特殊詐欺の受け子として逮捕・起訴されたトモヤ(仮名、21)。保釈まで2カ月半近くかかった。 「出てこられたけれど、決して許されたわけじゃないからね」 警察署に迎えに来た父のヒロユキ(仮名、48)は、厳しい言葉をぶつけた。 「ごめん」とうつむくトモヤ。 逮捕後も何度か接見したが、直接会うのは21回目の誕生日を祝ったあの夜以来だった。 息子への失望、怒りは消えない。 それでも、帰ってきたことはうれしかった。 2人で車に乗り込んだ。フロントガラスの向こうには、北陸特有の灰色の雲が広がっていた。 特殊詐欺の被害に遭ったのは記者(28)の祖母(81)でした。連載の第6回は、「受け子」として逮捕された21歳男性の父の視点から描きます。 トモヤは、たばことパチンコをやめた。やったことのなかった家事も積極的にこなすようになった。大学は自主退学となったが、資格の勉強を始めた。 息子の変化を、ヒロユキは感じとった。 トモヤの2回目の公判。 スーツ姿のヒロユキは証言台に立ち、宣誓した。隣でトモヤがつばを飲んだ。 弁護人が尋ねる。 「事件を聞いてどう思いましたか」 「妻から聞いて、まさかと思いました」 「なぜそう思ったのですか」 「私からしたら、口数は少な… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
不登校を経験した過去の自分を胸に 葉山町長がめざすいろんな選択肢
全ての子どもが一緒に学ぶ教育に取り組む大阪市立大空小学校初代校長の木村泰子さんを招いたシンポジウム「インクルーシブな楽校(がっこう)づくりのために」が3月、神奈川県葉山町で開かれた。インクルーシブ(包摂的)教育に力を入れる葉山町が、町全体で一緒に考えようと企画し、教職員や地域住民ら約200人が熱心に耳を傾けた。 大空小は学校と地域が協力しながら、不登校や発達障害など特別な支援が必要な子も、そうでない子も、みんなが同じ教室で学ぶことで知られる。木村さんは初代校長を2006年から9年間務め、同校に密着したドキュメンタリー映画「みんなの学校」(14年)は大きな話題を呼んだ。 暴れる子には「何困ってるん」 シンポジウムの前に上映されたこの映画では、教室を出ていく子を教員が追いかける場面や、友達に暴力をふるってしまう男児の姿も出てくる。児童にきつい言葉を投げかけた教員を木村さんが厳しく戒める姿を含め、ありのままが記録されている。 「自分は大空小で大きく変えてもらった」と木村さん。いじめられたり、不登校のレッテルを貼られたりして困っている子どもたちに接して、「子どもを変えることではなく、大人が変わることがスタートだった。教師の仕事は子どもを教えるプロではなく、学びのプロになること」と振り返った。意識の変化で、暴れてしまう子どもへの声かけは、「暴れるな」「迷惑やで」ではなく、「大丈夫か」「何困ってるん」「私にできることあるか」に変わっていったという。 「地域住民は変わらない」 会場から「いまの大空小はどうなっていますか?」と質問が寄せられたが、木村さんは「全ての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことだけ引き継いだ後は、大空小に行っていないという。理由は「過去の人間が、奮闘している今の場所に行っても何の役にも立たない。1秒先の未来は変えられるが、過去を引きずったら何もいいことはない」から。一方で、教職員や児童が入れ替わっても地域住民は変わらないことに触れ、「土と同じで耕し続けられる」。「葉山で生きている全ての子どもの学びを保障する学校をつくること。全ての人が、葉山の学校をつくる当事者になることが大事」と強調した。 約1時間半のシンポジウムの様子は町のホームページの「催し・行事」からアクセスでき、4月30日まで公開されている(https://www.town.hayama.lg.jp/event/14824.html)。 町長「自分も過去に…」 この日、山梨崇仁町長(47)が、町の教員や教育長らと一緒にパネリストとして登壇した。町民らを前に「自分も過去に学校に行けなかった時期があった」と明かし、「(木村)泰子先生のような人があの時いたらと、すごく思いました」と語った。日を改めて思いを聴いた。 ――不登校だったのはいつごろですか。 都内の小学校に通っていた5… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
中学受験「合格も不合格も経験したほうがいい」 専門家のアドバイス
中学受験の動向に詳しい首都圏模試センター(東京)の北一成さん(63)に近年の傾向や合否結果の受け止め方、学校選びの視点について聞きました。 2024年の中学受験 予想より高い受験率 2024年に首都圏の私立・国立中学を受験した小学6年生は、推計で昨年より約200人少ない約5万2400人でした。模試の受験者数を根拠にもっと減ると予想していましたが、減り幅が思いのほか小さかったのは依然として中学受験率が高い証左です。 受験者数は昨年まで9年連続で増え続けています。近年、増えた背景にはコロナ禍の影響があります。政府が、全国の公立小中学校などに20年3月2日からの一斉休校を要請したとき、私立では3月1日からオンライン授業を始めた学校もあり、遅くとも5月の連休明けにはほとんどの学校がオンライン授業をしていました。一方、公立は一部を除いて多くの学校が対応できず、子どもの学びを止めなかった私立への評判が保護者の間で高まりました。 首都圏の中学受験は1月の埼玉、千葉に始まり、2月初旬の東京、神奈川と1人あたり2~5校、平均7回ほど受験の機会があります。模試の平均偏差値より4~8ポイント高い学校にチャレンジする子も多くいます。 第1志望に合格できるのは3分の1? 正確な統計ではありませんが、受験者の3分の2が第1志望には合格しないといわれます。はじめから「3分の2は第1志望に受からなくて当たり前」くらいのつもりで臨んだ方が気分的には楽です。 中学受験の失敗を思い詰めるのは、子どもじゃなくて親の方なんです。わずか12歳で、第1志望に受からなかったからもうダメだなんて思うこと自体が、教育として間違っていると思いませんか。 むしろ、複数校を受験して合格と不合格の両方を経験した方がいい。もちろん合格したら「努力の成果が実った」と自信を持てばいいし、不合格でも、高い目標を持ってがんばったけど届かなかったということをしっかりと自分で受け止め、中高6年間で努力していく方がずっと大切です。長い目でみて、中学受験で不合格を経験した子の方が強いと思います。逆に挫折を知らずに社会に出る方が怖いですよね。 とにかく親が結果を引きずら… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
能登半島で遺族の涙に頭を下げた いたたまれない心に返された言葉
能登半島地震の発生から1カ月近く経った時期に、石川県の被災地を10日間ほど取材した。 現地取材班の一員として、遺族にも会った。地震の痛みや怖さを多くの読者に伝えるためだと理解はしていても、足取りは重い。 2月1日の朝、七尾市の能登島で、同居していた父親を亡くした60代の男性に話を聞いた。玄関で立ち話をしていたら、「寒いから中に入りな」と、暖房がきいた居間に招き入れられた。その床はゆがみ、水平を保ってはいなかった。地元で捕れる魚についてなど、世間話をしているなかで、地震で建物の下敷きとなった90代の父親の話になった。 地域が混乱を極めていた頃で… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
機能性食品、被害報告をルール化 違反なら販売不可 政府検討
朝日新聞デジタルに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。Copyright © The Asahi Shimbun Company. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission. Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
北海道ワースト6位 信号ない横断歩道で7割止まらず JAF調査
信号機がない横断歩道を歩行者が渡ろうとしているとき、車が一時停止するかどうかを日本自動車連盟(JAF)が調べたところ、北海道内の一時停止率は2023年までの6年連続で3割未満だった。6日から春の全国交通安全運動が始まっており、道警は取り締まりを強化している。 道路交通法は、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているとき、車は一時停止しなければならないと定めている。しかし、横断歩道上の歩行者がはねられて死亡する事故は道内でも後を絶たない。 JAFはこうした事故を減らすため一時停止率を把握しようと、16年から信号機のない横断歩道を対象に調査を始めた。18年から都道府県別の結果を公表している。 例年8~9月ごろの平日、各都道府県で2カ所ずつ(場所は非公表)で実施。JAF職員が横断者となって調べている。 その結果、全国では平均8・6%(18年)から、45・1%(23年)へ上昇した。 一方、北海道は23年、全国… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
カンニング後に「ひきょう者」と指導され高2自殺 両親が学校を提訴
仏教系の進学校として知られる私立清風高校(大阪市天王寺区)の男子生徒(当時17)が試験でカンニング後に自殺したのは、教師の不適切な指導が原因だとして、両親が8日、運営法人「清風学園」に計約1億円の賠償を求めて大阪地裁に提訴した。 訴状によると、男子生徒は2年生だった2021年12月、期末試験でカンニングをして試験監督に見つかった。別室で事情を聴かれた際、教師からカンニングはひきょう者がやることだと叱責(しっせき)された上、「全科目0点」「自宅謹慎8日」「写経80巻」「反省文作成」などの処分を受けた。生徒は2日後、自宅近くで死亡しているのが見つかった。 訴状で両親側は、同校が日頃からカンニングはひきょう者の行為と生徒に指導していたとして、「今後の学校生活で周囲からひきょう者と思われる恐怖心を感じたことがきっかけ」と指摘。さらに「大量の課題で冷静な判断能力を失わせて自死させた」として、学校側の安全配慮義務違反を主張している。 生徒の自死後に学校側が設置した第三者委員会は、学校側の指導と自殺との因果関係を否定したが、両親側は生徒にアンケートを行っていないなど第三者委の調査は信頼できないと訴えている。 学校側は「訴状が届いていないので、現時点ではコメントできない」としている。(山本逸生) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「左右見て渡ろう」入学式の日、小学生が訓練 死傷事故、7歳が最多
東京都内各地で入学式があった8日、文京区立根津小学校(同区根津1丁目)では新1年生と保護者らが、警察官から横断歩道の渡り方を学んだ。緒方禎己警視総監は「信号が青になってもすぐに道路に飛び出してはいけません」と呼びかけた。 この日入学した新1年生は、青信号を確認し、左右を確認してから手をあげ、緒方警視総監と一緒に横断歩道を渡った。若松杏香(ももか)さん(6)は「左右を見て渡ることとか勉強になった。いっぱい友達をつくって一緒におうちに帰りたい」と話した。 警視庁交通総務課によると、都内の交通事故による今年の死者は7日時点で39人(昨年同期比12人増)。歩行者が20人と半数を占める。 昨年までの過去5年間に、都内の交通事故で死傷した2万4541人を年齢別でみると、7歳が446人と最多で、434人の8歳が続いた。自宅近くで車道へ飛び出す事故が多いといい、担当者は「道を渡るときは左右の確認を徹底してほしい」と話した。 警察庁によると、全国の交通事故による今年の死者は624人(7日時点)。都道府県別でみると、東京と千葉が39人で最も多く、愛知37人、兵庫31人と続いた。(御船紗子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
新しい門出に誓う「私たちはくじけません」 能登・輪島高校で入学式
能登半島地震の被害があった石川県の奥能登4市町を含む県内の公立高校で8日、入学式があった。同県輪島市の輪島高校では、集団避難を終えて、地元に戻った新入生76人が、青いコチョウランのコサージュを胸に着けて、桜の咲く校内で入学式にのぞんだ。 例年、大型の第一体育館で在校生らも出席して行ってきたが、地震の影響で床板がゆがみ、小型の第二体育館の2階で保護者と教職員、新入生らでの縮小開催となった。1階は、現在も地域住民らの避難所として使われているという。 平野敏校長は式辞で、新入生らが胸に着けた青いコチョウランの花言葉にちなんで、「めったにない災害を経験したが、愛情と尊敬をもって歩んでもらいたい」と述べた。 新入生代表の高橋惺(さとい)さんは、「避難先で不自由な生活をしている仲間がいます。しかし、私たちはくじけません」と宣誓し応えた。(金居達朗) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
福島第一原発、処理水放出4回でタンク貯水量1.9万トン減
東京電力は8日、福島第一原発の処理水の海洋放出によって、同原発のタンク貯水量が放出開始時点から約1万9千トン減り、約132万6千トン(今月4日時点)になったと発表した。同原発には1千基超のタンクがあるが、減少量はタンク19基分に相当するという。 東電は昨年8月に処理水の海洋放出を開始。4回に分け、タンクの水計約3万トン分を大量の海水で希釈しながら海に流した。ただ、この間も溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)が残る建屋に雨や地下水が入り、汚染水が増加。大半の放射性物質を除去できる「多核種除去設備(ALPS(アルプス))」に通したうえでタンクにためているため、減少分は約1万9千トンだったという。(福地慶太郎) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル