5秒。 わずかな差が、余裕をもたらす。 繁田あす香さん(27)がいつもの通勤風景の変化に気づいたのは、1年ほど前のことだった。 新静岡駅(静岡市葵区)でバスを降り、静岡鉄道に乗り換えて、職場に近い狐ケ崎駅まで通勤している。利用するのは午前9時台。この8年半、変わらぬ習慣だ。 いつものように、車両のドアが開くと同時に飛び出していく人。しゃべりながら並んで歩く人。 続いて、ベビーカーを押してホームに出る人がいた。なんだか普段より落ち着いているように見えた。 「あれ? ドアが開いている… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
サウナは自分でつくる! 大学講師から転身、北極圏で性能テストも
2023年の1月下旬。仙台市の佐藤啓壮(けいぞう)さん(55)は、サウナ発祥の地・フィンランドの凍った湖の上にいた。 零下15度の外気に凍えながら、自身が開発したサウナ専用のテントと薪(まき)ストーブの「性能評価」を試みたのだ。ストーブにシラカバの木をくべると、30分後、テント内の室温は100度を超えた。噴き出す汗。 「うふぁあ~~~」 雪の上に寝転ぶと声が出た。 「北極圏で性能を試した日本のサウナ用テント。他にはないでしょう」。そう笑う佐藤さんは、サウナ用品を開発する合同会社の代表だ。モットーは「とにかくおもしろいことをしたい」。 出身は宮崎県。理学療法士の資格を持つトレーナーとして、自動車大手企業などでモータースポーツ選手らを支えてきた。世界最高峰のヨットレース、アメリカ杯の日本チームにも帯同した。 東北との縁は2008年。リハビリテーション学科を設けた東北福祉大に専任講師としてやってきた。その後、東北大の特任講師として、動作解析センサーを使った次世代健康器具の開発などに関わった。職人やエンジニアと仕事をするうちに身についた知識と技術が、のちにサウナ作りに生かされた。 16年、高齢者の運動機能を改善する自身の研究に興味を持ったフィンランドの大学に招かれた。湖畔に点在する公衆サウナへ足を運んだ。薪ストーブの柔らかい熱と、シラカバの香り漂うスチーム。我慢比べをする雰囲気もなく、男女一緒にたわいない言葉を交わす。湖につかり、ほてった体を冷ます。サウナの後は、ビール片手にソーセージを焼いて塩分を補給。体も心もほぐれ、至高のリラックスを体験した。 「おじさんが威張って座っている」というサウナのイメージが180度変わった。 やがて世界はコロナ禍に突入。毎年通ったフィンランドへも足止めされた。 「ロウリュ」で変形しないストーブを 仕方ない。自然の中で楽しむ… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
息子が割ったグラス、怒らなかった父 「ゴジラ」にも生かされた機転
札幌を拠点に「レタッチャー」として活動している大谷キミトさん。 レタッチ(retouch)とは、「加筆」や「修正」を指す英語だ。 写真などの画像データを目的にあわせて加工したり、修整したり。 専用ソフトで細部を加工するだけでなく、全体の構成から手がけることもある。 最近では映画「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」のポスターやカタログに使われるキービジュアルを担当。 全世界興行収入が100億円を突破した話題作とあって、新たな仕事の依頼も続々と寄せられるようになった。 そんな大谷さんが自宅で作業していた今年7月。 帰宅した小学4年生の息子が、いつものように牛乳を飲もうと冷蔵庫を開けた。 「ガチャーン」という音がして振り返ると、グラスが細かな破片になって床に散らばっていた。 牛乳を注ごうとして手が滑ったらしい。幸いにもケガはないようだ。 粉々になった破片を見て、こう思った。 怒ったり注意したりよりも… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
トロフィーのタスキ、弟子が継いだ遺志 箱根往路V校に贈る寄木細工
お正月の箱根駅伝で往路優勝校に贈られるトロフィーとメダルは長年、ひとりの寄木(よせぎ)細工職人の手で生み出されてきた。 新春、第100回記念大会を待ち望みながら亡くなった職人の遺作が、箱根の山を上った先で勝負を見届ける。 昨年7月、82歳で亡くなった金指勝悦(かなざしかつひろ)さん。江戸時代後期から「寄木細工の里」として知られる神奈川県箱根町畑宿(はたじゅく)に生まれた。 職人の道に進むと、年中休みなしで制作に没頭。午前7時に起きて工房に行き、午後9時に帰るような生活だった。妻のナナさん(65)は「寄木と結婚したんじゃないかというくらい」と苦笑いする。 勝悦さんは「無垢(むく)作り」という技法で知られた。異なる色合いの木を接着して断面に模様を作り出した木の塊から、ろくろで立体作品を削り出す。 その腕を買われ、第73回大会(1997年)から往路優勝校に贈られるトロフィーの制作を任されてきた。 こだわりは世相を反映することだ。 藤井八冠や鬼滅をヒントに 明るいニュースが飛び込んでくるとテーマを変えて作り直すこともあった。「いろんな大学に自分の作品を置いてもらえたらうれしい」と、学生たちがしのぎを削る箱根駅伝を毎年とても楽しみにしていたという。 つなぐ、つむぐ 箱根駅伝100回 2024年1月2日、箱根駅伝は100回大会を迎えます。残り500㍍での棄権、異例の1年生主将、繰り上げを避けた7秒の戦い……。伝統のトロフィーを作った職人秘話も。様々な「箱根」を取材しました。 第94回大会(2018年)は、将棋で29連勝した藤井聡太さん(現・八冠)や、永世七冠の羽生善治さんの活躍から着想を得た。第97回大会(21年)はアニメ「鬼滅の刃」をヒントに、人を食らう鬼と戦う登場人物と新型コロナウイルスと戦う人類を重ねた。 トロフィー制作を始めた当初… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
18歳の新成人106万人、前年より6万人減 過去最少を更新
2024年1月1日現在の新成人人口(05年生まれの18歳)が106万人で、前年の18歳と比べると6万人減少したとの推計を総務省がまとめた。新成人人口は過去最少を更新した。また、24年の「年男・年女」となる辰(たつ)年生まれの人口は、推計1005万人。 成人年齢は22年4月1日から18歳に引き下げられた。新成人は男性55万人、女性52万人で、総人口(1億2413万人)に占める割合は0・86%。 辰年生まれは男性488万人… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
岐阜市で住宅火災、焼け跡から1人の遺体 同居の長女と連絡とれず
31日午前7時半ごろ、岐阜市上芥見の自営業、宮田明和さん(66)方から出火し、木造2階建て約104平方メートルがほぼ全焼した。 岐阜中署によると、焼け跡から性別不明の1人の遺体が見つかった。同居する長女(40)と連絡がとれないといい、同署が遺体の身元の確認をしている。 宮田さんは無事で、同居する孫(16)は外出中だった。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
富山空港に「回る寒ぶり」 年末年始、そっくり模型で冬の味覚をPR
空港でおいしいPR――富山の冬の味覚「寒ぶり」が、富山空港の国内線到着手荷物受取所のターンテーブルをぐるぐる回る。実は本物そっくりの模型だ。年末年始を富山で過ごす人たちの目を引いている。正月の1月8日まで。 模型は長さ約1メートル。28日に初めて登場した。地元産のネタを使った極上ずし「富山湾鮨(ずし)」の模型も以前から回る。富山県航空政策課の担当者は「ちょうど、氷見の寒ぶり宣言も出たばかり。ぜひ富山で地元の鮮魚を召し上がってほしい」と、話している。(平子義紀) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
大谷翔平選手・岡田監督・藤井聡太八冠… 2023年の顔、羽子板に
今年話題になった著名人をモデルにした「変わり羽子板」の展示会が12月30日、石川県金沢市の百貨店・香林坊大和で始まった。主人公は大リーグ本塁打王の大谷翔平選手、将棋の藤井聡太八冠ら9人。長さ60センチの羽子板8点に立体的に描かれている。 人形店の久月(東京)が1986年から毎年披露し、来年2月下旬まで全国を巡回している。プロ野球阪神タイガースの岡田彰布(あきのぶ)監督、車いすテニスの小田凱人(ときと)選手、やり投げの北口榛花(はるか)選手、タレントの黒柳徹子さん、漫画「スラムダンク」作者の井上雄彦(たけひこ)さんらも登場。大谷選手は本塁打で生還した後のかぶとをかぶった姿で、エンゼルスのユニホームの羽子板は、これが見納めになる。 7階で1月3日まで(元日は休み)。無料。(樫村伸哉) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
鉄道の利用促進する人たちが、使わないのは自己矛盾? 記者は考えた
今年は全国各地で赤字ローカル線のあり方が議論になった。四国でも、JR四国の西牧世博社長が存廃の議論を自治体と始める候補となる路線を初めて挙げた。その一つが予土線(愛媛、高知両県)だ。 地元自治体は危機感を強め、10月27日、両県でそれぞれ利用促進に取り組んできた協議会を一本化する会議を開くと聞き、高松から取材に出向いた。 会場の愛媛県松野町役場は、予土線松丸駅から徒歩5分。ちょうど開会の30分ほど前に同駅に着く列車があった。列車の到着時刻に合わせて会議を設定したのかとさえ思った。始発の宇和島駅から乗ったが、予想に反して出席者の姿はなかった。 鉄道の利用促進を話し合う関係者が、誰も鉄道を利用しないのは自己矛盾では。沿線首長の一人は私の問いに「ここに来る前、別の場所で用事があった。申し訳ない」と釈明した。 とはいえ私自身、取材に出かけるときは車を使うことが大半だ。公共交通を利用することで応援したいと考えても、本数が少なかったり、駅から離れた目的地への交通手段がなかったりして断念することは少なくない。 バスをはじめモビリティーの動向に詳しい中村文彦・東京大大学院特任教授は「無理して(公共交通を)使っても続かない。自家用車を公共交通に切り替えることが難しければ、公共交通を使う外出の機会を新たに作るアプローチもある」と提案する。 駅や乗り場まで歩くのは健康に良い。移動の間に仕事や食事、睡眠ができ、お酒も飲める。地球温暖化防止に協力できる。中村特任教授は、公共交通のそんなメリットを考慮しながら、自家用車と公共交通を使い分ける人たちを「チョイス層」と名付け、これらの人たちの公共交通利用の機会を増やす取り組みが鍵になると指摘する。 鉄道やバス、タクシーなどの事業者を取材すると「利用者がコロナ禍前の水準に戻らない」との嘆きをよく聞く。回復の道は、乗るか、乗らないかの二者択一の発想から離れることかもしれない。(福家司) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
さよなら2023年 名古屋の「吹奏楽の聖地」も、大阪のマルビルも
常連が通い詰めた喫茶店、吹奏楽の聖地となったホールや街のランドマーク……。今年、惜しまれながら姿を消していきました。2023年もあと1日。 国内最古級の喫茶店として、東京都内にチェーン展開してきた「亜麻亜亭(アマーテ)」(カフェ・アマティ)。25日、池袋駅地下街にあった最後の店が閉店し、88年の歴史に幕を下ろした。 「時代の変化についていけなかった」。店を運営する齋藤商事の常務取締役、山内園美さん(57)は、声を落とす。 1935年に1号店を開き、90年ごろには11店舗を構えた。勤め人の男性客が席を埋め、1店舗で月2千万円を売り上げたこともあった。 2008年のリーマン・ショックで潮目が変わり、ここ数年は、新型コロナウイルス感染症の流行などで赤字が続いた。さらに物価高と人手不足が苦しい経営に追い打ちをかけた。 新宿駅ビル内の店を閉めた10月。最後の営業を終えた時、1号店から利用してきたという常連客からかけられた言葉が忘れられない。「好きだったのよ。私はどこに行けばいいの」と泣いてくれた。「こういう人に支えられてきたんだなって。本当にありがたいこと」。山内さんは話した。(山口啓太) 本当の「さよなら」ではなく 2012年から国内最大級の吹奏楽の大会「全日本吹奏楽コンクール」の中学校、高校の部が開かれてきた名古屋国際会議場センチュリーホール(名古屋市熱田区)は、「しばしのお別れ」となる。 「吹奏楽の聖地」とも呼ばれ、今年は10月21、22の両日に開かれた。改修工事に入るためコンクールは来年から別の会場で開催される。同ホールの中谷務館長(77)は、毎年のコンクールを欠かさず鑑賞してきた。「多くの若者のパワーが集まる2日間がなくなるのは、本当に残念。まだ実感がわかないが、秋が近付くにつれ徐々にさみしさを感じるだろう」 今月20日には、同ホールでコンクールの全国最多出場回数を誇る愛工大名電高(名古屋市)のクリスマスコンサートが開かれ、賛美歌など10曲以上の演奏に、約3千人の聴衆から大きな拍手が送られた。 改修は、27年3月に終了予定。27年以降のコンクールの会場は未定だが、同ホールが再び会場となる可能性がある。中谷館長は「数年後、再びホールに中高生の演奏が響くことを願っている。だから、本当の『サヨナラ』ではないと信じています」と話す。(井上昇) 街のランドマークが 大阪の中心地・梅田では、街のランドマークだった「大阪マルビル」が老朽化のため姿を消した。 地上30階建て、高さ約124メートルの円筒形で、大阪の高層ビルの先駆けとして1976年に開業。大阪第一ホテルや飲食店が入り、待ち合わせスポットとしても知られた。ビルを所有する大阪マルビルによると、跡地は2025年の大阪・関西万博の開催期間中にバスターミナルとして貸し出し、その後はより高層の新ビルを30年春に完成させる計画だ。 梅田では、JR大阪駅北側の商業地区を結ぶ「梅北地下道」も、再開発に伴って今年11月に完全に閉鎖された。(岩本修弥) 2023年に終了したもの ・テレビ朝日の長寿番組「タモリ倶楽部」が3月31日の深夜放送をもって終了。計1939回 ・駅などで配られていたフリーマガジン「HOT PEPPER」が23年12月号で休刊。ウェブサイトに一本化 ・法人向けPHS終了。1995年から始まったサービスで、21年に個人向けサービスが終了していた。28年の歴史に幕を下ろした ・電話回線を使ったインターネット接続の「フレッツADSL」が原則、1月に終了。光回線が整備されていない地域は残る Source : 社会 – 朝日新聞デジタル