「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場選定への応募をめぐり、北海道寿都町の片岡春雄町長と反対派住民の溝が深まっている。片岡町長は町民の過半数が応募を支持しているとし、その根拠は「肌で感じる」と繰り返す。一方反対派は住民投票で賛否を問うことを求め、条例制定へ動きを強めている。
5日夜、町内で産業団体向けに開かれた説明会。商工会関係者から応募に賛成する意見が出たが、水産関連などの参加者からは反対意見が相次いだ。目立ったのが、住民投票を行おうとしない町長への反発だ。
住民投票をすべきだと問われた片岡町長は「やる必要がないと考えている」と断言。「賛成の考えの人もいる。『町長がんばれ、めげないで』との声も来ている」と続けた。
片岡町長は3段階ある選定プロセスの第1段階の「文献調査」に応募する方針。2年間の調査で町に最大20億円の交付金が入る。第2段階の「概要調査」では4年間で最大70億円の交付金が入り、第3段階の「精密調査」(14年間、交付金未定)へ続く。片岡町長は、精密調査の前には「住民投票までする必要がある」と話した。
だが反対派は、いったん文献調査に入り、交付金を得ることで後戻りできなくなることを懸念し、文献調査前の住民投票を求める。
なぜ片岡町長は住民投票に否定的なのか。その根拠が「肌感覚」だ。2001年から5期町長を務め、町民の考えは「目を見ればわかる」。応募への賛成も「肌感覚で感じ取る」という。ふるさと納税や風力発電の売電で実績を上げた自信も背景にあるようだ。
反対派も町長の実績は認めつつ、核のごみのような重要な政策決定を「肌感覚」で説明する姿勢に反発する。説明会では「町が分断されようとしている。町長がゆっくりことを進めれば分断は避けられる。町民をちゃんと見ているんですか」との声が出た。
片岡町長は説明会後、「結果として良かったと言われる時期は必ず来る」と語り、8日に応募を表明する意向だ。しかし反対派は住民投票条例の制定を求める直接請求を行う方針。応募後も対立の構図は続く可能性が高い。
町周辺の子育て世代が質問状
北海道寿都町周辺の子育て世代でつくる「北海道子育て世代会議」が6日、「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場選定プロセスに応募する方針の片岡春雄町長に公開質問状を手渡した。応募前に町民の住民投票を実施し、近隣自治体の住民の理解も得るよう求めた。
同会議は、寿都町が選定プロセス第1段階の文献調査に応募を検討していることが明らかになった後の8月下旬に結成した。島牧村、黒松内町などに住む10人で結成し、「対立ではなく対話」を目標に掲げる。
質問状を受け取った片岡町長は「(町民の応募賛成が)完全に多い。(住民投票は)やる理由がない」と話した。共同代表の宍戸慈(ちか)さん(36)は取材に「反対派も賛成派も複雑な思いを抱え、応募の影響は等しく受ける。すべての人たちの声を聞いて、一緒に考えてほしい」と訴えた。神恵内村の高橋昌幸村長にもファクスで質問状を送ったという。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル