パナソニックのヘアドライヤーの広告の説明が消費者を誤解させるとして、ライバル社の家電大手ダイソンが不正競争防止法に基づいて広告の差し止めを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁(杉浦正樹裁判長)であった。判決はダイソンの請求を棄却した。 ダイソンが問題視したのは、パナソニックの「ヘアードライヤーナノケア EH―NA0G」の広告。 訴状などによると、パナソニックは独自の微粒子イオン技術「ナノイー」による効果について、「水分発生量 従来の18倍」「高浸透ナノイーで髪へのうるおい1・9倍」「カラーの色落ちを抑える」などと表現していた。 ダイソンが独自に効果を検証 ドライヤーも販売するダイソンは、広告で使われた計五つの表現について、独自に東洋大の研究者に実験を委託して効果を検証。その結果、大幅に下回る数値が出たり、統計的に有意な差が出なかったりしたと主張した。 そのうえで、消費者に性能を誤認させる広告は「不正競争行為」にあたり、このまま放置されると「ダイソンの営業上の利益を侵害される恐れがある」として差し止めを求めていた。 これに対しパナソニック側は「ダイソンの実験は方法が不適切で、(広告でうたった性能の)正確性に合理的な疑問を差し挟むものではない」などと反論していた。(田中恭太) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
壊滅した大槌に現れた「お好み焼き仙人」 店主と紡いだ12年の物語
岩手県大槌町の三陸鉄道大槌駅前に昨年末、居酒屋「みかドン」が3年ぶりに復活した。そして、メニューに「広島風お好み焼き」が新たに加わった。三陸沿岸の漁師町になぜ? 記者が店主に理由を聞くと、仙人のような男性とのつきあいを話し始めた。 4月初めの夕方、関西出身の私はふと粉物が食べたくなって、赤く塗られた真新しいガラス戸を開けた。 2枚の大きな鉄板が目に入った。メニューには「広島風お好み焼き」があった。気になって注文した。 店主の柏崎浩美さん(62)が調理を始めた。薄く敷いた生地の上に千切りキャベツを山盛りにして、豚肉をのせる。不慣れなのか、写真入りのレシピをちらちらと見ていた。 「なんで広島風を?」 店主は、2011年のことを振り返り始めた。 3月の津波で柏崎さんは経営していた居酒屋が流されたが、支援に来た人たちが屋台をつくってくれて、7月に商売を再開できた。壊滅した大槌の市街地で復活した最初の店だった。 ある夜、広島市からボランテ… この記事は有料記事です。残り947文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
信教の自由を守る闘い 自衛官合祀訴訟の地元で、今も引き継がれる
3月末、山口市の山口県護国神社を訪ねた。神社のホームページによると、約5万2千柱の戦没者がまつられ、約9割が満州事変以降に亡くなった軍人・軍属ら。戦後は殉職自衛官45柱を合祀(ごうし)した、とある。国家のために死んだ人をまつる施設だ。 「今春、山口県護国神社で催される慰霊大祭には公務として参拝しないことを強く要請する」。4月2日、日本基督教団宇部緑橋教会(同県宇部市)牧師の小畑太作(55)は、教会や市民団体などの連名で、山口県知事の村岡嗣政(50)あてに要望書を提出。参拝は政教分離違反などにあたると訴えた。 小畑らは、昨年4月の春の慰霊大祭への知事の公務参拝についても、参拝にかかった公費を県会計に返還することを求める住民監査請求を行ったが、3月28日付で却下された。 ■自衛官の夫を無断で合祀され… この記事は有料記事です。残り1036文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ウクライナからの避難学生支えて 国際基督教大が500万円寄付募る
国際基督教大学(ICU、東京都三鷹市)は、戦禍のウクライナから避難した学生が今年度以降も学び続けられるよう、必要な費用を募るクラウドファンディングを始めた。 ICUは昨年5月、ウクライナの学生5人を受け入れた。ロシアによるウクライナ侵攻から1年以上過ぎても終結の見通しがたたないなか、5人は引き続きICUでの学習を希望し、今年4月と9月に学部編入や大学院進学が決まったという。 5人が学位を取得するまでに必要と見込まれる額は計約2600万円。クラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/ukrainianstudentsaticu)では、学費や寮費に充てる分として500万円を募集する。実施期間は6月30日まで。 担当者は「多くの人からの応援の気持ち、平和への願いを届けたい」。(井上恵一朗) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
養鶏場で火災 ニワトリ15万羽が焼け死に、鶏舎1棟全焼 茨城
中村幸基2023年4月27日 10時50分 26日午前3時前ごろ、茨城県小美玉市小岩戸のイセファーム美野里農場から「鶏舎から煙と炎が出ている」と119番通報があった。石岡署の調べでは、鉄筋鋼板造り平屋建ての鶏舎1棟約4千平方メートルが全焼し、飼育していた採卵鶏約15万羽が焼け死んだ。同農場では鶏舎9棟に計約83万羽を飼っており、ほかの8棟に被害はなかったという。けが人はなかった。 同署によると、農場に常駐している警備員の男性が、「ボン」という音を聞き、鶏舎から煙と炎が出ているのを見つけて119番通報した。同署と消防が原因を調べている。(中村幸基) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
鳥追い払うロケット花火が引火? 山形空港、滑走路そばの草燃える
高橋昌宏2023年4月27日 11時07分 山形空港(山形県東根市)で24日に滑走路そばの草地が燃える火事があり、周辺の鳥を追い払うために使ったロケット花火の一部が引火した可能性が高いことがわかった。25日に県山形空港事務所が発表し、原因調査を進めている。 同事務所によると24日午後3時半ごろ、滑走路東側の草地から煙が上がっていると管制塔から連絡があった。空港の消防警備隊が消火にあたり、約10分後に消し止められた。草地約1660平方メートルが焼けた。 同市消防本部とともに原因を調べたところ、現場付近でロケット花火の燃えかすが見つかった。 山形空港では、鳥による航空機への衝突を防ぐため、離着陸の前に鳥が滑走路や上空にいた場合、ロケット花火を打ち上げるなどして追い払っているという。同事務所によると、2017年3月にも同様にロケット花火が原因とみられる草地火災が起きた。(高橋昌宏) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「不起訴なのに懲戒解雇は不当」 元管理職が処分無効として会社提訴
逮捕後、不起訴になったのに懲戒解雇されたのは不当で処分は無効だとして、ヤマハ発動機(静岡県磐田市)に対し、元管理職の男性(59)が社員としての地位確認などを求める訴訟を起こした。静岡地裁浜松支部(藤崎彩菜裁判官)で21日に開かれた第1回口頭弁論で、会社側は「処分は適法で有効」と反論した。 捜査当局に逮捕された後に処分保留で釈放され、さらに不起訴になった社員を会社は懲戒解雇できるのでしょうか。そんなテーマが争点となる裁判が始まっています。 訴状などによると、男性は2022年4月、覚醒剤が入った小包を海外から受け取ったとして、麻薬特例法違反容疑で静岡県警に逮捕された。5月には営利目的で密輸したとして覚醒剤取締法違反容疑で再逮捕された。男性は一貫して容疑を否認。静岡地検浜松支部が処分保留で釈放し、同年10月に不起訴処分となった。 会社は釈放された6月1日に自宅待機を指示し、同8日に懲戒解雇処分を通知した。「(覚醒剤取締法違反容疑での)捜査当局による強制捜査が会社に勤務する社員の著しい不安を招き、社内規律を乱した」として、就業規則に抵触するという内容だった。 男性側は逮捕容疑は事実無根の「警察による誤認逮捕」で「全く責任がない」と主張。懲戒解雇の通知前に事情を聴くこともせず、「誤認逮捕を理由にした解雇は労働契約法違反だ」と訴え、解雇は無効だとした。また、この間の賃金と、慰謝料550万円の支払いも求めた。 会社側「解雇には合理的理由がある」 一方で会社側は、結果として覚醒剤を輸入させてしまったことについて「不注意では済まされない重大な非違行為」だと指摘。解雇処分には客観的に合理的な理由があると主張した。 ヤマハ発動機の代理人弁護士は取材に対し「訴訟での書面で示しているとおりです。現状ではそれ以上のコメントはありません」と話した。(大平要) 懲戒解雇は重いペナルティー 懲戒解雇は企業で働く人にと… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「子なしは、私だけの責任なのか」 氷河期世代がいま抱える思いは
首都圏で暮らす女性(46)は、給与明細を見る度に怒りで震える。非正規雇用の仕事を転々とし、年収が300万円を上回ることはなかった。それでも、所得税や社会保険料が容赦なく差し引かれていく。 不妊治療で公的保険の適用範囲が広がったり、子育てで時短勤務をする人への現金給付を検討したり。若い世代の支援に公金が使われるニュースを見聞きすると、こみ上げるものがある。「就職氷河期世代の私たちの苦境は自己責任とされ、何の手当てもない」 政府が「異次元の少子化対策」を推し進める中で、割り切れない思いを抱えた人たちがいます。生活苦を抱えて結婚や出産を考えられなかった氷河期世代の思いとはーー。識者は「目の前の理不尽を一つひとつ解消することこそが、最終的に少子化を食い止める近道になる」と話します。 就職活動では200社に資料を請求し、面接にこぎ着けたのは1割ほど。メーカーに職を得たが、その後は派遣会社に登録し、数年ごとに職を転々とした。簿記や労務の資格を取ったり、ITや英文会計についての知識を深めたりしても、待遇は上がらなかった。 仕事先で知り合った男性と40歳で結婚したが、夫の収入も不安定で、子どもをもつことはあきらめた。体外受精は高額で手が出ず、自治体の補助も年齢制限で受けられなかった。 国の規制緩和で大量に生まれ、増え続ける非正規雇用の一人として、「使い捨てられてきた」との思いが募る。「子どもをもてなかったのは、私だけの責任なのでしょうか。年をとり、ますます国から見捨てられていると感じる」 「ずっと社会からはじかれてきたことがつらい」 東北地方に住む男性(55)は、結婚したことがない。30代の頃は大学の教員を目標に、非正規雇用で働いた。恋人がいたこともあったが、将来の展望が見えず、家庭を築くことは考えられなかった。 30代の終わりに教員をあきらめ、勉強を重ねて39歳で難関の国家資格試験に合格。不動産登記を代理で申請する事務所を営む両親らと働き始め、やっと貯金もできるようになった。初めて「自分も家庭を築けるかも」と思うようになった。 政府の少子化対策は、20代、30代が対象で、自分は蚊帳の外にいる気がする。「若い頃は結婚したくてもできなかった。ずっと社会からはじかれてきたことがつらい」と話す。 「国家の存続のために削り取られてきた人権を守れ」 1990年代に規制緩和が進んで非正規労働者が大量に生まれ、増え続けてきた。総務省の労働力調査によると、2022年時点で男性が669万人、女性は1432万人。17年の調査に基づく政府の分析では、非正規雇用の30~34歳の男性に配偶者がいる割合は22・3%。正規雇用では59・0%で、倍以上の開きがある。経済苦や将来への不安は、未婚、晩婚化につながり、第3次ベビーブームはやってこなかった。 政府が3月に公表した少子化対策の試案では、経済的な不安定さも少子化の主因の一つと指摘。子どもを産み、育てることをあきらめないように、若い世代の所得を増やすことが必要だとしている。ただ、こうした状況は長く続いているのに、これまでの手当ては乏しかった。 国家と家族の関係性を研究する富山大学非常勤講師の斉藤正美さん(社会学)は、生活者ではなく、国家の繁栄を考えた政治が続いた結果、非正規雇用が拡大してきたとみる。「いま求められているのは、国家の存続のために削り取られてきた個人の人権を守るという意識ではないか」 同一価値労働同一賃金は達成されず、女性の働き損を生む「年収の壁」や、女性が出産後に大きな仕事を任されなくなる「マミートラック」も残っている。斉藤さんは「こうした目の前の理不尽を一つひとつ解消することこそが、最終的に少子化を食い止める近道になる」と話す。(伊藤恵里奈、長野佑介) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
10保育園の建設費、東京・小金井市が精査怠り4千万円過大に補助か
東京都小金井市は、市内の民間保育園10施設に対して、建設費などの補助金計約4千万円を過大に交付した可能性を明らかにした。市内に本部を置く保育園運営会社「コスモズ」などによる過大受給が発覚したのを受け、市が調べていた。 25日の市議会厚生文教委員会で報告した。市保育課によると、調査は、保育園に入れない待機児童対策が本格化した2016年度以降に新設されたり、増床したりした32施設について実施。その結果、コスモズが営む2施設など8事業者10施設で、1施設で最大1768万円、10施設で総額約4千万円を過大に交付した可能性がわかったとしている。 交付額を誤った理由について、外構部分や遊具など補助金対象外の工事費を、事業者側が申請した建設費に含めていた一方、市は工事の明細を確認せず、予算の大枠だけで審査して交付を決めていたという。今回の調査にあたって、各事業者に工事の内容を精査できる資料の提出を求め、補助対象外とみられる工事費を洗い出した。 確認された過大交付の大半は… この記事は有料記事です。残り231文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
男性として生きてきたけれど…伝えたい、ワンピースを着て見えた世界
夏にしてはいやに涼しかった気がする。横浜に住んでいた小学2年の時、初めて1人で美容院へ行った。 「どんな感じにしますか?」 「広末涼子みたいにしてください」 「いやあの子、女の人やで」 私はうまく返事ができず、黙っていた。髪は思い描いたものより短くなった。 記者になって5年目の私(26)は、昨年10月からワンピースを着て生活しはじめた。休日や平日の夜だけだ。 ワンピースを着たい。堂々と。 その思いを抱き続けてきた。 この世の中には、いろいろな性のありかたがある。 仕事で同性婚をめぐる訴訟も取材してきた。当事者たちは偏見にさらされながら、「愛する人と結婚したい」という思いを遂げるために公開の法廷で闘っている。 ワンピースを着る勇気がわいたのは、家族も旧友もいない、200万人都市の札幌なら周囲の目におびえなくてすむと思ったからかもしれない。 裁判の傍聴や、イベントの取材を通してトランスジェンダーの当事者と接した経験も背中を押した。 私がこれから書くことは、とても個人的なことだ。それに、例えば一口に「当事者」といっても、その一人ひとりによって、立場や歩んできた人生は違うだろう。私が様々な意味で「例外」である可能性もある。 それでも、私がワンピースを着て街を歩いて見えた世界のことを伝えることには意味がある、と信じて書くことにした。 声変わりに気づいた夜 社会は、人を「男」「女」の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル