宇都宮市の動物園に、1頭のツキノワグマがいる。名は「クーコ」という。子グマだった4年前、生まれ故郷の秋田でわなにかかり、3年間ほど人に飼われていた。殺される運命だったが、ひょんなことから命をつなぎ、この動物園に来て1年が過ぎた。体は大きくなり、備え付けの木で爪を研いだり、小さなプールで水浴びをして遊んだり、すっかり慣れた様子で動き回る。クーコの存在は、私たちに野生動物との関わり方を考えさせる。=本文中は敬称略
名前の由来は「食うがら。だから、クーコ」
2016年9月、秋田県北部の鹿角市。1頭の子グマがわなにかかっていた。
まん丸の目をして、体長30センチほど。爪はまだそれほど鋭くない。檻(おり)状のわなの中で、「ウェーン、ウェーン」と鳴き声を上げた。
はぐれたのか、親グマの気配はない。わなを仕掛けた田中茂男(69)は、管理している畜舎に檻を設置し、そのオスの子グマを飼うことにした。
拡大するすっかり成獣の風貌のクーコ=2020年7月24日午後3時49分、宇都宮市上金井町、野城千穂撮影
畜舎は、点在する集落から少し離れた山際にぽつんと立つ。牛や馬、鶏などを飼い、畜舎にほど近い家に田中は1人で住んでいる。
わなを仕掛けたのは、隣のキュウリ畑でクマの足跡が見つかったためだ。鹿角市内ではこの年の5~6月、タケノコ採りの男女4人が相次いでクマに襲われて死亡する事故があった。また人が襲われたり、作物が荒らされたりしては大変だ。そう思って仕掛けた翌日、子グマがかかったのだった。
畜舎に移したものの、人間を激…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル