小学校に上がる前、母に連れられて母の実家によく行っていた。座敷には囲炉裏があり、頑固そうな顔をした曽祖父がいつも同じ場所に座っていた。怖い印象しか記憶に残っていない。 岐阜県下呂市萩原町四美にあるエドヒガンザクラの「岩太郎のしだれ桜」。近くに住む桂川幾郎さん(74)は、十数年前に桜の名所になって初めて曽祖父が植えた桜と知り、驚きとともに親近感を覚えた。 以前、叔父から聞いた話によると、明治時代の中ごろ、若かった曽祖父の松井岩太郎さんが、自転車で30キロ離れた村まで蚕の卵を売りに行った。その帰り道にお寺でしだれ桜の苗を手に入れ、自転車の荷台に縛りつけて持ち帰ったという。「風流を解するようには見えなかった人が桜の木を植えたとは」 それから130年以上。高さ約15メートル、幹回り約3メートルの巨木に成長した。斜面から市道に幹が張り出し、トンネルのように枝が垂れ下がる。 今年も威厳のある花を咲かせた岩太郎桜。昨年100歳を迎えた母貞子さんと一緒に眺めた。「みんなに喜ばれるいいものを残してくれた」 長い時を越えて、子孫と地域を見守り続けている。(溝脇正) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「現実を直視して!」訴えた万博事務方トップ 建設遅れるパビリオン
開催まで残り1年に迫る大阪・関西万博。しかし、万博の目玉となるはずの海外パビリオンの建設は、今も遅れている。その背景には何があるのか。運営主体である日本国際博覧会協会(万博協会)の関係者らの証言をたどると、たとえ万博の魅力が薄れてでも開幕に間に合わせようと奔走する協会幹部らの姿が浮かぶ。 今年3月中旬、東京都内で開かれた万博協会の理事会。関係者によると、会議の終盤、ある理事がこう問いただした。 「『タイプA』の話だが、(建設)事業者が決まっていないところが20くらいある。これは(開幕に間に合わせるのが)少し難しくなってくると思う。協会としてどのように動いていくか、具体的に考えてほしい」 これに対し、協会の担当者は「課題を精査しながら検討を進めていく」などと応じただけだったという。 タイプAとは、海外の国・地域が独自に設計・建設するパビリオンだ。最新の技術で造りあげる建築物自体が来場者へのメッセージとなり、「万博の華」とも呼ばれる。 1970年の大阪万博では、「月の石」を紹介したアメリカ館や、ソ連館などがタイプAで、今も万博に通った人々の記憶に残っている。 タイプAの建設には、時間も各国の費用もかかる。2005年愛知万博の海外パビリオンは、協会がプレハブ工法で箱形の建物を建てて引き渡す「タイプX」だった。だが今回、半世紀を超えて再び大阪で開かれる万博では、タイプAの導入を決定。当初60カ国(56施設)が出展を予定していた。 海外パビリオンの建設遅れが顕著になるにつれ、焦りを深めていく関係者たち……。記事の後半ではこの間の政府や万博協会、ゼネコンの対応と本音を、関係者の証言からひもといていきます。 しかし、前回のドバイ万博の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
国が丸投げしたローカル線の将来 「福祉政策として割り切る」発想を
鉄道に投じられる国費は、道路の20分の1に過ぎません。そんなアンバランスな現状に対し、青山学院大学教授の高嶋修一さんはローカル線の維持について「国が福祉政策として思い切ってやるべきだ」と言います。鉄道のあるべき将来像を尋ねました。 地方路線は戦前から、鉱山の輸送やダム建設など特定の役割でもない限り、採算が取れないと分かっていました。それでも当時は道路網が脆弱(ぜいじゃく)で、生き残れた。国鉄で問題が表面化したのは、1960年代後半からです。 国鉄本体の赤字額が増え続け、80年に国鉄再建法ができました。このころ、ほかの問題から国民の目をそらすかのように、「赤字の根源」だと印象づけるような形で、地方路線の問題が再び取りざたされました。 採算の取れない地方路線が選… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
【写真まとめ】天皇、皇后両陛下、ヘリで穴水町へ 能登被災地を再訪
天皇、皇后両陛下は12日、能登半島地震の被災地をお見舞いするため、日帰りで石川県の穴水、能登両町を訪問しています。 この日午前、羽田空港で関係者の見送りを受け、特別機に搭乗しました。機材トラブルで予備機に乗り換えたため、約1時間遅れての離陸となりました。 同県輪島市の能登空港到着後、自衛隊のヘリコプターで穴水町へ移動しました。 両陛下は3月22日にも輪島、珠洲両市を訪れ、被災地をお見舞いしています。 この日と前回の訪問の様子を写真でお伝えします。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「入学者の性別大きな偏り」東大入学式で藤井総長 今年度女性は2割
植松佳香2024年4月12日 13時57分 東京大学の入学式が12日、日本武道館(東京都千代田区)で開かれた。新入生約3千人と、その家族らが出席。式典の様子はインターネットでも配信された。 藤井輝夫総長は式辞で、物事を「多次元的」に捉える姿勢の重要性や、構造的差別を断ち切る必要性を強調。「多くのひとと出会い、多様な知に触れることで、解決すべき問題の多次元性に思いをはせ、よりよい社会の実現に向け、それぞれの力を発揮していただきたい」と述べた。 式辞では、多様性を巡る東大自身の現状にも触れ、「東京大学の入学者の性別には、大きな偏りがある。女性をはじめ多様な学生が魅力を感じる大学であるか、多様な学生を迎え入れる環境となっているかも、問わねばならない」と述べた。 東大では長く、全学部生に占める女性の割合が20%を超えず「2割の壁」と呼ばれてきた。学生における女性比率を30%にすることを目標に掲げるが、学部生の女性割合は2022年度に初めて2割を超えた。今年度の学部入学者3126人に占める女性の割合は、20・7%だった。 来賓の祝辞では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補に昨年選ばれた外科医の米田あゆさんが登壇。「好奇心を持って新しい一歩を自分で踏み出し、感じ、学んだ経験を大切にしてください」とエールを送った。 米田さん自身は、東大でヨット部に入部したことが新たな一歩だったといい、ヨット部での経験が、宇宙飛行士候補者選抜試験の閉鎖環境での共同生活に役だったという。「未体験や未開拓の地に足を踏み入れた経験が次の新しい一歩を踏み出す原動力となるはず」と述べ、「一歩を踏み出して挑戦を続けていってください。一緒に頑張っていきましょう」と締めくくった。(植松佳香) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
謎に包まれた古田織部「天下一の隠し大窯」 なぜ福岡・直方に
安土桃山時代に革新的な創作茶陶を世に出した武将茶人・古田織部。その作品は美濃や備前など名だたる産地で焼かれたが、京から遠く離れた福岡にも重要な生産拠点があったことが、近年の調査で分かってきた。(遠山武) 織部は、茶の湯を大成した千利休の第一の弟子とされた人物。均整美が求められていた茶道具の焼き物の常識を打ち破り、ゆがみを加え、奇抜な紋様を描かせた作品を職人らに作らせ、「織部好み」と呼ばれて人気を博した。 その織部の「天下一の隠し大窯」との伝承が残る窯が、福岡県直方市にあった。 それが「内ケ磯(うちがそ)窯」だ。 福岡藩初代藩主・黒田長政の… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
富士山で「スラッシュ雪崩」 カメラがとらえた勢いよく流れる様子
静岡県内で強い雨が降った9日午前、富士山西側の大沢崩れ付近で、水を含んだ雪が土砂を巻き込んで流れる「スラッシュ雪崩」が起きたことが、関係者への取材で分かった。 国土交通省富士砂防事務所によると、雪崩が最初に確認されたのは同日午前8時20分ごろ。大沢崩れの標高2千メートル付近に設置されたカメラがとらえた。雪崩はその後、断続的に昼ごろまで続いたという。雪崩に含まれた土砂は標高800メートル付近にある砂防施設の大沢川遊砂地で止まり、下流の住宅などに被害はなかった。 スラッシュ雪崩は、積もっている雪に雨などが降って水分量が増え、土砂と一緒に流れ下る現象。富士山では多いときには年数回、3~5月ごろに起きるという。 富士山では8~9日にかけ雨が降り、9日午前8~9時の1時間には23ミリの強い雨が観測されていた。同事務所で雪崩の規模などを調べている。(菅尾保) 【動画】富士山で起きたスラッシュ雪崩の様子=国土交通省富士砂防事務所提供 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
天皇皇后両陛下、特別機トラブルで予備機に 能登半島地震被災地再訪
天皇、皇后両陛下は12日午前、能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県穴水、能登両町を訪れるため、羽田空港を出発する。両陛下は3月22日にも同県輪島、珠洲両市で被災者を見舞っており、2度目の訪問となる。 羽田空港で特別機に乗り込んだ後、機材トラブルが発覚。両陛下は予備機に乗り換えて現地に向かう予定。 今回の訪問も日帰りで、両陛下は能登空港(輪島市)に到着後、自衛隊ヘリで両町に移動する。町長から被災した地域の状況の説明を受けたり、被災者の声に耳を傾けたりする。(力丸祥子) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
パイロットの父支えたい 海上保安学校で入学式、「整備コース」新設
京都府舞鶴市の海上保安学校で11日、入学式があり、336人が新たな一歩を踏みだした。今年から整備士を育成する「整備コース」が新設され、5人が入学した。 式では、新入生の名前が1人ずつ呼ばれた後、入学生総代の新垣海天さん(18)が、「国民の期待に応えられる海上保安官を目指して努力する」と力強く宣誓。川上誠校長は「大しけでも遭難者に届くような大きな声を出せるようになることから始めてください」と述べた。 同校によると、整備コースは、飛行機やヘリの整備を中心に学ぶ。これまで整備士志望者は、卒業後に選抜されたが、なり手不足から新設したという。 同コースの新入生の鈴木理沙さん(19)は、父親が海保ヘリのパイロット。その背中を見て育ち、自分は整備する側で支えたいと思ったという。「整備は個人の技術が問われるが、チームワークの大事さも学びたい」と話した。(今林弘) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「詐欺ですよ」説得した高齢男性が再びレジに…店員ねばって被害阻止
「それ詐欺ですよ」。コンビニエンスストアの来店客に送金をとどまるよう説得したが、1週間後に客は再びやってきた。被害を防いだ店員がとった行動とは……。 11日、岐阜県美濃加茂市の加茂署。詐欺被害を未然に防いだとして、市内のローソンに勤める寺沢めぐみさん(56)に感謝状が贈られた。 寺沢さんや加茂署によると、70代男性が店に来たのは、3月20日ごろ。「電子マネーをスマホに取り込んで知人に送りたい」と寺沢さんに尋ねてきた。 事情を聴き、スマホを見せてもらうと、「りのだよー。お昼だねー」という件名のメールに「詳しいことはここをクリック」と書かれていた。男性は「これは会社の後輩。俺には分かる。世話になったからお金を送りたい」と言う。 「それは詐欺ですよ」。寺沢さんは男性を30分かけて説得。男性は帰ったという。 30分ほどの押し問答の末に… 男性が再び来店したのは約1週間後の27日。今度は「届いたメールを止めるのにお金が必要」として、電子マネーのカードを手にレジに来た。 寺沢さんは再び説得しようとしたが、男性は聞き入れない。同僚も加わって30分ほどの押し問答の末、加茂署に連絡。警察官が駆けつけ、被害を防ぐことができたという。 「地域の高齢者がスーパー代わりに立ち寄ってくれる店。被害を防げてよかった」と寺沢さん。 加茂署によると、詐欺被害者は「自分が正しい」と信じ込んでいて、説得できないことも多いという。署は「結果的に詐欺ではなかったとしても問題ないので、詐欺被害かもと思ったら迷わず110番通報してほしい」としている。(寺西哲生) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル