神谷裕司2023年7月27日 13時39分 高校野球の部員や審判員、保護者らが「見事な連係プレー」で、ひとりの男性の命を救った。 6月18日、佐賀県唐津市の県立唐津西高校のグラウンドで、同校と県立佐賀工業高校の野球部の練習試合が予定されていた。午前8時50分ごろ、試合前のノックを終えた佐賀工野球部長の50代男性がミーティング中、三塁側ベンチ付近で突然、倒れた。 審判員で南折立病院(福岡市)医事課長の杉山幸也(ゆきや)さん(50)、唐津西野球部副部長の中島重男さん(64)、佐賀工野球部員の保護者で整体師の中島敬史(たかし)さん(49)らが協力し、うつぶせで倒れた男性を仰向けにして気道を確保。中島重男さんが同52分、119番通報した。 脈をみた杉山さんは「これは危ない」と判断。心肺停止状態だった男性の胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始め、「早くAEDを」と叫んだ。 唐津西野球部2年の田中哲史(さとし)さん(17)が校舎内の事務室まで約50メートルを猛ダッシュ。すぐAED(自動体外式除細動器)を取って来て杉山さんに渡した。杉山さんは心肺蘇生のためにAEDを使って電気ショックを与え、さらに交代で胸骨圧迫などを続けた。午前9時、救急車が到着し、男性は一命を取り留めた。現在、療養中だという。 唐津市消防本部の吉田弘志消防長は26日、4人に感謝状を贈呈し、「皆さんの連係がきちんとして、ひとりの命が救われました。本当にありがとうございました」と述べた。 岩﨑俊・副消防長は「見事な連係のなかでも、田中さんがAEDの場所を知っていたことが一番のファインプレー」と語った。田中さんは1年生のときに学校でAEDの講習を受け、校内2カ所の配置場所を覚えていたという。「講習が役に立ちました。あのときは必死でしたが、おとなの方々に支えられて、人を助けることができてよかった」と笑顔を見せた。 杉山さんは「どうにか助けたいと思った。AEDをすぐ持って来てくれたのがありがたかった」と話した。(神谷裕司) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「供述誘導」と主張の元広島市議、起訴内容を否認 元法相買収事件
大野晴香2023年7月27日 13時41分 2019年の参院選をめぐる買収事件で、河井克行元法相(60)=公職選挙法違反罪で実刑確定=から現金を受け取ったとして同法違反(被買収)の罪に問われた元広島市議の木戸経康被告(67)の初公判が27日、広島地裁であった。木戸元市議は「買収の認識はなかった」と述べ、起訴内容を否認した。 元市議は、東京地検特捜部の検事による任意聴取を受けた際、やりとりを録音。「供述を誘導する不当な捜査だった」と訴えている。 起訴状などによると、元市議は19年4月3日ごろ、克行氏の妻の案里氏(49)=同法違反の罪で有罪確定=の選挙運動の報酬と知りながら、同市内で克行氏から現金30万円を受け取ったとされる。 弁護側は公判に先立ち、20年3~6月に特捜部検事の聴取を受けた際の計7時間分の録音データの存在を明かした。弁護人によると、買収資金との認識を否定する元市議に対し、検事が「認識がないというのは否認になる」「できれば議員を続けてほしい」と言及。元市議が被買収の容疑を認める内容の調書にいったん署名した後に否定しようとすると、「全面的に認めて反省していることを出してもらい、不起訴や、なるべく軽い処分にという風にしたい」と伝えているという。 検察側は当初、元市議の「自白調書」を証拠として提出する方針だったが、弁護側が録音データがあると伝えたところ、証拠請求しなかったという。(大野晴香) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
電通、五輪本大会分の認否は留保 争う余地を検討 談合事件で初公判
東京五輪・パラリンピックをめぐる談合事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われた広告最大手「電通」の元スポーツ局長補・逸見(へんみ)晃治被告(55)と法人としての電通グループの初公判が27日、東京地裁であった。逸見元局長補らは、競争入札で発注されたテスト大会業務で談合したことは認めたが、随意契約だった本大会業務などについては認否を留保した。 随意契約分については、争う余地があるかさらに検討し、次回公判で認否を明らかにするとみられる。 一連の事件では、大会組織委員会の大会運営局の元次長・森泰夫被告(56)と、法人6社と各社の担当幹部ら6人が起訴された。公判が開かれるのは森元次長に続いて2件目。 起訴状などによると、逸見元局長補や森元次長らは2018年2~7月、組織委が競技会場ごとに発注したテスト大会や本大会の運営業務などについて、受注予定業者を事前に決めて競争を制限したとされる。契約金は総額で約437億円2千万円だった。 検察、テスト大会と本大会は「一体で調整」 最初に発注されたテスト大会の計画立案業務では競争入札が実施され、契約金は約5億7千万円だった。全ての落札業者らは、その後のテスト大会実施業務と本大会運営業務についても、入札を伴わない随意契約で請け負い、契約金は計約431億5千万円だった。 検察側は、最初の入札が本大会までの業者選定を事実上兼ねており、一体で受注調整が行われたと主張。森元次長は今月5日の初公判でこうした起訴内容を全て認めた。 一方、電通側はこの日の初公判で、随意契約分については認否を留保した。本大会運営業務などの契約時には改めて審査もあり、自動的な委託が保証されていたとは言えないなどと反論できるか、さらに検討するとみられる。 電通の他に起訴された5社は、広告2位「博報堂」、広告大手「東急エージェンシー」、イベント制作会社の「セレスポ」と「セイムトゥー」、番組制作会社「フジクリエイティブコーポレーション(FCC)」。セレスポとFCCは起訴内容を否認しているという。(植松敬) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「温厚な夫婦に何が…」ショックを受ける知人ら 札幌・遺体切断事件
原知恵子2023年7月27日 10時00分 札幌・すすきののホテルの一室で男性(62)が殺害されて頭部が持ち去られ、死体遺棄などの疑いで田村瑠奈容疑者(29)と両親の修容疑者(59)、浩子容疑者(60)=札幌市厚別区=が逮捕された事件。3人が住んでいた家では24日から道警による家宅捜索が続いており、一家を知る地域の人たちは大きなショックを受けている。 「『どれだけ凶悪な家族なんだ』と想像する方が多いと思うんですが、決してそんな印象はありません」 浩子容疑者と交流があった70代女性は、自宅の庭先に伸びるノブドウを見つめて、4年ほど前のやりとりを振り返った。 浩子容疑者は植物好きで、自宅の「コンテナガーデン」で草花を育てていた。女性が容疑者宅で見かけたノブドウについて「きれいね」と声をかけると、「あら、あげるわよ」と穏やかに返された。 季節が巡り、話したことも忘れたころ、浩子容疑者が小さな鉢を持って訪ねてきた。あのノブドウの実から種をとり、芽が出るまで育てた苗を譲ってくれるという。女性はそれを大切に育て、「大きくなったから見に来て」と手紙を出すと、かわいい便箋(びんせん)と封筒で返事が届いた。 最近、一家に気になる変化を感じた。自宅前は雑草などで荒れ、以前のように草取りや手入れをする様子を見かけなくなった。「彼女らしくない」と感じていたという。 植物や生き物、趣味の絵画の話をよくしたという80代女性は昨年、飼っていた水生昆虫ゲンゴロウを浩子容疑者に譲った。後日、世話をしたゲンゴロウを夫の修容疑者と池に放しに行ったと報告してくれた。 「夫婦とも温厚だった。何があったかわかりませんが、とにかく悲しい」と語った。(原知恵子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
震災から12年封印の物語 屋久島生まれのカメを通して伝えたいこと
鹿児島県・屋久島の自然を舞台にした作品を多く手がけてきた鹿児島市の絵本作家、たにけいこさん(80)は、2011年の東日本大震災の直後、ある物語を書いた。ひっそりと机の引き出しにしまっていた物語を、最近になって出版する決意をした。子どもたちに伝えたい思いとは。 東日本大震災の時、たにさんは自宅で友人と電話をしていた。つけていたテレビを見ると、津波が家や人をのみ込んでいく映像が流れていた。一瞬、映画のワンシーンではないかと思ったが、現実だとわかり、血の気がひいた。人生で初めて、自然の恐ろしさを感じていた。 中でも心が痛んだのが、親が行方不明になったり、亡くしてしまったりした子どもたちの姿だった。 戦後を思い出していた。 父親の仕事の都合で、5歳のとき、福岡県から鹿児島に移り住んだ。周りには親が戦死し、孤児になった同級生がたくさんいた。終戦前後の混乱で親と離ればなれになり、中国に取り残された中国残留孤児がたくさんいたことも後に知った。 震災で突きつけられた 自然の恐ろしさ 震災で親を失った子どもたちと重なった。寄付はしていたものの、応援するために何かできないかという気持ちが募り、絵本を書き始めた。 たにさんは3人の子どもたち… この記事は有料記事です。残り1339文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
老犬の「お漏らし」に激高、地面に投げつけた疑い 飼い主を書類送検
阿部育子2023年7月27日 10時26分 飼っていた小型犬を地面に投げつけるなどしたとして、神奈川県警横須賀署が25日、横須賀市の60代の男を動物愛護法違反(虐待)の疑いで書類送検していたことが、捜査関係者への取材でわかった。容疑を認め「老犬になり、お漏らしをするようになった。怒りをコントロールできなかった」と話しているという。 書類送検の容疑は、2月23日午前9時半ごろ、路上で飼い犬をたたいたり蹴ったりしたほか、地面に投げつけるなどの暴行を加えたというもの。犬は雄で15歳。散歩にでかける前、犬が家の中で放尿したことに激高したという。犬にけがはなく、現在、男と離れて暮らしているという。(阿部育子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
29歳女と男性の間でトラブルか「暴行受けた」 札幌・遺体切断事件
有料記事 福岡龍一郎 新谷千布美2023年7月27日 6時00分 札幌市の繁華街・すすきののホテルの一室で2日、頭部が切断された北海道内に住む会社員男性(62)の遺体が見つかり、職業不詳の女とその両親が死体遺棄などの容疑で逮捕された事件で、女の母親が逮捕前、「(死亡した男性から)娘が暴行を受け、家族と男性の間でトラブルになっていた」などと、事件に至った経緯を説明していたと、親族が朝日新聞の取材に明らかにした。道警は事実関係を慎重に調べている。 この事件で道警は、24日に田村瑠奈容疑者(29)と父親で医師の修容疑者(59)、25日に母親の浩子容疑者(60)=いずれも札幌市厚別区=をそれぞれ死体損壊、死体領得、死体遺棄の疑いで逮捕した。3人の認否は明らかにしていない。 自身の逮捕直前、母親が語った「事件に至るまで」 取材に応じた親族によると… この記事は有料記事です。残り621文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
問題解決につながるのか、問われるマイナ総点検 噴き出す不安と不満
マイナンバーをめぐるトラブルが続出し、公金の振り込みミスも起きるなど、深刻さを増している。いったい何が原因なのか。 26日に開かれた参院特別委員会の閉会中審査で、厚生労働省の幹部は「こうした事案が生じたことは誠に遺憾なことと考えている」と述べた。 質問に出たのが、埼玉県所沢市で発覚した公金の送金ミスだ。 マイナンバーと公金を受け取る口座の情報を誤ってひもづけ、80代の女性に支払うはずだった高額介護合算療養費の計5万7516円を別人の口座に振り込んでしまっていた。 誤ったひもづけにとどまらず、公金の送金ミスまで起きてしまったことが初めて明らかになったケースで、事態は悪化している。 速達を送ってようやく 誤送金を取り戻すのは簡単で… この記事は有料記事です。残り1518文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 マイナンバー問題 マイナンバーとひもづける公金受取口座に「家族口座」が登録されるケースが多発しています。問題を多角的にお伝えします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「幸せに生きてこそ」 歌う母と障害のある娘が導いた事件への答え
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者ら45人が殺傷された事件から、26日で7年となった。事件は、家族に障害がある人たちにも衝撃を与えた。長女(19)に重度の知的障害があり、園を訪れたこともある酒井美百樹(みゆき)さん(50)=東京都=は、不安や恐怖にかられることもあった。しかし今は、私たちが幸せに生きることこそ、障害者は不幸をつくるという死刑囚のような考えを否定することにつながる、と語る。 酒井さんは、「MIMO」というアーティスト名で、障害者支援イベントに数多く出演してきた歌手だ。やまゆり園でも、事件の約1カ月前を含めて5回ほどライブを行ってきた。30歳のときに出産した長女は、自閉症スペクトラム障害などもあるダウン症児で、診断された当初は「正直、知的障害者への偏見があり、衝撃を受け、絶望した」と言う。 言語の発達に遅れがあり、簡単なあいさつ以外は話せない。長女の感情を読み取ることも難しい。何度もくじけそうになったが、医療や福祉関係者の助けも借りて、長女を育ててきた。 結婚を機に中断していた音楽活動を再開したのは、長女が7歳のとき。誕生日プレゼントに「ギフト」という曲を作ったことがきっかけだった。子育ての苦悩を経て得られた幸せを〈ありふれた毎日がかけがえないと気づいた〉とつづった。 家族のために作った曲だったが、「世に出しなさい」と周囲に背中を押され、動画サイトなどで発表。2012年に国連が定めた「世界ダウン症の日」の公式曲に選ばれた。4カ国語に翻訳もされ、各地の障害者施設で演奏するようになった。「当時は障害者を育てることのポジティブな情報が少なかった。自分がたどり着いた幸せを、生身の体験として伝えることで、悩んでいる人たちの役に立ちたかった」 一方、長女をなかなか受け入れられなかったのが義父だった。障害があると知ったときは「しゃーねーな」とぶっきらぼうにつぶやいた。孫が障害者であることを周囲に隠し、距離を置いた。その義父の態度が変わったのは16年6月。不慮の事故で脊椎(せきつい)を損傷し、声が出せず、顔と手以外動かせなくなると、義父はそれから長女との面会を望んだ。 会話ができない2人の面会 酒井さんは会話ができない2… この記事は有料記事です。残り476文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大阪府、美術品105点を庁舎の地下駐車場に 知事「管理不適切」
大阪府の吉村洋文知事は26日の定例会見で、府所蔵の美術作品105点を2017年から府咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)の地下駐車場で保管していたことを明らかにした。府は不適切だったとして、美術の専門家らのチームを立ち上げ、管理場所の変更や美術館などでの展示を考える。 府文化課によると、保管していたのはいずれも現代美術作品で、鉄や木材などを組み合わせた大型のものが多い。評価額は計約2億2千万円。1980年代に新たな美術館の建設構想が浮上したことから、府が集めてきた「大阪府20世紀美術コレクション」(約7900点)の一部だ。 その後、府の財政危機で美術館構想は立ち消えになり、大半は府の文化施設などで保管・展示。それら以外の105点を15年から咲洲庁舎の10階事務室で保管したが、行財政改革の一環で庁舎内への民間施設の入居が進み、置き場所がなくなった。民間の倉庫などを借りると年数千万円の保管料がかかることから、17年から地下駐車場で保管すると決めたという。 作品の置き場と通路はフェンスで隔てられているが、梱包(こんぽう)されずにビニールで覆っただけの作品もある。ただ、目立った被害はなかったとしている。吉村知事は数日前に事態を把握したといい、「思いを持ってつくられた方へのリスペクトが大切だ。管理方法として不適切だった」と話した。(岡純太郎、箱谷真司) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル