気象庁は毎年、桜の開花などとともに、季節の変化を示す指標となるウグイスやホタルなども観測している。佐賀地方気象台は今月16日、今年初めて「ヒグラシ」が鳴くのを聞いた「初鳴(しょめい)」を観測した。これは5年ぶりの観測だったという。では、どうやって観測しているのだろうか?
ヒグラシはツクツクボウシに似たセミで、朝夕に「カナカナカナ……」と甲高く鳴くという。
「初鳴」を聞いたのは、休みだった気象台職員。16日早朝、佐賀市高木瀬西の多布施川沿いをランニングしていたときのことだった。気象台では、平年なら見たり聞いたりする時期になると、27人いる全職員に連絡を呼びかけていた。
職員は観測担当に連絡。無事に「ヒグラシの初鳴」の観測となった。平年より21日遅いという。担当の健木(けんき)秀人さん(42)は「近県では観測できているのに、佐賀は長く『欠測』だったので、安心した」と喜ぶ。
こうした業務は「生物季節観測」と呼ばれる。観測はできるだけ近い場所が望ましいとして、場所は佐賀市駅前中央3丁目の気象台から半径5キロ以内という決まりがある。桜なら敷地内の標本木を見ればいいが、生き物はどこにいるかわからない。なので職員たちは気にかけて通勤したり、昼休みに近くの公園に行ったり。それでも都市化や職員の数が減った影響で、最近は難しくなっていたそうだ。
健木さんは「桜のように観光産業に結びつくわけでもなく、ヒグラシの初鳴の観測にどこまで需要があるのかと言われれば分からない」と苦笑い。それでも「市民の皆さんが、季節の移り変わりを知る手がかりになればうれしい」と話している。(松岡大将)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル