性暴力被害を公表したジャーナリストが米誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、「#MeToo」や「フラワーデモ」のように近年は性暴力撲滅を訴える運動が広がる。そんな中でも暴力は絶えず、知人から被害を受けた長崎県内の40代女性は周囲の理解を得られないこともあり、1年がたっても心身の不調に苦しむ。被害者によっては長期の通院や療養に負担を要するが、行政や支援機関の経済支援は限定的だ。 【画像】性被害者の年齢分布 「マッサージだ」。昨夏、顔見知りの整体師の男性から告げられた女性は、関係のない体の部分を触られ、裸の写真も撮られた。交通事故に伴うむち打ちの治療で自宅に呼んで施術中だった。疑問を抱いたが、過去の施術では背中や腰の痛みが引いており、当時は治療行為の一環だと信じた。
知人に相談すると「自宅に入れる方が悪い」
だがその行為を振り返ると性目的としか思えない。ショックで警察に相談したが捜査や裁判に耐えられそうもなく、被害届は出せない。顔見知りで、自らの仕事や生活に影響が及ぶのも恐れた。共通の知人に相談すると「自宅に入れる方が悪い」と突き放され、二重のショックを受けた。 女性は被害時のことを思い悩み、今も不眠症や円形脱毛症が続く。睡眠導入剤の服用は欠かせず、診療科目も当初の心療内科から、耳鼻、皮膚科にも通うように。表情は疲れ切っていた。「体調が急に悪化して生活に障る。これがずっと続くと思うと…」
犯罪被害者支援条例を制定する自治体も
自治体によっては犯罪被害者や遺族の生活を支えるため、犯罪被害者支援条例を制定する。県内では県と17市町が設け、希望する被害者の要望に応じて公営住宅の優先入居や就労などを援助する。条例には被害者への見舞金制度もあるが、犯罪によって死亡やけがをした人が対象で、女性のように被害届を出していない人は受けられない。 性暴力被害者向けには、県の委託を受けて支援する「サポートながさき」が、被害の相談や医療機関への付き添い、カウンセリングの紹介などを担う。被害届は必要ではなく経済支援も行うが、被害直後の検査費や初診費用などごく一部にとどまる。 主な支援内容はサポートながさきと共通する一方、福岡県の支援機関「性暴力被害者支援センター・ふくおか」は、対象者が長期間のカウンセリングや精神科の受診を要する場合、年3回を上限に診療費を全額助成する。
15年通院する被害者
性暴力被害者の治療に携わり、実情に詳しい県内のある精神科医は、回復まで期間を要する被害者は少なくないと指摘する。医師の下には15年通院する被害者もいる。この間の治療費は保険適用されるが「(適用部分以外の自己負担は)不本意のはず」と話す。 女性は休職も考えたが収入が減り生活が苦しくなるため、今も休まず働き続ける。いつ体調を崩して仕事を失うか不安で「行政や支援機関のしっかりした援助があれば心強いが…」と話す。ただ、県担当者は「金銭的な援助の拡大などは検討していない」としている。 (坪井映里香)
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