最新技術と証言を合わせ“過去の記録”に色をつける。戦前から戦後に撮影された白黒写真をカラー化し、1冊にまとめた写真集『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)が16日発売された。手掛けたのは、東京大学の庭田杏珠さんと渡邉英徳教授。 【映像】カラー化された当時の様々な写真 庭田さんは広島出身で、被爆者の思いの継承に関心を持つ中で出会ったのが渡邉教授だった。渡邊教授は以前から、その日にまつわる出来事の白黒写真をカラー化し、Twitterで発信してきた。 インターネット上で公開されているツール「ColouriseSG」に、実際に白黒写真をアップロードすると、あっという間に色がつく。しかし、芝生や肌の色などある程度自然な色合いには近づけられるものの、本来は水色の自転車の車体をAIはグレーだと判断したようだ。
「例えば、僕が背景画像にしている沖縄の戦前の写真。これも沖縄の伝統的な色を知らないので、AIは建物をグレーにしてしまう。写真に“こうであろう”という色をつけてくれるだけで、歴史上の知識があるわけではない」(渡邉教授)
より正確な色に近づけるために必要なのが、当時の資料や実際にその景色を見た人が持つ情報だ。庭田さんは写真の持ち主である戦争体験者と対話を重ね、記憶を引き出していった。今は平和公園になった爆心地直下の旧中島地区で実家が理髪店を営んでいた濱井徳三さんも、写真を手に話を聞くとシーンとともに当時の気持ちも語りだしたという。
「家族とご近所の方と一緒にお花見をしている写真。その白黒写真を見ながら話した時はお花見ということぐらいしか思い出さなかったものが、カラー化をして対話しながら戦前のことを聞いた時は、『長寿園』というお花見の有名な場所で家族と親戚で花見をしている写真で、近くにあった弾薬庫が幼心に怖かったとか杉鉄砲を作って遊んでいたとか、家族や友達との日常生活のエピソードが思い出されたというのがあります」(庭田さん) 対話を繰り返し実際の景色に近づけていくことで、徐々に呼び起こされていく当事者の記憶。『服の色とか覚えています?』(渡邉教授)、「服はグレーですよね。兄は黒ですからね。やっぱりあの時代は、食べるものをこぼすのでエプロンして」(濱井さん)といったやりとりをもとに、AIがカラー化した写真の色を手作業で補正していく。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース