カール・ベンクスさんが再生を手がけた自宅の「双鶴庵」=2021年11月18日午後3時33分、新潟県十日町市、松山紫乃撮影 人口が減り、空き家が増える日本。一方で、利便性を求め都心にはマンションが次々と建てられています。「家」のあり方が変わっていく中で、古民家に価値を見いだし、その再生に取り組むドイツ人男性がいます。 限界集落だった新潟県十日町市竹所で、空き家を次々と美しくよみがえらせてきた、建築家のカール・ベンクスさん(79)。日本の古民家の魅力や、母国ドイツとの違いについて聞きました。 連載「住まいのかたち」 2021年もステイホームの暮らしが続きました。多くの時間を過ごす「住まい」とは、私たちにとってどういう存在なのか。様々な「家」を舞台に、そこに住む人たちの姿を通して豊かな暮らしのヒントを探ります。 ◇ ――来日した経緯を教えてください。 私が生まれる前に亡くなった父が、日本文化の大ファンでした。 父は教会や城の芸術品の保存修復士で、家には瀬戸物や浮世絵などがあり、日本に関する本もたくさんあった。子どもの頃から、日本の木造建築がすばらしいというのは頭に入っていたんです。 最初に日本に来たのは、空手を学ぶためでした。1966年に来日し、アルバイトをしながら東京の大学で空手を勉強しました。その後、在日ドイツ商工会で内装の仕事を手伝いました。そこで日本の職人たちと出会い、彼らの技術の高さを知ったのです。 ドイツ人建築家のカール・ベンクスさん=2021年11月18日午後2時38分、新潟県十日町市、松山紫乃撮影 7年ほど日本で暮らした後、ヨーロッパに戻り、日本の建築技術を広めたいと思って本格的に建築デザインの仕事を始めました。あるとき、ドイツ人のお客さんから飛驒高山(岐阜県)にあるような力強い古民家が欲しいという要望を受け、輸出用に探すため、93年に再び来日しました。 知り合いの大工さんから、新潟県十日町市の集落なら古民家があるかもしれないと教えてもらい、この集落・竹所(たけところ)に連れていってもらうと、そこには朽ち果てそうな古民家がありました。見てみると建物自体はすぐ直せそうだった。加えて、棚田や杉の木があるこの景色が気に入りました。静かだけど寂しくない。そう思い、この古民家を購入して、2年かけてかやぶき屋根の自宅を自ら再生させたのがすべての始まりです。 ――いまはどのような活動をしているのですか。 2010年には十日町市松代(まつだい)の老舗旅館を買い取って再生し、2階に建築デザイン事務所を移しました。いまも古民家の再生に取り組んでいて、これまで全国で60軒ほど手がけてきました。 竹所では、私が来た当時、家は9軒しかありませんでした。それが今は、地元の民家が5軒、移住者が5軒、加えて「お試し移住」施設のシェアハウス1軒と別荘が6軒あります。自宅を含め、9軒は私が再生した古民家です。竹所を「古民家再生の里」にしたくて、いまは10軒目をつくっているところです。 カール・ベンクスさんが再生を手がけた自宅の「双鶴庵」=2021年11月18日午後3時32分、新潟県十日町市、松山紫乃撮影 「リフォームはしない」 ――古民家にはどのような良さがありますか。 古民家の骨組みは、一度バラ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
初売りに1千人の列、2年ぶりの終夜参拝 昨年とは異なるお正月
新型コロナウイルスの感染はやや落ち着いているものの、変異株・オミクロン株の影が迫る――。こんな状況で迎えたお正月は、感染拡大局面だった昨年とは異なり、初売りで福袋の店頭販売を再開する百貨店が目立った。初詣もにぎわいをみせ、参拝客は穏やかな日常が続くことを願った。 百貨店では2日、新春恒例の初売りがあった。 日本橋高島屋(東京都中央区)では、昨年中止した福袋の店頭販売が2年ぶりに復活した。午前10時の開店の5時間ほど前から客が並び始め、開店30分前には約1千人が列をつくった。同店によると、開店時の行列の人数はコロナ禍前の2020年の初売りより4割少ないが、感染が拡大していた21年の4倍に。店は感染防止のため、並んでいる人に除菌シートを配った。 開店すると、客は次々と目当ての売り場へ向かい、特に和洋菓子の福袋売り場には大勢が詰めかけた。20代から毎年初売りに行っているという東京都中央区の会社員女性(57)は「昨年はコロナで初売りに行くのを控えたので、楽しみにしてきた。人が多いのはちょっと気になるけど、1年の初めに活気を感じられて良かった。他の店もはしごする」と声を弾ませていた。 2日から初売りを始めた伊勢丹新宿店(同新宿区)では、感染が昨年より落ち着いていることもあり、昨年は午後6時だった閉店時間を午後7時に延ばした。 一方、感染対策で昨年に続き福袋をオンラインで販売する動きも続く。松屋銀座(同中央区)は、例年店頭で扱ってきた人気の婦人服の福袋を、今年はネット限定の販売に切り替えた。すでに完売したという。(徳島慎也、山下裕志) 「心の中でご斉唱を」 明治神宮(東京都渋谷区)では1日、2年ぶりに大みそかから元日にかけての「終夜参拝」を再開した。 12月31日の午後8時ごろから待っていたという最初のグループは年明けの5分前、本殿の前に進んだ。スピーカーから国歌が2回流れたが、歌う人はいなかった。「マスク着用のまま、心の中でご斉唱を」と案内されていた。 日付が変わった瞬間、年越しを知らせる太鼓の低音が響き、さい銭の「チャリン」という音、参拝客が手を合わせる音が重なった。気温は0度前後と冷え込んでいた。 高校時代の友達と2人で訪れた中島慶斗さん(21)は「周りにいてくれる人の健康」を祈った。コロナ禍で、人との関わりはネット上が大半。感染拡大が落ち着き「メシ行こう」と誘ってくれた友達がありがたかった。「何げない日常が続く1年であってほしい」 夫と子ども2人の4人で訪れた安藤真弓さん(49)は「無事に1年を過ごせたことのお礼にきました」。引っ越しや長女の大学受験、長男の高校進学といった「イベント」が続いた年。「今年も、体調崩すことなく。ね?」と、ベンチコートを着込んだ長男に話しかけた。 コロナ禍前は年間300万人ほどが訪れていたというが、広報担当者は「コロナ禍前の人出には届いていない印象。寒さや、オミクロン株の拡大が影響したのでは」と話した。(横山輝) 人出、過去2年と比べると 各地の元日の人出はどう変わ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福袋の店頭販売、「復活」でにぎわい 名古屋市の百貨店で初売り
土井良典2022年1月2日 17時00分 名古屋市内の百貨店で2日、新春の初売りがあった。新型コロナウイルス感染対策の「密」回避のため、昨年の年始は取りやめた福袋の店頭販売を復活させた店も。感染者数が多く、静かだった昨年と比べて人出が増え、にぎわいを取り戻した。 同市中村区のJR名古屋高島屋は、年始の福袋店頭販売を復活させた。開店時刻の午前9時半前に並んだのは約1600人(同店発表)。コロナ禍前の2020年(約7千人)の2割ほどだが、21年の約700人から倍以上に増え、「福袋効果」がてきめん。開店を20分早めた。一方、店は感染防止のため検温や消毒などを呼びかけた。 用意した福袋は、店頭とオンライン販売を合わせ、昨年並みの約2万2千個。コロナ禍の影響を受けた学生を応援しようと、就活生の買い物を同店の専門員がサポートする福袋や、東京五輪のメダリストを教室や部活に呼ぶことができる福袋など変わり種もあった。また、家具つき注文住宅が建てられる1億円福袋も登場した。 1階の婦人雑貨売り場では最大8割引きという福袋が並んだ。店員の「お値打ちですよ」のかけ声に誘われ、一人で10個近く買う人もいた。 午前4時半から服やジュエリーの福袋目当てで並んだ、愛知県内に住む社会人1年目の越後まりなさん(23)は「初売りに行くのが小さい時から恒例行事だった。午前3時に起きて来た」と言う。就職活動をコロナ禍が直撃。ある企業の入社試験では検温で体温が37・5度以上あったため、その日は試験を受けられないという経験もした。あちこちに出かけたい気持ちもあったが、「行くと罪悪感を感じる」と控えめにしていた。「少しずつ日常が戻って、コロナのことや周囲の目を気にせず、行動できるようになればいいな」と話した。 愛知県内の元日のコロナ感染発表者は21年の193人に対し、今年は14人。感染者数の落ち着きも人出に影響したようだ。同市中区の松坂屋名古屋店では午前4時半から約3千人が行列をつくった。コロナ禍で一人でも楽しめる「独り占め企画」福袋が用意され、プロゴルファーとラウンドできるゴルフの体験型福袋(抽選)などがあった。名古屋三越栄店でも、高級車「マクラーレンGT」が抽選で当たる高価な福袋などが準備され、大勢の客でにぎわった。(土井良典) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
兵庫県の氷ノ山で遭難 男性の遺体見つかる 雪に埋もれた車中に
2022年1月2日 18時45分 兵庫、鳥取県境にある氷ノ山(ひょうのせん)(標高1510メートル)でキャンプに来ていた5人のうち1人と連絡が取れなくなっていた遭難事故で、捜索を続けていた兵庫県警は2日、大阪市城東区の会社員の男性(66)の遺体を発見したと発表した。 宍粟署によると、男性は宍粟市波賀町戸倉の山中で、雪に埋もれた乗用車の運転席に座った状態で見つかった。エンジンはかかっていなかったという。 5人は会社の同僚や知人のグループで、12月25日に車に分乗して訪れていた。26日に下山する予定だったが戻らなかったため、県警などが捜索。4人は自力で下山し、28日、県警ヘリなどに救助された。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
誘われない?日本が乗り遅れたサイバー国際捜査 警察庁が積極参加へ
サイバー攻撃やサイバー犯罪に対応するため、警察庁が国際的な連携への取り組みを強める。今春の設置をめざすサイバー局とサイバー隊を中心に、これまであまり関わってこなかった国際共同捜査への参加も積極的に進めていく考えだ。 サイバー犯罪の捜査では、各国の治安機関による共同オペレーションが一定の成果を上げている。 欧州警察機構(ユーロポール)が主導したコンピューターウイルス「Emotet(エモテット)」壊滅作戦では、ハッカーの活動拠点を捜索するなどして、昨年1月に感染のネットワークの機能停止に追い込んだ。 過去には日本が加わった例もある。 2014年、「Game Over Zeus(ゲーム・オーバー・ゼウス、GOZ)」と呼ばれたウイルスに世界で約100万台の端末が感染しネットバンキングの不正送金に使われた事件では、警察庁も壊滅作戦に加わり、国内の感染端末の駆除を進めた。 国際刑事警察機構(ICPO)の呼びかけで各国が取り組んだもので、捜査関係者によると、日本はこれ以降も数件の国際共同作戦に参加してきたという。 しかし、最近の大規模な共同作戦には乗り遅れている。エモテットは日本でも被害が出ていたが、参加できなかった。関係者は「誘いがなかった」と明かす。 日本で被害が出た事件の多くは、海外にあるサーバーが攻撃に使われた。そのため、他国に契約者情報を照会するなどの捜査共助が必要だ。だが、回答が来なかったり、時間がかかったりすることは少なくない。また、重要インフラ事業者などを狙う攻撃には国家レベルが関与している疑いも指摘されている。 世界中で被害が深刻化している身代金ウイルス(ランサムウェア)については、21年12月に主要7カ国(G7)の高級実務者による会議が開かれ、共同して対応していくことを確認した。 捜査に臨む体制の違いもある。 欧米をはじめとする各国では、国の機関がサイバー犯罪の捜査を担う。これに対し、日本はあくまで都道府県警が捜査し、警察庁は調整や国際共助の手続きなどに関わる立場だ。 警察庁が進めているサイバー局やサイバー隊の設置計画では、国が直接捜査を担うとしており、これによって国際連携も進める狙いがある。 警察庁幹部は「各国がばらばらで捜査するだけでは攻撃者の特定や摘発に至るのは難しい。各国間の信頼関係に基づき、情報を共有して共同で捜査するのが不可欠だ」と話す。「捜査共助がスムーズになれば海外の機関との信頼関係ができ、それにより共同オペレーションへの参加も円滑に進む」と期待する。 警察庁の有識者会議はこのほどまとめた報告書で、サイバー隊が前面に立ち、戦略的に国際捜査を進めることを提言した。22年度には欧州に初めてサイバー専門の連絡担当官を派遣する方針だ。 計画では、サイバー局は情報などを担当するサイバー企画課、捜査を指揮するサイバー捜査課、データ解析を担う情報技術解析課などで構成される。警察庁が直接捜査するサイバー隊は約200人の態勢で関東管区警察局に設置する。サイバー隊は自ら捜索・差し押さえ、容疑者の逮捕などにあたる。(編集委員・吉田伸八) サイバー犯罪の国際共同捜査の例 2014年5月~ 欧州警察機構(ユーロポール… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
駅ビルに車突っ込む、乗車の男女を搬送 巻き込まれた人はなし 大阪
鈴木智之、河野光汰2022年1月2日 19時58分 2日午後4時45分ごろ、大阪市天王寺区悲田院町のJR天王寺駅ビルに「車が突っ込んだ」と、通行人の女性から110番通報があった。 府警天王寺署によると、軽自動車が駅ビル「天王寺ミオプラザ館」前のロータリーから歩道に乗り上げ、同館の壁面に衝突して止まったとみられる。運転していた60代男性と、同乗の50代女性が病院に搬送された。2人とも意識があるという。署が事故原因を調べている。 現場は年始の買い物客らで混み合っていたが、巻き込まれた人はいなかった。 近くの喫煙所にいた大阪市平野区の会社員の男性(50)は、通行人の「キャー」という悲鳴で異変に気づいたという。車は歩道のポールを「ガシャン」となぎ倒したという。「運転手は何が起きたのか分からない様子だった。焼け焦げたにおいがしたので、急いで車から引っ張り出した」 現場を通りかかった東京都世田谷区の40代女性は「一歩間違えたら大惨事。自分が歩いていたらと思うと怖い」と話した。(鈴木智之、河野光汰) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
熱海土石流から半年 夜は真っ暗な被災地、住民「雨音聞くと苦しい」
静岡県熱海市で昨年7月に起きた土石流から3日で半年を迎える。26人が死亡し、今も1人が行方不明になっている。県警と下田海上保安部は3日、土石流が流れ着いた港付近で計80人態勢で不明者を捜索する。 一方、遺族らは土石流の起点付近にあった盛り土が被害を拡大させたとして、土地所有者らを業務上過失致死などの疑いで刑事告訴。県警が家宅捜索に乗り出して捜査を続けている。また、市が盛り土崩落の危険性を認識し、安全対策を命じることを検討しながら見送っていたことも明らかになっており、行政の対応についても検証が続けられている。 地域のつながり、取り戻したい 土石流で27人の死者・行方不明者が出た静岡県熱海市で、住民らが立ち上げたボランティア団体が復興に奔走している。悩みごと相談、イベントの企画……。災害で気付かされたのは地域のつながりの弱さ。住民同士の結びつきを取り戻すことをめざし、活動を続けている。 昨年12月31日夕、被害が大きかった伊豆山(いずさん)地区。高台にある伊豆山神社に続く石段に、LEDのキャンドル500個が点灯された。 家が流されるなどして、市によると、約100世帯が地区外に転出。明かりが減って夜は真っ暗になる地区を少しでも明るくしようと、ボランティア団体「テンカラセン」が企画した。代表の高橋一美さん(45)らが新年を迎えるにあたり「前を向いて歩むことができる1年になってほしい」と準備してきた。 誰がどこに住んでいるのか分からず 団体は昨年10月に発足。地区で弁当店と青果店を営む高橋さんのほか、被災者ら15人ほどで活動する。団体名の「テンカラセン」は「点」としての住民同士が再びつながって「線」になるようにと願いを込めた。 高橋さんは祖父の代から地元… この記事は会員記事です。残り577文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。 【1/24まで】2つの記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
玉城知事「オミクロン株は米軍から染みだし」 沖縄での対応巡り非難
国吉美香2022年1月2日 20時17分 沖縄県は2日、在沖米軍で新たに70人の新型コロナウイルスの感染が確認されたと発表した。1日も在沖米軍では過去最多の235人の感染が確認されている。玉城デニー知事は2日、臨時の記者会見を開き、「米軍陽性者の急増は、米軍における管理体制の不十分さを示すもので激しい怒りを覚える」と強く米側の対応を非難し、対策の徹底を再度求めた。 会見で玉城知事は「県内のオミクロン株の感染拡大は米軍からの染みだしが大きな要因」とも指摘した。 玉城知事によると、県が国立感染症研究所の協力を得てオミクロン株の広がりを調査したところ、12月30日までに確認された市中感染の疑いがある複数人から、米軍基地従業員らと同じオミクロン株のゲノム系統が確認されたという。また、12月31日と1月1日の2日間でオミクロン株の感染が確認された計45人のうち29人は海外渡航歴がなく基地従業員との接触もないことから市中感染の疑いがあるという。 玉城知事は、米軍関係者は日米地位協定に基づき日本側の検疫の対象になっていないことなどから、「日米両政府は、構造的な問題であるという強い危機意識を持って頂きたい」と協定見直しも強く訴えた。 県内のオミクロン株の感染者は計65人、うち市中感染の疑いは計31人。 大規模なクラスター(感染者集団)が判明している米海兵隊基地「キャンプ・ハンセン」(金武町など)については、外務省が12月29日、約半数をオミクロン株の感染者と認定したと発表したが、具体的な人数などは発表されていない。(国吉美香) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「強く生きたい」 人生変えた一言 東京パラマラソン金・道下美里
(わたしの折々のことば)道下美里さん 東京パラリンピック最終日の2021年9月5日。女子マラソン(視覚障害T12)で道下美里さん(44)はゴールの瞬間、高く両手をつきあげた。3時間0分50秒。悲願の金メダルだった。「最高の伴走者と最強の仲間がいたので、ここにたどりついた」。うれし涙を流した。 「わたしの折々のことば」は、大切なことばを三つ挙げてもらい、そのことばにまつわる物語を語ってもらう企画です。 東京パラリンピックの女子マラソン(視覚障害T12)で金メダルを獲得し、伴走者と一緒に笑顔を見せる道下美里さん=2021年9月5日、国立競技場、矢木隆晴撮影 右目は見えない。左目は光と色がぼんやり分かる程度。東京パラリンピックで金メダルを取るまで、数え切れないほどの「人」と「言葉」に支えられてきた。中でも、14歳の時に入院先で出会った「おじちゃん」の言葉は忘れない。「おじちゃんに出会えたことで、私の人生は変わった」 神様は乗り越えられる人にしか試練を与えない。自分は選ばれた人。お嬢ちゃんも選ばれた人なんだよ。 (車いすの「おじちゃん」) 三人兄妹の末っ子で、幼いころは甘えん坊。両親が営む「中野書店」は支店もあり、経済的にも不自由なく育った。 穏やかな日々が一変したのは小学4年の時。右の目の中に白い点があるのを伯母が見つけた。心配した母に連れられ眼科へ行くと大学病院を紹介され、1時間おきに目薬をさす治療が始まった。 それでも右の視力はどんどん下がり、中学2年で0・1になった。角膜移植を提案された。「手術をすれば見えるようになる」。そう説得された。 だが、麻酔から覚めると激しい頭痛に襲われ、再手術。退院した後に眼圧が上がり、今度は水晶体をとる手術をした。さらに再度の角膜移植。中学3年にかけて計4回の手術を受けた。だが右目は見えるどころか、逆に視力を失った。 小学6年生の道下美里さん。当時はまだ両目とも見えていた=1988年8月、山口県下関市、三井住友海上提供 「なんで私だけこんな運命なんだろう」。思春期まっさかり。友だちは進路をめざして進んでいるのに、自分は3カ月半も入院していて、受験勉強もはかどらない。悲嘆にくれた。 そんな時、病院の自動販売機が置かれた一角で、40代くらいの「おじちゃん」と出会った。大きな車いすに乗って「お嬢ちゃん、いくつ?」と優しく話しかけてくれた。暇つぶしに自販機のところに行っては、おじちゃんと話すのが楽しみになった。 おじちゃんは色々な話をしてくれた。若い時にやんちゃをしたこと。夫婦で営む小さな居酒屋のこと。そして交通事故で大けがをしたこと。体にボルトを埋めたが手術が失敗し、その後、何度も手術を繰り返しているという。それでも、だれを恨む様子もなく、「選ばれた人」と語った。 「なんでそんなに前向きにな… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
元日は「寅年」で「寅の日」でした 縁起物「笹寅」をめざし、山頂へ
2022年1月2日 17時43分 12日に一度巡ってくる「寅(とら)の日」の新年最初の日となった元日、関門海峡を望む山口県下関市の四王司山(392メートル)で「初寅参り」があった。 山頂の神社には毘沙門天がまつられ、商売繁盛などの御利益があるとされる。笹(ささ)に張り子のトラをつるした「笹寅」が人気で、行列ができた。 一番乗りは同県防府市の保険外交員、芹沢雄二さん(59)。還暦で迎える高校同窓会が楽しみで、「元気な一年にしたい」。寅年初日に威勢よく誓った。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル