性暴力被害者のうち、8割以上が警察に被害を届け出ることができていない実態が、当事者などでつくる一般社団法人「Spring」の調査で分かった。調査では、性被害を受けてから「被害」と認識できるまでに時間を要するケースが多いことや、刑法の強制性交等罪が要件とする「暴行・脅迫」を伴わない性暴力被害の実態も判明。公訴時効や構成要件など現行法の問題点が改めて浮かび上がった。 アンケートは、Springや研究者などが、性被害の経験がある人を対象に8月16日~9月5日にWebで実施。5899件の回答があった。6月以降、法務省の検討会で、性犯罪に関する刑法改正が議論されている。Springによると、性被害の実態を明らかにし、刑法改正に結果を反映することが調査の目的という。
「被害」と認識、1割以上が時効超える
Springが11月20日に調査結果を報告した。被害者のうち、83.8%(4944件)が警察に被害を相談していなかった。さらに、警察に相談した人(894件)のうち、約半数の429件が被害届を受理されなかったという。 「被害に遭った際、すぐにそのことを『被害』だと認識できたか」との問いに51.7%(3051件)が「いいえ」と答えた。被害だと認識するまでの年数は平均で約7年。強制性交等罪の公訴時効は10年だが、11年以上が1割を超えた(724件)。最長で39年かかったケースもあった。 「被害に遭った経験の一部、あるいはすべてについて、記憶をなくしていた、あるいは思い出せなかった時期があるかどうか」について、21.6%(1273件)が「あった」と答えている。
性教育の充実求める声
全体のうち、小学生以下の被害が約4割だった。結果を分析した東洋大助教の岩田千亜紀氏は「性暴力被害を防ぐには、幼児期や小学生の頃からの性教育を充実させる必要がある」と指摘した。 自由回答ではこのほか、「性被害者・加害者への対応の変化」(24.2%)を求める声が多数寄せられた。具体的には、「被害者を責めない」「セカンドレイプをなくす」「加害者が悪いと認識される」ことを求める内容が目立った。 「被害者にも責任があるかのような言動をとる人がいなくなること。警察や親すら、あなたも悪いと言った。それ以降相談しても無駄だと思ってしまった」といった訴えもあった。 岩田氏は、「刑法改正に加えて、性暴力・性犯罪においては被害者ではなく加害者が悪いという認識が、教育や啓発活動を通して社会全体に周知されることが重要だ」と強調した。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース