修那羅山(しょならさん)安宮神社は長野県筑北村の標高1037メートルの山中にある。拝殿と斎殿をつなぐ渡り廊下の前には古びた小さな鳥居があり、建物の下をくぐり抜けられる。腰をかがめ歩を進めると、異世界が待っていた。 ブナやクリなどの木々の足元に30~50センチ前後の石像物がいくつも並んでいる。十二ひとえをまとうのは蚕神。養蚕が盛んだった土地ならではだ。ネズミによる被害を防ぐための猫神や鬼神もいる。 神仏習合の特徴があり、本殿の後ろ側には整った顔立ちの千手観音が座っている。佐久間象山が奉納したと言われる。神仏だけではない。あどけない姿の姉妹、父子、鉄かぶとをかぶった武人。中には、トーテムポールのような異国情緒漂う像まである。 信仰集めた修験者に次々と像が寄贈された 愛嬌(あいきょう)のある表… この記事は有料記事です。残り594文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
コンドーム授業とガラケー先生 教職40年、教え子から届いたメール
都内の中高一貫校で保健体育を教えている女性教諭のTさん(61)。 生徒たちの前で披露すると必ず盛り上がる「鉄板」の授業がある。 Tさん自身の恋愛を振り返る「バレンタインデーの思い出」だ。 中学1年生の時、級友の「まえだ」君にチョコをプレゼントしようと決めた。 30円で買った不二家のハートチョコレートを、アルミホイルでラッピング。 包む時にチョコに指紋がついてしまい、何度も拭き取ってやり直した。 2月14日、渡すタイミングを見計らっていたら、あっという間に放課後に。 翌日、友人たちがまえだ君を保健室に呼び出してくれた。 ドキドキしながら保健室に入ると、なぜかまえだ君だけでなく「ふじた」君もいる。 しかも、ふじた君がこちらに向かって「チョコちょうだい」と手を差し出していた。 混乱したTさんは何も言うことができず、まえだ君に押しつけるようにしてチョコを渡し、部屋から逃げ出してしまった。 「先生、まえだ君からの返事は?」「その後つきあったの?」 生徒たちが決まって質問してくるので、ホワイトデーに手紙をもらったことを話す。 今でも友人として、まえだ君と連絡を取り合っていることも。 そして、必ずこう付け加える。 「失恋してもいいから、いっぱい恋愛しなさい。恋愛するって楽しくて素敵なことなんだから」 教え子から届いたメール 定年退職まであと4年。 最近、体力や気力の衰えを感じることが増えてきた。 パソコンやタブレットを使った授業が当たり前だが、なかなか覚えられず、携帯電話は今もガラケーのまま。 出欠管理システムの使い方など、周りの先生たちに聞くと何度でも優しく教えてくれる。 でも、聞く度に仕事を中断させてしまうのが申し訳ない。 学内で最年長なのに教わってばかりで、教えることは何もないように感じる。 こんな自分じゃ、生徒たちに対しても失礼なんじゃないか。 そんなことを思っていた今年6月、かつての教え子からメールが届いた。 卒業後も連絡を取り合ってい… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ネットで「うそつき」と書かれても 語り続ける元731部隊員の覚悟
一、軍歴を隠すこと。 二、公職につかぬこと。 三、隊員相互の連絡をとらぬこと。 長野県宮田村に住む清水英男さん(93)は、戦後、三つの誓いを固く守って生きてきた。 終戦からちょうど70年、2015年の8月のことだった。妻と、戦争にまつわる遺品を展示する展覧会に出かけた。会場には旧日本軍の細菌戦部隊「731部隊」の資料が展示してあった。 壁にかかった写真には、レンガ造りの重厚な建物が写っていた。忘れもしない、建物だった。思わず妻に話しかけていた。 「これが本部の正面で、この2階にな……」 清水さんは731部隊の生き残りだった。 14歳、何も知らずに到着したのは 1945年3月、国民学校高… この記事は有料記事です。残り2225文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
旧被服支廠を「平和美術館」に 「原爆の図」丸木夫妻のおいの願い
広島に現存する最大級の被爆建物・旧陸軍被服支廠(ししょう、広島市南区)を「平和美術館」に――。被爆の惨状を描いた「原爆の図」で知られる丸木位里(いり)、俊(とし)夫妻と親交が深かった親戚が署名を呼びかけている。 広島市安佐南区の住宅街。1級建築士の小田芳生(よしお)さん(82)の事務所兼自宅のあちこちに丸木夫妻らの絵が飾ってある。 丸木夫妻が子を抱く母親を描いたタイル画「ひろしまの子」、位里が名所の三段峡を描いた水墨画、位里の母の丸木スマや妹の大道あやの作品。夫妻のおいにあたる小田さんは昨夏から「オープンハウス」として開放し、所蔵する百余点の作品の一部を訪問者に披露している。「平和美術館が実現したら、家にある絵画すべてをお貸しすると決めています」 位里は太田川上流沿いの飯室… この記事は有料記事です。残り1126文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
トランクに詰め疎開させた作品たち 図案家・杉浦非水の資料を初公開
日本のグラフィックデザイナーの草分けの一人、杉浦非水(1876~1965)が戦時中に川越に疎開させた作品群が、川越市立美術館で初公開されている。雑誌の表紙やポスター、図案集など約300点が、企画展で9月3日まで鑑賞できる。確認されていなかった、木版画の原画も見られる。 印刷物のデザイナー 非水は、印刷物のデザインを手掛けた図案家。三越の出版物やポスターなどで知名度を上げ、明治から昭和初期にかけて活躍した。帝国美術学校(現武蔵野美術大)の教授や、多摩帝国美術学校(現多摩美術大)の初代校長も務めた。 妻で歌人の翠子(1885~1960)の実家は川越の商家・岩﨑家。非水は1944年、第2次世界大戦の戦況悪化を受け、自らの作品群1千点以上をトランクに詰め込み、岩崎家に疎開させた。 戦後も岩﨑家が資料を守り続… この記事は有料記事です。残り424文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
来年の青森ねぶた祭の参加自粛 暴行問題で青年会議所「運行見直す」
古庄暢2023年8月20日 8時33分 今年の青森ねぶた祭で、青森青年会議所が運行する大型ねぶたの男性スタッフ2人が引き手6人に暴行した問題をめぐり、会議所は18日、団体として来年の祭りへの参加を自粛することを発表した。石田壮平理事長は「管理や指導が十分に行き届いていなかったことが要因。当会議所の運行を見直す時間に充てたい」とのコメントを出した。 問題は6日夜に発生。大型ねぶたを誘導する運行支援担当をしていた会員の男性(38)とボランティアスタッフの男性(44)の2人が、ねぶたが沿道の障害物に接触したことを理由に、引き手をしていた6人の顔や頭を、うちわや素手でたたいた。 問題を受け、会議所は18日夜に青森市内で臨時総会を開催。会員の男性を除名処分にし、ボランティアスタッフの男性との関係を断つことにしたほか、来年の祭りへの参加自粛を決めた。また、再発防止のためコンプライアンス指導や管理体制の徹底を図ることも決定した。 青森ねぶた祭では例年、22団体が大型ねぶたを運行。今年は新たに「プロクレアねぶた実行プロジェクト」が加わり、運行団体は23団体になっていた。(古庄暢) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
左腕にまひ「ワープロ打てない」 切りつけ事件で負傷、中学教員訴え
埼玉県戸田市立美笹中学校で3月、校内に侵入した少年(当時17)に切りつけられて大けがを負った男性教員が19日、東京都内で開かれた集会で、子どもを守るために教員が被害にあった際の支援制度が不十分だと訴えた。 事件は3月1日昼に発生。教員によると教室で試験監督をしていた際、刃物を持った少年が入ってきてもみあいになったという。 少年は、殺人未遂容疑で逮捕・送検され、7月にさいたま家裁が少年院に送る決定をした。決定などによると、少年は無施錠だった正門から侵入。教員の胸などを刃物で刺すなどした。 この日の集会は、学校の教員の働き方を考える有志団体が開いた。 被害にあった教員によると、手術は約8時間にわたり退院した今も左腕にまひが残っている。「神経が切れていて十分に動かず、ワープロも打てない」といい、すでに学校に復帰しているが、今もリハビリを続けているという。 公務員の労災にあたる「公務災害」と認定されており、治療費は地方公務員災害補償基金県支部から支給される。一方、被害の補償を求めて少年側の弁護士と示談交渉をした際は、自力で対応したという。 県教育委員会は、教員が事件で被害にあった場合などについて、示談交渉などは当事者同士で対応してもらっているとする。男性教員は県教委の支援が欲しかったとして、「教員が被害者になった時の支援制度が必要」と話した。 集会を開いた団体の代表で、愛知県の小学校教諭の加藤豊裕さんは「戸田のような事件は全国で起こりうる。教員の補償のあり方を多くの人に考えてもらいたい」と話した。 団体は、児童生徒の命を守るために教員が被害を受けた場合の支援制度の充実を求め、オンラインサイト「Change.org」で署名を募っている。2万8千人を超す署名が集まっており、県知事や県教委に提出するという。(山田暢史、浅野真) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
震える処刑役 捕虜の命乞い 95歳元兵士が忘れられぬ満月の夜
終戦から数年たったある戦友会でのことだ。料亭で酒も入り、昔話に花が咲いた宴会の空気が、一瞬で凍りついた。 「それにしても、あの晩はひでえことをしたよなぁ。兵隊でもないようなおやじを引っ張ってきてさあ……」 何げなく口にした吉田靖さん(95)を、戦友がにらみつけた。 「勘弁してくれ。その話だけはしてくれるな。今でも夜、うなされるんだ」 10代の少年だったあの日、自分たちがしたことの恐ろしさを、ある者は封じ込め、ある者は思い返していたのだろうか。みな黙っていた。 1927年、埼玉・飯能近郊… この記事は有料記事です。残り2036文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
焼き畑農法で「もうかる林業」 復活で100年後の森林も守る
焼き畑農法が見直されている。「環境破壊の一因」と負の側面が強調されることもあるが、小規模であればむしろ自然の理にかなっていると再評価されてきた。担い手はいなくなっているが、専門家の研究でも知られる熊本県五木村では、焼き畑をブランドとして地域興しと山林保全につなげようと、復活をめざす人がいる。 8月初め。小石がゴロゴロ転がる急な林道を、じわじわと軽四貨物車で登る。約30分で、夏の青空の下に九州山地の緑を一望する山の中腹にたどり着いた。 急斜面の8アールの土地には、所々に焼け焦げた木の切り株がある。黒々とした土からはアズキの葉が顔を出し、スギの苗木が植えられている。 「まだ植えてから半月程度なのに葉の勢いが全然違うね。土のホクホクしとるもん」 五木村で林業会社を営む園田久さん(61)が声を弾ませた。昨年夏、村では約30年ぶりとなる、本格的な焼き畑を復活させた。2年目の輪作にさっそく手応えを感じている。 農薬不使用 その味に称賛の声 昨年、樹齢60年と「切りご… この記事は有料記事です。残り1364文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
お待たせグリーン 温室みかんの出荷はじまる フレッシュでさわやか
戸村登2023年8月19日 11時00分 【動画】「蒲郡グリーン温室みかん」の出荷始まる 東海や首都圏へ フレッシュな香りとさわやかな酸味を楽しめる「蒲郡グリーン温室みかん」の出荷が、愛知県蒲郡市で始まった。通常より早めに収穫した鮮やかな緑色が特徴で、今年は24戸の農家が約160トンを収穫予定。9月中旬までに東海地方や首都圏、東北地方などに出荷される。 18日、JA蒲郡市が同市神ノ郷町にある総合集出荷場での作業を公開した。この日の選果量は約22トン。女性スタッフらは、ベルトコンベヤーで運ばれるミカンに傷みがないかどうか確認していた。(戸村登) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル