12日告示された大阪都構想の住民投票の焦点は、大都市制度の中核である政令市の廃止・再編だ。政令市は、大都市と広域自治体の権限争いによる「妥協の産物」ともいわれ、首相の諮問機関もかねて二重行政の課題を指摘。全国の政令市長でつくる指定都市市長会(会長・林文子横浜市長)は解決策として、道府県から独立して国の所管以外の全ての事務を担う「特別自治市」構想を提唱している。 昭和31年にスタートした政令市は地方自治法で「50万人以上の市」と人口要件が定められ、児童相談所の設置など都道府県事務の一部を行うことができる。ただ都道府県との役割分担について明確な規定はない。 首相の諮問機関「地方制度調査会」(地制調)は平成25年の答申で、政令市と都道府県の間で「二重行政の問題が顕在化している。効率的な行政体制整備のため、二重行政の解消を図る必要がある」と指摘した。 問題の背景には、昭和22年の地方自治法施行時に盛り込まれた「特別市」の規定(現在は削除)がある。法律で指定する人口50万人以上の市を都道府県の区域外とし、都道府県と市の事務を担わせる内容だった。横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の五大市が想定されていたが、独立を制度化する規定に府県側が猛反発し、指定前に廃止された。 東京都立大の大杉覚(さとる)教授(都市行政論)は政令市制度について「特別市の実現可能性がなくなったため、妥協の産物としてつくられた。5市にとっては過渡的な仕組みだ」と解説する。 ただ政令市制度は維持され、20市まで増えている。二重行政の解消をめぐっては平成22年に当時の橋下徹大阪府知事が大阪都構想を掲げた後、愛知県と名古屋市の「中京都構想」や新潟県・市が合併する「新潟州構想」などが打ち出されたが、具現化していない。 指定都市市長会が22年に提唱した特別自治市は、道府県の統治下に入らず地方の住民サービスを一元的に担い、日本全体の成長を牽(けん)引(いん)する役割を目指す。国は外交や安全保障といった専権事項に集中すべきだとして、権限や税財源の積極的な移譲を求めている。 これに対し、地制調は25年答申で「一元的な行政権限を獲得し、政策選択の自由度が高まる」と一定の意義を認める一方、広域犯罪への対応などに懸念を示した。特別自治市構想もまた、都構想と同様に明治以来の地方自治の枠組みを見直す構想だが、実現に必要な法整備に向けた動きはない。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース