和歌山市の中学生が、本州の海では初めて確認される熱帯の魚を、和歌山県串本町の海で見つけた。好きが高じた大発見。9カ月かけて論文にまとめ、8月に発表した。海南市の県立自然博物館で来月1日まで、標本と論文を展示している。 和歌山市立東中学校3年の堺響暉(ひびき)さん(15)は、父に運転してもらって月に2回ほど串本の海に来る。小学生のときに魚に興味を持ってから数え切れないくらい通った。 図鑑の写真だけでは分からないうろこの大きさやひれの質感を、実物で確認できたときのうれしさや楽しさがある。 夏は昼間に網を手に潜って探すが、冬の海では、午前0時から2時ごろの深夜に魚を採取する。潮が大きく引き、魚も寝ている時間なので捕まえやすいからだ。 岩場を探してヘッドライトで照らした海中に5センチほどの赤い魚を見つけたのは、昨年12月9日の午前0時近く。たも網で捕まえてよく見ても、何の魚なのか見当もつかなかった。 翌日、海南市の県立自然博物館へ持って行った。 3日後、魚を調べた同館から… この記事は有料記事です。残り584文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
壊れても再現可能?伝統支える和菓子木型、スキャンして3Dデータ化
老舗の和菓子舗で代々大切に使われてきた和菓子木型を後世にどう残していくか。和菓子の伝統を支えてきた文化財を3Dスキャンでデータ化して保存するサービスを三重県四日市市の会社が始めた。 落雁(らくがん)や和三盆、練り切りあんのような上生菓子に使われる和菓子木型は、手彫りによる独自のものがほとんど。木型の彫り手と和菓子職人の技と感性で生み出された和菓子を看板にする和菓子舗も多い。100点以上の木型を保有する老舗もある。 だが、木製のため、使い込むうちに壊れたり欠けたりする恐れもある。水害で水につかったり地震で破損したりして、使えなくなる可能性もある。木型を彫る職人も減っており、代わりの木型も手に入りにくい。 「3Dスキャンによりデジタルデータとして残すことで、受け継いでいけるのでは」。こう考えたのは、自動車部品の古い金型や木型の3Dデータ化を手がけてきたハンチャンコーポレート(西日本事業所・四日市市)代表の半林(はんばやし)義之さん(58)だ。 将来は菓子職人の技も数値化して…挑戦は続く 自動車部品の金型は、海外に製造拠点を移しても、もとの金型を3Dデータ化して国内で保存し、技術の継承につなげていることにヒントを得た。 データベース化することに加え、コンピューター利用設計システム(CAD)のデータをつくっておけば、NC加工(数値制御による機械加工)で原物の風合いを反映した木型を再製作することもできる。非接触でスキャンするため、もとの木型を傷つけることはないという。 半林さんは「木型の品番ごとに人気や売れ行きのデータを一緒に管理すれば、事業継承のときにも役立つはず。NC加工は、木型の形のままサイズを変えられるので、ニーズに合わせて大きくしたり小さくしたりもできる」と話す。 4月にサービスを始め、全国の和菓子舗に案内を送ったところ、50件ほどの問い合わせがあったという。1件につき3Dデータ化で8万円から、3DCADデータで16万円から、と価格を設定している。 「将来は菓子職人の技を数値化して、3Dフードプリンターを使った和菓子づくりにも挑戦したい」と、半林さんは話している。(鈴木裕) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
子どもなら、アイスとジュースが「食べ放題」 夢の島に行ってみた
子どもなら、お金がなくても、あるものを使えばアイス食べ放題、ジュース飲み放題。そんな夢のような島があると聞いた。宮崎県北部、日豊海岸国定公園の島野浦島(延岡市)だ。秋の一日、出かけてみた。 島は、市役所から北東に約17キロ。対岸の港から高速船だと10分で着く。周囲15・5キロ、人口約700人。島の中央に、ツツジで有名な遠見場山(とんばやま)(標高186メートル)がそびえる。平地はほとんどない。山裾の路地に漁村が軒を連ねる。 波止場から数分歩くと、島唯一の飲食店「満月食堂」が見えてくる。席は20。柔らかな照明に白木の丸テーブル。都会のカフェのような雰囲気が漂う。 レジ横にホワイトボードがぶらさがり、長さ数センチの長方形のステッカーが磁石で貼られている。青と黄色の2色。うわさの「こどもチケット」だ。 考えたのは食堂のスタッフで… この記事は有料記事です。残り1578文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大学ファンドで研究力上がる? 東大・京大の落選を専門家が考えた
有料記事 聞き手・桜井林太郎2023年9月17日 11時00分 10兆円の大学ファンドから年数百億円もの多額支援を受けられる国際卓越研究大学の初めての選考で、東北大学が唯一、認定候補に選ばれた。なぜ東京大や京都大でなく、東北大だったのか、この制度は機能するのだろうか。科学技術や高等教育政策に詳しい小林信一・広島大特任教授(67)に聞いた。 ――東大や京大ではなく、東北大が選ばれたことに多くの人が驚きました。 東北大と聞いて、なるほどなと感じた。以前から青葉山の新キャンパスの土地を活用しようと、次世代放射光施設や災害科学国際研究所をつくるなどし、産学連携でイノベーションを生み出す「サイエンスパーク構想」をもともと掲げてきたが、これは制度をつくった政府のねらい・方向性に沿っている。昔から寄付も一生懸命に集め、基金に積み立てていて、それをどう使おうかと考えていた。準備ができていたというか、ストーリーができていたという面があり、ほかの大学より優位だったのかなと思う。東日本大震災を経験し、資源の集中というか、研究分野・テーマの集中が自然と進んでいたこともある。 ――ただし認定候補という位置づけで、今後、文部科学省の有識者会議(アドバイザリーボード)が大学の意欲や挑戦を後押しすると言っています。 アドバイザリーボードが「伴走する」というが、すごい介入をするという感じがする。認定を受けるのがいいのかどうか、悩ましい。必ずしも悪いことではないけれど、かなり特殊。 東北大も条件付きで認定という話で、ガバナンス体制の構築を求められているが、合議体を設置しなさいということだろう。ちょっと疑問がある。 ――疑問といいますと? 海外では伴走するというのは… この記事は有料記事です。残り3280文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
進むファスト化、「もっと」と求めるのではなく リロン編集部から
吉田貴文2023年9月17日 7時30分 「スローライフ」で知られる文化人類学者の辻信一さんを20年近く前に取材した。携帯電話が普及しつつある頃だったが、速さや効率を「もっともっと」と追い求めないよう「携帯は下手なままでいます」と語っていたのが記憶に残る。 今では、桁違いに効率的になったスマートフォンを大半の人が持つ。社会のファスト化が加速度的に進む中で、「ゆっくり」はまだ意味を持つのか? 「スロー」をめぐる価値や思考を問い直すインタビューシリーズを企画した。 1本目は「リアルの場の力を 宇野常寛さんが考える『遅いインターネット』の次」(9日配信)。宇野さんは「今のインターネットは速すぎて、人間に考えさせない装置となっている」と語る。自らが提唱した、あえてネットでじっくり思索する「遅いインターネット」の取り組みは問題提起にとどまっているとし、「速いネット」に対抗する場を実空間に作る取り組みを始めた。 2本目の「『スローニュース』再始動の戦略は 瀬尾代表がつなぐ調査報道の価値」(10日配信)で瀬尾傑さんは、手間と時間がかかる調査報道の情報は信頼でき、民主主義に不可欠と指摘。新たなコミュニティーづくりを目指す。 3本目は「『鈍考』で知る90分の価値 幅允孝さんが読書空間で問う遅効性とは」(11日配信)。幅さんは「即効性からはあえて鈍くあり、自身のペースで深く考える場所」として、京都の山あいに完全予約制の私設図書室をつくった。 共通するのは、人間が主体的に考える時間を大切にする点だ。忙しさを口実に、速さや効率を「もっともっと」と求める自らを省みた。(吉田貴文) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Re:Ron 対話を通じて「論」を深め合う。論考やインタビューなど様々な言葉を通して世界を広げる。そんな場をRe:Ronはめざします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「国際銀行口座、開きたい」相談受けた銀行員が客のSNSを見ると…
宮沢崇志2023年9月17日 8時00分 兵庫県警姫路署は詐欺被害を未然に防いだとして、りそな銀行姫路支店の八木敦子さん(38)に感謝状を贈った。 7月5日午前、窓口業務に就いていた八木さんに、50代の男性が話しかけた。「国際銀行の口座を開設したいんだけど」 これまで受けたことのない相談だった。分かりませんとだけ答えることもできたが、八木さんは会話を続けた。「なぜ口座開設が必要なのですか?」 男性は紛争地帯への支援に150万円を送るのだという。後に2千万円が返ってくる、とも話した。送金のための150万円を融資してもらうことはできるか、という話になり、八木さんは詐欺だと確信した。 男性は、SNSで知り合った女性の話を信じ込んでいるようだった。「証拠」としてSNS上の会話を八木さんに見せた。 「かなりの量のやり取りがありました。『親愛なる友人』という表現を見て、もしかしたら日本の方ではないのかな、という印象を持ちました」 相手からのメッセージには「銀行には知られないように」というような文言があったが、相手を信じている男性は、八木さんにその部分を読まれても気にしない様子だった。 男性を見ていて、「警察に行っては」と八木さんが話しても相談には行かないだろう、と感じた。上司に警察への通報をお願いし、会話を続けた。警察官が到着し、男性は通報していたことを知らされたが、落ち着いた様子だったという。男性から話を聴いた署は、詐欺未遂事件として捜査している。 姫路署は「白鷺(しらさぎ)とめ太郎」というキャラクターをつくり、特殊詐欺被害撲滅を目指し、姫路市内の事業所と連携している。8月22日に感謝状を手渡した白野邦昌署長は「詐欺の手口は様々。八木さんには、特殊な口座の開設という点に注目していただいた。適切に対応いただき、ありがとうございます」と話した。(宮沢崇志) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
総長カレー発案の元総長に聞く京大の自由 「面影だけだが妙に定着」
2003~08年に24代京都大総長を務めた地震学者の尾池和夫さん(83)。在任中には大学の法人化を経験し、「総長カレー」をヒットさせたことでも知られる。学生時代を含めて40年以上を過ごした母校の今に何を思うのか。京大の特徴や大学のあるべき姿を聞いた。 ――京大と言えば自由の学風ですね。 自由の学風はどこかに書いてるわけでもないけれど、旧制第三高等学校以来、世間が勝手に言うてました。あらゆるところにそういう面影があるだけだけど、妙に定着してますね。 東京大の基本理念は僕も知らないけれど、京大はみんなが知ってくれてる。それは特徴であってほしいと思う。ドイツなど西洋の大学でも本来自由の学風っていうのが当たり前ですよね。今後も、自由の学風をやめようということはないでしょう。 ――自由の学風に必要なことは。 思うことを、あまり口に出さなくなるとまずいですよね。「発言が自由である」ということは自由の学風と一対一で対応します。 「自由の学風」が変革の波に揺れている。霊長類研究所の解体や、講義の無料公開サイトの終了方針には反対や異論が噴出。国際卓越研究大学の選に漏れた京都大の今と行く末をどう見るか、学生や教員、卒業生らに聞いた。 交付金の削減 文化の破壊行為 ――法人化は大学にとって一つの節目だったのでは。 政府は当時国会で、「交付金… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
殺害のラーメン店長、上半身に傷多数 発見時には「臨時休業」の看板
手代木慶 中村英一郎 阿部育子2023年9月16日 18時55分 京急上大岡駅(横浜市港南区)近くのラーメン店で、店長の大橋弘輝さん(33)=同区=が血を流して倒れているのが見つかり、死亡した事件で、遺体には上半身を中心に刃物による多数の傷があったことが県警への取材でわかった。店内には争った形跡もあることから、神奈川県警は殺人事件とみて捜査。司法解剖して死因を調べるとともに、店内に不審な人物の出入りがなかったか、防犯カメラ映像などで調べている。 県警などによると、15日夜、連絡が取れないことを心配した親族が店に駆けつけ、店内で血を流して倒れている大橋さんを発見した。「背中と腹部を複数刺され、血が大量に出ている」と119番通報があり、病院に搬送されたが、死亡が確認された。当日昼は営業していたが、発見時、店頭には「臨時休業」の看板が出ていたという。 店は駅から約100メートル。居酒屋やスナック、パチンコ店などが立ち並ぶ繁華街の一角にある。大通りから奥まった道沿いで人通りは多く、車の抜け道にもなっているという。 複数の利用客によると、大橋さんの店の営業は基本的に1人で、時間帯によって店員は交代していたようだ。ラーメン1杯500円のキャンペーンを企画するなど、「すごく頑張っていた」と話す人もいた。 近くの飲食店で責任者を務める男性(48)は「ニコニコした気さくないい青年。悩みがある雰囲気は感じなかった。同じ業界でがんばろうと思っていた」と話した。 毎週店に通い、大橋さんの家族も知るという南区の女性(69)は夫(81)と現場近くに花を供え、手を合わせた。大橋さんは女性を「お母さん」と呼び、慕っていたという。「人に恨まれるような子じゃない。本人も家族もかわいそう。犯人が許せない」と涙ぐんだ。(手代木慶、中村英一郎、阿部育子) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
新宿駅1日駅長を返礼品に 新宿区のふるさと納税、寄付100万円
細沢礼輝2023年9月16日 19時00分 JR東日本首都圏本部と東京都新宿区が、同区へのふるさと納税の返礼品として、JR新宿駅長の1日体験プランを用意した。100万円の寄付者が対象で、来年2月17日と3月9日に各日1人限定。ウェブサイト「JRE MALL」のふるさと納税サイトで、10月3日午前10時から先着順で受け付ける。 新宿駅は、1日約120万~約160万人が乗降する国内最大のターミナル駅。体験日当日は駅長専用の白い制服を着て、駅構内や運転士、車掌らの職場を巡回したり、式典で列車の出発合図をしたりする予定だ。JR東日本は「たっぷり6時間をかけて、プレミアムな体験をしてもらう」と話している。 このほか、終電後の新宿駅ホームで駅員の作業を体験したり、車両を見学したりするプラン(寄付金額30万円)や、みどりの窓口や改札での駅員体験プラン(同6万円)も用意されている。いずれも受け付けは10月3日午前10時から先着順。(細沢礼輝) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「原爆のフィルムは燃やせ」 カメラマンは縁の下にネガを隠した
【プロローグ】A Scene「あの少年は父です」ー被爆78年後の真実ー(本編は記事の末尾に) 1976年8月の朝日新聞社内報に、こんな記述がある。 「長い写真記者生活のうち、これほど激烈な事件に出会ったことはない。この広島だけは、今もって私の眼底に焼きついたままである」 「火傷(やけど)の手当てを受ける少年」の写真を撮影したのは、朝日新聞写真記者の宮武甫(はじめ)さんだった。当時30歳。原爆投下から4日後の1945年8月10日、広島赤十字病院(現広島赤十字・原爆病院)で撮った10枚のうちの1枚だった。 「対敵宣伝」に役立つ写真撮影を狙って大阪で編成された陸軍の宣伝工作隊の一員として前日の9日に広島に入り、壊滅的な被害を受けた街の様子を記録していた。限られたフィルムで撮影したのは119カットだった。 少年の写真を含む宮武さん撮影の4枚は、9月4日付の朝日新聞朝刊(大阪本社発行)に掲載された。連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領下のプレスコード(報道規制)で広島の被爆者の実態を報じるのが難しくなる直前で、貴重な報道となった。 その後GHQから「原爆関係… この記事は有料記事です。残り910文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル