出版不況のさなか、新型コロナウイルスの巣ごもり生活を機に本の売り上げが上向いている出版業界。中でも日本の歴史を解説する学習漫画が注目を集めている。全巻そろえると1、2万円台と高額にもかかわらず、4、5月の売り上げが前年に比べて急増した出版社もある。近年は小学生だけでなく「受験に使える」と中高生にも人気で、各社とも読者の関心をつかもうとしのぎを削っている。 【写真】受験生にも人気。出版各社の歴史漫画シリーズ
■「ビリギャル」きっかけに注目高まる
7月、市場に大きな動きがあった。創業111年の講談社が満を持して新たに参入。「学習まんが日本の歴史」を全20巻で刊行した。予想を上回る123万部を発行する好調ぶりだ。 明治期以降の「近現代」を重視し、6巻分のボリュームを割いた。2022年度に改訂される高校の新学習指導要領を反映しており、受験に活用できるのが売り。菅家洋也第6事業局担当部長は「歴史教育の変化に対応し、最新研究も取り入れた。受験に役立つ意義は大きい」と説明する。 監修はベストセラー本「応仁の乱」の著者で国際日本文化研究センターの呉座勇一助教ら30~40代の若手研究者に依頼。漫画は「ミスター味っ子」の寺沢大介さんたちベテラン14人が担った。菅家担当部長は「親の立場からすると値の張る買い物。長く読んで歴史好きになってほしい」と話す。 そもそも日本史漫画が受験生に注目されるきっかけになったのは15年に映画にもなった「ビリギャル」だ。原作で著者が勧めた日本史の学習法が「漫画『日本の歴史』をひたすら読むこと」だった。 その著者が太鼓判を押したのは小学館の「少年少女学習まんが日本の歴史」。39年前から市場を開拓し続け、18年には、それまでのシリーズに新たに「平成の30年」をまとめた1冊を追加した。第2児童学習局学習まんが・百科の安達健裕編集長は「センター試験の内容をチェックし、重版のたびに反映させている」と受験対策にも力を入れる。
■全巻セット販売で売り上げ前年比4倍も
「東大流」というキャッチフレーズでアピールするのは、15年に市場参入したKADOKAWAだ。「まんが学習シリーズ日本の歴史」は東京大教授の監修で、各巻頭に時代の全体像がひと目でわかるよう工夫した解説ページを設けた。「歴史の大きな流れをつかむことが重要」と角川まんが学習シリーズ編集部の石井康予編集長代理は力を込める。 人気漫画「ケロロ軍曹」の吉崎観音さんたちを表紙などのイラストに起用。外出自粛中の4、5月、全巻セット販売で前年比4倍の売り上げを記録した。 学習参考書や教材で定評のある学研プラスは12年に「まんがNEW日本の歴史」を刊行。38年前に出た旧シリーズを刷新した。「今どきの子どもが好む絵柄で人物を中心に歴史を描いた。感情移入しやすく歴史が記憶に刻まれる」と図鑑・辞典編集室エンタメ学びチームの保田和寛統括編集長は狙いを話す。 各社の日本史漫画を店頭に並べる書店では、「受験」をアピールする姿勢が目立つ。啓文社店売本部(尾道市)の井上剛次長は「漫画は学びに役立つという認識が広がってきた。中高生にも参考書感覚で読まれている」と話す。大人の学び直しなどのニーズもあり、市場の熱気は続きそうだ。
中国新聞社
Source : 国内 – Yahoo!ニュース