Re:Ron連載「ことばをほどく」第4回 10月25日の最高裁の判決で、「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」(「性同一性障害特例法」)におけるいわゆる不妊化要件が違憲であるとの判断が、裁判官全員一致で下された。 性同一性障害特例法は、トランスジェンダーが戸籍に記載された性別を変更する際の手続きを定めた法律だが、現在この手続きをおこなうには五つの条件を満たすことが求められている。①18歳以上であること、②婚姻をしていないこと、③未成年の子がいないこと、④生殖腺がない、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること⑤性器が変更後の性別の標準的な性器の形状に近似した外観になっていること、だ。「不妊化要件」と呼ばれているのは四つ目の条件であり、要するに生殖能力がある状態では戸籍上の性別を変更することはできないという内容である。不妊化要件は⑤のいわゆる「外観要件」とセットで「手術要件」と呼ばれてもいる。 戸籍上の性別変更は、「きのうまで女性/男性として普通に暮らしていたひとが、いきなり手続きをして男性/女性としての身分を手に入れる」というふうに想像されることがあるが、実態としては「戸籍以外は基本的に女性/男性としてすでに暮らしているひとが、生活実態と公的書類の記載内容の不整合による困難を解消するために記載事項を変更する」というのが基本的な状況だ。それゆえ、今回の違憲判断は多くのトランスジェンダーの人々にとって重要なものだった。 だがその一方で、これをきっかけにまたトランスジェンダーへの誤解や恐怖をあおるような言葉がSNS上で広がっている様子も目に入った。なかでも気になったのは、「特例法改正で性別変更が容易になると、誰でも『自分は女だ』と言っただけで女になれるようになる」「特例法改正で性別変更が容易になると、悪意を持った男が特例法を悪用して女の身分を獲得するようになる」といった言説だ。こうした意見はひょっとしたら一見もっともらしく思えるかもしれないが、そこでは不誠実なレトリックが利用されている。 「特例法改正で性別変更が容易になると、それを悪用する者が現れる」という文を取り上げて考えてみよう。この文からは、次のようなふたつの内容が読み取れる。 ①特例法が改正されれば、性別変更が容易になる。 ②性別変更が容易になれば、それを悪用する者が現れる。 ①は、特例法に現在ある要件を減らしたならば性別変更は確かに容易になるので正しいように思える。②もまた、仮に誰でも気軽に書類一枚で性別を変更できるなどということになれば悪用する者が出てくると考えるひとはいるだろう。すると、「AならばB」と「BならばC」から「AならばC」を導くという論理学的にも妥当な推論によって、「特例法が改正されれば、それを悪用する者が現れる」となり、悪用を避けたければ特例法は改正されるべきではないという結論になる……というような内容が「特例法改正で性別変更が容易になると、それを悪用する者が現れる」の一文には込められているように思える。けれど、このロジックには飛躍がある。それは「容易」という言葉の意味に関わるものだ。 犬のクロは「大きい」か 「容易である」はある特徴を持った表現だ。 それはすなわち、「何かに性質を帰属しているわけではない」ということだ。どういうことか、ほかの例を挙げながら説明したい。 たとえば「三木那由他は神戸出身だ」と言った場合には、三木那由他(私)に神戸出身という性質を帰属していることになる。神戸出身であることと浜松出身であることは(出身地がひとつだと仮定すると)相反するので、「三木那由他は神戸出身だ」と「三木那由他は浜松出身だ」が両立することはない。 だが「大きい」のような語はこれとは異なる振る舞いをする。 私がクロという名の犬を飼っているとする。クロがほかの犬と比べると体が大きいとすると、私はそのことを指して「クロは大きい」と言うことができるだろう。だが、犬のなかで大きいというのに過ぎないクロは、例えば大半のゾウと比べたら小さいだろう。なので、そうしたものと比べられる文脈では「クロは小さい」と言うことができる。大きいことと小さいことは相反するが、しかし何との比較のもとであるかに応じて、同じクロを大きいとも小さいとも言うことができる。つまり、「大きい」は大きいという性質を帰属する表現ではなく、その文脈における比較対象との比較結果を述べる表現なのだ。比較対象抜きに、「クロはそれ自体として大きいか小さいか」と問うても答えは得られない。 「容易である」もまた、こうした特徴を持つ表現だ。容易に解ける大学入試問題は、大学入試としては易しいけれど、小学校のテストに比べると難しいかもしれない。同じものが、比較対象次第で易しくも難しくもなる。そして、比較対象がない状態である問題が「容易に解けるか否か」を問うても答えようがないのである。 話を特例法に戻そう。 問題は、①「特例法が改正されれば、性別変更が容易になる」、②「性別変更が容易になれば、それを悪用する者が現れる」のふたつの「容易」が同じ基準のもとでの話になっているかどうかだ。「クロは大きい」と犬のサイズが話題になっているときの「大きいと飼うのが大変」から「クロは飼うのが大変」を導くのは、妥当な推論だ。だが、「クロは大きい」とゾウやキリンのサイズと比較したうえでの「大きいと家に入らない」から「クロは家に入らない」を導くのはナンセンスだろう。要するに、「大きい」や「容易である」のような表現が含まれている場合、その比較対象が一貫していなければまともな推論にはならないのだ。だが、①「特例法が改正されれば、性別変更が容易になる」、②「性別変更が容易になれば、それを悪用する者が現れる」の場合に、これは満たされているのだろうか? まず、①「特例法が改正されれば、性別変更が容易になる」は明らかに、現行の特例法と不妊化要件を排した特例法とを比較しての話なので、比較対象は「現行の特例法のもとで性別変更をする場合と比べて」である。②はどうだろうか? 長く、不透明な道のり ここで、実際のところ特例法を利用した戸籍変更がどういった手続きのもとでなされるか、私自身の経験をもとに語ってみたい(もしかしたら、ひとによって、あるいは時期や地域によって私とは違う経験をしている場合もあるかもしれないが)。 まず、知らないひともたまに見かけるが、性別変更を申し立てる相手は家庭裁判所である。区役所などに紙を一枚出しておしまいという話ではなく、複数の書類をそろえて裁判所に申し立てをおこない、裁判で申し立てが理にかなっていると認められれば性別の変更がなされることになる。 提出書類として最低限必要とされるのは、①申立書、②戸籍謄本、③2人以上の精神科医による性同一性障害(性別不合)の診断書、④性別適合手術を受けた証明書、⑤婦人科や泌尿器科などで生殖腺がない(機能しない)ことや適当な外観の性器になっていることを確認して得られる診断書である。 申立書と戸籍謄本には特別な手続きはないのでいいとしよう。精神科医による診断書は、ホルモン療法や性別適合手術の際にも必要となるが、それとはまた別の書式のものが必要となる。私の場合、最初にクリニックを訪れてからホルモン療法のための診断書を得るまでに約1年間かかり、それからさらに1年ほどホルモン療法を受けつつ現在の性別での暮らしを続け、再び性別適合手術のための診断書を得て手術を受け、手術後に改めて裁判用の診断書を発行してもらった。初めの2回の診断書は費用としては数千円で済んだと記憶しているが、裁判用のものは数万円かかっている(このあたりはクリニックによって大きく異なる)。3回の診断書のそれぞれでセカンドオピニオンが要求され、普段通っているのとは別の診療所で診断を得ている。 ④は手術を受けた病院でほとんど自動的に発行してもらえる。ただし、私は海外で手術を受けたが、その場合には裁判所から診断書の翻訳を添付するよう求められることがある(幸い、私のときには英文のままで大丈夫だった)。⑤については、手術後に婦人科や泌尿器科で検査を受けることになる。これ以外にも書類が要求されることもあるし、また申立人が念のために書類を添付することもある。私の場合は、最初に診断書を得るために必要となった性染色体の検査結果が手元にあったので、念のためにそれも添付しておいた。 しかしこれらの書類をそろえても、まだそれだけで性別変更が認められるわけではない。最終的な決定は、家庭裁判所で審判を受けてなされる。この際に実際のところ裁判官がどういった基準で決定をおこなっているのか、要件をすべて満たしたうえで裁判まで行って変更を認められなかった例があるのかなどについては、私は知らない。ただ、当時のトランスジェンダーコミュニティーでは、「念のために裁判官が性別変更に納得しやすい服装などを心がけたほうがよい」などとまことしやかに語られていた。 さて、以上の一連の流れで、手術要件がなくなることで省略できるのはどこだろうか? 当然ながら、④手術を受けた証明書、⑤生殖腺が機能していないことや性器の外観が適当なものとなっていることという条件は省かれるだろう。性別適合手術のための精神科医の診断書も、性別適合手術を受けないのであれば発行してもらう必要はない。 だが、それらがなくなったとしても、少なくとも裁判所に提出するために精神科医に発行してもらう診断書と裁判は必要となる。診断書を出してもらうには、それに至るまでの通院も必須だ。精神科にしばらく通い、場合によっては1年から2年ほどかけて診断を得て、戸籍謄本とともにその診断書を家庭裁判所に提出し、裁判で申し立てを認められる。これは、何と比較して「容易」だろうか? まず住所の変更とは比べ物にならない。住所変更などは、転居の必要性を示す診断書も要求されないし、裁判だって受けなくてよい。ただ転居届を出し、本人確認書類と在留カードや特別永住者証明書を見せるだけだ。氏名の「名」の変更はどうだろうか? 私自身は名前を変更した経験がないので伝聞の限りだが、一般的にトランスジェンダーコミュニティーでは、現在のところ性別変更に比べて名前の変更は手術が要求されない点でかなり容易であると言われている。名前の変更も性別の変更と同様に、家庭裁判所でおこなわれる。その際には、申立書とともに変更後の名前の使用実績を示すもの(変更後の名前が宛名になっている手紙など)を提出することが多いようだ。また、名前の変更の手続きそのものに必要とされているわけではないが、トランスジェンダーの場合には基本的に診断書を提出する。 さて、住所変更は手術要件がなくなった場合の性別変更に比べて極めて容易だと言えるだろう。名前の変更はどうだろうか? 仮に提出する書類がまったく同じになったとしても、裁判において性別の変更のほうが名前の変更より緩い基準で認められるようになるというのは考えにくく、せいぜい同じくらいの基準になるか、性別変更のほうが厳しい基準になるかだろう。性別変更のほうが名前変更と比べて一方的に容易になると考える理由は見いだせない。 従って、住所変更や名前変更は特例法が改正された場合の性別変更と同程度かそれ以上に容易だと言える。では、住所変更や名前変更はどのくらい悪用されているだろうか? また、住所変更や名前変更の悪用を理由に、住所変更や名前変更の手続きの撤廃を求める意見はどのくらい出ており、どのくらい受け入れられているだろう? 個人的な印象としては、そのような意見は聞いたことさえない。 惑わされないで 問題は、①「特例法が改正されれば、性別変更が容易になる」と②「性別変更が容易になれば、それを悪用する者が現れる」の「容易」が同じ基準に基づいているか、ということだった。①は明らかに特例法に手術要件が含まれる場合と含まれない場合の比較だが、②はどうだろうか? 手術要件がなくなったところで性別変更が名前や住所の変更ほど容易にはならないのだから、①と同じ比較基準のもとで特例法についてのみことさらに悪用を懸念するのは不合理だ。 おそらく、②を正しいと考えるひとは、これとは異なる基準を用いているのではないだろうか。役所で紙切れ一枚に「女性/男性として暮らします」と記載してハンコを押して提出するというくらいの手続きを考えているならば、確かにそれは悪用されるかもしれない。だがそうした基準を想定するならば、①と②から「特例法が改正されれば、それを悪用する者が現れる」は導けなくなる。「クロは大きい」と「大きいと家に入らない」から「クロは家に入らない」を導くようなもので、基準がまるで違うからだ。 それにもかかわらず、「特例法改正で性別変更が容易になると、それを悪用する者が現れる」と一文にまとめてしまうと、「容易」がひとつになったせいで、特例法改正に関わる「容易」と悪用に関わる「容易」がまるで異なる基準の話であることが隠蔽(いんぺい)されてしまう。結果的に、「特例法改正で性別変更が容易になる」の自明な正しさが、「すると悪用する者が現れるから特例法は改正すべきでない」という本来ならそこから導かれない結論を導くのに用いられてしまうのである。 このレトリックは、少なくとも不誠実だ。 「容易」やそれに類する言葉をこうした話題で用いるならば、それが何を基準にした「容易」なのかを明示すべきだろう。そしてまた、私たちはこうしたレトリックに惑わされないよう注意を払わなければならない。誰が見ても明らかに間違っている前提から得られた結論には、多くのひとは納得しない。けれど、見たところ正しそうな前提から導かれた結論には、その導出が誤ったロジックに基づいていたとしても、うっかり納得してしまうことがある。トランスジェンダーだけではない。女性について、その他のさまざまなマイノリティーについて、こうした怪しいロジックがしばしば登場する。人権にかかわるような話題においては、「本当にその前提からその結論が出るのか?」を問い続けるべきだろう。(哲学者・三木那由他=寄稿) みき・なゆた 1985年、神奈川県生まれ。哲学者、大阪大学大学院講師。専門はコミュニケーションと言語の哲学。単著に「言葉の風景、哲学のレンズ」「言葉の展望台」(講談社)、「会話を哲学する」(光文社)、共著に「われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット」(現代書館)など。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
宮沢賢治は鉄路で嘆き、悲しみ、問い続ける 妹は死後どこへ行ったか
現場へ! 「銀河鉄道」100年後の旅③ 〈こんなやみよののはらのなかをゆくときは/客車のまどはみんな水族館の窓になる〉 1923年8月1日。 詩人・宮沢賢治は、故郷の花巻から樺太へと向かう東北線の車内の様子を、詩「青森挽歌(ばんか)」の出だしでそう表現している。キラキラとした「銀河鉄道の夜」の描写と重なる。 一方で、前年に最愛の妹トシを亡くした悲しみが消えない。 賢治は、妹が死後、どこに行ったのか、今どこにいるのかを知りたがっている。 〈あいつはこんなさびしい停車場を/たつたひとりで通つていつたらうか/どこへ行くともわからないその方向を/どの種類の世界へはひるともしれないそのみちを/たつたひとりでさびしくあるいて行つたらうか〉 〈とし子はみんなが死ぬとなづける/そのやりかたを通つて行き/それからさきどこへ行つたかわからない〉(青森挽歌) 青森に到着し、函館へと渡る青函連絡船の船上で、海面を跳ねるイルカを見る。彼はその情景を「銀河鉄道の夜」の初期形に盛り込んでいる。 旅路の詩 「胸が締めつけられる」 でもやはり、妹のことが忘れ… この記事は有料記事です。残り835文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「心優しき死神」のうそと約束 女性を殺害するまでの「空白の1日」
「心優しき死神(しにがみ)でありたい」 ツイッター(現X)のプロフィル欄にそう記した男(54)は、SNSで知り合った大学生の女性(当時22)から依頼され、女性を殺害した罪などで起訴された。 8月に札幌地裁であった初公判。白髪まじりの短髪に眼鏡をかけ、ジーンズ姿で出廷した無職の被告は、嘱託殺人や死体損壊罪などの起訴内容に間違いがないかを問われ、「ありません」と答えた。 検察側、弁護側双方の冒頭陳述や、被告人質問などをもとに、事件の経緯をたどる。 被告は高校を卒業した1987年、陸上自衛隊に入隊した。上司とのトラブルをきっかけに93年、自衛隊を辞め、営業職やタクシー運転手などの仕事をしたが、2015年に失業。17年からは心療内科に通院するようになった。 「#死にたい人とつながりたい」 「#自殺」 「同じような病気の人と話したい」と考え、ツイッターのハッシュタグで検索しては、投稿者十数人とやりとりをした。自殺を手伝う具体的な方法を提案したこともあったが、いずれも相手が思いとどまるなどし、実現することはなかった。 そんな中、昨年9月上旬、一つの投稿が目にとまった。 「殺してください」 被害女性の投稿だった。 被告が「いいね」をつけると… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
指定暴力団極東会系の組トップを逮捕 博物館近くで事務所運営の疑い
福冨旅史2023年12月6日 13時56分 禁止された区域で暴力団事務所を運営したとして、警視庁は指定暴力団極東会傘下組織の松山連合会会長の宮田克彦容疑者(76)=住居不詳=ら暴力団組員6人を含む男女計8人を東京都暴力団排除条例違反の疑いで逮捕し、6日に発表した。認否は明らかにしていない。 暴力団対策課によると、8人は共謀して2022年8月ごろ~23年11月25日、東京都新宿区内で、条例で定める禁止区域である博物館から200メートル以内の地区で、極東会の3次団体の事務所を運営した疑いがある。 22年10月、指定暴力団住吉会傘下組織に対する別事件の捜査過程で、極東会傘下組織の事務所に関する書類を発見。その後に逮捕容疑となった事務所を捜索し、ちょうちんや綱領が見つかり、定例会合が開催されていることも確認したという。 同条例では、学校や図書館などから200メートル以内に事務所を開設したり運営したりすることを禁じている。極東会の構成員数は約350人で、勢力範囲は1都12県(いずれも22年末現在)。(福冨旅史) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「申し訳ございませんという言葉しか出ない」 青葉被告が謝罪の言葉
36人が死亡した2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判第21回公判が6日、京都地裁であった。検察側の被告人質問で、遺族や負傷者らの意見陳述が行われたことを踏まえ、「声を振り絞ってお話しした人たちに思うことはありますか」と尋ねたのに対し、青葉被告は「申し訳ございませんでしたという言葉しか出てきません」と述べた。 今年9月に始まった裁判で、青葉被告が謝罪の言葉を口にしたのは初めて。検察側が現在の心境を聞いた質問には「自分より苦しんでいる方がまだいるという気持ちです」と述べたほか、「子どもがいらっしゃる方もいて、重く受け止めないといけないと考えている。やはり申し訳ありませんでしたという形にしかなりえないと思います」とした。 さらに検察側が「そういった… この記事は有料記事です。残り273文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
神奈川県HPの4700ページが「リンク切れ」か 県議が独自に調査
増田勇介2023年12月6日 9時50分 神奈川県のホームページの1割近くで、リンク先のページに移ることができない「リンク切れ」が生じているとみられることが5日、わかった。県のホームページは公開してから1年経つと原則非公開にする運用にしており、その結果リンク切れが多発しているという。 この日の県議会一般質問で織田幸子氏(公明)の質問に答えて明らかにした。織田氏は独自に調査会社に依頼してリンク切れが一定数以上あることを把握したとして、「(年齢や障害にかかわらず情報を得られる)ウェブアクセシビリティー以前で、最低限対応しておくべきこと。県のHPの価値を毀損(きそん)し、情報発信の姿勢が問われている」と指摘した。 黒岩祐治知事は、県のHPの計約5万3千ページのうち約9%にあたる約4700ページについて「リンク切れの可能性がある」と答弁。「詳細な調査をして修正を行っている。今後もチェックを行いリンク切れページを解消する」と釈明した。県によると、県が関係する外部サイトの4310ページについても同様にリンク切れの可能性があるという。(増田勇介) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
高齢化進む町の職員、ミカン農家で副業OKに 土日祝のみ・週8時間
「年中みかんのとれるまち」をキャッチフレーズに掲げる三重県御浜町は今年から、職員がミカン農家でアルバイトできる副業制度を導入した。県内の自治体では初の制度。少子高齢化が進む中、農繁期の人手不足を補うと同時に、職員が町の基幹産業の現場を知ることなどが狙いだ。 「自然の中で働くのは気持ちいい」 「一番大事なのは2度切りする時に傷をつけないこと。ていねいにね」 11月下旬の土曜朝。御浜町との境にある熊野市金山町のミカン畑で、寺西勉さん(59)が一緒に収穫作業をする稲葉光希さん(22)に声をかけた。専用のハサミでミカンを枝から切り離し、さらにヘタぎりぎりまで枝を切り落とす。それを2度切りという。 稲葉さんは今春入庁した町企画課の職員だ。この日が収穫作業のアルバイト2日目。「慣れてはきたけれど、木に登って高い所のミカンを取ったりするのはまだ難しい。経験を積めばもっと早く作業ができるようになると思う」。ミカン農家のことをよく知らないので、仕事にも役立つだろうと副業制度を利用。「バイトと言うより勉強ですが、自然の中で働くのは気持ちいい」と笑顔だった。 御浜町在住の寺西さんは町内と熊野市でミカンを栽培している。6カ所ある園地は計約1・8ヘクタール。ふだんは夫婦2人だが、農繁期は手が回らない。「近所の人や知人らがパッと来てくれればいいが、人手不足で難しい。稲葉さんが来てくれて助かっています」 内規を策定、公務員の許可制副業に道筋 町の人口は約8千人。町によると、約4100世帯のうち約500世帯がミカン農家で、このうち専業農家の平均年齢は約72歳と超高齢化している。特に農繁期の人手不足は深刻だ。 職務専念義務がある公務員の副業は法令で制限されているが、町は3月に「町職員の柑橘(かんきつ)栽培の副業」に関する内規を策定し、許可制の副業に道筋をつけた。同様の制度を導入している和歌山県有田市の取り組みを参考にしたという。 内規には「本業に悪影響を及ぼさないよう注意しながら取り組む」と明記。副業の期間は収穫が集中する9~11月とし、土日・祝日に限定した。週8時間以内、月30時間以内などの制限も設けた。農家が負担する賃金は県の最低賃金以上、町内の農家なら園地は近隣の熊野市や紀宝町でもいい。 「期間を通年にしてほしい」要望も 制度の運用では、JA伊勢無… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ご飯まだ?」 父のひと言に「もやもや」 高2のジェンダー川柳
黒田陸離2023年12月6日 10時51分 性別による決めつけへの「もやもや」を表現しようと、広島県が初めて実施した「ちぃともやもや ジェンダー川柳コンテスト」の授賞式が5日、広島市内であり、最優秀賞に武田高校(東広島市)2年の長尾奏来(そら)さんの句が選ばれた。1649句の中から受賞した句は、県の啓発活動などで活用するという。 「ご飯まだ? 帰った時刻 同じだよ」 共働きの両親を持つ長尾さんは日ごろから、くつろぐ父が母にかけるひと言が気になっていたという。審査員長を務めた県立広島大の上水流(かみづる)久彦教授は「気持ちをストレートに表していて、家に帰って座ってテレビをつけている父親へ鋭い刃物をぱっと見せるような句」と高く評価した。 審査員の選考とは別に、入賞した30句から最も共感する句を選ぶ一般投票でも、663票中82票を集めて1位となった。長尾さんは「みんな同じことを思っていることにびっくりした。大人になる頃には、男性も女性もお互いをもっと尊重できる社会になってほしい」と話した。 このほか、優秀賞には「『手伝うよ』 じゃのぉて一緒に やりますじゃ」と「色眼鏡 押し付けられて 押し付けた」の2句、審査員賞には「理系です 『女なのに?』は 余計です」と「早帰宅 見送る上司の 子は3歳」の2句が選ばれた。(黒田陸離) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Think Gender 男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
対馬市議の「核ごみ」視察は条例違反 NUMOが反論「重要な活動」
2023年12月6日 6時30分 原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の受け入れをめぐり、長崎県対馬市の政治倫理審査会が、最終処分事業に関わる原子力発電環境整備機構(NUMO)による視察旅行に一部の市議が参加したのは、市政治倫理条例違反にあたるとする調査報告書をまとめた。NUMOは5日、国民理解の増進のため「重要な活動」とする談話を出した。 市が4日に公表した報告書によると、市議13人が2021年10月~今年4月、北海道や青森県六ケ所村の最終処分関連施設の見学に参加したとされる。交通費や宿泊費をNUMOが負担し、食費は議員の個人負担だったという。 政倫審は施設見学の費用負担は財産上の利益供与であると判断。「政治的または道義的批判を受けるおそれのある寄付にあたる」と結論づけた。 9月下旬に、市民から「企業団体などからの寄付および金品の授受にあたる」として調査請求があった。 これに対し、NUMOは5日の談話で、最終処分法に基づく政府の基本方針で、「国民理解の増進のため、研究施設等を活用した学習機会の提供等を積極的に実施する」とあることから、「地層処分事業に関心を有する方々であれば、どなたでも関連施設の見学の機会を提供している。当機構の重要な活動」と主張。 「これに伴う必要な費用の支出は、事業を実施する上で不可欠と考えている」とし、施設見学などの事業を続ける考えを示した。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
84歳女性、「2億円」を故郷に寄付 「教育のため」亡き夫と共に
福田祥史2023年12月6日 7時23分 子どもたちの教育に役立てて欲しいと、元教員の女性が茨城県稲敷市に2億円相当の株式証券を寄付した。亡くなった夫とともに教員として長く勤めた地域に、恩返しがしたかったという。 千葉県成田市の長谷川淳子(あつこ)さん(84)は現在の稲敷市内出身で、養護教諭として市内東地区や桜川地区の小中学校で勤務した。寄付は今年1月に87歳で亡くなった夫の義賢(よしかた)さんが言い出した。義賢さんも教諭として両地区の小学校で長く教えた。 市教育委員会によると、昨年10月に長谷川さん側から寄付の意向が伝えられ、受け入れに向けて動き出した。まもなく、義賢さんの体調が悪化し帰らぬ人となったが、相続した長谷川さんから今年11月8日に株式が市へ寄贈され、同14日に現金化したという。 長谷川さんによると、義賢さんには、自分が経済的に苦労しながら学んだ経験や、より高い教育も受けたかったとの思いがあり、「大学院や難関大学をめざす子どもたちの役に立てれば」と話していたという。ただ、長谷川さんは使い道については、「私は大学院にこだわらなくていいと思っている」と話す。 市は全額を基金にして、奨学金などに充てるため、必要な条例と予算を5日開会の市議会定例会に提案。来春をめざして具体的な貸与の要項などを決める。 今月1日にあった寄贈式では、筧信太郎市長が長谷川さんに、「大変ありがたい。稲敷の子どもたちが立派に学べるよう、援助していく」と感謝の気持ちを伝えた。(福田祥史) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル