改正卸売市場法が21日に施行された。中央卸売市場の取引規制は緩和し、市場間の競争は激しさを増す。各地域の中小規模の卸は、地場産地との関係構築や卸同士の連携を急ぐ。事業の自由度が増した卸による商圏獲得と集荷力競争が激しくなる中、市場として存在感を示せるのか。卸売市場が生き残りを懸けた対策に動きだした。(音道洋範)
見渡す限りの水田が広がる稲作地帯の一画にタマネギ畑が姿を見せる。全国有数の米どころ秋田県大潟村でタマネギの産地化が進む。JA大潟村とタッグを組むのは、秋田市公設地方卸売市場の青果卸・丸果秋田県青果だ。米と並ぶ品目を育てたい産地と、地場産の集荷を強化したい卸の思惑が合致した。 同社は全国的に端境期の7、8月のタマネギ生産を産地に提案。JA側も稲作農家が取り組みやすいため2018年から産地化に乗り出した。現在は27の個人・法人が約40ヘクタールで栽培し、100ヘクタール規模が目標。2・5ヘクタールを栽培する埴生雄大さん(30)は「米と作期が重ならず、労働力を平準化できる」と期待する。
技術面も支援
新たな作物のため生産・販売は試行錯誤の連続だが、同社は販路開拓に加え生産面でもサポート。同社が持つネットワークを生かし他産地の栽培技術情報を提供する他、大手スーパーのバイヤーを産地に招き、販路拡大へ実需者とのパイプづくりにも余念がない。 同社が産地化から関わるのは、集荷力を高め経営基盤を強化するためだ。秋田市場の県内産青果物の割合は2割で、県外産が8割。一定量を集荷するため、受託販売に比べ利益率の低い買い付け集荷を余儀なくされている。 集荷力のある東京市場の卸の買い付け割合は36%(18年度)だが、同市場の割合は64%。集荷競争の激化で買い付けを増やさざるを得ない状況の突破口として、県内JAとの産地づくりに乗り出した。同社の高橋良治社長は「利益を出すには、自社で手掛ける商品開発が必要。法改正で環境が大きく変わる時だからこそ、産地と連携し秋田県の市場として存在感を高めたい」と強調する。 地元卸と取引する利点を産地も感じている。タマネギ相場は今春、大きく低迷した。そこで同社は産地の今後を見据え、一定価格以上で買い取る取引を提示。JAの小林肇組合長は「新興産地として買い取り提示はありがたく、生産意欲は高まった。出荷面でも秋田市場に出すだけでよく、物流コストも抑えられた」と、地元卸と取引するメリットを感じている。
他市場と連携
同社は市場間連携にも乗り出す。昨年、九州の地方卸売市場と連携を開始。冬場を中心に九州の卸が集荷した荷物を直送する。京浜市場からの転送よりも2日間の短縮に成功。鮮度の良さから、仲卸や地元スーパーからの注文が増えた。 生産基盤の弱体化や人口減による取引量の減少、施設の老朽化などの課題は、どの市場も例外ではない。多くの取引規制が緩和された法改正を契機に、大手卸が地方の実需者や産地との取引を増やそうと攻勢を強める可能性は高い。高橋社長は「産地や実需に見放されて卸売市場が埋没しないよう、足を使って荷を集め、売り込むことが一層大事」と力を込める。
日本農業新聞
Source : 国内 – Yahoo!ニュース