少し肌寒い卒業式だった。 小山城南高校(栃木県小山市)の体育館には、張り詰めた空気と厳かな雰囲気が漂っていた。校長だった寺内孝夫さん(69)は、柔らかな口調で、卒業生にはなむけの言葉を贈った。 「どこへいっても、自分らしく、前を向いて歩いていってください」 いったい、どれくらいの生徒の心に届いているだろうか。入学式や始業式、終業式、校長として、壇上で話すことは何度もあった。 そのたび、「はやく終わらないかな」。そんな生徒の声が聞こえてくる気がした。 簡潔に、10分以内で春夏秋冬を意識して話した。一人でもいい、誰かに届いていたらいいなと願って。 2012年3月1日。この日の卒業式でもそんな思いで話した。 その後、昼過ぎのことだ。 校長室横の事務室から、声がかかった。 「女子生徒が1人、校長先生とお話ししたいと廊下で待っているんですが」 「入っていいよ」、「失礼します」。 一礼した彼女は、笑顔で切り出した。 「卒業する前に、最後に校長先生とお話ししてみたかったんです」 しっかりと話すのは初めての生徒だった。 2時間ほど、楽しそうに3年間の話をしてくれた。友達のこと、部活のこと、授業のこと、将来のこと。生き生きした表情をみて、充実した高校生活だったんだと思えてうれしかった。 帰り際、彼女が突然、手紙を差し出した。ピンク色の封筒にケーキの形をした愛らしい便箋(びんせん)だった。 「あとで、読んでください」 彼女がずっと思っていたこと 彼女が去った後、すぐに封を… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
献金記録の不開示は「不当きわまりない」 解散請求しても残る課題は
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令が10月13日に請求されました。とはいえ、これで問題が解決したわけではありません。被害者救済のために何が必要なのか。全国霊感商法対策弁護士連絡会の事務局長を務める弁護士の川井康雄さんに聞きました。 ◇ 解散命令請求はもっと早く出すべきでしたし、それにより防ぐことができた被害もあったと思います。とはいえ、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件から1年余りで請求までこぎ着けたのは、個人的には評価しています。文部科学省も、請求を出す以上は、万が一にも敗訴しないように万全を期したのでしょう。 ただ、請求前に、教団の財産を保全する措置を講じなかったことは問題です。旧統一教会は、現金を中心とした流動性の高い資産が多い。財産の流出を防ぐ措置が不可欠なのです。 今の国会に、教団の財産保全のための法案が提出されています。立憲民主党は特別措置法の制定、日本維新の会は宗教法人法の改正を提案し、与党も法案提出を検討しているようです。 実現可能性でいえば、宗教法… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
仲里依紗さん、「長崎」身にまとい登場 「服は、着たいから着る」
JR長崎駅前のかもめ広場で3日、新駅ビル「アミュプラザ長崎新館」の開業を盛り上げるファッションイベントがあった。新館のPR活動を行うスペシャルアンバサダーで長崎出身の俳優・仲里依紗さんも登場し、立ち見も含め200人以上が詰めかけた会場は熱気に包まれた。 イベントはファッションショーと仲里依紗さんによるトークショーの二部構成。ファッションショーでは、新館で出店予定のアパレルブランドおすすめの冬服コーディネートや、長崎の風景をイメージしたオリジナル衣装20着が発表された。「雲仙地獄」をイメージにしたドレスは、透けて見える薄手のチュール生地を用いて雲のようなやわらかさと、立ちこめる蒸気を表現。観客は次々登場する斬新な衣装に目を奪われていた。 ショーの最後、仲さんがランウェーを歩くと会場からひときわ大きな歓声が上がった。続けてあったトークショーでは観客から「おかえり」のかけ声。仲さんは「長崎に帰ってきてみなさんの前でランウェーすることができてうれしい」と笑顔で応えた。司会からファッションの楽しみ方を問われた仲さんは「人からどう見られるだろうかと悩まず、着たいから着るんだと、自信を持って好きな服を着てほしい」と話した。 開業は10日。家電量販店「エディオン」やセレクトショップの「シップス」など86店舗が出店予定。開業に伴う渋滞緩和のため、三菱重工総合体育館や長崎駅北側に臨時駐車場を設けるほか、利用金額などの条件を満たした人に路面電車の片道乗車券を配布するなど公共交通の利用を促すサービスを実施する。詳細はアミュプラザ長崎の公式サイト(https://www.amu-n.co.jp/eventnews/detail/?cd=001102)で確認できる。(岡田真実) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
労使問題に揺れる群馬テレビ 知事「完全に異常事態」双方聞き取り
群馬テレビ(前橋市)の労働組合が武井和夫社長による不当労働行為を訴えている問題で、山本一太知事は2日の定例会見で、労組と社長の双方から事情を聴いたと明らかにした。群テレについて「県政情報の発信、災害時の情報発信の役割を果たしてきたが、今後もその役割を果たしていただけるのか、正直言って疑問に思う」「完全に異常事態」などと懸念を示した。 県は群テレの筆頭株主(15・06%)。労組が10月18日に県労働委員会に救済を申し立てた後、県はまず23日に労組から聞き取りした。社長の方針で畑違いの部署への異動が頻繁に行われ、会社の存続に強い危機感をもっていることや、現場が混乱に陥っている状況など1時間ほど説明を受けたという。 一方、武井社長からは1日、「組合と丁寧に話を進めたい」「取締役会や株主総会で今回の状況を説明したい」などと5分ほどの説明があったという。労組側が問題だと主張している社長自身の言動について説明や弁明はなかったという。 山本知事は県域放送局の健全… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
親にしばられる宗教2世の苦悩、根っこに「家族教」 信田さよ子さん
親が、極端な教義を持つ宗教や陰謀論にはまったとき、一緒に暮らす子どもの苦悩は深い。逃げ出したいという思いと、親をすててはいけないという「家族教」のはざまでどうすればいいのか。社会に求められているものは。家族の問題に詳しい公認心理師の信田さよ子さんに聞いた。(聞き手・喜園尚史) いわゆる宗教2世は、親が信仰している宗教の被害者であると同時に、「家族教」の被害者でもあります。親の陰謀論やDVなどに苦しむのも仕組みは同じです。親の思いや愛情を疑ってはいけない、子どもは親を大切にすべきだといった日本社会に根づいた「親子愛」というイデオロギーの犠牲者ともいえます。 宗教であれ、極端な陰謀論であれ、自分の信じることは正しいし、子どもを幸せにすることだと親は考えています。外からは暴力的と思われる言動も、家族の中では親が「正しい」のです。一方で子どもは、教義や持論を押しつけてくる親から離れたいという思いと、親に背くことへの罪悪感の板挟みに苦しみます。 親の問題は親しい友人でも言… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
生後1カ月でスタジアムに ルヴァン杯、アビスパサポ一家が全力応援
サッカーJ1のアビスパ福岡が4日、ルヴァン杯初優勝をかけて決勝に臨む。人生の大半を捧げてきた熱狂的なサポーターも、チーム初のタイトル獲得を心待ちにしている。 ルヴァン杯決勝を1週間後に控えた10月28日。J1のリーグ戦、横浜F・マリノス戦があったベスト電器スタジアム(福岡市博多区)には、昨シーズンの平均入場者数の2倍の約1万4千人のサポーターが集結し、熱気がみなぎっていた。 そのスタジアムに、サポーター歴25年超の会社員谷脇良也さん(48)=福岡市=の姿もあった。試合が始まる5時間半前に会場入りし、いつものように応援用の横断幕を張るなどして試合開始を待っていた。「選手たちのメディア露出も増えて、以前より福岡の人たちのアビスパへの関心も高まっていると思います」と笑顔を見せる。 初めて試合を見に行ったのは… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
専業主婦の妻は満足した人生だったか 悩む夫に上野千鶴子さんが一喝
元高校教師です。現役時代はテニス部の顧問をして、土日も休日も、試合や練習で家を空けることが多い生活でした。必然的に家庭や子どものことはすべて「専業主婦」の妻にまかせっきりになりました。 こんな生活について、自分は学校のため、生徒のため、ひいては社会のために貢献しているのだという自負を持っていました。 ところが、先日、妻がふと、「いままで家族のご飯をつくるのに、どれだけの時間をかけてきたんやろか……」と漏らすのを聞きました。 さらにその数日後、女性の友人から「それだけ部活に打ち込めたのは、奥さんが家のことをしてくれたからでしょ」と言われました。いまさらながら、これらの言葉が気になっています。 妻は社会への関心も高く、社交的です。「ほんとうは社会に出て何かしたいことがあったのではないか?」「家族の面倒を見るだけの人生に満足しているのか?」という疑問が頭から離れませんが、怖くて聞くことができません。 このままでいいのか、それとも妻に何か言うべきか、悩んでいます。 回答者 社会学者・上野千鶴子さん 部活に熱心な高校教師ですか。土日も休日もいとわず「学校のため、生徒のため、ひいては社会のために」献身してきた自負をお持ちなんですね。 社会活動家や労働運動家を夫に持つと、妻はモーレツサラリーマンを夫に持つよりもたいへんな目に遭(あ)うと言います。長時間労働のサラリーマンの夫になら、あんたはせいぜい会社の利益のために働いているのねと言えるのに、社会活動に熱心な夫には「世のため人のため」という大義名分があるからです。 童画家のいわさきちひろさん… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
山好き若者よ、山荘を継ぎませんか 栂池高原で会員がつないで半世紀
スキーや登山で観光客を引きつける北アルプスの白馬三山。その山すそ、栂池高原(長野県小谷村)に立つ山荘の譲渡先を、建物や土地を所有する山岳会が探している。 半世紀にわたって会員が守ってきた思い出深い山荘だが、高齢化で維持管理が難しくなった。会員たちは「大学、高校の山岳部や山を愛する若者たちに、山荘を受け継いでもらいたい」と話している。 白馬岳(標高2932メートル)を擁する白馬三山や新潟県境にほど近い場所に立つ「栂池白崚山荘(つがいけはくりょうさんそう)」。栂池高原スキー場に隣接する別荘地にある。 9月末、山荘を所有する「栂池白崚会」の会員たちが、草刈りや山荘補修作業のため訪れていた。 この山荘は、それぞれの会員が鍵を持ち、希望に応じて利用できる別荘のような仕組みで、維持管理も会員たちが担ってきた。 「集団就職」が縁 最盛期は20人が会員に 建物は庭付きの約14坪で2… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ケニア海岸で拾ったサンダルをスマホケースに 慶大生ら起業で恩返し
アフリカの海岸に捨てられたビーチサンダルを、スマートフォンのケースに生まれ変わらせるプロジェクトを大学生が進めている。ゴミを減らし、環境に優しく、現地で仕事をつくる。年内には販売を始めたいという。 中心になっているのは、幼い頃にケニアで暮らしたことがある慶応大学環境情報学部3年生の山岸成(なる)さん(21)。大学では、アフリカについても学び、合同会社「Uzuri」(ウズリ)を立ち上げ、代表を務める。「ウズリ」はスワヒリ語で、「美しい」という意味だ。 ナイロビの小学校で過ごした3年間 あの国の役に立ちたい 山岸さんは大学で学ぶビジネスの視点でケニアに貢献したいと考えた。父が日本人学校の教員をしていたため、ケニアの首都ナイロビで小学生の3年間を過ごした。子どもの頃にお世話になった国の役に立ちたかった。 目をつけたのは、現地で海岸… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「けがした」「動けない」 被災者の声、AIが文字化して迅速救助へ
朝日新聞デジタルに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。Copyright © The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. Source : 社会 – 朝日新聞デジタル