宮城県女川町立女川小学校と中学校が同居する新校舎が完成し、23日に授業が始まった。東日本大震災から9年半近くを経て、校舎一体型の小中一貫校として再出発する。被災した校舎の再建としては、県内で最後から2番目になった。
「教室こっちだよ!」。夏休み明けのこの日、次々と登校した子どもたちは、真新しい廊下をうれしそうに歩いて教室に向かった。5年生の阿部ひなたさん(11)は「前の学校よりもすごく広いなあと思った。中学生と一緒に遊んだり、図書室で本を読んだりしたい」と笑顔だった。
新校舎は4階建てで、延べ床面積は約1万3千平方メートル。全教室にエアコンが設置され、屋上プールや二つの体育館、武道場、人工芝が敷かれた約1万平方メートルの校庭がある。津波に備えて約30メートルの高台に建設された。建設費は約53億円で、復興交付金約27億円やカタールからの支援金約8億円などが財源になった。
町には三つの小学校と二つの中学校があったが、2011年3月の震災による地震で建物が破損。グラウンドが仮設住宅の用地になるなど現地での再開が難しかったため、町は校舎を小中1校ずつに集約して、同4月に再開させた。
その後、町は施設一体の一貫校として中心部に移転する計画を作成。堀切山を切り崩し、18年に建設着工、今年7月に完成した。須田善明町長は落成式の後、報道陣に「復興街づくりの中で、地域社会の中核になる場だ。大きな節目になった」と話した。
町では消防庁舎や保育所も今年度中に完成し、整備が一段落する。
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県教育委員会によると、震災で県内の市町村立学校は約700施設が建物に被害を受け、37が全壊か半壊となり、国の災害復旧事業の対象になった。その他の学校も含めて改修や新築が徐々に進み、女川小中は最後から2番目の完工だ。残る1校は、高台への移転新築工事が進められている東松島市の浜市小(現・鳴瀬桜華小)。今年度中に校舎が完成し、来年度に授業が始まる見通しという。(徳島慎也)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル