日本が英語圏5カ国の機密情報共有枠組み「ファイブアイズ」に参加するよう促す発言が相次いでいる。影響力が増す中国に対抗する上での新たな有志連合構築の動きの一環とみられ、日本政府が進めてきた法整備で環境も醸成されつつある。ただ、日本の参加には課題もあり、欧州の自由主義諸国も含めた結束への影響を懸念する声もある。 日本のファイブアイズ参加を後押しするのはブレア元英首相だけではない。7月21日に河野太郎防衛相と電話会談したトゥゲンハート英下院外交委員長はこう述べた。「日本を入れてシックスアイズにしたい」。関係者によると河野氏は提案に前向きだったという。 英紙ガーディアンはオーストラリア議会にも同様の動きがあると報じている。河野氏は今月4日の記者会見で「ファイブアイズの5カ国は日本と基本的な価値観を共有する国だ。これからも緊密に意思疎通を図っていく」と述べた。 日本は米国だけではなく英豪両国とも安全保障協力を強化し、情報保護協定も結んでいる。インド太平洋の安定を脅かし得る中国を牽制(けんせい)するためで、日本がファイブアイズに入れば連携はより円滑となる。平成26年に施行された特定秘密保護法により機密共有に必要な環境整備も進んでいる。 ただ、日本ではスパイ行為を取り締まるスパイ防止法が整備されておらず、情報保護に不安が残る。防衛省幹部は「ファイブアイズの5カ国は英語圏だから、機微なやりとりができないのではないか」とも語る。 さらに、日本政府内にはファイブアイズを軸とした有志国連合形成に対する警戒感もある。5月にはニュージーランドを除くファイブアイズの4カ国が香港国家安全維持法(国安法)を批判する共同声明に参加を呼び掛けたが、日本政府は辞退した。「ファイブアイズだけで突っ走ると、ドイツやフランスがついていけなくなる」(外務省関係者)と判断したからだ。 トランプ米政権には独仏などを「古い同盟国」と疑問視する見方もあり、ファイブアイズを国際社会に対して影響力を行使する新たな「道具」としたい思惑も透けてみえる。一方、国際的な中国包囲網を形成するためには独仏なども巻き込む必要があるとするのが日本の立場だ。国安法に関しても、「重大な懸念」を表明する先進7カ国(G7)外相声明の取りまとめに主導的な役割を果たした。(杉本康士、田中一世)
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