《あなたの悪い事はすぐ怒ること。相手の事をよく聞いて怒るべし》。そんなお小言はチラシの裏につづられている。 別の裏紙には苦しい生活の中で我が子を思う気持ち。《あなたのたんじょう日に何かお祝いをしようと思い、今年も何も祝ってあげれず、ごめんなさい。何か、食べたいものはありませんか》 チラシの裏に、メモ帳の切れ端につづられたオカンの手書きの思いは数百枚。ラッパーのSHINGO★西成さん(51)はそのすべてを大切に保管している。 前向きに生きる大切さを、時に社会風刺を、語りかけるように歌い上げる。すべての歌詞は手書きで作る。その時々の感情やアイデアを手書きでメモする癖は、今年で92歳になったオカン・池上町子さんから引き継いだものだと思う。 家賃4100円、トラック通って揺れる家で 幼いころから、大阪市西成区のあいりん地区で暮らした。釜ケ崎の名で知られる地域の住まいは、高速道路のそば、家賃4100円の長屋だった。両親は不仲で、高速を大型トラックが通るたびに揺れる家にオトンがいることは少なかった。 口下手で、思いを言葉に出して伝えるのが苦手なオカンと一人息子。親子は少し変わった方法でコミュニケーションをとってきた。 週2回ほど、便箋(びんせん… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「東京がなあ……」 嘆く埼玉の保育園 賃金格差で保育士流出
「あと4、5人は先生がいればいいのに」 埼玉県所沢市で認可保育所など複数の施設を営む法人の理事長は、こう嘆く。 今年の春。入園希望者のうち受け入れられたのは約半数だった。園の定員にはまだ達していなかったが、定員いっぱい受け入れるには保育士が足りなかった。 「もっと受け入れたいが、今の保育士の数を維持するだけで精いっぱい」 なぜ足りないのか。記者が問うと「東京がなあ……」とこぼした。 「都内には、より好待遇な私立の園が多い。うちの園の見学に来る新卒の学生には、『都内を見てからまた来ます』と言われる」 昨年、新卒の保育士は一人も来なかった。 人材集めに奮闘 それでも都内に転職 保育士を集める工夫は、ずっと続けている。 県などの補助金を活用し、希望者に住居を借り上げ無料で住んでもらったり、新卒保育士に2年間働けば返済不要の就職準備金(20万円)を貸したりしている。インターネットに求人広告を出し、こうした取り組みをPRしてきた。 だが保育士は思うように集まっていない。それどころか、都内の施設に転職する人もいるという。「『都内の方が給与が上がるから』と同僚が移っていきました」と、施設で働く保育士(33)は振り返る。 都内への人材流出はこの法人だけの課題ではない。 「県保育協議会」の喜多濃定人会長は「全国的に保育士が不足し、都心へのアクセスがいい県南部の民間保育施設では東京に人材が流出している」と話す。 朝日新聞が県内の市町村長に実施したアンケートに、所沢市の藤本正人市長は、保育士が「東京都に取られてしまっている」。新座市の並木傑市長は、「東京都と隣接しているため、保育士の処遇に差があり、人材不足が常態化している」と回答を寄せた。 民間の保育施設で働く保育士の平均給与は、県内よりも都内のほうが高い。 厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、残業代を含めた昨年6月の平均給与は県内は26万2700円。首都圏で最低で、都内より約3万9千円も低かった。 平均給与は首都圏最低 要因はいくつかある。 まずは、民間施設への公的な… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ツイッターの新機能「コミュニティノート」、混乱も 効果と課題は?
ツイッターへの投稿に、匿名で「誤解を招く」と指摘できる機能が、日本語版に7月から本格導入された。ツイッター側は、誤情報かどうかの判定の機能とはしていないが、先行導入された米国では「ファクトチェック」というとらえ方も。誤情報を減らすことにつながるのか。(田渕紫織) 「コミュニティノート」の仕組みは 新機能の名前は「コミュニティノート」。一般の応募者から選ばれた「協力者(contributor)」と呼ばれる人たちが、誰かの投稿が「誤解を招く」と判断した場合、補足する情報を添えて指摘できる。 指摘はすぐに目立つ位置で見られる状態になるわけではなく、他の協力者たちから「役に立つ」と評価されれば、元の投稿のすぐ下に表示される。評価についてツイッター側は「多数決で決まるわけではない」とし、「協力者たちの視点の多様性」も考慮するとしている。匿名化されており、誰が指摘したかはわからない。 SNS上では、誤情報が瞬時に広まりやすい。2016年の熊本地震の際は、「動物園からライオンが放たれた」というデマが無関係なライオンの画像とともに投稿され、拡散された。ツイッター側は、リスクの高い誤情報を含む投稿を非表示にするなどの対策を取ってきたが、運営会社(現在はX社)が昨秋、社員を大量解雇し、不適切投稿の監視や削除に支障が出ているとも言われる。 専門家たちはどう評価 JX通信社代表取締役の米重克洋さんは、「デマがいったん広まると既成事実化し、修正する投稿がされても拡散されにくいという課題がずっとあった。今回の機能では、元の投稿の下に注釈のような形で表示されるため、修正としての効果は高い」とみる。 記事後半では、「ファクトチェック・イニシアティブ」理事長による分析や、政治的対立の表れ方、誤情報をめぐる実験をした研究者の見方をお伝えします。 ただ、何を「誤解を招く情報… この記事は有料記事です。残り1362文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ギンガムを着たみっちゃん」は逝った おそろいを着る妹の「再会」
「みっちゃん」と呼んでいた姉の満子さんは17歳。肌が白く、母に似て美人だった。 反対に、四つ下の妹の鵜飼律子さんは、こんがりと焼けた肌だった。父は病気がちで、母が文房具店を営みながら夜は裁縫教室の先生をして、生計を立てた。 忙しい母の炊事の手伝いをするのは、みっちゃんの役割。母親代わりのようで、妹思いの優しい姉だった。 1945年の初夏。みっちゃんは家でブラウスを縫っていた。 空襲、地面が揺れた カタカタとミシンの音を響かせ、背中を丸めて。できあがった水色と白のギンガムチェックのブラウスをうれしそうに着ていた。 その1週間後。みっちゃんは女子挺身(ていしん)隊として派遣されていた自宅近くの三国航空機材(現・大阪府豊中市)へ働きに出かけた。 律子さんは通っていた豊中高等女学校へ。女学生たちの多くは軍需工場などに学徒動員されていたが、背が低い律子さんは動員されなかったのだ。 昼前、空襲警報が鳴った。 学校の畑の手入れをやめて防空壕(ごう)に逃げると、地面が激しく揺れた。近くに爆弾が落とされたようだ。米軍による空襲だった。 軍の飛行場や多数の軍需工場があった豊中は、第2次世界大戦末期、米軍に狙われた。 空襲が収まった後、学校から歩いて帰った。家屋は焼夷(しょうい)弾で焼かれ、道中には牛や馬の死骸が転がっていた。 自宅近くの土手に着くと、辺り一帯の家は焼け、「何もなくなっていた」。 「誰か水を下さい」とつぶやく男性の声が聞こえた。 持っていた水筒を振ると、まだお茶が半分くらい残っている。3杯飲ませた。 「ありがとう」。その男性は、力ない声で3回お礼を言ってくれた。 壁にもたれ、顔中にひどいやけどを負った男性もいた。首の皮膚はただれ、小さい顔がぱんぱんに腫れ上がっていた。 「お父さんこんなになってしもうた」 「お父さん!」… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「定期試験なし」の千代田区・麴町中、改革転換を検討 保護者に波紋
宿題や定期試験の廃止など大胆な改革で全国的に知られる東京都千代田区立麴町中学校が、指導方針を転換し、改革の多くを元に戻す方向で検討していることが分かった。学力向上などを理由に挙げているという。自由な校風に魅力を感じて転居してきた家庭も少なくなく、保護者らに波紋が広がっている。 同校は、公立校教員などを経て2014年に就任した工藤勇一校長(現・横浜創英中学・高校校長)が「子どもの自主性を伸ばす」などとして、改革を実行。宿題や定期試験、固定した学級担任制などを廃止し、制服(標準服)や体操着も「着用自由」で一部私服も導入した。学校現場の長年の慣習を大胆に変える取り組みは全国的に注目され、工藤氏は、政府の教育再生実行会議の委員にも選ばれた。 だが、複数の関係者によると、同校は今年7月にあった区内の小学5、6年生と保護者向けの学校説明会で、「まだ決定ではない」としつつ、定期試験の実施、学級担任制の導入、指定の制服・体操着の着用などを進める方向で検討していることを明らかにした。 区教育委員会の担当者は取材に対し、同校のそうした方針検討について「正式決定ではないが、検討していると報告を受けている」と答えた。同校は、取材の申し込みに「お話しすることはない」と回答した。 同校は20年3月の工藤氏退任後、後任が今年3月まで務め、同4月に現校長が就いた。同区は区立中が中高一貫校を含む3校しかなく、通学区域を設けず「学びたい学校」を選べる選択制を採り入れている。麴町中には、近年の改革に魅力を感じて子どもを通学させようと、区外から転居する家庭も少なくないという。 説明会の出席者によると、方針転換の理由は、生徒の学力向上や生活指導強化の必要性、地域からの要望など。「来春の新入生から適用」という説明もあったという。 「自由な校風」を魅力と感じ、麴町中に子どもを通わせようと区外から転居してくる家庭も少なくないそうです。新たな方針案に「はしごを外された」と話す保護者も。 「できる子とできない子の格差が生じて…」 都外から転居して区内の小学… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
本土からの修学旅行生と沖縄の若者 ギャップを再生産しないために
■沖縄季評 山本章子・琉球大学准教授 沖縄県中南部の大型商業施設で県外から来た修学旅行生をよく見かける。県内で愛用される島ぞうりをはいていないので、私服でも地元の子ではないとすぐに分かる。2019年には約41万人弱(約2400校)来沖した修学旅行生は、新型コロナウイルス感染拡大で20年、21年はそれぞれ約7万人(約400校)に激減したが、去年は約26万人(約1370校)にまで回復した。 1981年に沖縄の大学などが始めた教育セミナーで1日だけ沖縄戦跡・米軍基地巡りをしたところ、本土から参加した高校教員が次年度は戦跡・基地巡りを中心にと要望。広島・長崎と並び、沖縄も平和学習を行う修学旅行先として人気となった。 平和学習の中心は長らく沖縄戦体験者による証言だった。日本軍の看護のため動員された15~19歳の生徒ら、ひめゆり学徒隊の生存者が言語を絶する体験を語り継ごうと建てた、ひめゆり平和祈念資料館(糸満市)には89年の開館から今年3月末までに約2370万人が訪れる。だが元学徒の高齢化で定期的な語りが難しくなると、2015年からは戦後生まれの館員が証言を引き継ぐ。資料館は21年に「戦争からさらに遠くなった世代」が共感しやすいよう展示を一新、元学徒と話し合いながら戦後世代が試行錯誤を重ねる。 体験者の証言に頼る平和学習… この記事は有料記事です。残り1639文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
EU輸入規制撤廃で「あおさを仏料理に」 喜多方ラーメンも商機狙う
東京電力福島第一原発の事故後、福島県産の農産物などを対象に欧州連合(EU)が続けてきた輸入規制が3日、完全撤廃される。これを新たな好機と捉え、海外向けに販路を開拓したり商品開発に励んだりする県内企業も出てきた。海外展開でブランド力を向上させ、国内市場への還元で好循環を生み出すのがねらいだ。(力丸祥子) 「健康」「オーガニック」重視の欧州が注目「北限のあおさ」 「香りも、色もいい。日本食だけではなく、フランス料理のシェフにレシピを考えてもらうのも、おもしろい」 7月18日、福島県相馬市。松川浦に臨むあおさ加工会社「マルリフーズ」で、あおさを試食したノーデンボス・マリナスさん(50)は声を弾ませた。 1993年創業の同社は、2011年の東日本大震災の津波で事務所と工場が全壊し、漁業者の網なども流された。国内有数の産地の一つとして知られる松川浦のあおさ。養殖再開と出荷にこぎ着けるまで7年を要した。その後続いた原発事故による風評をはね返そうと、消費者の安心を得るため独自で、出荷前の放射能検査を毎日続けた。 従業員約15人の会社は今回、欧州への物流拠点となるオランダ市場に初挑戦する。「健康」や「オーガニック」の価値を重視する人が増える中、オランダを拠点に欧州15カ国以上へ水産加工品を販売する会社を営むマリナスさんが目を付けたのがあおさだった。欧州の食卓で海藻はなじみが薄いが、料理のソースやジェラートの材料にすることを試みるという。 ■「海外の有名レストランで使… この記事は有料記事です。残り1669文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
受刑者342人の罪名など漏洩 刑務所内の図書貸し出し担当に 高知
羽賀和紀2023年8月2日 19時15分 高知刑務所(高知市)で、受刑者の罪名や共犯者の名前が、一部の受刑者に漏洩(ろうえい)する状態が1年にわたり続いていたことがわかった。刑務所内で図書の貸し出しを担当する受刑者に対し、借りた人などを管理するために渡していた受刑者の名簿に、こうした個人情報が載っていたという。漏れたのは計342人分としており、刑務所側は発覚時に出所していた人を除く約160人に謝罪したとしている。 高知刑務所によると、「図書工場」と呼ばれる図書室があり、受刑者4人が図書の貸し出しを担っていた。これを管理する刑務官が、誰が図書を借りたり返したりしたかをチェックさせるため、貸し出し担当の受刑者に、受刑者の名簿を渡していた。この名簿に、法務省矯正局の規則に反して、罪名や生年月日、共犯者の名前などが記入されていた。 こうした状態は昨年5月31日から続いていたが、今年5月12日、高知刑務所の幹部職員が気づいて発覚。刑務官は「見せていいものだと誤認していた」と釈明したという。 高知刑務所の石井弘幸所長は「個人情報の漏洩は遺憾。再発防止策を確実に実行し、被収容者の個人情報の管理を厳格に徹底する」とのコメントを出した。(羽賀和紀) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
スト実施のバス会社、非正社員にも夏賞与 「同じ仲間」労組の要求で
今春に24時間ストライキを実施した千歳相互観光バス(本社・千歳市)は4日、4年ぶりに夏のボーナスを支給する。金額は20万円と多くはないが、非正社員にも正社員と同じ金額が支給される。「同じ職場で働く仲間」として同額の支給にこだわった労組員たちの思いがある。 夏の賞与が支給されるのは社員約130人のうち、入社1年未満の社員などを除いた約110人。そのうち正社員や契約社員、嘱託社員ら約50人には一律20万円を支給し、パートらには10万円~数万円を支給する。 同社では以前は年2、3回賞与が支給されたが、コロナ禍による観光バスの収入減などで経営が悪化。ここ数年は賞与の支給が滞り、2021年は夏も冬も賞与がなかった。 夏の賞与が出るのは19年以来で、沼田聖社長は「コロナ禍で経営が厳しいときも一生懸命やってくれた従業員たちに報いたい。労使関係を良好なものにしていきたいという気持ちもある」と話す。 不正整備の見直しや賃上げなどを求め、労組は4月25日朝から千歳市内を走る路線バスでストを実施。公共交通機関では久しぶりのストで注目された。 団体交渉の中で、労組側は正社員を対象に5千円のベースアップと20万円の夏季賞与を支給する回答を引き出していたが、さらに正社員以外にも賞与を出すように会社側に要求。「非正社員にも支給しなければ48時間ストも辞さない」と労組が迫ったところ、会社側が応じたという。 札幌地域労組千歳相互バス支部の江崎毅支部長は「非正社員も同じ職場で働く仲間。賞与が出ることになったのもストを背景に会社に強く迫れたのが大きかった。激励していただいた地域の皆さんに感謝したい」と話している。(編集委員・堀篭俊材) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
母親の遺体を放置した疑いの29歳長男、殺人容疑で逮捕 山梨県警
池田拓哉2023年8月2日 21時00分 山梨県山梨市内の住宅でこの家に暮らす松元法子さん(当時49)を殺害したとして山梨県警は2日、法子さんの長男で住所不定、無職の拓也容疑者(29)=死体遺棄容疑で逮捕=を殺人容疑で再逮捕し、発表した。容疑を認め、「母を殺して自分も死ぬつもりだった」と話しているという。県警は殺害の動機などを調べている。 捜査1課によると、拓也容疑者は7月20日午前3時~4時半ごろ、自宅にいた法子さんの首をロープで絞めて窒息死させた疑いがある。法子さんの胸や腹には深い刺し傷があり、殺害後に刃物を使って刺したとみられる。ロープや刃物は遺体のそばで見つかっており、計画的に準備して持ち込んだとみられるという。 拓也容疑者は今年に入って住んでいた法子さん宅を出て、知人宅やネットカフェなどを転々としていた。拓也容疑者は県警の調べに「(法子さんに)追い出された」と供述。「働いて自分で暮らせ」とたびたび言われたと話しているという。 拓也容疑者は法子さんの遺体を放置したとして死体遺棄の疑いで23日に逮捕されていた。拓也容疑者が電話に出ず安否がわからない、と友人から22日に110番通報があり、日下部署員が法子さん宅を訪問。法子さんの遺体が見つかった。応対した拓也容疑者は「死んでいます」と話していたという。(池田拓哉) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル