識)がついていた。車に駆け寄り、運転手の男性に声を掛けた。「病院に行かねば」という男性に対し、高野さんは窓の外からハンドルを握り、「アクセルを踏むなよ」と声を張り上げながら、車を安全な場所まで誘導した。その後、近くの通行人に110番通報してもらった。 高野さんは昨年まで約30年、東京都内でタクシーの運転手をしていた。19年には東京・池袋で高齢男性が運転する車が暴走し、母子がはねられて死亡する事故があった。高野さんは「運転手仲間と悲惨な事故だなと話していた」と言う。 先月には、福島市内で97歳男性が運転する車が歩道を時速60キロ超で暴走し、女性をはねて死亡させる事故もあった。高野さんは歩道で車を見つけた時、2件の事故を思い出したという。 署によると、80代男性は事故当日に免許を返納したという。高野さんは「地方では買い物や病院に行くには車が不可欠。高齢者が安心して運転できる車の開発や運転しなくてすむ社会が実現してほしい」と話す。 同署の菊池一志署長は高野さんの行動について「車が歩道を暴走し、大事故が起きた可能性があった。高齢者の事故を未然に防ぐ的確な対応だ」と話した。 県警は加齢や病気で運転に不安のある運転手や家族を対象にした相談ダイヤル「#8080」を設け、利用を呼びかけている。(滝口信之) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「東京五輪までに美しい福島を」 中間貯蔵の交付金、積み増しの裏側
中間貯蔵施設の受け入れをめぐり、2014年6月16日、環境相の石原伸晃が福島の怒りを買う。「最後は金目でしょ」と発言したのだ。 前日、政府は建設候補地となっている福島県大熊、双葉両町の住民説明会を終えたばかりだった。石原は16日夕に急きょ、記者を集めてこう釈明している。「住民説明会ではお金(補償)の話が多く出た。最後はお金の話だが、それは今は(金額を)お示しすることができないという意味で話した。お金で解決するとは一度も言ったことはないし、解決できる話ではない」 だが、それでは到底、収まらなかった。福島県をはじめ、地元自治体、住民は一斉に反発。石原はその後、謝罪に追い込まれた。中間貯蔵施設の設置交渉は難しさを増していた。 政府は翌月末、中間貯蔵施設の受け入れにあたり、県と大熊、双葉両町に合わせて1500億円の交付金を提示する。直前に示した1千億円から積み増すことで、決着をはかった。 だが、これに対し、県と2町はさらなる増額を要求。隔たりは大きかった。 「大島さんが財務省に『やれ』と」 交渉が停滞する中、政府と県側がともに泣きついたのが、当時、自民党復興加速化本部長の大島理森だったと言われている。 青森県八戸市出身。原子力施… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「想定外」だった障害者施設での子育て 不妊処置めぐり浮かんだ課題
有料記事 中野龍三、石川友恵、遠藤隆史、森本美紀2022年12月30日 5時00分 北海道の施設で、知的障害のある男女が同居や結婚を望んだ際に不妊処置が提示された問題で、道や国が調査を進めている。施設の対応をめぐっては、子を持つ選択肢を奪ってはならないと批判がある一方、制度が施設での子育てを想定していないという指摘もある。 問題があったのは、北海道江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホーム。同会によると、提示したのはパイプカット手術や避妊リング装着などで、約25年前から続けていた。これまでに8組16人が応じたという。樋口英俊理事長は記者会見で、「強制したことは一切ない」「残念ながら、子どもまでは手がまわらない」などと説明していた。 道は問題が発覚した19日から、同法人に職員を派遣し、樋口理事長らに任意の聞き取りを開始。26日に勧告や命令などの措置が取れる障害者総合支援法に基づく監査に切り替えた。不妊処置を受けた経緯などに関して、同法人の職員のほか、利用者や保護者にヒアリングをする。 鈴木直道知事は28日の会見で「(来年)1月中をめどにヒアリングを終了し、法人から提出を受けた書類の確認などを行う。適正な障害福祉サービスが提供されていないことが確認された場合、法に基づく必要な措置を検討する」と述べた。 また、道は来年1月、他施設でも同様の事例がないか、道内全体の施設を対象に調べる。 知的障害などがある人が入居するグループホームで結婚や出産、子育てを希望したとしても、現行制度の枠組みには支援がないのが実情だ。グループホームに入居できるのは原則18歳以上で、入居しながらの子育ては想定されず、施設側に委ねる形になっている。 「生まれた子どもの支援は対象外」 厚生労働省の担当者は「グル… この記事は有料記事です。残り1117文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
好きな人できるのは当たり前だけど 障害者の結婚と子育て支える施設
知的障害者や精神障害者同士の交際や結婚、子育てまで支援している社会福祉法人が長崎県にある。 12月の日曜日。知的障害がある岩本友広さん(46)と朋子さん(48)夫婦が暮らす長崎県雲仙市のグループホームに、普段は特別支援学校に寄宿している高等部2年の息子裕樹さん(17)が帰っていた。 テーブルを囲み、「僕がキーパーやってるんだよ」と部活動のことを話す息子の明るい声に、2人が顔をほころばせて聴き入る。 夫婦は、ホームを運営する「南高愛隣会」(同県諫早市)の結婚推進室「ぶ~け」の支援で結婚。2005年7月に裕樹さんが生まれた。友広さんは「うれしいなって。涙が出た」とその日を振り返る。 ぶ~けの取り組みが始まったのは20年ほど前。これまでに46組が生活を共にし、子ども8人の育児を支援。今も3世帯の子育てをサポートしている。ぶ~けの立ち上げを担った納谷まさ子さんは「世界のなにより幸せという顔を見せてもらえる。幸せをいっぱいもらっています」と話す。だが、「無責任に結婚や出産を勧めているわけではない」と常務理事の松村真美さん(60)は強調する。 子どもを望む夫婦には出産や… この記事は有料記事です。残り1131文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
交付金1千億円→3千億円 大島理森氏「私の影響、否定しない」
2013年11月、自民党と公明党は復興に向け、除染や中間貯蔵施設の建設に国費の投入を求める提言をまとめた。これを受けて政府は、それまで東電に原則任せてきた対応を転換。中間貯蔵施設の建設も、決着に向けて動き出した。 提言のとりまとめで中心的な役割を担ったのが当時、自民党復興加速化本部長を務めていた大島理森氏(76)だ。大島氏はその後、中間貯蔵施設の候補地となっていた双葉町、大熊町、楢葉町の3町長らとの交渉にあたり、受け入れ自治体への交付金の差配でも重要な役割を果たしたとされる。22年2月、東京都内で話を聞いた。 ――2013年11月、自民、公明両党が中間貯蔵施設に対する国費投入を政府に提言しました。民主党政権下では、東電が基本的にはすべて負担する考えをとってきたことを見れば、大きな方針転換だったと言えます。国が前面に立つシナリオはどうできあがったのでしょうか。 「民主党政権の状況を見ていて、総理の言動も含め、東電を悪者にするというか、すべては東電の責任ということが第一義にあるように感じていました。政権復帰し、復興加速化本部長を仰せつかった時、原子力発電を国策として進めた政治の責任があると考えました。私自身が原発推進を言ってきた責任もある。さあ、東電、おまえたちだけでやれということだけでいいのか。国がしっかりとコミットをし、この問題を乗り越えていかなかければならないという思いがありました」 ――民主党政権では何が足りなかったのでしょうか。 「たとえば中間貯蔵施設の問題では、(福島県内での設置)場所すら決めていなかったし、具体的にどう処理していくのかがなかったような気がします。現実的な結論を得るために、被災地との真の対話があったのだろうかとつくづく感じました」 ――双葉郡の首長は大島さんと何度も交渉を重ねたとインタビューでは答えています。国が前面に出たことで、地元自治体との対話の感触は変わりましたか。 「国が前面に立つということは、ふるさとを失っているみなさんに、まずはお話をいただき、思いを聞くこと。双葉郡のもっとも被害を受けたみなさんは、ふるさとを離れて避難をし、福島県内外で役所を構えている。その苦しみ、いたみを全部わかれと言ってもわからないかもしれないけれども、やっぱり共有することから始めなければならないだろうと思いました。したがって、何度も何度も、その町村長あるいは議会の皆様方と話し合いをさせていただいきました」 ――中間貯蔵施設の場所は当初、双葉、大熊、楢葉の3町だったのが二つの町に集約されます。その経緯は。 「あそこは確か、境界線が非常に入り組んでいるんです。たとえば、楢葉に(施設を)造っても、(隣の)富岡を通って持っていかなければいけないような地形ではなかったか。楢葉の町長には地勢的なことも含め、複雑な感情もあったと思います」 ――政治的判断だった、ということですか。 「楢葉町長は断ったんです… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル